前編(G1経営者会議)
http://www.globis.jp/2762
アベノミクス構想から早1年。その政策方針へは賛否両論あるものの、円高修正、株価上昇、消費回復、企業増益など一定の成果は見られた。ただしこれらは第一、第二の矢といわれる金融緩和・財政出動によるところが大きい。これまでの成果をより持続的にするためには第三の矢と言われる成長戦略とりわけ民間の活力をどこまで引き出せるかが鍵となる。本セッションでは、アベノミクスの成長戦略、中でも企業成長に焦点をあて、今後の日本国の成長ポテンシャルについて論じた。(肩書は2013年11月4日登壇当時のもの)
スピーカー:
阿部 康行 住友商事株式会社 代表取締役専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道 クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター チーフ・エコノミスト 債券本部 経済調査部長
御立 尚資 ボストンコンサルティンググループ 日本代表
モデレーター:
高野 真 ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
「円安による企業利益は基本的には企業の貯蓄が溜まっている状態」(白川氏)
「日本再興戦略」という形でまとめられたアベノミクス第3の矢は三つの戦略に分けられている。まずは「日本産業再興プラン」。どちらかと言えば供給サイドの話で、規制緩和を中心に産業基盤強化を目指している。そして二つ目は「戦略市場創造プラン」。可能性ある領域を育て、新しい需要をつくっていこうというものだ。特に海外から国内へ需要を引き込んでいく。で、三つ目は「国際展開戦略」。国内から海外の需要を取っていくということで、TPP等、国際市場のオープン化を中心にさまざまな施策が練られている。この三つを具体的に各成長分野へ落とし込んでいく訳だ。(02:32)
本日は出来るだけポジティブサイドに焦点を当て、問題があるのであればどのように解決していくべきかを考えていきたい。まずはこの1年間、あるいは直近の色々な施策について御三方はどのような評価をなさっているだろうか。(04:32)
御立尚資氏(以下、敬称略):広報・マーケティング戦略に大変長けた政権だ。大量の金融緩和を行って円安・株高となったが、その効果が長持ちしている。TPPのアナウンス等色々なメセージを定期的に発信し、「実際に変わっているのでは?」ということを広報している。市場と有権者に対して定期的にメッセージを出し続けている訳で、企業としては2カ月に一度ぐらいの割合で出てくるものを上手く捉え、どうやって自分たちのビジネスに繋げていくかということを見る価値が出てくる。面白い戦略であり、政権だと思う。体勢についても、最近は首相補佐官の一人が広報官を兼務することになった。明確にそうした戦略を打ち出そうとしていると思う。(05:26)
逆に言えば第3の矢は時間がかかる。規制緩和等の色々な施策は、そう簡単に経済成長の数字となって表れるものではない。今の経済成長自体は円安・株高で消費センチメントも少し高まり、実際の消費も増えて、そこで財政を出動させているという状態だ。また、消費増税の前倒し効果もあるので建築業と地方の経済が少し上向いているというのが実体になる。ただ、その次はどうしても時間差が出てくる。そのあいだ、政権のアナウンスでどのように信じて貰うかというチャレンジをしていくのだろう。今はそうしたタイミングだと思っている。(06:37)
白川浩道氏(以下、敬称略):私は悲観的なほうで通っている。8月末も消費税増税の有識者会合に「反対派として出て欲しい」と期待をされて出席をした。で、しっかりと反対をして、そしてしっかりと「反対はなんの意味もなかった」ということで終わった(会場笑)。(07:39)
企業成長という観点でアベノミクスを見てみると、円安のマクロ的効果はまだ出ていないと言える。円安による企業利益は、基本的には企業の貯蓄として貯まっている状態だ。我々マクロエコノミストからすると円安効果というものは2年ほどで表れてくるイメージになる。従って今年度は営業利益および経常利益が増えたものの、設備投資や人件費にまだ結びついていない。従って、来年以降どうなるのかに関心がある。企業によって状況は異なると思うが、我々の目から見ると現状では何も起こっていないと。貯蓄が増えただけ。これは株価がピークアウトした大きな理由だ。外国人は「円安で利益が出たその次にどうするのか」を見ているが、そこが見えていない。株価は営業利益・経常利益が増えたぶんだけ上がったが、その先が重要だと思う。(08:10)
また、アベノミクスに関して言うともう一つ、まったく異なるディメンションがある。産業構造改革や企業再編の話だ。今、日本の生産年齢人口は毎年80万人、1%の割合で減少している。そうした人口減社会で構造改革が生産性向上にどれほど効くのかというポイントがあり、そこを見極める必要があると思う。残念ながらその政策がまだはっきり示されていないので、我々としてはあまり評価出来ない。これはマーケットにとっても同じで、やはり今後の展開を見ていくというのが今は基本的な理解だ。(09:42)
阿部康行氏(以下、敬称略):白川さんから思い切りアゲインストなコメントが出たあと、私に期待されているのは思い切り“あげる”ことかもしれないので、若干偏ったことを申しあげたい。まず、当然ながら会社組織であればリーダーを決めたからにはそれに従うというルールがある。ただ、以前の政権では図らずもそのように見えない面が多かった。そう考えると現政権は非常に安定感があると思う。(10:52)
現場で起きていることを申しあげると、全体会で官房長官からお話があった通り、安倍首相はおよそ10カ月で23カ国に海外出張をした。で、すべてとは言わないが、そのうち半分ほどの訪問で経済界同行のお誘いをいただいている。首相だけでなく大臣が行く際も社長・会長の同行を求められており、スケジュール管理をする私としては大変だが、やはり非常に助かっている。今までもあったことだが、その頻度という点で本当に積極的で、国が産業界とともに色々な領域でチャレンジしているという違いは大きいと思う。海外パートナーと仕事をする際、相手側で国が企業を積極的にサポートするのを見ていた我々としては、これまでと格段の違いがあると感じる。(11:47)
また、私としては新しいことにチャレンジする際、1回目を絶対に成功させなければいけないと考えている。ゴルフでも最初にOBを叩くとその日は大抵上手くいかない。2回目以降は失敗して良いという意味ではないが、とにかく最初の成功は大事だ。その意味では全体会で竹中(平蔵氏・慶應義塾大学教授/グローバルセキュリティ研究所所長)さんが仰っていた通り、アーリーサクセスもあったと思う。(13:06)
また、この時期のオリンピック招致成功も現政権にツキがあるということだと思う。ビジネスでもツキを持っていない人に仕事を頼むことはない。MBAの教科書には書いていないが、どの経営者もそこは外さないだろう。私自身、MBAセミナー等で喋るときは「教科書にないことを喋る」としたうえで、第1章としてツキの話をする。そうした意味でも、とりあえず出だしは良かったのではないか。今後は大きなチャレンジになると思うが、まずはそうしたポジティブサイドのコメントをさせていただいた。(13:49)
「金融緩和は始めてしまったら行くところまで行かないと仕方ない。黒田総裁は恐らく確信犯だ」(御立氏)
御立:ツキは私も大事だと思う。景気の谷は恐らく政権誕生寸前だったと思うが、上げ潮基調のときに政権を獲ることが出来たのは明らかにツキだ。円安も同じ。黒田さんが日銀総裁となって金融緩和を行う前にはじまっている。半分は市場からのメッセージだが、もう半分は海外の状況も含めてツキがあったということだと思う。(15:42)
で、私はテレビ等で大幅な金融緩和に反対論をぶっていたので「お前は最近変わった」と言われるが、あまり変わっていない。緩和をはじめてしまったら行くところまで行かないと仕方がないという話だ。今、政権は意図的にリスクを取っていると思う。財政赤字がひどいという状況は何も変わっておらず、しかしその状況でも金融を、ある意味でふかしている。いつまでももつ筈はない。その状況下で企業がどのようにリスクを取り、経済を良くしていくかというゲームに今は入ってしまっている。(16:16)
黒田総裁は恐らく確信犯だ。数年後に爆発する時限爆弾をセットし、「金融で出来ることはやった。あとは政治家・官僚のほうでやるべき新陳代謝の政策をやれ」と。そのタイマーがチクタク鳴っていることを、市場からのメッセージと併せて現政権は驚くほど強く意識している。「いつか、市場で痛い目に遭うのではないか」と。だからやり続けなければいけない。次の選挙が2016年ということで長期安定政権であることが分かっているぶん、気をつけないとガバナンスが緩む。それで現在は、基本的には経済に集中しつつ、外交・安全保障との二本柱でやっていると。基本的なことをきちんとやるというガバナンスの意味で時限爆弾が効いていると思う。(16:51)
逆に言えばリスクをたくさん取ったので、そのマネジメントが政権にとっても日本で商売をする企業経営者にとっても大事だ。いわゆるテールリスクということになるが、どこかで長期金利が跳ね上がることはあるかもしれない。それが起きたとき、どのようにして生き残るのか。リスクを取らない訳にはいかない以上、どのようなリスクの取りかたをするかということを徹底的に考えなければいけないと思う。(17:44)
基本的には2020年までのどこかで日本の家計貯蓄率はマイナスになる。「今の日本が弾けていないのは日本人が国債を持っているからだ」と言われるが、それが崩れ爆ぜるかもかもしれない訳だ。で、企業は余っているお金をすべて国債購入に充てる訳はないから、逆にリスクを取って新陳代謝を進めていこうと。今はリスクマネジメントについて考えつつ、政権も企業も上手くリスクを取っていくタイミングだと思う。(18:12)
もう一つ。日本経済の3/4を占めるのはサービス産業だ。そのサービス産業で生産性と賃金が上がらなければどうしようもない。その最たる分野は医療・介護だ。具体的にやりようがあると思っているので後ほど議論したいが、ここに企業側もプラットフォームをつくる。会場にはIT業界の方も多いと思うが、そうした業種としてどのように医療・介護を手助けしていくことが出来るのか。政権もそこに手をつけ、良い形で回転していけば出来ることはかなりあるし、ディズアスターにならず済むと思う。(18:49)
人口は毎年1%減っているが、一人当たりGDPは4万ドルしかない。先進国は今、だいたい6万ドルクラブを形成していて、スイスに至っては7万ドルだ。そうした国々と日本との大きな差はサービス産業の生産性。仮にそれをスイス並の8割に高めることが出来たら人口が少々減ってもたいしたことはない。逆に言えば、そこへ行くための医療・介護を中心としたサービス産業に関する議論を後ほどしたいと思う。(19:30)
白川:「何も変わっていない」と言ったが、世界的に見ると日本企業が展開しているところでは色々な変化がある。ただ、アベノミクスについては二つのディメンションを考えて欲しい。一つはマクロの金融的な話で、これはいわゆる棚ぼた、ウィンドフォールだ。円安になることによってドルベースでは同じでも輸出額や企業利益が増えるというマネタリーなショックになる。海外展開している企業の配当収入や子会社から入ってくるものもすべて増えていく。これは自民党が以前から言っていたGNPの概念だ。経常収支で言えば「所得収支を含めていこう」と。マネタリーなショックによって、何も変わっていなくともそこが増えていくように出来ているのが円安ということだ。(20:14)
で、もう一つが生産性の話になる。リアルショックというか…、生産性ということは基本的に技術革新ないしは規制緩和の議論になるが、とにかく経済のパイを実質的に増やしていくこと。この二つを現政権は同時にやっている。で、まずマネタリーショックから入ったが、今はそこからリアルの部分になかなか入っていくことが出来ていない状態というのが私の理解だ。ただ、御立さんが仰っていた通り、日本は人口減の問題を抱えているので、やはり生産性を上げていかなければ成長を実現出来ない。(21:23)
で、これはエコノミスト的に頭がくらくらするのだが、どうすれば生産性を高めることが出来るかが本当に分からない。直感的に考えると、潜在需要がある一方で供給に何らかの制約があって出来ていない訳で、典型的には分野医療だ。潜在需要があるにも関わらず何らかの制約に抑えられているために生産性が低いという分野がある。また、人口減が進んでいるために生産性を高めないとやっていけない分野もある。たとえば農業。生産性ショックが入ってくれないことにはどうしようもなくなり、人手も足りなくなってしまう。私自身は成長分野として農業と医療に注目しているが、いずれにせよ生産性に関してはそうした二つの議論があると思う。(22:09)
ただ、それでも人口は毎年1%減る訳で、これは労働分配率が60%前後だからGDPをおよそ0.6%押し下げる。これを生産性向上でカバーするのはそれほど簡単なお話でもない。私としては小売を含めた一般サービス業全体が生産性を高めていくために機械投資をするしかないと考えている。「日本は人手不足だ」とずいぶん言われているが、実は人手が余っているのではないか。実際には生産性が低い状態なのではないかと、かなりの業種に対して思っている。ハイテクの時代なのに竹竿で戦っているような感じの会社がたくさんある。もっと人を機械でリプレースする発想があってしかるべきだ。これはミクロでなくマクロの議論であり、その意味でも生産性の議論は非常に難しいが、やはり人口減社会にあっては議論していかなければいけないことだ。いずれにせよ、農業、医療、そして広くサービス業に注目している。(23:22)
阿部:商社の立場でお話をさせていただくが、私どもは多岐に渡るビジネスラインを持っているため、どの成長分野にフォーカスしているかと聞かれたら「すべて」という答えになる。白川さんのほうからもコメントがあったリアルの部分だ。当然ながら成長性を常に求められる訳で、「企業としてグローバルに展開しながらも、どのような形で日本に貢献出来るか」と。グローバルに見たうえでどういったポートフォリオが一番良いのかを考えている。日本企業として日本の部分を忘れたことはないが、結果としては配当収入を増やすといったことが自ずとメインになる。(24:47)
従って、特定の業種ではなくすべての業種ということで我々は考えている。また、世の中は常に変わり続けており、我々が今考えている最適な分野というものが明日になれば変わっている可能性は極めて高い。そうした変化の時間軸が短くなっている現状があり、その辺を注意しないと今後の経営を誤ってしまうという恐怖心もある。その意味で(最適なポートフォリオ形成に)日夜頑張っているという答えになる。(26:06)
「インフラプロジェクトにおける政府リーダーシップは有難い。あとは標準化の領域に期待」(阿部氏)
御立:特に現政権が背中を押しているのはインフラに関するPPP(Public-Private Partnership)とPFI(Private Finance Initiative)だ。財政赤字は膨らんでいるが、日本は今後、これまでにつくってきたインフラのメンテコストが異様にかさんでいく。道路だけで300兆円といった恐ろしい話をする方もいる。そこで出ているのが空港の民活化だ。法案が今年中に通り、仙台、関空、伊丹、そして恐らく広島あたりを中心に、日本に98ある空港のうち半分前後は「民間で経営したい人はどうぞ」という形に、この5年間でなっていくことが政策スケジュールとして決まっている。これは実際の経済インパクトに加えて大きなメッセージ効果も持つだろう。官がすべてやっていたものを民間のリスクマネーと経営の知恵でやっていく形に経済が変わりはじめる。そのシンボリックな政策だが、非常に良いことだと思う。(27:31)
阿部:特にインフラのプロジェクトに関しては政府のリーダーシップで進めていただいているし、総理による各国訪問の成果も出てきていると思う。最後は民間企業が責任を取って行うという仕組みには変わりはないが、実感として、イニシャルのところで日本国政府が今まで以上に力強く主導してくださっているという事実がある。(28:41)
高野:若干テーマを深めてステークホルダーの議論もしてみたい。政府に対して、「ここは上手くやったけれども、ここはこうして欲しい」といったお話があれば。(29:38)
阿部:今までもやっていただいているが、特にグローバルなプロジェクトで国に力を発揮していただきたいのは標準化等の領域だ。そこがビジネスに影響するケースは多く、各国が自身のポジションを有利にするためのルールづくりに奔走している。その辺は民間企業の努力だけでは限度があるので、日本企業がより競争力を高めた状態で活動出来るよう、今まで以上にサポートをいただける仕組みが出来たらと思う。(30:44)
白川:たとえば今は政府だけでなく日銀のフレームワークも大きく変わっている。どんどん国債を買ってじゃぶじゃぶお金を刷るということではなく、「期待」に大きな影響を与えているという方向になっている。期待は英語で‘expectation’だが、むしろ‘hope’の部分だ。そうした政策は今のところワークしていると思うし、悪い政策でもないとも思う。実際、最近のマクロ経済学における潮流はなんでもかんでも「期待」だ。(31:55)
ただ、期待には危うい部分もある。コントロール出来るものなのか。現在の為替はだいたい95~100円のあいだにあって、それで皆が「100円ぐらいの相場観でやっていたら良いのだな」と考えている。企業としてもそこが安定すると利益が出るし運営もしやすい。しかし実際はそれほど簡単な問題でもない。現在の為替水準では政府が言っているような2%のインフラにはとてもならないからだ。そうなるとさらに期待を高めなければならない。これは鶏と卵で、1ドル100円でも企業がお金を使って国内でも雇用が増えたら良いのだが、そうならなければ、「よし、それなら120円だ」、「駄目だ、140円だ」となっていく。(32:43)
それが期待に影響を与える。しかも期待によって為替をコントロールしなければいけない。お金を刷っている量は世界的に見ても馬鹿馬鹿しいほど増えている。しかしよく考えてみると、これだけお金を刷って、それで100円だ。期待をコントロールして100円になっていると。では100円で上手く行かなかったらどうするのか。120円、あるいは140円になるのか。私のイメージでは「そうです」という答えになる。そうでないとアベノミクスの中央銀行政策は上手くいかないように出来ているから。(33:33)
そこで企業はどうするか。「100円でやっていれば良いの? 120円なの? 140円なの? 円安バブルになったら今度は80円なの?」と考える。期待で上手く行っていると考え過ぎると、最終的には経済のパスが発散的になって収束出来なくなる。これは大きな問題だ。期待を安定させるということはどういうことか、あるいは期待をコントロール出来るのか。日銀も政府も本当に微妙な舵取りを強いられると思う。そうした視点が特にメディアから抜けていると思う。メディアの期待は上にばかり行くが、今は少し戒める局面に入っているのではないか。(34:02)
高野:企業は現在の政策にどう向き合っていけば良いとお考えだろうか。(34:50)
御立:いくつかあるが、まず、現在は為替を中心にボラティリティが高まっているというのが私の受け取り方だ。大きなアップダウンがあってもおかしくない。今はたまたま株も上がっているが、基本的には日本だけでなくすべての先進国が金融をふかしている。市場のボラティリティが高いのは承知のうえで、とりあえず皆走っている訳だ。これは良い悪いではなく、「そういうものです」と。経営者が考えなければいけないのは、そのなかで自分たちがどうするかであって、結局はシナリオが重要になる。(35:17)
過去3年に渡る足元の状況を見て、次の3年を描いて、そして鉛筆を舐めるような中期計画はもう必要ない。シナリオはだいたい分かる。シナリオではないことが起きたときに耐えられるようにすれば、リスクを取ることが出来る。しかしそれが出来ないとこれまでのシュリンクゲームが続いてしまう。私自身はこの4~5年間、グローバルなマルチナショナル企業とともにそうしたリスクマネジメントやシナリオづくりのお仕事をする機会が多かった。そのなかで感じたのだが、特にアングロサクソン系の企業はそれがだいたい出来るようになった。一方、日本企業の皆さんとそうしたシナリオづくりのお仕事をする機会が増えたのは、残念ながら、ようやく足元になってというところだ。ここは正直言って周回遅れだと思う。(36:00)
「リスクを考えているほどリスクを取ることが出来る。想定シナリオがないとシュリンクゲームになる」(御立氏)
冒頭で高野さんから需要というお話もあったが、そう考えると実はこれから黄金の20年になる。この10年間で団塊世代の皆さんが今から65~75歳の医療適齢期に入るからだ。そのあとは介護適齢期。デマンドは圧倒的な勢いで増えていく。ただ、今は分散していて計画経済の状態だから、そこを産業化していく。IT等でビッグデータを使い、規模を拡大して経営出来るようにすればやりようはあると思う。(37:39)
たとえば介護の世界には営業利益率20%以上の企業がごろごろある。介護サービスの世界は護送船団で、最も生産性の低い人が潰れないような値段で決められている。そこをきちんとチェーン化し、住むところと食べるところでやっていけば大きな利益が出る。たとえば特別養護老人ホーム等に関しては税を使った補助もあるので上限規制等がある。都道府県によっては一定以上増やしてはいけない等、真面目にやっている人が儲けることの出来ないような仕組みがある。そこをどう変えていくか。そうしたことを議論していけば勝ちモデルが見つかるのではないか。(38:15)
問題は医療だ。全体で40数兆円ある訳で、日本版NH(日本医療研究開発機構)や医療機器に関するイノベーションが不可欠になる。特に病院。病院と介護施設で36兆円の市場があり、現在、世界トップ20の病院チェーンを見てみると、4位の日本赤十字社、7位の国立病院機構、11位の済生会と、三つの日本勢が入っている。しかし…、失礼な言い方だが、国立病院機構は独立法人化して少し変わったが、他は補助金を貰っているもののチェーン経営等は何もしていない。赤十字社96病院はすべてばらばら。物品の共同調達すらしていない。逆に言うと、やれば変わる。(38:56)
しかし、医療法第一条では「医療は利潤を目的としない」となっており、その建前論で官僚と族議員の方が潰しにくる。そこをどうやって進めるのか。今回、健康・医療戦略推進本部というものが出来た。本部長は総理だ。そこで健康・医療戦略室という室が設置され、室長は菅官房長官が務めている。「これは俺たちがやるぞ」と言っている訳だ。そこに民間側から「こうすれば良くなる。このビジネスをやらせてくれ」というアイディアを持って行けば、混合医療や株式会社化の議論を抜きにしても取れるものはあると思う。特にデータを使っていけば医療はすごく良くなると思う。(39:39)
高野:阿部さんはどうだろう。アドバイスや思い入れのようなものがあれば。(40:32)
阿部:今は色々な問題点があると思うし、当然、経営にあたってリスクが存在しない領域はないと思う。御立さんがご指摘された点について言えば…、「我々はそれほど遅れていない」と自分では思っているが、いずれにせよリスクマネジメントは経営の根幹であり、極めて重要なファクターだ。従って、当然ながらアベノミクスでもリスクマネジメントは考えていただいていると思っている。私どもにとってはすべての業種が大事なので、「ここだ」ということは申しあげないでおくが。(40:44)
高野:アベノミクスや日本経済が持つリスクに関してはどうお考えだろう。(42:10)
白川:議論の前提となる世界経済に関して言うと、皆さんは明るい見方をなさっていると感じた。ただ、そのリスクについてはもっと考えたほうが良いと思っている。アベノミクスのリスクではないので趣旨として外れてしまうかもしれないが、リーマン・ショック後、金融業界はシュリンクしている。再規制のためだ。日本にいると「アベノミクスだ」「規制緩和だ」という感覚を持つが、世界では金融規制がかなり厳しくなっている部分がある。国によって異なるが、たとえばリーマン・ショック前の銀行貸出は、アメリカでは10%、ヨーロッパで10%、中国では都市によって違うが30%、伸びていた。それがリーマン・ショック後は金融が引き締めのなかでアメリカでは3%となり、ヨーロッパはマイナスとなっている。日本は驚くことにプラスで、それはそれで良いことなのだが、とにかく金融ピクチャーが相当変わった。基本的に再規制に向かっている。(42:42)
私が大きな違和感を持つのはそこだ。アベノミクスでは、まずは金融緩和というマネタリーショックで経済を伸ばしている。これは最終的には貸し出しが伸びていかないと回らないように、教科書的にはなっている。しかし世界では金融機関に対して「出来るだけリスクを取らないように」と言っている。金融資本主義の世界が変わってきている訳だ。そうしたリスクというか、環境変化について考えておく必要性がある。金融が回らなくなっているから昔に比べるとバブル発生のリスクは落ちている。しかし、そのぶん、景気がなんとなく良くならないといった状態が、恐らく世界的に続く。その点について考えておく必要があるのではないか。(44:08)
御立:リスクに関する白川さんのご指摘の重要だと思う。繰り返しになるが、リスクを考えている人ほどリスクを取ることが出来る。長らくお付き合いのあるクライアントで一部上場企業を一代でおつくりになったある方は、「自分と同じような中小企業を経営していた仲間は、今はもう半分もいない」と仰っていた。「リスクを取り過ぎたためだ」と。で、残り半分はリスクを取らず未だ中小企業のまま。ではその方の何が違っていたかというと、「常に最悪のケースについて必死に考えていた」と仰っていた。「自分が普段いる環境からは見えないリスク情報をどのように得るかが大事だ」と言う。(45:12)
たとえば我々が今最も強く感じているのは地政学リスクだ。世界中で起きていることがサプライチェーンに影響してしまうリスクがある。従って、我々としてもそうした情報をどのようにお客様へ提供するかという課題がある。実は今、自然災害リスクがどんどん高まっている。この20年間、自然災害による損害額は世界的に見ると右肩上がりで増えている。理由は二つ。一つは企業がグローバル化して都市化が進んだために、たとえばタイで洪水があればデトロイトの工場が止まるといったケースが増えている訳だ。また、温暖化の影響かどうかは別として、降雨の状況も変わっていると、かなりの気象学者が見ている。そういうことも考えなければいけない。(46:02)
それを、実際には縮こまるためではなく思い切ってリスクを取るため、どのようにプランに組み込んでいくか。阿部さんがおっしゃる通り商社は日本のなかでも進んでいるほうだと思うが、たとえば商社では30~50年に渡って水を提供するようなインフラ運営のビジネスもある。これ、国有化リスクなんて山ほどある訳だ。そこで海外の水メジャーは何千という項目数からなるチェックリストを持っている。それで、たとえば国有化のリスクにあたっては、「プロジェクトのこの部分で誰が何を見る」といったことがすべてITとともに構築されている。実際、それがないと進まない。そうした備えをきちんとやって初めて収益チャンスが出てくるような状態だ。(46:52)
※後編は1月30日に掲載の予定。
プロフィール
阿部 康行
Yasuyuki Abe
住友商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
学 歴
1977(昭和52)年3 月 早稲田大学 理工学部 修士課程修了
職 歴
1977(昭和52)年4 月 住友商事株式会社 入社 電機部(東京)
1980(昭和55)年11月 米国住友商事会社(ヒューストン)
1983(昭和58)年9 月 米国住友商事会社 ロスアンゼルス支店
1987(昭和62)年6 月 電機第一部長付(東京)
1989(平成元)年4 月 電力プロジェクト部長付(東京)
1993(平成5 )年6 月 米国住友商事会社 ロスアンゼルス支店
1995(平成7 )年10月 米国住友商事会社 ニューヨーク機械・プラント部門
1997(平成9 )年12月 米国住友商事会社 サンフランシスコ支店
2002(平成14)年3 月 ネットワーク事業本部長付(東京)
2002(平成14)年4 月 理事 就任 ネットワーク事業本部参事(東京)
住商エレクトロニクス株式会社 顧問
2002(平成14)年6 月 住友商事株式会社 退職
住商エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 就任
2005(平成17)年4 月 住商情報システム株式会社 代表取締役社長 就任
2009(平成21)年6 月 住友商事株式会社 代表取締 役 常務執行役員 就任
金融・物流事業部門長
住商情報システム株式会社
代表取締役社長 退任
2010(平成22)年4 月 代表取締役 常務執行役員 新産業・機能推進事業部門長
2011(平成23)年4 月 代表取締役 専務執行役員 新産業・機能推進事業部門長
2013(平成25)年4 月 代表取締役 専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道
Hiromichi Shirakawa
クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター、チーフ・エコノミスト 債券本部 経済調査部長
1983年に日本銀行に入行。金融研究所エコノミスト、国際局調査役、金融市場局調査役などを歴任した後、1999年10月に日銀を退職。UBS証券チーフエコノミストを経て、2006年4月から現職。1991年から1994年にかけて経済協力開発機構(OECD)経済総局エコノミスト。米国ワシントン大学(シアトル)経営大学院留学。博士(政策研究)。日本金融学会所属。東京都出身。近著に、『世界ソブリンバブル 衝撃のシナリオ(朝日新聞出版、2011年)、『危機は循環する デフレとリフレ』(NTT出版、2011年)、『消費税か貯蓄税か』(朝日新聞出版、2011年)、『日本は赤字国家に転落するか』(日経新聞出版、2012年)。
御立 尚資
Takashi Mitachi
ボストン コンサルティング グループ 日本代表
京都大学文学部米文学科卒。ハーバード大学経営学修士にて優等で MBA(BakerScholar)を取得。日本航空株式会社にて経営企画部門などを経て、BCG に入社。さまざまな業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A などの戦略策定および実行支援、経営人材育成、組織能力向上等のプロジェクトを数多く手掛ける。BCG Worldwide ExecutiveCommittee (経営会議) のメンバー。国土交通省成長戦略会議座長代理および航空分野委員長(2009-2010)、国土交通省空港運営のあり方に関する検討会座長(2010-2011)、経済同友会副代表幹事、同医療・福祉改革委員会委員長、国連世界食糧計画WFP 協会理事、テレビ東京 「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどをつとめる。著書に、東洋経済新報社『戦略「脳」を鍛える~ BCG流戦略発想の技術』、日本経済新聞出版社『使う力』、『経営思考の「補助線」』、『変化の時代、変わる力』がある。
高野 真
Makoto Takano
ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
2001年10月ピムコジャパンリミテッド入社、2002年4月より現職。ピムコジャパンリミテッド入社以前は、1987年4月大和証券入社後、大和総研へ出向、その後一貫して調査畑を歩む。1991年より米国へ出向、ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコビッツ氏とともに資産運用モデルの開発に当たった。1992年に帰国後、株式ストラテジスト業務を担当。1996年10月よりストラテジストチームヘッド。1997年にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに転じ、投資顧問部門全般のマーケティングヘッドを務めた後、1999年11月より執行役員、企画調査室長を兼務。資産運用に関する論文、著書、メディアへの寄稿多数。1992年度証券アナリストジャーナル賞受賞。ファイナンス稲門会代表幹事、日本ファイナンス学会理事、一般社団法人日本投資顧問業協会理事を務める。早稲田大学および京都大学などで資産運用の実務に関する講義も行う。投資関連業務経験25年。早稲田大学より理学学士号、工学修士号を取得、また同大大学院理工学研究科博士前期課程修了。
Yasuyuki Abe
住友商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
学 歴
1977(昭和52)年3 月 早稲田大学 理工学部 修士課程修了
職 歴
1977(昭和52)年4 月 住友商事株式会社 入社 電機部(東京)
1980(昭和55)年11月 米国住友商事会社(ヒューストン)
1983(昭和58)年9 月 米国住友商事会社 ロスアンゼルス支店
1987(昭和62)年6 月 電機第一部長付(東京)
1989(平成元)年4 月 電力プロジェクト部長付(東京)
1993(平成5 )年6 月 米国住友商事会社 ロスアンゼルス支店
1995(平成7 )年10月 米国住友商事会社 ニューヨーク機械・プラント部門
1997(平成9 )年12月 米国住友商事会社 サンフランシスコ支店
2002(平成14)年3 月 ネットワーク事業本部長付(東京)
2002(平成14)年4 月 理事 就任 ネットワーク事業本部参事(東京)
住商エレクトロニクス株式会社 顧問
2002(平成14)年6 月 住友商事株式会社 退職
住商エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 就任
2005(平成17)年4 月 住商情報システム株式会社 代表取締役社長 就任
2009(平成21)年6 月 住友商事株式会社 代表取締 役 常務執行役員 就任
金融・物流事業部門長
住商情報システム株式会社
代表取締役社長 退任
2010(平成22)年4 月 代表取締役 常務執行役員 新産業・機能推進事業部門長
2011(平成23)年4 月 代表取締役 専務執行役員 新産業・機能推進事業部門長
2013(平成25)年4 月 代表取締役 専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道
Hiromichi Shirakawa
クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター、チーフ・エコノミスト 債券本部 経済調査部長
1983年に日本銀行に入行。金融研究所エコノミスト、国際局調査役、金融市場局調査役などを歴任した後、1999年10月に日銀を退職。UBS証券チーフエコノミストを経て、2006年4月から現職。1991年から1994年にかけて経済協力開発機構(OECD)経済総局エコノミスト。米国ワシントン大学(シアトル)経営大学院留学。博士(政策研究)。日本金融学会所属。東京都出身。近著に、『世界ソブリンバブル 衝撃のシナリオ(朝日新聞出版、2011年)、『危機は循環する デフレとリフレ』(NTT出版、2011年)、『消費税か貯蓄税か』(朝日新聞出版、2011年)、『日本は赤字国家に転落するか』(日経新聞出版、2012年)。
御立 尚資
Takashi Mitachi
ボストン コンサルティング グループ 日本代表
京都大学文学部米文学科卒。ハーバード大学経営学修士にて優等で MBA(BakerScholar)を取得。日本航空株式会社にて経営企画部門などを経て、BCG に入社。さまざまな業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A などの戦略策定および実行支援、経営人材育成、組織能力向上等のプロジェクトを数多く手掛ける。BCG Worldwide ExecutiveCommittee (経営会議) のメンバー。国土交通省成長戦略会議座長代理および航空分野委員長(2009-2010)、国土交通省空港運営のあり方に関する検討会座長(2010-2011)、経済同友会副代表幹事、同医療・福祉改革委員会委員長、国連世界食糧計画WFP 協会理事、テレビ東京 「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどをつとめる。著書に、東洋経済新報社『戦略「脳」を鍛える~ BCG流戦略発想の技術』、日本経済新聞出版社『使う力』、『経営思考の「補助線」』、『変化の時代、変わる力』がある。
高野 真
Makoto Takano
ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
2001年10月ピムコジャパンリミテッド入社、2002年4月より現職。ピムコジャパンリミテッド入社以前は、1987年4月大和証券入社後、大和総研へ出向、その後一貫して調査畑を歩む。1991年より米国へ出向、ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコビッツ氏とともに資産運用モデルの開発に当たった。1992年に帰国後、株式ストラテジスト業務を担当。1996年10月よりストラテジストチームヘッド。1997年にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに転じ、投資顧問部門全般のマーケティングヘッドを務めた後、1999年11月より執行役員、企画調査室長を兼務。資産運用に関する論文、著書、メディアへの寄稿多数。1992年度証券アナリストジャーナル賞受賞。ファイナンス稲門会代表幹事、日本ファイナンス学会理事、一般社団法人日本投資顧問業協会理事を務める。早稲田大学および京都大学などで資産運用の実務に関する講義も行う。投資関連業務経験25年。早稲田大学より理学学士号、工学修士号を取得、また同大大学院理工学研究科博士前期課程修了。
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住友商事阿部康行氏×クレディスイス白川浩道氏×ボスコン御立尚資氏「アベノミクスの成長戦略」
後編(G1経営者会議)
スピーカー:
阿部 康行 住友商事株式会社 代表取締役専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道 クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター チーフ・エコノミスト 債券本部 経済調査部長
御立 尚資 ボストンコンサルティンググループ 日本代表
モデレーター:
高野 真 ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
会場:海外のエコノミストやファンドマネージャーも目先の政策は高く評価しているが、中長期的にはやはり少子高齢化があり、労働人口が年間80万人減っていく現実がある。そうした環境でも成長を実現していくためにはどういった取り組みが必要になるのだろうか。子供を産みやすい社会をつくる、移民を受け入れる、女性や老人の活躍を促す等、色々あると思うが。(48:24)
御立:ご指摘の通りで、企業が国内で投資や雇用を増やさない最大の理由は人口問題にある。今は貯めたお金を外で投資しようとしているが、人口問題がある限り、国内ではなかなか投資出来ない。その議論を早くはじめるしかない。ある人口統計学者の推計によれば、今から対策を打つことで2030年までに合計特殊出生率が2.1まで戻ったとすると、1億人の時点で人口減少は止まるそうだ。ただ、少子化対策だけで人口問題を解決するのは難しいだろう。従って女性の経済参画を含めて実質的に働く人を増やす議論が必要になる。また、しつこいようだが、やはり生産性アップの議論も不可欠だと思う。医療だけで出来るとは思わないが。(49:37)
たとえば香港では現在、経済の95%がサービス産業で占められている。製造業の時代に比べると一人当たりGDPはおよそ20倍となったが、そのほぼすべてがBtoBサービス産業だ。たとえば中国の工場における背広づくりのため、あらゆる素材を香港で一度パッケージングして、まとめて縫えば済むようにしている。そういったものを含めてサービス産業化することで儲かる余地はすごくあるのではないか。(50:39)
ただ、人口の議論をもう一つの視点で考えてみると今世紀だけの問題とも言える。国連の最新中位推計によると、世界の人口は今世紀終わりに少なくとも横ばい、最も厳しいシナリオでは減りはじめるとされている。そうするとすべてが相対的になる。世界が右肩上がりで日本だけが高齢化という時代ではなくなるので、長く目で見ると絵が異なってくる。従って若い世代のために「今世紀をどうしのぐか」だけを考えていけば、やりようがあるのではないかという気が個人的にはしている。(51:08)
白川:私としては人口を戻すのはほぼ不可能なので、そこは移民政策しかないと思っている。ただ、どういった人達に海外から来ていただくかという政策がまだ定まっていない。現在は比較的技術や学歴が高い人々、あるいは専門職の人々を中心に来て貰おうとしているが、日本に不足しているのは広く言うところのサービス業全体だ。そこで不足している労働力はおよそ150万人におよぶ。で、たとえば妻に「明日から建設労働者として働ける?」と聞いても「出来ない」と言う。女性の参加率を上げることでカバー出来る業種というのは、私どもの見方では半分もない。基本的には海外から20~30代前後の男性が入ってこないことにはどうしようもない。(52:10)
問題解決は、そうした労働力をロボットないし機械でいかに代替出来るかにかかっている。基本的には技術革新の速度と人が減る速度の戦いだ。私が見ている限り技術革新のほうが遅い。従って「建設業もすべてロボットでやれば良いでは?」と思う。ただ、それが出来ないのであれば20~30代の、いわゆる専門職ではないが技術的には中度といか…、建設でも医療も一定のスキルがいるので、そういう方々に大勢来ていただくしかないと思う。そういう発想を持たないと今は苦しい。女性の就労率や参画率を高めるというのも分からないではないが、たとえば主婦をやっておられる方々にいきなり建設現場で働いて貰うのも無理ではないだろうか。需要のある労働と供給可能な労働の質的ギャップを認識したほうが良いと思う。(53:31)
阿部:ややこしい問題だが、企業人として中長期の展望について言わせていただくと、やはりグローバル市場を見ざるを得ない。ただ…、私はアメリカに15年半以上住んでいたが、他国と比較すると女性が活躍出来る分野といった観点では日本にまだまだ遅れているところもあると思う。その意味ではまだ希望を捨てていない。限られた職種と言えども市場はあると考えている。いずれにせよ、企業としてはグローバルな視点でベストポートフォリオを組んで海外からの配当を増やし、それによって日本に貢献するというのが、まずは我々に出来ることだと思う。(54:58)
会場:チャイナリスクと欧州危機に関するご見解を伺いたい。また、今はテーパリングで大騒ぎしている状況だが、世界における金融緩和の終わり方についてはどのように予測されているだろうか。(56:33)
白川:中国に関して言うと、不動産・建設に絡む政策は5~10年ほどのサイクルで動いている面がある。リーマン・ショック直後に一度相当ふかしており、今はそのノーマライゼーションに入っているということで、もう一度ふかすことはないと思う。従って、不動産市場は緩やかに弱くなっていくのではないか。あと、中国については「不良資産どれほどあるのか」という問題もある。従って、金融システムが本当に安定しているのかという議論と、「何によって再び成長させていくのか」という議論の二つがあるように思う。成長していけば不良資産問題は小さいものになるし、しなければますます不良資産問題は大きくなるという構図だ。で、その成長の源泉ということで、現政権では構造改革の議論が出てきている。ただ…、それも上海特区といった話から農地改革等色々な話があるものの、イメージから申しあげるとやはり構造改革の速度が遅いのだろうと思う。従って、今後はある程度不良資産問題が出てくる可能性がある。(57:00)
で、これは地方政府を巻き込んだ、日本における第三セクターのような問題になっているので、日本の不良資産問題ほど簡単ではないと感じる。ポリティカルな面で難しく、お金を注ぎ込んだ主体が公共的色彩を持っている。従って、不良資産問題は消えないまま、それをコントロールしていかざるを得ない状態が続くのではないか。逆に言えばチャイナリスクというのは大きく暴発するようなものではないと、基本的には思っている。ただ、7%台の成長率が5~6%と、緩やかに落ちていく可能性がある。(58:20)
一方で欧州は、実はマーケットとして最も期待されている。どちらかというと欧州はここからむしろ浮上するという見方が多い。ただ、データはあまり改善しない。財政引き締めの効果が続いているからだ。驚くべきことに南欧等の巨大な財政赤字と経常赤字が黒字になってしまったほどで、債権市場は安定したが、やはり景気はその反動で弱い状態だ。そこでもう一度財政でふかすといった議論はないので、これは自立的景気回復に委ねるしかない。ということで、私はもう一度通貨安戦争が来ると思っている。今まで緊縮してきた財政を拡大出来ないのであれば、欧州も再び立ち上がるためにもう一度ユーロを安くするしかないと。実は私は大変なユーロベアだ。欧州は今後、大幅な金融緩和に入る可能性があると思っている。(59:09)
アメリカは出口が見えそうで見えず、ヨーロッパはもう一度来るということになると、日銀はどうか。90円になったらもう一度金融をふかすと思う。ところが出口等の議論は遠い話だ。私が生きている限り出口があるかどうか(会場笑)。20年ほど先の話ではないか。日本は2020年までにプライマリーバランスを黒字にしようとしているが…、それも難しいと思うが、中央銀行によるエグジットの前提は財政黒字が3~4年続くこと。物価上昇率が2%になったらという話ではなく、「国債の発行がなくなったら止めましょう」と。止める場合も買ったものを売るのではなく持ったまま。そうなると、仮にエグジットを元に戻ることと定義すると、恐らく20年ほどかかると思っている。(01:00:19)
その間に大変なインフレになってしまえばさすがに止めるだろうが、そうはならない。世の中では長い目で見て技術革新が続くからだ。結局、最終的には「どうやって世界的にインフレとしていくの?」という議論になるのではないか。そうなるとどの中央銀行も出ていくことが出来ない。皆国債を持っているがエグジットもなく、強烈なインフレもない。それが基本的な見方であり、中央銀行はとにかく財政をファイナンスしていく、しかしそれがインフレにはならないという、特異な状態が長く続くと思う。(01:01:34)
阿部 康行 住友商事株式会社 代表取締役専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道 クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター チーフ・エコノミスト 債券本部 経済調査部長
御立 尚資 ボストンコンサルティンググループ 日本代表
モデレーター:
高野 真 ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
「人口対策に際しては需要のある労働と供給可能な労働の質的ギャップを認識すべき」(白川)
御立:ご指摘の通りで、企業が国内で投資や雇用を増やさない最大の理由は人口問題にある。今は貯めたお金を外で投資しようとしているが、人口問題がある限り、国内ではなかなか投資出来ない。その議論を早くはじめるしかない。ある人口統計学者の推計によれば、今から対策を打つことで2030年までに合計特殊出生率が2.1まで戻ったとすると、1億人の時点で人口減少は止まるそうだ。ただ、少子化対策だけで人口問題を解決するのは難しいだろう。従って女性の経済参画を含めて実質的に働く人を増やす議論が必要になる。また、しつこいようだが、やはり生産性アップの議論も不可欠だと思う。医療だけで出来るとは思わないが。(49:37)
たとえば香港では現在、経済の95%がサービス産業で占められている。製造業の時代に比べると一人当たりGDPはおよそ20倍となったが、そのほぼすべてがBtoBサービス産業だ。たとえば中国の工場における背広づくりのため、あらゆる素材を香港で一度パッケージングして、まとめて縫えば済むようにしている。そういったものを含めてサービス産業化することで儲かる余地はすごくあるのではないか。(50:39)
ただ、人口の議論をもう一つの視点で考えてみると今世紀だけの問題とも言える。国連の最新中位推計によると、世界の人口は今世紀終わりに少なくとも横ばい、最も厳しいシナリオでは減りはじめるとされている。そうするとすべてが相対的になる。世界が右肩上がりで日本だけが高齢化という時代ではなくなるので、長く目で見ると絵が異なってくる。従って若い世代のために「今世紀をどうしのぐか」だけを考えていけば、やりようがあるのではないかという気が個人的にはしている。(51:08)
白川:私としては人口を戻すのはほぼ不可能なので、そこは移民政策しかないと思っている。ただ、どういった人達に海外から来ていただくかという政策がまだ定まっていない。現在は比較的技術や学歴が高い人々、あるいは専門職の人々を中心に来て貰おうとしているが、日本に不足しているのは広く言うところのサービス業全体だ。そこで不足している労働力はおよそ150万人におよぶ。で、たとえば妻に「明日から建設労働者として働ける?」と聞いても「出来ない」と言う。女性の参加率を上げることでカバー出来る業種というのは、私どもの見方では半分もない。基本的には海外から20~30代前後の男性が入ってこないことにはどうしようもない。(52:10)
問題解決は、そうした労働力をロボットないし機械でいかに代替出来るかにかかっている。基本的には技術革新の速度と人が減る速度の戦いだ。私が見ている限り技術革新のほうが遅い。従って「建設業もすべてロボットでやれば良いでは?」と思う。ただ、それが出来ないのであれば20~30代の、いわゆる専門職ではないが技術的には中度といか…、建設でも医療も一定のスキルがいるので、そういう方々に大勢来ていただくしかないと思う。そういう発想を持たないと今は苦しい。女性の就労率や参画率を高めるというのも分からないではないが、たとえば主婦をやっておられる方々にいきなり建設現場で働いて貰うのも無理ではないだろうか。需要のある労働と供給可能な労働の質的ギャップを認識したほうが良いと思う。(53:31)
阿部:ややこしい問題だが、企業人として中長期の展望について言わせていただくと、やはりグローバル市場を見ざるを得ない。ただ…、私はアメリカに15年半以上住んでいたが、他国と比較すると女性が活躍出来る分野といった観点では日本にまだまだ遅れているところもあると思う。その意味ではまだ希望を捨てていない。限られた職種と言えども市場はあると考えている。いずれにせよ、企業としてはグローバルな視点でベストポートフォリオを組んで海外からの配当を増やし、それによって日本に貢献するというのが、まずは我々に出来ることだと思う。(54:58)
会場:チャイナリスクと欧州危機に関するご見解を伺いたい。また、今はテーパリングで大騒ぎしている状況だが、世界における金融緩和の終わり方についてはどのように予測されているだろうか。(56:33)
白川:中国に関して言うと、不動産・建設に絡む政策は5~10年ほどのサイクルで動いている面がある。リーマン・ショック直後に一度相当ふかしており、今はそのノーマライゼーションに入っているということで、もう一度ふかすことはないと思う。従って、不動産市場は緩やかに弱くなっていくのではないか。あと、中国については「不良資産どれほどあるのか」という問題もある。従って、金融システムが本当に安定しているのかという議論と、「何によって再び成長させていくのか」という議論の二つがあるように思う。成長していけば不良資産問題は小さいものになるし、しなければますます不良資産問題は大きくなるという構図だ。で、その成長の源泉ということで、現政権では構造改革の議論が出てきている。ただ…、それも上海特区といった話から農地改革等色々な話があるものの、イメージから申しあげるとやはり構造改革の速度が遅いのだろうと思う。従って、今後はある程度不良資産問題が出てくる可能性がある。(57:00)
で、これは地方政府を巻き込んだ、日本における第三セクターのような問題になっているので、日本の不良資産問題ほど簡単ではないと感じる。ポリティカルな面で難しく、お金を注ぎ込んだ主体が公共的色彩を持っている。従って、不良資産問題は消えないまま、それをコントロールしていかざるを得ない状態が続くのではないか。逆に言えばチャイナリスクというのは大きく暴発するようなものではないと、基本的には思っている。ただ、7%台の成長率が5~6%と、緩やかに落ちていく可能性がある。(58:20)
一方で欧州は、実はマーケットとして最も期待されている。どちらかというと欧州はここからむしろ浮上するという見方が多い。ただ、データはあまり改善しない。財政引き締めの効果が続いているからだ。驚くべきことに南欧等の巨大な財政赤字と経常赤字が黒字になってしまったほどで、債権市場は安定したが、やはり景気はその反動で弱い状態だ。そこでもう一度財政でふかすといった議論はないので、これは自立的景気回復に委ねるしかない。ということで、私はもう一度通貨安戦争が来ると思っている。今まで緊縮してきた財政を拡大出来ないのであれば、欧州も再び立ち上がるためにもう一度ユーロを安くするしかないと。実は私は大変なユーロベアだ。欧州は今後、大幅な金融緩和に入る可能性があると思っている。(59:09)
アメリカは出口が見えそうで見えず、ヨーロッパはもう一度来るということになると、日銀はどうか。90円になったらもう一度金融をふかすと思う。ところが出口等の議論は遠い話だ。私が生きている限り出口があるかどうか(会場笑)。20年ほど先の話ではないか。日本は2020年までにプライマリーバランスを黒字にしようとしているが…、それも難しいと思うが、中央銀行によるエグジットの前提は財政黒字が3~4年続くこと。物価上昇率が2%になったらという話ではなく、「国債の発行がなくなったら止めましょう」と。止める場合も買ったものを売るのではなく持ったまま。そうなると、仮にエグジットを元に戻ることと定義すると、恐らく20年ほどかかると思っている。(01:00:19)
その間に大変なインフレになってしまえばさすがに止めるだろうが、そうはならない。世の中では長い目で見て技術革新が続くからだ。結局、最終的には「どうやって世界的にインフレとしていくの?」という議論になるのではないか。そうなるとどの中央銀行も出ていくことが出来ない。皆国債を持っているがエグジットもなく、強烈なインフレもない。それが基本的な見方であり、中央銀行はとにかく財政をファイナンスしていく、しかしそれがインフレにはならないという、特異な状態が長く続くと思う。(01:01:34)
「経験スキルのない40代前後の大卒者が増えている。2012年の大企業従事者の平均所得は458万円、自動車組立工の方が473万円」(白川氏)
会場:日本では中間層の喪失という問題がよく指摘される。アメリカでも「1%が総取りをしている」といったことが言われていると思うが、中間層再生の可能性は今後あるのだろうか。これは政府に任せる問題なのか、企業で解決出来る部分があるのかも併せて教えていただきたい。(01:02:33)
御立:大きな問題だと思うが、中間層の喪失とトップ0.5ないし1%が富んでいるという二つの状況は必ずしもイコールではないと考えている。日本では中間層が喪失している一方、トップ1%もそれほど増えていないからだ。この20年を見ると、アメリカでもイギリスでも、そしてドイツですらそうした層は増えているが、日本はそうでもない。あるエコノミクスの方は、「日本は皆が貧乏になった」と仰っていた。(01:03:10)
実際に起きているのは、正規雇用の数が絞られたことで訓練・知識・スキルがないままに40代前後となった大卒者が非常に増えているということだ。マクロで見ると新興国の識字率向上によって世界中でお金が回るようになった。従って、組み立て・加工業は新興国にシフトする傾向は今後数十年変わらない。だとすると、それとは違った形である程度の給料を貰える仕事をつくっていく必要がある。その一つとして、スキルトレーニングを含めたマッチング能力を民間にもっと移していくしかないと思う。今は少子化社会なのに大卒者の数だけが6~7割も増えているが、ホワイトカラーの求人は「失われた20年」のなか、実は30~36万のあいだで横ばいだ。大卒だけが50万人になってしまった。つまり、そもそも大学に行っても無理だという話になる。(01:03:44)
一方、専門学校に行った若者たちの就職率が9割を超えている分野はいくらでもある。手に職をつけたら建設だけでなく食える職は日本にもあるし、アメリカにもある。そこをどのようにマッチングさせるか。恐らく政府だけでは無理だから、民間の力で新しいスキルを身に付けさせ、食えるようにするしかないのではないか。そのうえで技術革新を行い、付加価値の大きな商売を日本に残すという話になると思う。(01:04:53)
白川:私が持っている2012年実績の統計によると、大企業従事者の平均所得はボーナスを含め458万円。で、皆さんは驚くかもしれないが、自動車組立工の方々は同473万円だ。マクロ的に見ると製造業従事者の平均賃金は大企業従事者よりも高い。ただ、今後、コストを下げていかないと戦えない状態になっていくのであれば、製造業もシュリンクする可能性がある。そうするとサービス業で戦っていかなければいけないが、サービス業の賃金は今、本当に低い状態だ。(01:05:34)
従って、いかにして年間所得350万~400万円前後のサービス業をつくっていくかが鍵になる。ただ、私も興味を持って職種別給料データ等を見ているが、まだイメージが湧かない状態だ。医療は大きな可能性を秘めていると思うが、いずれにせよ、サービス業の分野で他にそうした可能性ある業種を見つけなければいけないと思う。私としてはエンターテインメントが可能性ある分野の一つだと思うが。とめどもない話で恐縮だが、とにかく賃金350~400万前後の業種をマクロ的に創出するというのは本当に大変だ。今のところそこが見えにくい。その辺が今後の課題だと思う。(01:06:37)
阿部:人材の有効活用という観点で申しあげると、やはり我々が持つ強みを各部門で生かし、付加価値を加えたうえで中間層喪失等の歪みを取り除いていきたい。立場上、今日はこれぐらいでご勘弁いただきたい(会場笑)。(01:08:10)
会場:アジア各国の方々に、「中国以外で注目しているのは日本だ」と、よく言われる。注目ポイントは、再生可能エネルギーと地方観光、そして先進国としてこれほど高齢化の進んでいる日本がどのように対処していくのかという介護の分野であると。中国を含め、アジアの国々も今後高齢化が進んでいく。だからこそ…、表現としては良くないかもしれないが、そこに大きなビジネスチャンスがあると思う。介護ビジネスがどのような可能性を秘めているかという点について、もう若干、御立さんのほうからお聞かせいただきたい。(01:09:54)
御立:去年のサマーダボスは尖閣直後だったので中国要人との会談がずいぶんキャンセルされたが、今年はすごい数が中国側から来た。で、そこで中国側から最も多く聞かれた質問は介護に関するものだ。大変気にしている。先般、中国で変な法律が通った。「都会に出てきた若者は田舎にいる親に会いに行かないと訴えられる」という法律だ。社会保障制度ではもう間に合わないから「家族でカバーしろ」と。それを法律化せざるを得ないほどのスピードで高齢化が進んでいる訳だ。(01:11:38)
で、彼らと議論をしていて「面白いな」と思ったのだが、日本の介護保険制度は、実は結構良い。世界でも割と早くつくられたものとしてはまあまあだ。ただ、サービス品質の視点が抜けている。需要増に対応して供給増を優先していった結果、護送船団で生産性の悪い人たちも食っていけるように、無理矢理している部分がある。たとえば要介護度認定。それがリハビリによって下がると事業者の収入が減る。つまり、業者さんからすれば要介護度が下がるようなリハビリを真面目にやるインセンティブがゼロということだ。こういう仕組みがいつまでも通じる訳はない。それをどのようにビジネスチャンスとしていくかが重要になる。(01:12:22)
すべてはデータだ。アメリカでは自分でお金を払って入る保険制度だからデータに関して厳しい。「褥瘡がない」「介護度が下がる」といったデータがあると保険料が支払われる仕組みだ。アメリカはそれをすべて民間でやっているので仕組みとして回らないのだが、とにかく日本でもそういうことを、きちんとデータをとったうえで仕組みとして入れ込んでいく。日本の介護保険が上手く出来ている最大の理由は半官半民ということだ。介護そのものは国でやるが、住むところと食事に関しては民間で自由にやって良いと。混合診療という言葉はあっても混合介護という言葉はなく、すでに出来ている。そうした民間にとってのチャンスが全体の6割ほどある訳だ。(01:13:03)
やはり最後はデータ化だ。たとえば見守りサービスということで、ベッドから認知症の人が降りたときにすぐ分かるようなセンサーというものはすでにある。ただ、それをパターン化してビッグデータにしたうえでもっと良くしていく。そうすれば海外へ仕組みとして売ることが出来る。今はセンサーだけを売っている状態だから取ることの出来る付加価値は10ぐらいだが、データを含めていくと100~200取ることが出来るようになる。そうしたデータとの組み合わせでどのような介護サービスを提供していくか。出来ることは大いのではないか。さらにそうすれば予防と医療と介護が繋がっていく。それを官庁が議論すると縦割りになるが、民間がデータを使ってやってしまったほうがよほど早い。そうした視点を持つことがチャンスに繋がると思う。(01:13:51)
高野:最後に比較的ポジティブな話でほっとしているが(会場笑)、最後に御三方へ盛大な拍手をお願いしたい。どうもありがとうございました(会場拍手)。(01:14:44)
御立:大きな問題だと思うが、中間層の喪失とトップ0.5ないし1%が富んでいるという二つの状況は必ずしもイコールではないと考えている。日本では中間層が喪失している一方、トップ1%もそれほど増えていないからだ。この20年を見ると、アメリカでもイギリスでも、そしてドイツですらそうした層は増えているが、日本はそうでもない。あるエコノミクスの方は、「日本は皆が貧乏になった」と仰っていた。(01:03:10)
実際に起きているのは、正規雇用の数が絞られたことで訓練・知識・スキルがないままに40代前後となった大卒者が非常に増えているということだ。マクロで見ると新興国の識字率向上によって世界中でお金が回るようになった。従って、組み立て・加工業は新興国にシフトする傾向は今後数十年変わらない。だとすると、それとは違った形である程度の給料を貰える仕事をつくっていく必要がある。その一つとして、スキルトレーニングを含めたマッチング能力を民間にもっと移していくしかないと思う。今は少子化社会なのに大卒者の数だけが6~7割も増えているが、ホワイトカラーの求人は「失われた20年」のなか、実は30~36万のあいだで横ばいだ。大卒だけが50万人になってしまった。つまり、そもそも大学に行っても無理だという話になる。(01:03:44)
一方、専門学校に行った若者たちの就職率が9割を超えている分野はいくらでもある。手に職をつけたら建設だけでなく食える職は日本にもあるし、アメリカにもある。そこをどのようにマッチングさせるか。恐らく政府だけでは無理だから、民間の力で新しいスキルを身に付けさせ、食えるようにするしかないのではないか。そのうえで技術革新を行い、付加価値の大きな商売を日本に残すという話になると思う。(01:04:53)
白川:私が持っている2012年実績の統計によると、大企業従事者の平均所得はボーナスを含め458万円。で、皆さんは驚くかもしれないが、自動車組立工の方々は同473万円だ。マクロ的に見ると製造業従事者の平均賃金は大企業従事者よりも高い。ただ、今後、コストを下げていかないと戦えない状態になっていくのであれば、製造業もシュリンクする可能性がある。そうするとサービス業で戦っていかなければいけないが、サービス業の賃金は今、本当に低い状態だ。(01:05:34)
従って、いかにして年間所得350万~400万円前後のサービス業をつくっていくかが鍵になる。ただ、私も興味を持って職種別給料データ等を見ているが、まだイメージが湧かない状態だ。医療は大きな可能性を秘めていると思うが、いずれにせよ、サービス業の分野で他にそうした可能性ある業種を見つけなければいけないと思う。私としてはエンターテインメントが可能性ある分野の一つだと思うが。とめどもない話で恐縮だが、とにかく賃金350~400万前後の業種をマクロ的に創出するというのは本当に大変だ。今のところそこが見えにくい。その辺が今後の課題だと思う。(01:06:37)
阿部:人材の有効活用という観点で申しあげると、やはり我々が持つ強みを各部門で生かし、付加価値を加えたうえで中間層喪失等の歪みを取り除いていきたい。立場上、今日はこれぐらいでご勘弁いただきたい(会場笑)。(01:08:10)
会場:アジア各国の方々に、「中国以外で注目しているのは日本だ」と、よく言われる。注目ポイントは、再生可能エネルギーと地方観光、そして先進国としてこれほど高齢化の進んでいる日本がどのように対処していくのかという介護の分野であると。中国を含め、アジアの国々も今後高齢化が進んでいく。だからこそ…、表現としては良くないかもしれないが、そこに大きなビジネスチャンスがあると思う。介護ビジネスがどのような可能性を秘めているかという点について、もう若干、御立さんのほうからお聞かせいただきたい。(01:09:54)
御立:去年のサマーダボスは尖閣直後だったので中国要人との会談がずいぶんキャンセルされたが、今年はすごい数が中国側から来た。で、そこで中国側から最も多く聞かれた質問は介護に関するものだ。大変気にしている。先般、中国で変な法律が通った。「都会に出てきた若者は田舎にいる親に会いに行かないと訴えられる」という法律だ。社会保障制度ではもう間に合わないから「家族でカバーしろ」と。それを法律化せざるを得ないほどのスピードで高齢化が進んでいる訳だ。(01:11:38)
で、彼らと議論をしていて「面白いな」と思ったのだが、日本の介護保険制度は、実は結構良い。世界でも割と早くつくられたものとしてはまあまあだ。ただ、サービス品質の視点が抜けている。需要増に対応して供給増を優先していった結果、護送船団で生産性の悪い人たちも食っていけるように、無理矢理している部分がある。たとえば要介護度認定。それがリハビリによって下がると事業者の収入が減る。つまり、業者さんからすれば要介護度が下がるようなリハビリを真面目にやるインセンティブがゼロということだ。こういう仕組みがいつまでも通じる訳はない。それをどのようにビジネスチャンスとしていくかが重要になる。(01:12:22)
すべてはデータだ。アメリカでは自分でお金を払って入る保険制度だからデータに関して厳しい。「褥瘡がない」「介護度が下がる」といったデータがあると保険料が支払われる仕組みだ。アメリカはそれをすべて民間でやっているので仕組みとして回らないのだが、とにかく日本でもそういうことを、きちんとデータをとったうえで仕組みとして入れ込んでいく。日本の介護保険が上手く出来ている最大の理由は半官半民ということだ。介護そのものは国でやるが、住むところと食事に関しては民間で自由にやって良いと。混合診療という言葉はあっても混合介護という言葉はなく、すでに出来ている。そうした民間にとってのチャンスが全体の6割ほどある訳だ。(01:13:03)
やはり最後はデータ化だ。たとえば見守りサービスということで、ベッドから認知症の人が降りたときにすぐ分かるようなセンサーというものはすでにある。ただ、それをパターン化してビッグデータにしたうえでもっと良くしていく。そうすれば海外へ仕組みとして売ることが出来る。今はセンサーだけを売っている状態だから取ることの出来る付加価値は10ぐらいだが、データを含めていくと100~200取ることが出来るようになる。そうしたデータとの組み合わせでどのような介護サービスを提供していくか。出来ることは大いのではないか。さらにそうすれば予防と医療と介護が繋がっていく。それを官庁が議論すると縦割りになるが、民間がデータを使ってやってしまったほうがよほど早い。そうした視点を持つことがチャンスに繋がると思う。(01:13:51)
高野:最後に比較的ポジティブな話でほっとしているが(会場笑)、最後に御三方へ盛大な拍手をお願いしたい。どうもありがとうございました(会場拍手)。(01:14:44)
プロフィール
阿部 康行
Yasuyuki Abe
住友商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
学 歴
1977(昭和52)年3 月 早稲田大学 理工学部 修士課程修了
職 歴
1977(昭和52)年4 月 住友商事株式会社 入社 電機部(東京)
1980(昭和55)年11月 米国住友商事会社(ヒューストン)
1983(昭和58)年9 月 米国住友商事会社 ロスアンゼルス支店
1987(昭和62)年6 月 電機第一部長付(東京)
1989(平成元)年4 月 電力プロジェクト部長付(東京)
1993(平成5 )年6 月 米国住友商事会社 ロスアンゼルス支店
1995(平成7 )年10月 米国住友商事会社 ニューヨーク機械・プラント部門
1997(平成9 )年12月 米国住友商事会社 サンフランシスコ支店
2002(平成14)年3 月 ネットワーク事業本部長付(東京)
2002(平成14)年4 月 理事 就任 ネットワーク事業本部参事(東京)
住商エレクトロニクス株式会社 顧問
2002(平成14)年6 月 住友商事株式会社 退職
住商エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 就任
2005(平成17)年4 月 住商情報システム株式会社 代表取締役社長 就任
2009(平成21)年6 月 住友商事株式会社 代表取締 役 常務執行役員 就任
金融・物流事業部門長
住商情報システム株式会社
代表取締役社長 退任
2010(平成22)年4 月 代表取締役 常務執行役員 新産業・機能推進事業部門長
2011(平成23)年4 月 代表取締役 専務執行役員 新産業・機能推進事業部門長
2013(平成25)年4 月 代表取締役 専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道
Hiromichi Shirakawa
クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター、チーフ・エコノミスト 債券本部 経済調査部長
1983年に日本銀行に入行。金融研究所エコノミスト、国際局調査役、金融市場局調査役などを歴任した後、1999年10月に日銀を退職。UBS証券チーフエコノミストを経て、2006年4月から現職。1991年から1994年にかけて経済協力開発機構(OECD)経済総局エコノミスト。米国ワシントン大学(シアトル)経営大学院留学。博士(政策研究)。日本金融学会所属。東京都出身。近著に、『世界ソブリンバブル 衝撃のシナリオ(朝日新聞出版、2011年)、『危機は循環する デフレとリフレ』(NTT出版、2011年)、『消費税か貯蓄税か』(朝日新聞出版、2011年)、『日本は赤字国家に転落するか』(日経新聞出版、2012年)。
御立 尚資
Takashi Mitachi
ボストン コンサルティング グループ 日本代表
京都大学文学部米文学科卒。ハーバード大学経営学修士にて優等で MBA(BakerScholar)を取得。日本航空株式会社にて経営企画部門などを経て、BCG に入社。さまざまな業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A などの戦略策定および実行支援、経営人材育成、組織能力向上等のプロジェクトを数多く手掛ける。BCG Worldwide ExecutiveCommittee (経営会議) のメンバー。国土交通省成長戦略会議座長代理および航空分野委員長(2009-2010)、国土交通省空港運営のあり方に関する検討会座長(2010-2011)、経済同友会副代表幹事、同医療・福祉改革委員会委員長、国連世界食糧計画WFP 協会理事、テレビ東京 「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどをつとめる。著書に、東洋経済新報社『戦略「脳」を鍛える~ BCG流戦略発想の技術』、日本経済新聞出版社『使う力』、『経営思考の「補助線」』、『変化の時代、変わる力』がある。
高野 真
Makoto Takano
ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
2001年10月ピムコジャパンリミテッド入社、2002年4月より現職。ピムコジャパンリミテッド入社以前は、1987年4月大和証券入社後、大和総研へ出向、その後一貫して調査畑を歩む。1991年より米国へ出向、ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコビッツ氏とともに資産運用モデルの開発に当たった。1992年に帰国後、株式ストラテジスト業務を担当。1996年10月よりストラテジストチームヘッド。1997年にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに転じ、投資顧問部門全般のマーケティングヘッドを務めた後、1999年11月より執行役員、企画調査室長を兼務。資産運用に関する論文、著書、メディアへの寄稿多数。1992年度証券アナリストジャーナル賞受賞。ファイナンス稲門会代表幹事、日本ファイナンス学会理事、一般社団法人日本投資顧問業協会理事を務める。早稲田大学および京都大学などで資産運用の実務に関する講義も行う。投資関連業務経験25年。早稲田大学より理学学士号、工学修士号を取得、また同大大学院理工学研究科博士前期課程修了。
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動画レポート】住友商事・阿部氏×クレディスイス・白川氏×ボストンコンサルティング・御立氏 アベノミクスの成長戦略(G1経営者会議2013)
http://globis.jp/2646
アベノミクス構想から早1年。賛否両論あるものの、円高修正、株価上昇、消費回復、企業増益など一定の成果が見られる。しかしこれらは第一、第二の矢といわれる金融緩和・財政出動によるところが大きい。より持続的にするためには第三の矢と言われる成長戦略、とりわけ民間の活力をどこまで引き出せるかが鍵となる。アベノミクスの成長戦略、中でも企業成長に焦点をあて、今後の日本国の成長ポテンシャルについて論じる。論者は、構造問題に詳しいエコノミストの白川氏、企業の事業戦略、経営のコンサルティングに携わる御立氏、商社でグローバルなビジネスに携わる阿部氏が語る。(肩書は2013年11月4日登壇時のもの)
スピーカー:
阿部 康行 住友商事株式会社 代表取締役 専務執行役員
コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道 クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター、チーフ・エコノミスト
債券本部 経済調査部長
御立 尚資 ボストンコンサルティンググループ 日本代表
モデレーター:
高野 真 ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
Yasuyuki Abe
住友商事株式会社 代表取締役 専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
学 歴
1977(昭和52)年3 月 早稲田大学 理工学部 修士課程修了
職 歴
1977(昭和52)年4 月 住友商事株式会社 入社 電機部(東京)
1980(昭和55)年11月 米国住友商事会社(ヒューストン)
1983(昭和58)年9 月 米国住友商事会社 ロスアンゼルス支店
1987(昭和62)年6 月 電機第一部長付(東京)
1989(平成元)年4 月 電力プロジェクト部長付(東京)
1993(平成5 )年6 月 米国住友商事会社 ロスアンゼルス支店
1995(平成7 )年10月 米国住友商事会社 ニューヨーク機械・プラント部門
1997(平成9 )年12月 米国住友商事会社 サンフランシスコ支店
2002(平成14)年3 月 ネットワーク事業本部長付(東京)
2002(平成14)年4 月 理事 就任 ネットワーク事業本部参事(東京)
住商エレクトロニクス株式会社 顧問
2002(平成14)年6 月 住友商事株式会社 退職
住商エレクトロニクス株式会社 代表取締役社長 就任
2005(平成17)年4 月 住商情報システム株式会社 代表取締役社長 就任
2009(平成21)年6 月 住友商事株式会社 代表取締 役 常務執行役員 就任
金融・物流事業部門長
住商情報システム株式会社
代表取締役社長 退任
2010(平成22)年4 月 代表取締役 常務執行役員 新産業・機能推進事業部門長
2011(平成23)年4 月 代表取締役 専務執行役員 新産業・機能推進事業部門長
2013(平成25)年4 月 代表取締役 専務執行役員 コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道
Hiromichi Shirakawa
クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター、チーフ・エコノミスト 債券本部 経済調査部長
1983年に日本銀行に入行。金融研究所エコノミスト、国際局調査役、金融市場局調査役などを歴任した後、1999年10月に日銀を退職。UBS証券チーフエコノミストを経て、2006年4月から現職。1991年から1994年にかけて経済協力開発機構(OECD)経済総局エコノミスト。米国ワシントン大学(シアトル)経営大学院留学。博士(政策研究)。日本金融学会所属。東京都出身。近著に、『世界ソブリンバブル 衝撃のシナリオ(朝日新聞出版、2011年)、『危機は循環する デフレとリフレ』(NTT出版、2011年)、『消費税か貯蓄税か』(朝日新聞出版、2011年)、『日本は赤字国家に転落するか』(日経新聞出版、2012年)。
御立 尚資
Takashi Mitachi
ボストン コンサルティング グループ 日本代表
京都大学文学部米文学科卒。ハーバード大学経営学修士にて優等で MBA(BakerScholar)を取得。日本航空株式会社にて経営企画部門などを経て、BCG に入社。さまざまな業界に対し、事業戦略、グループ経営、M&A などの戦略策定および実行支援、経営人材育成、組織能力向上等のプロジェクトを数多く手掛ける。BCG Worldwide ExecutiveCommittee (経営会議) のメンバー。国土交通省成長戦略会議座長代理および航空分野委員長(2009-2010)、国土交通省空港運営のあり方に関する検討会座長(2010-2011)、経済同友会副代表幹事、同医療・福祉改革委員会委員長、国連世界食糧計画WFP 協会理事、テレビ東京 「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどをつとめる。著書に、東洋経済新報社『戦略「脳」を鍛える~ BCG流戦略発想の技術』、日本経済新聞出版社『使う力』、『経営思考の「補助線」』、『変化の時代、変わる力』がある。
高野 真
Makoto Takano
ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
2001年10月ピムコジャパンリミテッド入社、2002年4月より現職。ピムコジャパンリミテッド入社以前は、1987年4月大和証券入社後、大和総研へ出向、その後一貫して調査畑を歩む。1991年より米国へ出向、ノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコビッツ氏とともに資産運用モデルの開発に当たった。1992年に帰国後、株式ストラテジスト業務を担当。1996年10月よりストラテジストチームヘッド。1997年にゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントに転じ、投資顧問部門全般のマーケティングヘッドを務めた後、1999年11月より執行役員、企画調査室長を兼務。資産運用に関する論文、著書、メディアへの寄稿多数。1992年度証券アナリストジャーナル賞受賞。ファイナンス稲門会代表幹事、日本ファイナンス学会理事、一般社団法人日本投資顧問業協会理事を務める。早稲田大学および京都大学などで資産運用の実務に関する講義も行う。投資関連業務経験25年。早稲田大学より理学学士号、工学修士号を取得、また同大大学院理工学研究科博士前期課程修了。
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動画レポート】住友商事・阿部氏×クレディスイス・白川氏×ボストンコンサルティング・御立氏 アベノミクスの成長戦略(G1経営者会議2013)
http://globis.jp/2646
アベノミクス構想から早1年。賛否両論あるものの、円高修正、株価上昇、消費回復、企業増益など一定の成果が見られる。しかしこれらは第一、第二の矢といわれる金融緩和・財政出動によるところが大きい。より持続的にするためには第三の矢と言われる成長戦略、とりわけ民間の活力をどこまで引き出せるかが鍵となる。アベノミクスの成長戦略、中でも企業成長に焦点をあて、今後の日本国の成長ポテンシャルについて論じる。論者は、構造問題に詳しいエコノミストの白川氏、企業の事業戦略、経営のコンサルティングに携わる御立氏、商社でグローバルなビジネスに携わる阿部氏が語る。(肩書は2013年11月4日登壇時のもの)
スピーカー:
阿部 康行 住友商事株式会社 代表取締役 専務執行役員
コーポレート・コーディネーショングループ長
白川 浩道 クレディ・スイス証券株式会社 マネージング・ディレクター、チーフ・エコノミスト
債券本部 経済調査部長
御立 尚資 ボストンコンサルティンググループ 日本代表
モデレーター:
高野 真 ピムコジャパンリミテッド 取締役社長
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