2014年6月23日月曜日

電流発生菌

電流発生菌

http://www.mobara.jp/nisimori/2/newpage97.index.html

田んぼが発電する!?
東京大学の橋本和仁教授と科学技術振興機構の加藤創一郎研究員らによって「電流発生菌」をより多く増やす方法が開発されました。電流発生菌とは、糖や酢酸などの有機物を分解して電子を放出する菌のことです。そんなのがいるんですね。この方法の開発によって、電流発生菌を使った「微生物燃料電池」の実用化が期待できるかもしれないそうです。
電流発生菌は意外と僕らの身近にいます。そこら中の地中や水中など、どこにでもいる菌です。今回、電流発生菌の住んでいる水田の土を採取し、酸化鉄と一緒に培養してみたら電流がより多く流れたとのこと。 

  
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電流発生菌は有機物を分解し電子を捨てることで、自分自身の増殖に必要なエネルギーを得ます。その際に発生する電子を電極で回収して電流として取り出すのだそうです。応用すれば、イネが光合成を行い、根から有機物を出し、それを使って菌が電流を発生させる「田んぼ発電」なんてシステムも出来るかも。実用段階ではないそうですが、実際に田んぼから電流を取り出すことには成功しているみたいです。いっぺん田んぼでケータイを充電してみたいものですね。
東大など、電流発生菌の増殖法発見-酸化鉄と培養
掲載日 20101201
 
東京大学の橋本和仁教授と科学技術振興機構の加藤創一郎研究員らは、糖や酢酸などの有機物を分解して電子を放出する菌(電流発生菌)を、より多く増やす方法を見つけた。複数の細菌が共存する水田の土を採取し、酸化鉄と一緒に液体培地で培養。電流が多く流れることを発見した。電流発生菌は取り込んだ酸化鉄を利用し、他の微生物よりも有利な環境を作り出すという。微生物を使った燃料電池の実用化が期待できそうだ。  電流発生菌は有機物を分解し電子を捨てることで、自分自身の増殖に必要なエネルギーを得る。発生する電子を電極で回収し、電流として取り出す微生物燃料電池の研究が、世界中で行われている。  電極を底に敷いた、直径3センチメートル、高さ2センチメートルの円筒状の容器を準備。酢酸入りの液体培地を容器に満たし、水田の土を入れて培養した。
 
自然との共生は、さまざまな科学分野での大きなテーマになりつつある。東京大学先端科学技術研究センター、橋本和仁教授のチームが研究を進めているのは、田んぼなどに棲む微生物から直接電気を取り出せる燃料電池と太陽電池だ。将来は、田んぼで発電が行えるようになるのだろうか?
プロジェクトリーダーの橋本教授、および渡邊一哉特任准教授、中村龍平助教に詳細をお聞きした。
 
微生物燃料電池の実験装置。有機物を与えると、電流が発生する。
 
自己メンテナンスできることが生物の強み
──微生物を使って発電する研究を行われているそうですね。なぜ微生物発電を行おうと考えたのでしょう?
20世紀のサイエンスは主として現代物理学をベースとし、エネルギー源としては化石燃料を用いて、人類にとって便利な社会を築いてきました。しかし、21世紀になって、環境やエネルギー、資源の持続性に疑問が持たれるようになり、自然と共生できる新たな指導原理に基づいた科学技術の重要性が高まっています。
たんに太陽エネルギー変換効率ということでいえば、現在の太陽電池は10%以上、タンデム型なら40%以上に達しています。植物の光合成は、条件によっても異なりますがせいぜい5%程度。人工の太陽電池は、効率の上では植物を上回っているわけです。だからといって、太陽電池が植物を超えたということにはなりません。
──植物は勝手に成長していきますしね。
そう、生物の本質は、自分で成長し、自分自身をメンテナンスできるというところにあります。私の究極的な目標は、成長する太陽電池を作ることですが、これはまだ夢物語ですね。
さて、微生物は酸素呼吸をしている時、外部から取り入れたエネルギーの1/3だけを使い、残りはある意味で外に捨てているといえます。微生物が使ったエネルギーの残りを人間がもらおうというのが元々の発想です。これを実現するために、微生物燃料電池、微生物太陽電池という2つの研究を進めています。
電流発生菌は私たちの身近にいる
──それぞれどういう原理で発電するのでしょう?
普通の燃料電池は、水素を入れてやれば酸素と反応して発電します。メタノールから水素を作り、それを使って発電するタイプもあります。一方、微生物燃料電池は、エサとなる有機物を与えてやれば発電します。
有機物には高いエネルギーが含まれています。私たち人間はこれを食物として取り込み、ATP(アデノシン三リン酸)というエネルギー通貨に変換し、生きているのです。有機物に含まれていたエネルギー準位の高い電子からエネルギーを取り出しているわけで、最後にはエネルギー準位の低くなった電子をどこかに捨てる必要があります。
この電子を酸素に渡して、二酸化炭素と水を生成する過程こそ、私たちが行っている呼吸です。酸素がないと人間は窒息死してしまいますが、それはエネルギー準位の低い電子を捨てる場所がなくなってしまうからだともいえるでしょう。
微生物でも基本的にはまったく同じことが行われています。ただし、電子を渡す先は酸素でなくともかまいません。二酸化炭素に電子を渡すと、メタンが生成されます。牛がゲップを出すのは、酸素がなくとも生きられる微生物がメタンを作るから。田んぼの底からぶくぶく泡が出てくるのも同じ反応です。
二酸化炭素に電子を渡すということは、酸素に渡す場合に比べてまだまだエネルギーが残った状態で渡していることになります。先にも述べたように、酸素呼吸では微生物は取り入れたエネルギーのうち、1/3程度しか利用せず、残りの2/3を捨てているのです。
面白いことに、電子を二酸化炭素ではなく、電極に直接渡せる微生物もいます。それが、電流発生菌です。
──電流を発生させる菌というのは不思議ですね。
電流発生菌自体は100年ほど前に発見され、そこら中の地中や水中、どこにでも見つかります。電流発生菌から電気を取り出す試みも行われましたが、電流密度が低いため実用にはならず、それほど研究は盛んではありません。
電流発生菌に有機物を与えると、流れる電流が急速に増え、あるところまで来ると一定になります。さらに電流発生菌を増やしても、発生する電流は変化しません。電極に電流発生菌が取り付いているのですが、電極の面積は限られているため、離れた場所にいる菌は電極に電子を渡すことができないのです。
微生物同士の共生関係を活かせば、電流が増える
酸化鉄ナノコロイドが、電流発生菌の周りにまとわりついている様子。
酸化鉄ナノコロイドを入れると、発生する電流が50倍になる。有機物が足りなくなると電流発生量は減るが、有機物を追加すれば回復する。
──今なら、遺伝子工学を使ってもっと電流を出すように改良することもできたりするのでしょうか?
米国では実際にそういう研究も始まっていますし、私たちの研究室でも研究を進めています。こうした研究手法は、分子生物学を使っているという意味で、21世紀型です。しかし、自然との共生という方向からは離れていくように感じます。
そこで、電流発生菌の生息環境について考えてみることにしました。実験室での研究は、動物園のようなもので、元々の環境とはまったく異なっているはずですから。
例えば、代表的な電流発生菌であるシュワネラ菌は、海底火山の地殻から採取されました。地球科学の研究者に訊くと、深海から微生物を採取すると必ず酸化鉄や硫化鉄がまとわりついてくるのだそうです。
そこで、シュワネラ菌のいる培養液に酸化鉄のナノコロイド(酸化鉄の微少な粒子が液体に溶け込んだもの)を加えたところ、電流の発生量がぐんと増えました。しばらくすると電流は減り始めますが、エサの有機物を追加すれば、また電流が出るようになります。微生物だけの場合に比べて、50倍以上の電流が発生するようになりました。
──いったい何が起きたのですか?
酸化鉄ナノコロイドが糊、および電子伝達を仲介する物質として働いているものと考えられます。微生物の放出した電子が酸化鉄ナノコロイドに移り、酸化鉄ナノコロイドからまた微生物に移るというホッピングです。これによって、電極から離れたところにいる電流発生菌も電子を受け渡すことができる、つまり呼吸して生き延びられるようになったのでしょう。
さらに、鉄イオンと硫黄イオンを加えると、微生物が硫化鉄を作り始め、電流の発生量は200倍になりました。今までも微生物が硫化鉄を作ることは知られていましたが、これがエネルギー変換に関係することは知られていませんでした。
電流発生菌だけだと電極に取り付いたものしか電子を渡せない。しかし、酸化鉄ナノコロイドがあれば、電極から離れたところにいる電流発生菌も電子を渡せるようになる。
生ゴミから直接発電する微生物燃料電池
──これは深海の環境を再現したということなんですね。
次は海ではなく、田んぼから泥を取ってきて、酸化鉄を入れてみました。エサの有機物を与えてやると、酸化鉄から電子を受け取れるタイプの微生物の割合がどんどん増えていき、それに伴って発生する電流も増えていきました。こういう環境に適応した微生物が助け合いながら、生き延びようとしているのです。この発見にはかなり興奮しましたよ。
今のところ、1立方メートルの実験装置から130Wの電力を取り出せます。まだ効率がいいとは言えませんが、エサとしては廃棄物、例えば焼酎やビールを造った後の廃液など、処理に困っているものを与えればよいのです。電気を取り出すと有機物が分解されてきれいな水になりますから、廃液処理装置として使えます。
──生ゴミ処理にも使えるのでしょうか? 家庭用の生ゴミ処理装置としては堆肥を作るコンポストもありますが、どう違うのでしょう?
生ゴミも処理できるという点で、微生物燃料電池はコンポストと似ています。
生ゴミにはまだエネルギーが残っていますから、コンポストで分解が進むと熱が発生します。一方、微生物燃料電池は熱くならず、代わりに発電します。熱は拡散していくためエネルギーとしては利用しにくいのですが、電気として取り出せれば利用しやすくなります。
また、コンポストとは違いますが、バイオマスを利用したメタンガス発電では、有機物を分解してメタンガスを作り、それを燃やした熱で水蒸気を作り、タービンを回して発電しています。これに比べて微生物燃料電池は、ボイラーやタービンがいらないので、装置を小型化できるというメリットがあります。
──発電効率の向上がカギですね。
今は1m³の装置で130Wですが、家庭用として使うなら1000Wは出力できるようにしたいところです。これで生ゴミ処理の機能もあれば、十分に競争力のある商品になるでしょう。処理効率を上げて、カスがあまり出ないようにしていきたいですね。
まだ電流発生菌が発電する仕組みにはわかっていない点も多いため、現在この解明を進めており、電極の改良も行っています。数年以内には1000Wを達成したいと考えています。
田んぼの水に光を当てると、電流が発生した
水田に電極を差し、発生した電流を計測する。
──もう1つの微生物太陽電池の仕組みはどのようなものでしょう?
光が当たると光合成を行ない、電極に電子を渡せるような微生物がいればよいのですが、残念ながらこういう微生物は知られていません。適当な電子伝達物質を混ぜれば可能ですが、人工的な物質は使わないようにしたいのです。
それではどうするか。こちらも微生物燃料電池の場合と同じように考えました。自然界にはいろんな微生物がいるから、助け合って生きていけるのではないだろうか。
そこで、東大構内にある三四郎池や、温泉から水を採取してきました。これらの培養液には窒素やリンは加えますが、エサの有機物は加えません。培養液に光を当てれば、この条件下で生きていけるエコシステムができるだろうと考えたのです。実際、光を当てると電流が発生しました。
培養液を調べると、少なくとも2種類の微生物が共生していることがわかってきました。1つは光のエネルギーから有機物を作る光合成細菌。もう1つは、有機物を取り入れて電流を発生させる電流発生菌です。光合成細菌の作った有機物を、電流発生菌が取り入れて電流を生み出していたのです。
太陽エネルギー変換効率は、三四郎池から採取した培養液で0.02%、温泉で0.04%。人工の太陽電池に比べると、はるかに低い効率です。しかし、重要なのは、自然の共生関係を活かすことで、微生物の余剰エネルギーを取り出せたということにあります。
水田を電池として使えないか実験してみたところ、やはり電流が発生しました。イネが光合成を行い、根から有機物を出し、それを使って微生物が電流を発生させている、つまり太陽電池として機能していると考えられます。この場合の発電効率は0.01%とまだまだですが、自然の共生関係を利用して発電できた意義は大きいと思います。
──実用化に向けてのロードマップはいかがでしょう?
微生物燃料電池は十分実現可能ですが、微生物太陽電池についてはまだ実用化云々を考える段階ではありません。今後さらに新しい知見を取り入れ、発電効率が今の100倍、12%になってきたら、初めて応用的なことを考えられるでしょう。
──微生物燃料電池、微生物太陽電池のハイブリッドにするといったこともできそうですか?
可能性はあると思いますよ。光合成微生物の種類によって、作り出す有機物も異なりますし、それを受け取れる微生物も変わってきますから、現在は最適なペアを調べているところです。
研究室の実験装置では、光合成微生物と電流発生菌の最適なペアを調べている。
自然との共生から生まれるブレークスルー
──微生物を利用した発電によって農業の姿はどう変わりますか?
それが言えるようになるのはまだまだ先の段階でしょうね。微生物太陽電池にしても、それでトラクターが動かせるようになるわけではありません。しかし、自然との共生関係を活かすという考え方が、他の分野のアイデアと結びついて、ブレークスルーを起こすかもしれないと期待しています。
私たちは農業で食物を作り、それを食べていくしかないのです。今までは化石燃料という密度の高いエネルギーを利用できましたが、これを使えなくなったらどうするのか真剣に考えなければいけません。そのためにも、微生物太陽電池のような方法を提案して、世論を喚起したいのです。
──今の農業は、ある意味、石油を燃やして野菜を作っているようなものですからね。
その通りです。最近は、工場で工業製品を作るように作物を作る「植物工場」のビジョンが現実味を帯びてきました。確かに、ある段階において植物工場は必要なものだと思いますし、私自身も関わってはいますが、あれが究極の姿だとはまったく考えていません。やはり、希薄な自然のエネルギーを使うシステムは、さまざまな分野で研究していくべきです。
──それにしても、微生物同士の共生関係で電流が発生するというのは面白いですね。自然には他にもまだ知られていない反応がたくさんあるのではないでしょうか?
例えば、海底に生息する微生物は、地殻変動のエネルギーを熱や硫黄化合物の形で取り込んで利用していますし、こうした海底のエネルギーシステムは非常に面白い分野です。
ほかにも、川の中には光合成とは違うやり方で太陽光を利用している微生物もおり、私たちの研究室のメンバーが研究を始めています。
 
研究者プロフィール
橋本和仁(はしもとかずひと)
1955年北海道生まれ。1980年東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。分子科学研究所助手、東京大学工学部講師、助教授を経て1997年同大学先端科学技術センター教授。2004年より現職。専門は光触媒、光磁性材料、有機太陽電池など光化学を基礎とする機能材料学。3年ほど前より微生物を使うエネルギー変換の研究を開始。現在JST/ERATO「光エネルギー変換システムプロジェクト」総括責任者。
渡邊一哉(わたなべかずや)
現職:科学技術振興機構ERATO橋本光エネルギー変換システムプロジェクト微生物グループリーダー、東京大学先端科学技術研究センター特任准教授。1987年東京工業大学理工学研究科を卒業後、東燃株式会社に入社。1997年に海洋バイオテクノロジー研究所に移動、2008年から現職。専門は応用微生物学で、微生物を環境浄化やエネルギー生産に利用する技術の研究開発を行っている。
中村龍平(なかむらりゅうへい)
1976年北海道生まれ。2005年大阪大学大学院基礎工学研究科博士課程修了。Lawrence Berkeley National Laboratory博士研究員を経て2006年より東京大学大学院工学系研究科助教。専門は半導体電気化学、微生物電気化学を基礎とする光エネルギー変換材料。
 
 
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生きている電流発生菌Shewanella の電気化学
 

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