2014年6月16日月曜日

東日本巨大地震~僕達に出来る事~

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東日本巨大地震~僕達に出来る事~

[2011年3月16日]



未だに被害の全貌が見えない東日本巨大地震。「何かしなければ」。そんな思いにかられるが、被災地に直接赴くことはできない。未曽有の震災に対して、私たちは何が出来、何をしなければならないのか。震災から3日目の3月14日、各界のリーダーが集い、真剣な議論を交わした。



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登壇者一覧(順不同)
加治慶光(内閣官房国際広報室国際広報戦略推進官)
夏野剛(慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授)
湯本優(ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事)
田島麻衣子(世界食糧計画 ラオス事務所)
小澤隆夫(シビックフォース理事)
田坂広志(多摩大学大学院教授)
世耕弘成(自民党衆議院議員)
藤沢久美(シンクタンク・ソフィアバンク副代表)
西川潔(ngi group株式会社取締役ファウンダー)
井上英明(株式会社パーク・コーポレーション代表取締役)
土屋聡(世界経済フォーラム日本代表)
梅澤高明(A.T.カーニー株式会社日本代表)
福山哲郎(民主党参議院議員 内閣官房副長官)(電話出演)
堀 義人(グロービス経営大学院学長)
佐藤大吾(NPO法人ドットジェイピー理事長)(モデレーター)

司会:会に先立ちまして、このたび、3月11日に発生致しました東北地方太平洋沖地震に際しまして、その被災者の皆さまに対して黙祷を捧げたいと思います。皆さまご起立いただけますでしょうか(全員起立)…、黙祷。

 ありがとうございます。ご着席くださいませ。それでは早速ですがイベントを進行していきたいと思います。まずはグロービス代表の堀さんのほうから一言、挨拶をさせていただきます。

堀義人(以下、敬称略):皆さま、本日はお越しいただきましてありがとうございます。私自身も今回、地震のあとの津波と炎…、震災の様子を見ていてもたってもいられない気持ちになりました。多くの日本人が同じ気持ちでいたと思います。しかし、一方で僕ら自身は自衛隊を動かせる訳でもないですし現地に飛ぶことも今は出来ない訳です。それならば東京にいて何が出来るのかと。そういった真剣に考えたいという気持ちが良い形になれば、被災者の皆さまに対しても何か出来るのではないかという気持ちがあります。今回、シビック・フォースの小澤さんとかですね、それから、あるいはですね、ジャストギビングの湯本さんのような方、あるいは今官邸に入っている加治さんとかですね。可能な限り官民一体で、党派を超えてという形にしたいと思っています。そのなかで、今回は、Twitterで来たご意見もありますし、僕らに何が出来るのかを考えて、個人個人が前向きになっていくような、そういったディスカッションが出来たらと思っています。

 基本的には批判ではなく提案をしていこうと。批判をしても何も生まれない。そりゃ言いたいこといっぱいあるかもしれない。この場で批判は慎んで、僕らは何が出来るのかを提案をしていきながら、一方ではその提案をもとに行動していくと。そういう形にしたいという風に思っています。私自身は現時点では、そういった情報のハブとして、多くの方に、困っている方と、それから実際に支援を実施出来る方を繋ぎながら、夢と勇気を与えるような、そういったコミュニケーションをしていきたいと思っていまして、みんなでですね、日本を良くするために何が出来るかという議論を出来たらと思っております。よろしくお願い致します。(会場拍手)

佐藤大吾氏(以下、敬称略):普段、私の肩書きはNPO法人ドットジェイピーの佐藤でございますとだいたい紹介させていただくんですけども、今日はですね、チャリティ・プラットフォームの代表、およびジャストギビングCOOのという形でのお話を、していきたいと思っております。今日はですね、来場者の皆さん、交通機関がままならないなか、お越しいただいてほんとうに感謝申しあげます。および登壇者の方々、ほんとに急遽、お願いをしてこれだけたくさんの方にお集まりいただきましたこと最初に感謝を申しあげたいと思います。ありがとうございます。

 正直申しあげまして、レクチャーも、事前レクチャーも出来ておりませんので、どのような進行にしていこうのかという打ち合わせ出来ておりません。ただ、堀さんと私とでちょっと少しだけお話をさせていただいたのは、今日は、「我々、何が出来るだろう一体」ということに関しまして、大きなブレインストーミングが出来ればいいね」という、こういうようなお話になりました。

 なので、まとまりのあるような筋書きのあるようなストーリーは今回一切ありません。ほんとにガチンコのディスカッションということになってしまいます。お聞き苦しいこととか、見苦しいことがあるかもしれませんが、ご容赦いただきたいと思います。とにかくみんなで前を向いて、歩き出そうということだけが共通点かなと思っております。

 まずですね、せっかくお越しいただきましたので、ちょっと今回、お立場、お年齢、ちょっと無視させていただきましてですね、近いほうから順番にちょっとご紹介させていただきたいと思っております。さっそく、手前にお越しいただいております、加治さんのほうから、自己紹介と、少しこの震災に触れていただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

我々が直面する戦いは厳しく長いものになる(加治)


加治慶光氏(内閣官房国際広報室国際広報戦略推進官 以下、敬称略):はい。今内閣官房の内閣広報室というところで参議官をやっている加治と申します。仕事の内容は国際広報と、それからIT広報の担当で、1月から内閣にまいりました。それまでは日産自動車で電気自動車をやっていたんですけども、官民一体となって、日本の未来に貢献出来たらと思い、一般公募で入りました。わずか2カ月にしてこういう状況になりまして、一生懸命やっておりますけれども、ぜひ今日は、勉強が出来て、帰っていけたらと思っていております。

佐藤:加治さん途中で今日は退出ということで、今、内閣にいらっしゃいますんで、今日ほんとにお忙しいところお越しいただいて感謝なんですが、今、官邸どんな状況ですか?

加治:非常に皆さん頑張られています。私も3日ぐらい泊まっているんですけれども、非常に頑張られています。特に最近は[#edano_nero]っていうハッシュタグが付いてですね。Twitterで、応援されていらっしゃるように、まあ枝野さん、それから菅首相、非常に頑張られていますし、政府一体となって頑張っています。もちろんこれだけ大きな出来事ですので、至らないところもいっぱいありますけども、出来るだけですね、サポートいただければという風に思っております。刻々と状況が変わりますので、今、原子炉がどうなってるかとかですね、何人ぐらい行方不明者がいるのかとか、ちょっと申しあげられる感じじゃないないですけれども。とにかく頑張りたいと。

佐藤:報道もこまめにやっていただいているので、我々も状況はだいたいは伝わってくると思っています。せっかくなので、ちょっと加治さんだけ長めにお聞きしてますが、今日お集まりの国民であったり市民であったり、一般の人たちに対して、我々に対して、何か、「こういうことをやって欲しい」とか、ありますかね。

加治:そうですね、堀さん最初に仰られてましたけど、やはり、非難をしている暇は、もう我々にはない。建設的な意見をいただければという風に思います。具体的にはですね、皆さんからアドバイスいただきまして、Twitterをですね、昨日立ちあげました。すでに14万人ぐらいフォロワーがついています。

佐藤:1日で?

加治:1日です。大変なトラフィックをいただいておりまして、その延長戦上に[#edano_nero]というハッシュタグも出来たりして…、それがYahoo!のニュースにもなっていますよね。まあ枝野さんは象徴的ですが、政府のほうも少しずつ応援していただいているような状況でして、本当にありがたいことだと思っております。私のほうから皆さまにまずお伝えしたいことは、これから我々が直面する戦いは厳しく長いものになるということです。しかしこれは、新しい日本のあり方を世界中に提示するいい機会だとも思っております。実際、『Financial Times』や『The Wall Street Journal』といった海外メディアの我々を見つめるまなざしも、大変暖かく、かつ尊敬に満ちたものです。

佐藤:ありがとうございます。それではお隣の夏野さんにマイクを移したいと思いますが、今、この震災に際して。一言いただけますでしょうか。

今、まさに日本が試されている(夏野)


夏野剛氏(慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 以下、敬称略):慶応大学の夏野でございます。今、まさに日本が試されていると思っています。私はずっと、日本はあらゆる意味で世界のベンチマークになるのではないかという意見を持っていました。僕自身は“ケータイガラパゴス”の原因とも言われていましたが、しかし『iPhone』間違いなく日本のケータイを見習って出来たものです。そして今回はどうか。この災害が起こって、世界が一番驚いているのは「秩序が保たれている」、「暴動が起きない」、「皆で助け合っている」…、こういったことに世界中が感動している訳ですよね。すごいことを僕らは証明…、僕らというか被災者の方が特に証明している訳です。ならばそれを世界のベンチマークとするため、被災地ではない場所でどんなことを行っていくべきか。そういったことも含めて考えていかなければいけないと。

 日本ではなかなかボランタリズムが浸透しないだとかね、寄付文化が浸透しないだなんて言っていたのはいつの話だというぐらいですよね。皆が今Twitterなどを使っていて、ホリエモンががんがん義援金を募集したりしている訳ですよ。その意味で新しい時代を世界にアピール…、まあアピールするというのも変ですが、新しい姿、素のままの姿、日本のこの姿を世界に見せること。それが、実は廻りまわって世界貢献にもなると思っています。そんな意味でも我々に出来ることはもっともっとあるのではないかと思っております。

佐藤:ありがとうございます。本当にその通りですね。ちなみに今日はゲストが多いので最後までマイクを廻すのに時間かかりますから、途中で「今のご発言にちょっと追加したい」とか「ちょっと言わせろ」ということがありましたら手を挙げていただければと思っていますので、ぜひお願い致します。

 今夏野さんが仰っていただいた、寄付文化がないと言われていた日本でこれだけすさまじい勢いの寄付が集まりつつあるということ。たとえば僕も出掛けに少し見てきましたけども、たとえばYAHOO!ボランティア、YAHOO!基金というのが、もう、震災発生直後に立ちあがりまして、初日、終わりかけのときに私が拝見したら、11日時点ですね。600万円だったんですよ。それが、さっき見たらもう6億円になっていました。金額だけではないですども、人数が40何万人かが寄付している状態になっておりました。たったまだ48時間しか経過してない状況でそういう風なことで、まあ、すごく迅速な動きということがございました。あ、世耕さんもいらっしゃっていますね。ぜひお入りください。世耕さんも、あの、ご参加いただけるように、すいませんが椅子の用意だけお願いできますか。

 手前味噌ですけども、後ほど発言します湯本が代表をしているジャストギビングのほうもですね、ちょっと参考までに数字を言いますと、ちょうど1年間、設立されて1年間経ったんですけども、その時点で実は集まった寄付金が3200万円でした。3200万円。これはどれぐらいの数字かというと、イギリスの…、非常に寄付大国と言われているイギリスのジャストギビングでは、1年目1500万だったんですね。かの寄付大国イギリスでも。2倍のペースなので、日本やっぱすごいねと言われていたんですが、このタイミングで、今日現在、出掛けに見てくると、1億2000万円という風なことになっている。4倍です。

 今何が出来るかなということを考えたときに、現場には行けない。官邸にも確認して、やっぱり現場に入るのはちょっと、今は止めて欲しいと言われました。なので、「ボランティアに行きたいんだけど」という声は、今のところ拾うことは出来ない。今何が出来るんだろうというときに、物資を送る。だからラーメンを送る、食べ物を送るとか、着物を送るってこと色々あるんですが、これも、ほんとにニーズがどれぐらいあるのかが分からないのなら、ちょっとニーズを確認してからのほうが良さそうだという声も、いただいております。

 じゃあ、今、とりあえず今、ただちに出来ることというのは寄付を集めること。これもボランティアのひとつの形です。ちょっと補足として長くなりましたが、申しあげさせていただきました。それでは隣の湯本はそれを受けてですね、ジャストギビングと、あとスポーツ選手の最近の動きについて少し触れていただきたいと思います。自分が何もんかも少し触れていただけますか。

3日間で1億円もの寄付が集まった(湯本)


湯本優氏(ジャスト・ギビング・ジャパン代表理事 以下、敬称略):ジャストギビングジャパンの代表を務めさせていただいております、湯本優と申します。よろしくお願いします。僕は元々とトライアスロンをプロとしてやってまして、ま、その過程、途中でですね、スポーツ医学に興味を持って、順天堂大学に行って医師免許をとったんですが、スポーツに何か恩返しをしたいという思いで、ジャストギビングに関わらせていただいて、今佐藤が説明したように1年強越えたところで、このようなことがありました。

 先ほどの佐藤のご説明と重複してしまいますが、1年ちょうど3月9日で越えた時点で、3500万程度。それがですね、今、アップデートしますと、今この時点で1億3500万円ほどと、約この3日間で1億もの寄付が集まった状況です。実はその金額以上にですね、地震が起きた直後から、著名人の方々、スポーツ選手、会社企業の経営者の方々、そしてもちろん一般の多くの方々から、どこに寄付をしたらいいか分からない、どこに安心して寄付が出来るのかとか、どういう方法が出来るのかっていうのは、我々のもとにもすごく寄せられてですね。ひとつのプラットフォームとしてジャストギビングというプラットフォームを活用いただいて、今、1億円ほどの金額が集まっているという状況にあります。

 ジャストギビングをご存知の方は分かると思うんでけども、もともと、何かに寄付をしたいという思いがあったときに、もちろん自分のポケットから500円を入れたり、もちろん1万円を入れたりってことが出来るんですけども、そうではなくて身の回りに、自分の周りにいる友人であったりご家族であったりに声をかけて貰って、それが10人の人に声を掛けると5万円になって、より多くの社会貢献が出来るというスキームなんです。それがTwitterとかFacebookと連携していることもあって、一昨日土曜日の時点で堀江さんがチャレンジしていただいて、わずか6時間ぐらいで、1千万円を超えるような、そういった成功モデルが出来たりして、今も浜崎あゆみさんが大々的にチャレンジをして下さっています。ほんとに各方面からお声をいただいている状況でございます。

 そういう動きのなかで感じたのはですね、まあ皆さんが「何かをやりたい」と思っているけれども、どこに何をしていいか分からない、みんな困っている状況。今日この会の趣旨だとは思うんですが、やっぱりその1回情報を整理して、どういうステップで東京にいる僕らは何をやってかなきゃいけないかということを、真剣に考えるべきだし、それを、より多くの人たちに、分かりやすく伝えていく必要があるんじゃないかなというのを、強く感じております。

世界中から注目されている(田島)


佐藤:ありがとうございます。それじゃお隣にまわしたいと思いますが、これも、またこれまた急遽登壇いただきましたが、WFPのラオスで勤務されている田島さんです。たまたま帰国中にこういう状態に遭われましたという状況で、せっかくなんで、この支援現場とか、国際的にこういうことをどういう風に見てらっしゃるのかをご意見いただきたいと思って、一言お願い致します。
田島麻衣子氏(世界食料計画(WFP)ラオス事務所 以下、敬称略):田島と申します。現在、国連で働いているんですけれども、過去7年半、海外で暮らしていて、そのうちの半分以上はラオスという国で過ごしました。ラオスで4年間働いて、一応一旦区切りを付けようと思って帰ってきたときに、地震に遭いました。まだ秩序がここに存在していることに驚きました。私が行っていたアフリカやアジアの国でこれが起こったらまずこの秩序はないだろうと、ほんとに心から思っています。

 もうひとつ言いたいことは、今、世界中から注目されていますね。88カ国が日本に対して支援をすると表明している。決して私たちは、孤独な戦いを強いられている訳じゃなくて、世界中の国々が日本のことを支援しようと思っているというのは非常に心強い。

災害のプロに後ろにつくバックアップチームが必要(小澤)


佐藤:ありがとうございます。続いて公益社団法人シビックフォース、国内災害支援専門チームのシビックフォースという団体の理事を務めてらっしゃる小澤さんでございます。昨日、ヘリコプターでまず現地に赴き、ほんとにどういう状況なのかについてご覧になったので、少しそのことにも触れてお話をお願いします。

小澤隆夫(シビックフォース理事 以下、敬称略):はい、ご紹介いただきました小澤でございます。シビックフォースというですね、災害支援の専門チームを持っております。まさにこういう初期段階のレスキュータイミングにおける、災害支援のプロというチームになりますので、国際的な…、この前のハイチも行っていたんですけども、そういう人間が集まっている団体でございます。今回はですね、災害が起きまして、すぐにヘリコプター3機をチャーターしておりますけども、昨日現場に入りまして、被災者の方々のニーズの調査をしてきました。

 私が行ってきたのは被害が甚大だと言われている石巻市、それから気仙沼市ですね。上空から福島からずっと北上しましたが、湾岸地域をヘリコプターで飛んで来たんですけども、360度俯瞰で見た場合、本当に被害が甚大です。海岸から2キロ3キロ先まで水が入っていまして、そのほんとに海岸の近い部分に関して言うと、建物がない。報道で知る通りですが、実際、上から見ても人が見えません。どこに避難されているのかがぜんぜん分からない。石巻、気仙沼というのは、リアス式海岸なので、湾に小さな集落がたくさんあるんですけども、これはもう町がまったく消えてしまった状態です。そこにどのように物資を届けたらいいのか把握しきれない状態。それから気仙沼は、報道でご存知の通りかなり被害が大きいです。ただし、事前の非難が相当うまくいったということで、高台のほうにかなり逃げられています。結果的に26カ所で2万3千人ぐらいの避難民が出てくんですけども、逆にこんどは食料がまったく足りていないという。

 それからヘリコプターを今飛ばしているんですけど、今度はジェット燃料がない。政府にお願いをしたり、国交省にお願いしたりという形で燃料を集めてはいるんですけども、かなりシビアな状態です。いてもたってもいられない。現場に入りたいという方、多数ご要望いただいているんですけど、今は余裕がない。恐らく物資に関しましても、ほんとに必要なものを乗せてあげないと、すぐに一杯になってしまいます。恐らく今一番重要なのは毛布と言っていました。それから赤ちゃんのミルクと、おむつがぜんぜんない。赤ちゃんが実際どこにいるのか分からないので配給のしようがない。取りに来てくれない限り分からないという状態でやっている。

 とにかく、堀江さんとか浜崎あゆみさんとかが、だいたい3日間で1億ぐらいですかね。いきなり振込ンで下さる状態ですから、その資金を活用して、ヘリコプターを飛ばして現場に入っていくという状態です。

 僕自体は災害救助のプロじゃないんですね。IT業界の人間です。やはり、災害のプロに後ろにつくバックエンドというか、バックアップチームが必要です。僕はITのチームなのでまずITを活用したお金集め。それから一番現場で足りないのは情報なんですね。我々みたいなNGOも情報が足りない。もうひとつは現場の被災者も情報がない。ヘリコプターで降りますと、「今どこを飛んできましたか?」と。「私の住んでいるどこどこ町の状態どうでしたか?」。携帯も通じないし電気もないしテレビもありません。ほんとに不安で、皆さんヘリコプターのほうに集まってくる。僕が「残念ながら分からないんです」と言うと、そこで泣き崩れるという状態を目の当たりにしていますと、情報の重要性ということを痛感させられます。どんな物資が必要だっていうのも情報ですし、誰が生きている、どこにいるというのも情報なんですね。

 正しい情報をいかに正しく伝えるかという部分は、東京にいらっしゃる方でも出来ると思うんですね。その、誤った物資を誤った情報で集めてしまっては元も子もございません。で、そういったあたりで皆さまがたのお知恵を拝借出来ればなと思っております。よろしくどうぞお願いします。

佐藤:ありがとうございます。田坂さんのほうにマイク移したいと思います。よろしくお願い致します。

ここからもう一度、素晴らしい日本をほんとにつくろう(田坂)


田坂広志氏(多摩大学大学院教授 以下、敬称略):多摩大学の田坂です。実は1時間ほど前に堀さんからお誘いをただきました。これほど重要なセッションと知らず、壇上で何かお話をさせていただく予定もないままやってきたところでございます。出来事の巨大さに私自身、すぐに何かを申しあげられるようなところでもないのですが…、今はただ、皆さまひとりひとりのお話をひとつひとつ、本当にその通りだと頷きながら拝聴しておりました。それでも敢えて一言「今、我々に何が出来るのか」を問われたのならば、それは“思い”を定めることなのだろうと。こうしている今も、報道上では亡くなっていかれた方々の数が増え続けています。恐らく数千人は超えてしまわれるのだろう。一瞬にして失われてしまったこれほどたくさんの命を、私は無駄にしたくない。それならば、今我々がすべきことは何でしょうか。先ほどご発言がありましたけれども、何年か先…、もしかしたら10年を越える歳月の先なのかもしれません。しかし、いつかこの言葉を口に出来るという覚悟を定めるべきである。「あのとき、この日本という国の素晴らしい再生がはじまった」と。「あのとき、我々はほんとに素晴らしい日本をつくろうと、もう一度深く心を定めたんだ」と。

 数千人の方が一瞬にして命を失っていかれたことは、私のなかで正直、どうしても言葉にすらなりにくい重さを持ってしまいます。それでもひとつの大切な表現で申しあげるならば、日本語でよく使われる「共感」という言葉をお伝えしたい。共感という言葉の意味について私よく申しあげるのですが、これは憐憫という意味でも同情という意味でもありません。共感とは目の前にいるひとりの方の姿が自分の姿のように思えること。目の前にいるひとりの方の人生が自分の人生のように思えることだと考えています。私たちは今、たまたまこの場所に生き、こうして顔を合わせています。しかし、もしかしたら我々が同じ運命をたどっていた可能性は大いにあるのだと思う訳です。私は被害を伝えるテレビを観ているのが辛い。災害直後は自然の猛威を伝える映像・写真ばかりでしたが、何日か経つと残された方々の声がそのまま伝わってくるんですね。皆さんも目にしているかと思います。旦那さまと娘さんふたりを亡くされ、「もう私ひとりになっちゃった」と仰っていた方。奥さまの車を探したすえ、見つけて“しまった”と表現しておられた男性もいました。「この車に家内が乗っていた」と。その車にはもう誰もいらっしゃらない。津波とともにどこかへ運び去られてしまったのかもしれません。運び去られてしまったあとの姿かもしれないその車を、「見つけて“しまった”んですよ」と嘆いていらっしゃる。そういった方々ひとりひとりの姿を、我々は胸に刻むべきなんです。「我々の姿なんだ」と。ほんの一瞬だけ人生の偶然が違ったら、同じ結末を与えられていたんだとね。我々が今、すべきことは山ほどあります。ただ、そのなかでも私はひとりの微力な人間として、まずはその思いを深く定めてみたいと思っています。

 そして先ほど加治さんのお言葉にもあったと思いますが、やはり長い闘いがはじまるのだと。単に災害からの復興だけではない。ここからもう一度、素晴らしい日本をほんとにつくろうと。数十年の戦いになろうと、その覚悟を我々がもし本当に定めることが出来るなら、もしかしたら、亡くなられてしまった方々の命を無駄にしないで済むのかもしれない。大変偉そうなことを申しあげてしまっているのかもしれませんが。この場で今、我々が何をすべきかと聞かれて、あまり気の利いたことは申しあげられません。ただとにかく、毎日流される映像を目に焼き付けようと。あの方々の姿を絶対に忘れず、我々が生きるうえでの原点にしていこうと。そのことを改めて申しあげたいと思います。

佐藤:ありがとうございます。本当に言葉もない次第です。普段であれば「YES!ナイト」というのはなんというか、僕自身もかなり明るく「明日に向かっていこう」といった雰囲気に持っていくのですが、今は何より、下っ腹にぐっと力が入るという…、身の引き締まる思いが致します。

 先ほど小澤さんからヘリコプターのお話をしていただきましたが、実は私も発生翌日に現地へ行って拝見してきました。ただ、私は着陸出来なかったんです。なぜなら緊急支援や災害支援というのはフェーズがあって、今は「初動期」なんですね。つまり発生直後です。それからしばらく経って復興期や復興支援期というフェーズになりますが、今はまさに初動期。最優先されるのはやはり人命救助です。そういった文脈から、今は大変恐縮ながら一般ボランティアの方々にはご遠慮いただきたいと。自衛隊、訓練されたNPO/NGO、警察、それから病院関係者…、今はそういった方々にお任せするタイミングです。ですから、はやる気持ちは分かりますが少しだけご辛抱くださいと。

 ただ、そうは言いながらも私どもはNPOに関わる人間として現地にいってきたという形です。一番ひどいところに救助の手を差し伸べたいと思ったのですが…、もう町がないんです。完全に水没してしまっていた。たとえばある被災地にはイオンさんがお店を持っていらしたんですね。で、当初、通信手段が絶たれていたのですが、「使えるのであればどうぞ使ってください」と仰っていただけていました。ですからそれをあてにしながら、テントを張って「困っている方がいたらそこに入って貰おうじゃないか」と計画していました。しかし実際に行ってみると、もう町が水没してしまっていた。イオンさんはもちろんありましたが、とにかく人の姿も見えない。水の上にぽつぽつと家が浮かんでいたりするだけです。あとは滑走路ぐらい。宮城には空港もありますが、空港の滑走路だけが海の上に浮かんでいる状態でした。海上に滑走路を建設したのかと錯覚するような世界でとても着陸出来る状況ではありませんでした。それでヘリコプターの燃料も続かず、まあ…、いわばすごすごと引きあげざるを得なかった。作戦立て直しでした。そのあと第二陣として小澤さんが行かれて「ここが求められている場所だ」と、支援の現場を発見された訳です。

 これ、私自身として恥ずかしながら自分の心情を吐露しますと、正直、茫然自失でした。なんて言うのか…、とにかくどこから手を付けていいのかまったく分からず、最初は無力感ばかりたずさえて帰ってきた状況です。もちろんそれでもやることはある訳ですから、目下、ジャストギビングやチャリティ・プラットフォームの仕事を一生懸命やっているという状況ですね。少しでも皆さんの声を積み重ねて、現場に届ける。そういうことを今やっている次第です…、すみません、私の話になっていましたが。田坂先生のお話をいただいまして「そういう気持ちでおります」ということを申しあげたくなりました。

 それではお隣の世耕さん。今日はお忙しいところ本当にありがとうございます。少々長めでもぜひお話をいただければと思います。よろしくお願い致します。

政治的なぶつかり合いを一旦中止しようと、即座に決定した(世耕)


世耕弘成(参議院議員 以下、敬称略):自由民主党の世耕弘成でございます。ここへ来る直前まで党のほうでミーティングをやっておりまして、到着が少し遅れました。申し訳ありません。今、この場へ政治家として来ることが良いことなのかどうか。これは色々と悩みました。しかしやはり今、政治がどう動いているかを皆さんにお伝えする最低限の義務はあるだろうと。ここにお集まりの皆さまはまさにNPO/NGOの最前線で動いていらっしゃるリーダー的な方々です。そういった方々と政治との連携は、やはり探っていく必要があるのではないかという思いからこちらにやって参りました。

 地震が発生した3月11日ですが、午後3時前という時間帯…、永田町ではまさに自民と民主がガチンコでぶつかっている最中でした。もう1週間もあれば退陣に追い込めるのではないかというほどの非常に高いテンションでぶつかっている状況だったんです。しかし我々自民党は地震発生後、ただちに「これはもう大変な国難である」と。すべての政治的なぶつかり合いを一旦中止しようと、即座に決定させていただきました。そのなかで我々は、大きく分けて三つの動きをしております。

 ひとつは政治的な休戦を実現させ、政府が完全にフリーハンドな状態でこの国難にしっかりとあたることの出来る環境を整備することであります。実は日本国憲法は国会において休会という手続きを実は認めています。衆参両院で議決をすれば一定の期間、国会を完全に休会することが出来るんです。今までこれが実施されたことはありません。実施したことはないのですが、まさにこういう事態を想定しているのだろうと。ですから我々は「一週間なり十日、国会を休会してはどうだろうか」と申し入れました。しかし、民主党側にまだ私たちが信用していただけてなかったようで…、休会によって年度内の予算成立を阻もうとしているのではないかと受け取られたらしく、残念ながら賛成はしていただけませんでした。で、我々としては「じゃあいいですよ。自然休会にしましょう」ということで今与野党合意致しました。今週はとりあえず、どうしてもこの法律だけは成立させなければいけないという状態でない限り、国会は開きません。各大臣にはご自身の担当分野にてそれぞれこの巨大地震に向き合っていただきまして、国会の日程を一切気にせずに専念して欲しいと。そういうことで、現在は自然休会の状態を実現させていただいております。

 ここから先は恐らく、このままいけば予算は3月30日に自然成立致します。で、我々はそのあとも足を引っぱるつもりはありません。この予算に対して反対はします。予算に入っている子ども手当や高速道路無料化に対してですが、こういったものはやはり今回は地震対策の財源に使うべきではないかというのが我々の考え方ですから。反対はします。ただ、反対しても混乱は起こりません。参議院で否決をされたとしてもそのまま衆議院の議決で成立する形になりますから。それで4月1日を迎えることになります。で、ここから先ですが、たとえば税法のなかでも3月31日で期限が切れるさまざまな租税特別措置がありますね。我々はこういったもののなかでも必要なものはぜんぶ抜き出して、賛成したうえでそのまま効果が継続するように致します。関税関係の法律でも3月31日で切れるものがたくさんありますから、これもすべて協力します。絶対に生活のため成立させなければいけないという法律はすべて成立させます。

 あと、皆さんは赤字公債の特例法についてとても心配をされていますが、こちらは成立しなくても当面心配ありません。建設国債の枠があるからです。別に赤字国債といっても赤い色が付いている訳ではなく、まったく同じ国債ですから建設国債を先行して発行すれば大丈夫です。政府には20兆円まで自分の判断で短期国債を発行する権限が与えられていますから、それで繋いでいくことも出来ますね。赤字国債特例法を成立させなければいけないタイミングは、恐らくゴールデンウィーク明けということになってくるだろうと思います。まさに今回の震災による被害状況の査定がだいたい出来て、復興にはおおよそいくらぐらいかかるという目星が付く時期ではないでしょうか。阪神大震災のときは総額で10兆円となり、国が出したのは真水ベースで3兆5000億円ぐらいでした。恐らく今回はそれをはるかに上回る金額になると思いますが、そういったことがはっきりしてきた段階で必要な赤字公債特例法を成立させていけば良いと思います。現在、少し流れてきている情報によりますと、民主党側も我々の提案を受けて「子ども手当て等については今ばらまいている場合ではない」という判断をするかもしれないということですので…、まあ、その辺をうまく合わせながらということになります。

 最終的には赤字公債特例法まででしょうか。恐らく5月6月まで続くと思いますが、我々は巨大震災からの復興が完全に軌道に乗るまで、政府のアクションをサポートしていく決意です。そのことは民主党にも明確に伝えてありますし、そのための環境を整備していくと。本当であれば我々としても主張したいことはあありますが、そこは譲ってでもすべて協力していくという姿勢をとらしていただいています。これが第一点です。

 第二点目ですが、やはり自民党は戦後、ずっと政権を担ってきた政党であります。特に阪神大震災において…、これは必ずしもうまくいったとは言えませんが色々な経験も積んで参りました。また、自民党議員のなかにはたとえば自衛隊の幹部出身者も複数おりますし、財務省で実際に予算の編成をやってきた経験のある議員も複数おります。経産省出身の議員もいれば、エネルギー関係の仕事をしていた議員もいる。そういう意味で、やはり民主党の皆さんと比べても経験値としてはかなり高いと思っています。その高い経験値を出来るだけ民主党にお伝えをして、少しでも役に立てていくことが大切だと考えております。で、こちらについては民主党側にも大変スムーズに受け入れていただいております。たとえば昨日、谷垣さんが「民主党は陸上自衛隊ばかり活用しているが、海自のP3Cをはじめとした飛行機で偵察をすることも非常に重要だ」という進言をしておりまして、これはただちに入れられました。また、自衛官を10万人動員となっていますが、予備役の自衛官も動員すべきということを谷垣さんがお願いしており、民主党側も「それでは」と、実施の方向になっています。ほかにも、細かい話ですが、たとえば官房長官の原子力発電所に関する記者会見に手話を付けるべきだという提案をしております。実はこれ、Twitterから「手話がないのは困る」という情報を得たというものですが、こちらも自民党の会議を通して提言させていただき、その直後に行われた官房長官の記者会見から実現するようになりました。

 ほかにもあります。これは阪神大震災のときに我々が失敗してしまったことですが、外国からの応援部隊に対して通関や犬の検疫を杓子定規に行ってしまったんですね。その結果、初動が非常に遅れてしまった。こちらもともかく緩めていただいて迅速かつ前向きにやったほうが良いですと。自動車運転免許の更新も同じですし、たとえば車検切れで走れるとか走れないとか…、こういったニッチな問題についても阪神大震災における失敗の経験を民主党側にお伝えしています。そこを「柔軟に対応したほうがいいですよ」と。で、民主党も「それは非常にありがたいアドバイスだ」ということで受け入れてくれております。そんな風にして、民主党において経験不足の部分があればそれをお手伝いをするということを今は一生懸命やらせていただいております。やはり、なんだかんだ言って官僚との信頼関係についても残念ながら自民党のほうがまだあるんですね。ですからそこで官僚側に本当の情報を伝えたりして「こういうアクションをとったほうがいいんじゃないかな」と。そんなこともやりながら…、我々なりのチャネルを駆使して今はやらせていただいています。これが二点目です。

 三点目は、自民党は100万人の党員を要する日本最大のNPOであると思っている点です。野党の立場ですからなおさら政府とは少し別の形で、どういったアクションがとれるのか。これについては我々の最も苦手とするところではありますが、義援金の募集や支援物資を集めるというところから、今は思考錯誤しながらはじめさせていただいています。募金も本日はじめました。支援物資についても同様です。自民党は47都道府県にそれぞれ県連という組織があり、そこにそれぞれの県議会議員と市議会議員も所属している形になります。そこでたとえばアルファ米や女性の生理用品ですとか、「こういった物品を集めて来てください」と物品を指定すると。そして現場から情報を収集しつつ、ともかく一度自民党本部にすべて集め、それをどういう形で持ってくかを議論しようということを今、はじめております。これはNPOとして我々が行動すべきことではないかと思っております。

 ただ、ここは我々の非常に弱いところですからぜひ皆さん方にもお力添えいただきたいと思っています。NPO/NGOが集めたお金や物資を皆さんのヘリコプターで運んでいただき、現場で活用出来るような状況をつくりたい。自民党のなかにも本当に公共心の強い、良い意味で古い日本タイプの人たちがたくさんいます。こういう人たちが、若い方々が自転車で走り回るようなボランティアではなく、いわゆる昔なりの助け合いの精神といったものを現地へ伝えてく。そんなことが出来たらと思っています。こういった点についても一生懸命、頑張っていきたいというのが3点目ですね。ありがとうございました。

佐藤:どうもありがとうございました。ひとまず登壇者の皆さまのご紹介は以上になりますが、今日はたくさんの方が参加されていますし、そのまま続けさせていただきたいと思います。堀さんのほうはいかがでしょうか。中間ということで何かコメントあればお願い致します。

堀:大丈夫です。せっかくですから出来るだけ多くの方にご発言いただいたほうが良いかと思いますので…、藤沢さんとかいかがでしょうか。

佐藤:では藤沢さん、よろしくお願い致します。

これから長期戦を行うにあたってそれぞれ長期のプランを考えておくこと(藤沢)


藤沢久美氏(シンクタンク・ソフィアバンク 副代表 以下敬称略):ありがとうございます。藤沢です。先ほど田坂さんから「一緒に来い」と言われて来たばかりでして、どういった方がお集まりなのかまだ詳しく存じあげないのですが、今日Twitterにも書いたこをとお話しさせてください。寄付ですとか献血ですとか、現時点でもひとりひとりが出来ることはたくさんあります。ただ、海外の仲間から貰ったアドバイスでは「寄付や募金といったものは当初はすごい勢いで集まる。ただ、だんだんと先細っていく」というんですね。たとえば献血は一度行うと4週間ぐらい出来ない訳ですし。ですから皆さんも会社でそういった献血活動などをおやりになるのであれば、出来れば分散させたうえで長い期間にわたり提供出来るようにと。加治さんが仰っていたように、これから長期戦を行うにあたってそれぞれ長期のプランを考えておくことも、同時に大切ではないかなと思っています。

佐藤:ありがとうございます。その通りですね。たしかに注目されているあいだだけ支援が集まるというのは困りますので、長期プランの視点は非常に重要だと思います。では次に、ジャスト・ギビングでもいの一番に支援の手を挙げたくださった西川さん、お願い出来ますでしょうか。

復興期の資金調達はどうするのか(西川)


西川潔氏(株式会社ネットエイジ代表取締役 ngi group 取締役ファウンダー 以下、敬称略):西川と申します。初動期と復興期でやるべきことはまったく違うという話がありました。初動期は初動期なりにアイディアを出さなくてはいけないし、復興期は復興期なりにアイディアを出さなくてはいけない。で、もちろん復興期のほうがより大掛かりな枠組みを必要とするように思います。ただ、とりあえず目の前にはもう二昼夜も孤立状態でいる人がまだ何百人何千人単位でいる訳ですよね。まずそこが本当に…、どうにかしなければと思います。単純な話、ヘリコプターから毛布や食料とかぼとぼと落としたりすることは出来ないのかと思っています。

世耕:それ、今やりつつあります。

西川:あ、やるんですか。それが一番、初動期にやって欲しかったことで…、僕ら自身は実行出来ないのでアイディアだけになってしまうのですが。

世耕:今はアメリカの空母を基地にして、まず自衛隊が空母に輸送船で物資を運び、そこからヘリコプターを次々に飛ばすということをやっています。そこで自民党が民主党にアドバイスしているのが普天間の海兵隊についてなんです。普天間に配備されている海兵隊のヘリがそのミッションにぴったりなんですよ。どんな場所にでも降りられるし、運ぶことの出来る物量も大きい。ですから普天間の海兵隊に協力を求めるよう我々も提言しているところです。

西川:(長期的に見れば)それでアメリカ軍に対する気持ちも色々と変わってくると思いますし、ぜひやって欲しいですね。

 あと、復興期に関してもうひとつ。リアリティを持って考えると、復興資金は恐らく20兆円30兆円…、先ほどお話にありました阪神淡路大震災の10兆円よりもはるかに大規模なものとなるように思います。で、その資金調達はどうするのかということが僕はすごく気になります。田中康夫(新党日本代表)さんはTwitterで「100兆円の復興国債を出せ」と仰っていましたし、その一方では誰かが増税すべきだとも言っていました。国民のコンセンサスをとりやすい時期だから、今はむしろ増税すべきだという声もあったんですよ。そういった調達についてどういった考え方が正しいのか、僕としてはそこが分からなくなってきています。とにかく正しい選択をしないと本当に困ったことになる訳ですし。僕としては、こういったときにネット上の英知を集めながら正しい結論を導き出せたらいいなと思っています。

佐藤:ありがとういございます。ではお隣にいきましょう。井上さん、一言いただけますでしょうか。

物質的なものだけでなく、精神的なサポートを(井上)


井上英明氏(パーク・コーポレーション代表取締役 以下、敬称略):花屋やっております井上です。先ほど田坂さんのお言葉にもありました。物はもちろん大事ですが、やはり精神的なものは本当に大きいと思っています。ですから僕としては中期的な心のエネルギーとして花にも大きな効果があるのではないかと。それを届けたい。阪神・淡路大震災のさまざまなレポートにも、「一輪の花が何ものにも代えがたく嬉しかった」と、当時被災者だった方々の言葉がたくさんありました。今はどうしても物質的なものに意識が行ってしまいますが、現地の方にしてみれば精神的な言葉なども大きなエネルギーに繋がるのではないかなと思っています。中長期的な立場でそんな精神的サポートをどのようにしていけば良いのか。花屋としてはその辺も考えていきたいです。

佐藤:「花屋」と表現しておられますが、青山フラワーマーケットの社長さんですから(笑)。きちんとご紹介しておりませんでした、すみません。では…、(田島氏挙手)あ、田島さん、何かコメントがありますか?

田島:たしかに心のケアは重要です。私の組織も人道支援を担当していますから、よくそういう場面に出くわします。被災者の方だけではなく、支援する側もトラウマを抱えてしまうケースがありますから。ですから、今仰っていただいた視点は私も非常に重要だと感じました。ありがとうございました。

佐藤:ありがとうございます。ではお隣に移りまして、ダボス会議で日本代表でもいらした土屋さん、よろしくお願い致します。

初動期と中長期、戦略的に議論を(土屋)


土屋聡氏(世界経済フォーラム日本代表 以下、敬称略):はい。私も堀さんから1時間前に召集されました。で、私のほうからも初動期と中長期という話について。初動期にはたしかにNPO/NGOがモビリティを持って動けますし、今回のようなコミュニティの枠組みで集めようという動きも実は初動期のほうが大きいですよね。G1をはじめここから出てきたようなグループが一堂になってお金を集めるのは、本当に大きな力になるのではないかと思います。セレブ系の人も動けます。アンジェリーナ・ジョリーやジョディ・フォスターがダボス会議で同じようなことをして皆に共感を与え、まさしく共感が生まれた瞬間100億ドルが動くという…。そういった動かし方でお金をつくっていくというのはこのコミュニティでしか恐らく出来ないと思うので、ぜひ考えていただきたいと思います。

 一方、中長期のお話をしますと、実は先週のWorld Economy Forumで‘Global Risk Workshop’とか‘Global Risk Network’といったものを動かしていくというテーマですごく議論していました。世界中の組織において、たとえば‘Chief Risk Officer’のように何らかの危機に対処する人たちをつくらなければいけない。それは企業であっても国であっても国際機関であっても同じであると。そういう人たちを集めて議論しようという動きが、まさしく昨日今日、ジュネーブの本部で行われています。企業の代表になっている人たちがリスクをどうマネージしていくか。中長期的に‘associated risk’と言うのでしょうか…、今回で言えば津波が来て、原発のリスクが生まれ、もし放射能が蔓延したらどう対応してやっていくのか。そういうことを考えていくグループが結集し、グローバルにベストプラクティスをシェアしながら日本にもそれを提供しようとしています。当然、日本でもそういったコミュニティをつくることが出来るし、引き続き今回のような議論が出来ていくのではないかと思っています。

佐藤:ありがとうございます。まさに初動期だからこそ、声を挙げたときに多くの注目が集まるというのはありますよね。ちなみに、小澤さんが理事を務めていらっしゃるシビックフォースという団体は非常に我々と近しく、かつ信頼が出来るということがあります。ですから、もし可能であれば「もう今日この場で寄付を集めようといった機運が盛り上がればいいね」と、事前の雑談ではお話ししておりました。このタイミングでそれをやるのが本当に良いことなのかどうかについては議論があるかもしれません。ただ、もし皆さんにもコンセンサスがいただけるのであればのちほど、募金箱などもご用意しておりますので。シビックフォースがどういった団体なのかという書類も、ひとまずは簡単なパンフレットにしてご用意致しました。お帰りの際、お許しをいただければ皆さんにご案内したいと思っております。ありがとうございました。それではお隣に移りましょう。恐らくはまた急遽お声掛けがあったのだと思いますが、A.T.カーニー日本代表の梅澤さん、よろしくお願いします。

被災地以外の地域が引っ張って、元気な人たちが稼ぎ、そのお金を廻していく(梅澤)


梅澤高明氏(A.T.カーニー株式会社日本代表 以下、敬称略):梅澤です。私も堀さんから6時にお電話をいただきまして。皆さんのお話を伺っていて改めて思ったのですが、残念ながら今の時点では被災地で苦しんでいらっしゃる方々に、私自身あるいは私の会社が直接お手伝い出来ることが限られているなということでした。しかし、そうは言いながら何もしないのはあまりにも苦しい。今日の時点では、会社として義援金をお届けしようというのがまずひとつ。また、社員には「これに個人的に義援金を追加したい人はぜひやってください」とメールを出してきたところです。

 で、もうひとつ。少し冷静に考えると気が早いと思われるかもしれませんが、先ほどのお話にもあったように、今後必要となるのであろう復興資金が阪神・淡路大震災と比べて2倍3倍だとすれば20兆30兆円になる訳ですよね。その巨大な資金を日本が捻出して、復興プロジェクトにあてなければいけないことなる。GDPの3%とか4%といったオーダーです。これ、国債でまかなうと言っても結局は誰かが負担しなければいけない。「では税収を増やしましょう」とか、そういうことを最終的にはやらなければいけない訳です。そうだとすると我々は何を考えなければいけないのか。ここにいる皆さんと同じように、今、誰もが被災地の方々を悼む気持ちでいっぱいですし、あまり派手なことはしたくないと思うし、色々なことを自制しながら動かないといけないと思っている訳ですよね。そこは共有していると思います。しかしその一方でこの国の経済をどうやって元気に成長させていくのかと。被災地以外の地域が引っ張って、元気な人たちが稼ぎ、そのお金を廻していく。これを本気で掲げていかないと、加治さんの言われた長い戦いをやり抜けなくなるというのがもうひとつの現実です。

 たとえば私が代表を務めているコンサルタントファームはたかだか百数十人の人間しかおりません。仮にその全員が被災地に張り付いてお手伝いをしたとしても大した戦力にはなりません。しかし、中長期的に考えれば日本の成長を加速するため、色々と出来ることは我々にもあるのではないかという思いで今はいっぱいです。我々の本業を通じてやろうと。

 もうひとつ。今日、実は世界中の同僚にメールをしました。「今、日本こんな状況になっているのはご存知の通りです」と。「現時点で我々に出来ることは限られている。でも我々は復興プロジェクトの経験を世界中で持っている。だからそれをぜひシェアしてくれ」という内容のメールです。それで分かったのですが、我々の同僚たちはたとえばテロに見舞われたNYで復興プロジェクトのお手伝いをしていたとか、さまざまな形で世界中の復興に関わるコントロールセンター的役割を担っていたということも判明しました。恐らく数カ月後になるのかもしれませんが、そういった経験や知恵を生かせるチームを我々のファームからも出し、何かお手伝いが出来る機会があればと思っています。今日はそのための準備もはじめようと、第一歩を踏み出したところでもあります。

佐藤:ありがとうございます。さて、まずはこれで予定しております登壇者の皆さまからはもれなく一言をいただきました。今日は最初に申しあげた通りブレインストーミングと位置付けておりますので、思っているところがあれば引き続き、どんどんコメントしていただきたいと思っております。ちなみに、私は今日この場にいらっしゃらない方にも色々とヒアリングをしておりました。複数の人に聞いております。現場で頑張ってらっしゃる方も政府で奮闘していらっしゃる方も混ざっています。で、皆さん匿名を希望されていたのでちょっと名前は伏せておきますが、ディスカッションを続ける前に、まずはこういう意見もありましたというのをご紹介させてください。

「今、東北は命の問題に直面しています。生きるか死ぬかという状況です。ですから関東で生活している我々としては、そもそも生きていることに感謝しようじゃないか。何を言いたいかというと、『電車が止まったぐらいで文句を言うな』というのがひとつあります。そういう話ではないんです。電車が運休していればそれはもちろん不便です。会社にも行けない。でも運休によって節電が進み、そのおかげで水道が使えているとか、病院で手術がうまくいっているとか、そういうことが忘れられがちなのではないか」。こういうご意見がございました。まったくその通りだと思います。まずは我々が元気でいられることに感謝をして、東北の皆さんに気持ちを向けてみようじゃないかというコメントをいただいております。

 次は名前出させていただきますが、毎回YES!ナイトでレギュラーとなっている鈴木寛文部科学副大臣からのメッセージです。

 「大学病院については調査していて、昨日の時点ではすべて稼働を確認している。で、万が一電気が停まっても自家発電というのがあります。だから本当に危険な状態についてはとりあえずのリスクヘッジが出来ています。ただ、自家発電と言っても石油を使うので節約はしたいですが」と。やはり節電が非常に重要だということを意見として仰っておりました。

 副大臣からは、国民の皆さまに対するお願いですね。こちらもご紹介しましょう。

「昨日は計画停電に入るというお話がありました。『明日はいついつから停電になる可能性があります』という発表ですね。で、たとえば『7時から停電します』と言って、今日になったら『停電しないじゃないか』と批判されていまいして(会場笑)。これは国民の皆さんが少しずつ節電したことで、当初予測されていた電力消費量の7割で済んでいるからです。国民の皆さまが頑張っているという証なんですね。消費電力がすごく下がったおかげで、『このまま2週間乗り切りさえすれば』という状態になりました。火力発電が戻ってきますし、原発の問題もひと段落します。そんな風に元通りとなれば、改めて安定的に動きはじめます。ですからこの2週間、今の暮らしをもう少しだけ頑張って維持していただきたい」といったコメントをいただきました。

 こういった大災害でも日本人が大変秩序だっているという意見は先ほどから出ていますね。節電しようと言えばきちんと節電するし、鉄道会社も頑張ってくれています。現場には色々も批判もあがりますが、それでもなんとか頑張っていきましょうと。運休に踏み切っていることを批判するのではなく、感謝をしてですね…、水を飲むときは「誰かが節電してくれたから僕は今、水が飲めるんだ」と。高層マンションにお住まいの方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、エレベーターに乗るときは「私が44階まで階段を登らないで済むのはどこかで誰かが節電してくれているからだ」と。そんな風に感謝しようということが、ひとつ提案としてあるのだと思っております。

 もう少し続けましょう。今日は経営者の方もたくさんお集まりかと思いますが、「企業経営者の皆さまへ」という提言がありました。こちらも節電関係ですね。これは小澤さんも会社でいち早く取り組んでいらっしゃることですが、「社員は出来るだけ会社に来ないで欲しい」と。土日まで節電すれば乗り切れるという電力試算もあるそうです。ですから2週間、企業が土日並の消費電力量にすれば充分やっていけるのだと。要するにエレベーターが止まったり、水道が止まったり、病院が止まったりするようなことはない。「だから今だけは、大変恐縮ですがビジネスよりも東北の命を優先して欲しい。あるいは関東などにお住まいの、病をわずらっていらっしゃる方々を優先する思いを持っていただけないだろうか」という意見もございました。

 これは私も聞きかじっておることですが、たとえば「夏休みが少し早まった」という感覚でとってみてはどうかと。星野リゾートの星野佳路社長がよく提言されていらっしゃる休暇分散ですね。皆が一斉に夏休みをとると値段も高くなるし、リゾート地も混雑してしまう。それなら地域ごとに分散して休みをとっていってはどうかという提言。今こそそれに取り組むチャンスが来たのだと受け取って、企業が節電に取り組むのはどうかという考え方もある訳です(夏野氏挙手)。あ、ではこちらに対するご意見をぜひ夏野さん、お願いします。

今週1週間は休日にしたらどうか(夏野)


夏野:実は今日、Twitterで計画停電についてずっとツイートしていました。要は休日扱いにしようという宣言を、ぜひ官邸から出して欲しいとひたすらツイートしていたんです(笑)。もちろん個人の節約も非常に大事ですよ。特に6時から7時ぐらいの時間はね。ただ、もともと僕はガス会社にいたのでこの辺のインフラ事情についてよく知っています。今日、電力セーフだったのは個人の節電がメインではないんですよ。企業です。特に言えば大企業が工場を止めているのが大きい。ですから僕は今日、自分が取締役を務めているすべての会社で自宅待機するように一生懸命伝えていまいした。この会のお話があったときも、堀さんに「今日やっていいの?」なんて言っていまして…、まあこの会はこの会で別の重要な意味を持っているから良いのですが。

 ただ、そうは言っても経営者としてそれを判断するのはなかなか辛いという人たくさんいます。だから休日扱いにしましょうと。「東電管内は休日扱いにします」と言ってくれるだけでガラっと変わる。電車が止まっているのは英断ではなくて、JRは止めざるを得なかったんです。電気が来ないから踏切が降りない。東海道線はすべて止まっていますよ。今、実は平日扱いにしているのに会社は機能していないという状況が生まれている。伊勢丹なんてすべて閉まっています。「それならもう休日扱いにしましょうよ」と。伊勢丹を開けておく。電力分布で言えば産業電力がめちゃくちゃに大きい訳で、実は百貨店は開けていてもいいんです。たしかに百貨店だって節電するに越したことはないですが。

 何を言いたいかというと、先ほどのお話でもあったように「この先2週間で火力が開くから大丈夫なんです」というなら、そのグランデザインを言わないといけない。目下の新聞報道では4月末まで計画停電をやるのかと言われている訳ですよね。ですからこれについてぜひ考えていただきたいです。僕としては今回、とりあえずミッキー(三木谷浩史氏 楽天代表取締役会長兼社長)を含めて知り合いの経営者全員に「今週は休みにしようよ」というメールを送っています。ただ、それは民間だけでやっていてもなんですから、ぜひぜひ皆で“今週休みにしようよ運動”をね…、今週を切り抜けるともうだいぶ違うでしょ? ですからぜひやりたい。そういう提案したいと思っています。

佐藤:はい。ではせっかくですから楽天の小澤さん。昨日もお伺いしたのですが、「半分休みにしようぜ」というのは、現在、すでに楽天さんで取り組んでいらっしゃることなんですよね?

小澤:そうです。社長の三木谷が言うには社員番号を偶数奇数で分けまして、それで出勤日を分けようという形でして…、あ、田坂さんが。

佐藤:あ、田坂先生がお時間にてご退出ですね。今日は本当にありがとうございました。世耕さんは…。

世耕:私もちょっとこの辺りで…、すみません、失礼致します。

佐藤:ちょっと小澤さんのご発言途中で恐縮なのですが、お二人がご退出されますので、どうか拍手をお願い致します(会場拍手)。ちなみに今、急遽お電話が繋がったようですが…、福山(哲郎氏:衆議院議員 内閣副官房長官、以下敬称略)さんですか? 福山さんとただ今電話が繋がりましたので、こちらは堀さんにぜひモデレートしていただきたいと思います。

冷静な対応を心がけていただきたい(福山)


堀:もしもし、福山さん?

福山:こんばんは。

堀:あ、聞こえていらっしゃいますね。福山官房副長官には5分ほどお時間をいただけるということです。福山さん、今、我々のほうでディスカッションしていたのは、この未曾有の危機において官民で何が出来るかということです。官邸の状況は先ほど加治さんからご説明いただきましたが、福山さんが僕らに対して期待されていることを教えていただけたらと思っています。

福山:今、官邸は危機管理のまっただ中ですが、まずは国民の皆さんに冷静な対応を心がけていただきたいというのが第一です。会場の皆さまは恐らく企業でトップをしておられるなど、色々な場面でリーダーシップを発揮されるお立場かと思います。ですから、ぜひ冷静に対応するべきという点を周りにお伝えいただきたいと思っています。今日もあちこちのスーパーなどで行列が出来ていたようですが、そういったことがやはりパニックを呼びやすくしてしまいます。くれぐれも冷静に対処いただきたいですね。また、計画停電についてですが、これはやはり経済活動をきちんとするために考えた結果です。ご不便をおかけするとは思いますが、日本経済がなんとか力を維持していくためにもなんとかご理解をいただきたいと思っています。もちろん、なるべく電車は走らせる方向で検討しております。

 また、とにかく僕たちが今頑張っているのは被災された皆さまに対する支援です。食料、水、毛布、重油、ガソリン…、これらを早く届けること。原発の対応についても被害を最小限にするよう懸命に対応致します。とにかくさまざまな場面でさまざまな問題が起きていていますが、今は政府も官庁も海上保安庁も警察もあらゆる部門が寝ずに頑張っています。そのことについて国民の皆さまにもぜひご理解をいただきたいという風に思っております。また、現在もボランティアの方々が入っていただけるような状況にはなかなかなっておりませんが、次のステージにおいては本当に色々な形でご協力をお願いすることになると考えています。特に東北地方にご親類やご友人、あるいはお知り合いがいらっしゃる方は心配だと思います。しかしそのような方々の無事を祈りながら、今はとにかく冷静に対応してください。そちらでやっていらっしゃるような建設的ディスカッションは本当に嬉しく思っていますし、我々もなおさら頑張りたいと考えておりますので。

堀:福山さんひとつだけ質問してもよろしいですか?

福山:はい。

堀:「我々は目下、どこまで経済活動を自粛すれば良いのか」がひとつの議論になっています。自粛も限度を越えると経済の停滞を招き、それから立ち直るのにすごく時間がかかるようになると思いますので。計画停電についても同様です。今日、我々がやっているような会議に対しても、「電気の無駄だからやめろ」という声が挙がる訳ですね。そうなってくると国民全体で支援の機運だって盛りあがらないし、僕ら自身も考えている支援が実現出来なくなってしまう。ですからそのバランスをどのように考えるべきか。どの程度の自粛を、あるいはどの程度の活動を望まれているかを教えていただけないでしょうか。

福山:まだ地震が発生してから3日目です。現時点で私が一概に申しあげるのは全体への影響もありますので、申し訳ありませんが、もう若干状況を把握をさせていただいてからにしたいと思っています。ただ、経済活動を必要以上に収縮させるのは日本全体のために良くないという意識はあります。先ほど申しあげたように、電車だって走らせたいと思って懸命に努力している訳ですし、関西ではおかげさまで経済活動も無事に動いております。ですからそのバランスをとりつつ、経済活動については国民の皆さんとご一緒にこの厳しい状況を乗り越えたいということで、我々としては対応させていただきたいと思っています。今は危機管理における初動段階ですので、具体的な部分は言えないのですが、出来る範囲の活動で頑張っていただきたいと考えております。

堀:ありがとうございます。もう福山さんも戻らなければいけませんから、この辺でお電話を置かせていただきたいと思います。福山さん、僕らとしても官民一体となって良い方向に持っていきたいと思って行動します。今日は本当にありがとうございました。(会場拍手)

佐藤:ありがとうございます。加治さんも…、そろそろお時間ですね。では一言お願い致します。

加治:はい。では最後に一言だけ。もう5分後には政府の一員に戻りますが、とにかく我々としては政府からの発信をしていきたい。その時々の事実を一生懸命お伝えしていきます。官房長官の会見、Twitter、あるいはウェブサイト…、そういったチャネルにてぜひ事実をご参照ください。ウェブサイトのアップには若干時間差も出たりしますが、アップさえされたら現時点では一番正しい情報ですから、ぜひご覧いただきたいと思っています。

 あと、やや政府の立場を離れた一個人として申しあげておきたいこともございます。先ほど田坂さんが仰っていました「我々が心を定める」ということについてですね。これは私も本当に重要であると思っています。実際、我々は非常に便利な国に住んでいますよね。高機能な携帯電話を利用出来るし、正確なダイヤで運行される電車に乗ることも出来る。ただ、世界中で多くのひとたちが本当にそんな暮らしをしているのか。そのことに少しばかり思いを巡らせていただければと思っています。我々は被災された方々のぶんまで含めて、今を力強く行動していかなければいけない。それは同時に、世界中のさらに恵まれない国々に対する責任でもあるのではないかと私は考えています。これからしばらくのあいだ、皆さまは日本で何が起こっていくかをぜひ目に焼き付けておいてください。緊急時のリーダーシップ、メディアと政府にあり方、ソーシャルメディアが拓く新しい民主主義と資本主義…。そういったものを心に刻みつけ、そのうえで被害に遭った方々のこれからの人生に我々がどうやって向き合っていくかを考える。そして、さらにそれをどのように世界へ還元していくのかというところにまで思いを馳せていただきたいと願っています。皆さま、今日はお忙しいところ本当にありがとうございました。(会場拍手)

佐藤:加治さん、本当にありがとうございました。大変だとは思いますがぜひ頑張ってください。よろしくお願い致しますただ今『USTREAM』をご覧いただいている方が200~250名ほどいらっしゃるということで回線が少々重くなっており、「見えない」、「聞こえない」という声を多数頂戴しております。申し訳ございません。なんとか改善に努めたいと思いますがどうかご容赦ください。よろしくお願い致します。

計画停電とその経済への余波をどう考えるか(夏野)


佐藤:さて、少々お話が逸れてしまいました。ではここで改めて企業がやれることはなんだろうというところに戻りましょう。もちろん個人としても、です。特に夏野さんのお話を受けたあと小澤さんがご発言の途中でしたから、恐縮ですがもう一度お願い出来ますか?

小澤:はい。私はさきほどシビックフォースというNPOの立場で申しあげましたが、もともとはインターネットベンチャーをやっておりました。堀さんにも投資をいただく立場ですね。で、11年ほど前に投資をいただき、現在はその会社が楽天にM&Aされて楽天の役員という形になりました。今回の地震について別の文脈でお話しをすると、私は楽天イーグルスを立ちあげた責任者のひとりでもございます。ですから東北には強い思い入れがありまして、今回、いてもたってもいられなくなったと。そんな立場です。その楽天という立場でお話をさせてください。まあ三木谷自身も夏野さんからのアドバイス等々ありまして…、もちろん働かないといけないのですが、それは別に会社に来ることではないと。家で出来ることは家でやるし、「何もこのタイミングでわざわざ隣の席に座って働かなくてもいいじゃないの」という考えに則っている訳です。

 IT業界には三木谷が会長を務めるeビジネス推進連合会という団体がございます。我々は現在、その団体企業様に向けて「半分ずつの出勤等の処置をとったらいかがでしょうか」といった提示をしております。もちろん土日ということにしてしまって2週間ほど早いバケーションをとるというのも有りだとは思いますね。いずれにしても非常時ですから、企業経営者として出来ることは柔軟にやろうという提言をさまざまな形で投げかけているところです。

堀:ちょっと思ったのですが、たとえば一人暮らしをしていても家では電気を使う訳ですよね。それに、たとえば電車で来るといっても特にひとり乗員が増えたからといって電気が増える訳でもないと。会社にも来た段階で、すでに電気が付いていて使用されているのならば、出社することでどれほど電気の消費量が増えるのかっていう意味でよく分からない部分もあるのですが…。

夏野:電車が止まっているから来ることが出来ないですよね。事実上は。

堀:もちろんです。電車が止まっている状態でも出社して欲しいという訳ではないのですが。

夏野:そうですね。決まっているのは「どう配分するか」という話になりますので、政府がやっている計画停電を切り離してみると堀さんのご指摘はまったくその通りだと思います。ただ、今は計画停電をやりながらも節約しなければいけないという…。

堀:一方で、刻一刻と動く状況のなかにあってひとりひとりが家でニュースを見ていると…、これはもう相当に“びびり”ますよね。結局、企業にはコミュニティとしての機能もありますので。

夏野:たしかに、それはそれで別の問題としてありますね。

堀:結局、トータルで考えて家にいるのか出社するのか。どちらがより電気を使うのかが分からない段階でも全員が自宅待機をしようというのは本当に適切な判断なのかという議論があると思いました。冷静に電気の消費量をしっかりと計算しなければ分からないことだと思いますので。

夏野:電気の消費量に関していえば、やはり産業用の電力がピーク時にものすごく使われるんです。ですから僕の言う休日対応というのは、どちらかと言えばホワイトカラー向けではない。むしろ工場ですね。もし4月末まで計画停電を行うほど電力受給が逼迫しているのであれば…、僕としては何を提案したいかというと輪番制で工場休ませるべきだと。週休3日にする。土日と同じような状況をもう一日つくろうと。結局、デマンドコントロールという意味合いが一番大きい。ところが計画停電はすべて一律に落としてしまいます。先ほどお話しのあった病院の自家発電機も、実際は3時間程度でかなり辛くなりますよね。踏切の問題も同様ですし。ですから、個人の消費量は実のところ大きくないという実情があるんですね。

堀:結局、たとえば今後は経済活動においてガソリンが足りないという状況なかでも支援活動をしなくてはいけないといった局面が起こり得るかもしれません。そういった事情を色々考えると、昨日今日起こったばっかりで政府でも電力需要が読みきれなかったのかもしれませんね。いずれにせよ、そこでも「批判よりも提言を」ということで前向きに提案してはいきたいのですが。

夏野:もちろんこれは批判でなく「休日を増やす」という提案のつもりでいます。それを今週にでもやったほうが絶対良いと。そのほうが混乱も起きませんから。だって「どこが止まる」とか「どこが停電する」と、毎回ホームページで確認する訳にはいかないですから。そこで今のような提案をして、それでも政府がその方向を打ち出せないのであれば、では企業が自主的に休みましょうと。たとえば、日産、ホンダ、あるいはサントリーなども現実的にやっている訳ですし、これをもっと推進したらいいという前向きな提案になります。

堀:そうですね。そこで不要不急の工場を含めてすべて止めてしまうのが本当に良いのかというだけですので、ご提言については私も異論ありません。その辺のバランスというか。

夏野:もちろん全部止めるというお話ではまったくないです。昨日の電力消費量だってどうだったかというと、百貨店は煌々として営業していましたよ。でも、足りている。ですから全部止めるというお話ではありません。メンタリティの問題として、国民の参加意識を向上させる意味での節電は僕も大事だと思っているんですよ。ただ実際問題、東電管内の電力消費量をマクロで見たときにそれが微々たるものなってしまっていると。ですからマクロで考えた政策が求められているんです。その結果として需給がバランスするかどうかですから。そこを合わせるためにも、やはり産業用電力になんらかの手を打たないといけない。ただ、今は事実上、電車が動かなくて人が出社出来ないと。それで休みにしないといけないから休んでいる訳で、意志ではないんです、実は。

 これって…、どうも意図した形と違うものになってきている。これで電車を動かしてしまうと、まじめな話、足りなくなりますよ。ですからすごく難しい問題ですよね。意図としたものと関係ないところで意外にバランスしてしまっているというのが、とりあえずは今日の段階だと思います。で、今はこれでいいかもしれませんが、「これってあといつまで続くんだろう」という話でして。

佐藤:あ、西川さん、お願いします。

西川:少し視点を変えさせていただくと、今は初動期というか、「まずは人命を」という状況のなかにあります。それならば被災をしてなかいどこかの節電がそのまま被災地の電気になるという構図自体は、今は良いのかなと思っています。ただ、そのもう少し先までいったとき、デフレ状態にある日本のなかで消費も冷えるとどうなるのか…、皆が節約ムードになることで、ただでさえデフレ状態の経済に大きなダメージを及ぼすのではと感じます。また、東北地方にある工場の年間生産額はたしか30兆円というのがどこかメディアに出ていました。500兆円という日本のGDPのうち30兆円分が製造したくても出来ない状態と。そこにきて他の地域にある工場も止めたりすると、生産力の低下によってさらに日本経済が非常に大きなダメージを受ける。そうなれば日本の株安というマーケットのしっぺ返しも必ず来てしまいますよね。そういったことも考えなければいけない以上、初動はたしかに人命優先としても「どこまでその領域で考えていくべきなのだろう」と感じてしまいました。

夏野:この議論について言えば東電管内における電力受給の話となるので、今ご指摘いただいたこととは分けて考えたほうが良いと思います。もっと言えば、今日は被災地のお話がメインですから。実際、計画停電の話は緊急マネジメントというより定常マネジメントなんですよね。皆さんご存知の通り、ベースには原発が電力の三分の一を担っているということがありますから。

西川:ちょうど真夏の電力消費が続くような…。

夏野:あ、それ! それなんです。真夏がずっと続くということと同じ話。ですから今年の夏は大変で、その定常マネジメントの話と東北の被災地の話は分けないといけないんですね。ただ、そこまではなかなか…、手が廻っていない状態だと思います。もちろんそのなかでも実効的な政策に変えてかなければいけないと考えると、提言としては東電管内で週休三日制にすると。これをやらないと、恐らくは足りなくなります。下手すると夏は週休四日ということにも…、まあ喜ぶ人もいるかもしれませんが。

佐藤:そうですね。計画停電という言葉が我々として聞き慣れないものだったというのはあると思います。私も少し詳しい人に色々と聞いたのですが、まあ…、夏野さんが今お話しになったことそのままという感じですね。僕もまったく同感です。で、これはむしろ“計画供給”と言ったほうが実は正しいのではないかと。計画停電なんて言うと「停電も何もかも計画的に止めていくんだ」と受け取られてしまいますよね。そうなると停電しなかったら今度は批判されるみたいなことになってしまう。ですから、「本当は計画供給という“コントロールサプライ”であることをきちんと伝えたら良かったのに」と反省していた方はいらっしゃいました。報道でも計画停電という言葉で統一されますから、ある種の誤解を与えてしまっている側面があるのかもしれません。

 さて、あと30分となりました。せっかくですからフロアの方々からもご発言を募りたいと思います。意見を言いたい方ですとか、登壇者の皆さんに対するご質問がある方ですとか、どなたかいらっしゃいますか?あるいは「私はこういうことをやっていくぞ」というお話でも大歓迎です。前向きな雰囲気を少しでも醸成出来たらと思っていますので。堀さんからもお話しいただきましたが、今日は実際、開催に対する批判もありました。「こんなときにミーティングをやっている場合か?」ということですよね。でもやはり堀さんと我々事務局側で話をして「なんでもかんでも『自粛、自粛』ということにするのはやめましょう」と。西川さんのお話にもありましたが、自粛ばかりしていると元気がなくなってしまう。ですから「強い意思を持っていこうじゃないか」と、今回の開催に至った経緯があります。ぜひともフロアの皆さんとともに前へ向かって歩く雰囲気をつくることが出来たら、主催者としても幸いと考えております。登壇者の皆さんも含めまして、いかがでしょうか。あ、では会場のほうから手が挙がりましたので、そちらの御三方へ続けてマイクを振っていきましょう。

自分自身や会社が持ち得るリソースをレバレッジできる活動を(梅澤)


会場:私は宮城県の塩竈市出身でして、母親と父親が塩竈に取り残されている状況です。土曜日の朝に連絡は取れたのですが、そのあと情報インフラが遮断されてしまい、今は一切連絡取れていません。そこで自分が何をするべきなのかを必死に考えのですが、Twitterなどで情報を収集し、コミュニティをつくり、皆で情報を共有していく。今はそれしか出来ないと思い、それ以外では仕事にも出て、この場にも参加させていただくことと致しました。で、今は皆さんのお話を聞いてとても勇気づけられている部分もあるのですが、初動期のあと、復興期のときに一般市民が何をしたら良いのかがよく分かっておりません。自分で調べようとは思っていますが…。そんな状況でも何らかのコミュニティなどがあれば非常に心強いですし、私自身も参加したいと思っています。そういったコミュニティが今度出来ていくものなのか、あるいはすでにあるのかなといったところについてご質問させていただければと思いました。

会場:ただいまの「初動期か復興期か」というお話にも絡むと思いますが、たとえば2週間なら2週間で考えられるリスクというか、現状のベースラインを整えることで乗り越えられるという要素はたくさんあると思っています。ただ、それを企業が結局決断出来てないのが大きな問題ではないかと。今、何をしなければいけないかっていうとき、「死んでしまうかもしれない人に対しては助かる可能性を高めるためにこれをしましょう」と。そういった話をすればリスクのベースラインは整うと思っています。それを政治に委ねても恐らくは出来ないからこそ、「民間でも整えよう」というのが夏野さんのご意見でもあると思っています。とにかくそれをどこかで早く決断しないと、後悔するような状況に陥ってしまう。今がまだ初動期の2週間にあるとするならば、やはり今のタイミングでやるべきことをある程度明確に、企業サイドでリーダーの方々に決めて欲しいという気持ちがあります。社員ひとりひとりにそれを委ねるのは無理だと思いますので。ただ、「基本的には来なくていいよ」と言ってあげる決断が出来るのは2週間だけですよね。もちろん今後、状況に変化があれば延ばさなくてはいけなくなるかもしれませんが、今の状況であればたとえば2週間と決めることも出来るのではないかと。個人的にはそう思っています。

会場:今朝、私たちは社員全員で「僕たちにしか出来ないことはなんだろう」と考えてみました。僕たちはネット上のブログや2ちゃんねるをふくめた掲示板などにある情報を、日本で最も早く、リアルタイムで大量に収集している会社です。ですからブログのなかで、たとえば岩手県や福島県…、どこに住んでいる人のブログなのかが分かっているものだけのなかでも、「今ここが大変だ」とか「これで喜んだ」といった情報を抽出し、それを発信していく。それによってメディアからは伝わらない現地の人たちによる生の声をもっともっと発信出来、お役に立てるのではないかなと思っていまして。実際、それを今晩中に立ちあげたいと思っています。実際には「ただでさえ情報が乱立しているのに、『何々県の何市のどこ』とまで分からない情報を僕らが発信して役に立つのだろうか」という議論はありました。でも、とにかくやってみようと。「やってみて無駄だったら閉じればいいじゃないか」ということで僕たちは一歩、前に向けて動きましたということのご報告になります。

佐藤:ありがとうございます。ご質問としていただいたのは最初のお二方でしたから、もう一度確認してみましょう。復興期に何が出来るのかをアドバイスしてくれたり、選択肢を提供してくれるようなコミュニティがあるかということですね。では…、(西川氏/梅澤氏挙手)分かりました。手が先に挙がりましたのでまず西川さんに聞いて、それから梅澤さんにお伺いしたいと思います。

西川:これはあるきっかけからネット上で出来たアイディアです。阪神・淡路大震災のときに罹災者だった方から出たものですね。どういうものかというと、世の中には部屋が空いているというお宅がたくさんあるじゃないですか。その部屋を、一時的に家を失った方々へ無償で貸し出そうというプロジェクトを興しているグループがあるんです。阪神・淡路大震災のあとも「一番困ったのは1カ月後ぐらいからの生活そのものだったんだ」と。最初の1カ月は注目もされているから色々な支援者の方々がいらっしゃいます。でも、「だんだんとそういった支援も先細っていくなかで、一番リアルだったのが1カ月後からの生活だ」というのがその方の実感だったんですね。特に住むところについて一番困ったと。そんな体験をもとにした方のプロジェクトが、今はTwitter上で色々広まっています。具体的には、ある大学生のグループが“マッチングサイト”をつくりました。空き部屋を提供してくださるご家庭の方と被災した方を繋ぐマッチングサイトですね。そんな例があったのでお伝えしておきます。

佐藤:ありがとうございます。では梅澤さん、お願い致します。

梅澤:一国民、一市民として何が出来るかというご質問だと理解しています。で、私の確信としては、やるのであればその方自身またはその方の会社が最も“良く”出来ることをやる。それが最も大きなインパクトをつくると思っています。先ほども少し触れましたが私どもの会社は社員百数十人です。それなら、ひとりひとりがさまざまなソーシャルアクティビティに一人力として参加するのではなく、やはり本業であるコンサルタントとしての知恵を使って十人分の仕事が出来るような領域で貢献をする。そのほうが絶対に世の中のためになると思っています。本業を通じて社会に役立つほうがその価値を最大化出来ると。私自身、そう確信していますし、社員にも伝えています。

 それなら我々が仕事を通じて出来ることは何か。恐らくはクライシスマネジメントの領域でなく、その先で日本が立ち向かわなければいけない「日本産業の活力を高める」道のりのほうです。敢えて言えば、復興のプランニングでお手伝い出来るところを探したいと。そんな考え方をしています。これは私の信念ですから、皆さんは違う思いをお持ちかもしれません。ただ、自分だから、あるいは自分の会社が持ち得るリソースをレバレッジするからこそ十人力になるという発想についてはぜひ考えてみていただきたいと思います。それぞれのフィールドで自分の会社を動かしていただくのも良いでし、自分の周りでリソース持っている人を動かしていただくというのでも良いでしょう。そんなアプローチが、実は長い目で見ると一番大事ではないかなと思っています。

佐藤:ありがとうございます。では小澤さん、いかがでしょうか。コミュニティについてですね。

小澤:復興期のコミュニティですよね。これは…、間違えていたら修正して欲しいのですが、基本的には確実に立ちあがると思います。具体的には物資の救援ですとか、あるいは「瓦礫を片付けにいく」といったような人為的リソースを誰が募り、それをどこに配分していくかということですよね。これは政府が地元の行政とともに「これぐらいが必要です。ですからこちらに申し込んでください」と。恐らくそういったスキーム自体は出来あがると思っています。ですから確実に必要となる物的および人的支援は仕組みとして出来あがると思っています。

 それ以外にも、先ほどどなたかが仰っていただいた情報のコントロール。「どんな情報を出していきましょう」といったことに関しても、ネットのコミュニティは非常に強い。Twitter、Facebook、あるいはミクシィさんといった各種ソーシャルメディアがありますから。災害が発生していた過去と比べても、今は最もつくりやすい状態になっていると思います。ただこれを誰がつくるのかが大きな問題ですよね。間違った情報を間違った形で出してはいけませんから、そこに関しては注意する必要があります。それならば情報にも非常にアクセスしやすく、さらに色々な経営者等々にアクセス出来るような…、まあ夏野さんや堀さんのような方が音頭を取ってコミュニティをつくりあげていく。それが戦略としては固いのではないかなと思っています。

佐藤:賛成です。そういえば、先般“タイガーマスクブーム”ってありましたよね? ブームと言い切ってしまった…、というか、まあ実際のところブームだった訳ですが。実はですね、あの騒ぎがあった年末を過ぎてしばらく経ってから『お願いタイガー』というウェブサイトが立ちあがったんです。ご存知の方、いらっしゃいますか?かなりマニアックですが僕はそのサイトが大好きなんです。どういうサイトか。あの頃はランドセルがどんどんプレゼントされていましたが、「欲しいのはランドセルじゃないんだ」という声も結構多かった。「じゃあ何が欲しいの?」と。あげたい気持ちを持っている人はたくさんいるけれど、なんとなく皆がランドセルにしているから自分もランドセル送ったら「違う」と。これはニーズがあるということであって、それなら諸々のニーズを登録して貰おうというのが『お願いタイガー』です。それを見た人が、「ああ、じゃあ俺はこれを持っているよ」というものを差しあげるというシステムです。いわば仲介サイト。僕はたまたま『お願いタイガー』という少々象徴的な事例でご説明しましたが、実は似たようなサイトは山ほどあります。ですからそれをGoogleやYahoo!で検索してみてくださいというのがまずひとつ。

 そしてもうひとつ。小澤さんが仰っていた通り、コミュニティはこれから間違いなく立ちあがっていきます。現在こそボランティアの方に来ていただいても「正直、困ります」というフェーズですけども、まもなく「たくさん来て貰わないと困ります」という状況が間違いなく訪れる訳です。

 現在、自衛隊の皆さんや行政の皆さん、そして特別な訓練を受けたNPO/NGOの方たちが何をやっているかと言うと、人命救助をやりながら復興に向けた計画を立てはじめているんです。たとえばボランティアセンターをどのタイミングで立ちあげようかとか。その道筋をつくらずに無秩序な状態で被災地になだれ込んでも、下手をすると二次災害が起きてしまいますから。整理整頓した状態で「はい、ではいらしてください」という状況をつくる努力も行われているということですね。そのあと間違いなく専門のNPOや行政の方々が「OK」のタイミングを出しますから、そのときをぜひともお待ちくださいというのがもうひとつのお話でした。今お伝えすることが出来るのはそのあたりだと思います。

 ではお二人目のご質問に移りたいと思いますが、経営者のリーダーシップが問われているという点についてですね。たとえば休日にやるのかどうかといったことひとつとっても個々の社員では決められません。ですからその辺を経営者の方々に決めていただきたいというご意見でした。こちらについてはどうでしょう。では井上さんあたり、いかがでしょうか。

縦割りやタコ壺を超えて横のつながりを生むコミュニティを(湯本)


井上:僕は月曜日にいつも前週の売上データをチェックしているんですね。で、土日は閉めていたお店もあったのですが、営業していたお店の売上を見たら前年の6割増前後になっていたんです。先週の週末なんてほとんど売れてないだろうなと思っていたのに、です。結局、世の中は需要があるんですね。

 僕なりに想像してみたんです。もし自分が本当に被災者の方々と同じ立場になったらどう考えるかをね。自分の孫や姪っ子が週末に東京で結婚式をやろうとしていたのなら、どう考えるか。僕は、「自分がこんなことになっているんだからあなたたちも我慢して」と言いたくなるかというと、そうはならないと思いました。「自分たちこんなことになっているからこそ、あなたたちは幸せに結婚式をやってよ」。そんな気持ちになるのではないかと思いました。堀さんも仰っていましたが、僕も今回の震災を知って以来、気が付くとメールひとつとっても絵文字が減っていたりします。普段はずいぶんと絵文字を入れたりするのに、ここ2~3日は何かこう…、色もないメールになっていた。無意識にトーンダウンしている部分がありました。でも被災された方々の気持ちに立てば…、少なくとも僕がそうだとしたら自分たちに合わせるのではなく、元気な人は元気に頑張って明るくして欲しいという気持ちになるのではないかと思いました。ですから私たちもお店は極力営業しようと。オンラインのサイトはシステム上の都合でお届け出来なくなってしまうところもありますから致し方ない部分はある。しかし出来る範囲内であれば、もう前向きに、少しでも、ひとりでも多くの方にお花を届けようという気持ちで取り組みたいと思っています。

佐藤:ありがとうございます。意思を持ってお店を開いていらっしゃるということですから、そういった部分がリーダーシップという点でもひとつの表れなのかなと思いました。それでは湯本さん、いってみましょうか。

湯本:話が若干変わってしまうかもしれませんが、僕は震災後のこの数日で感じたことがあります。まず、スポーツ界では為末(大:400m HURDLER 一般社団法人アスリート・ソサエティ代表理事)君が「アスリート・ソサエティ」というソサエティをつくりました。世界で活躍するメジャーな選手からマイナーな選手まで…、オリンピックに出ているのだけれども名前が知られておらず生活にも困っているような、そういったアスリートの方々をひとつにまとめたんですね。そしてアスリートの力を使って世の中に何か発信していこうと。そういうことを、今、為末君がやろうとしています。で、「何をすればいいのか」というところから1年をかけて少しずつ成果を挙げきています。それがいい意味でも悪い意味でも物事を動かす大きな力になっています。為末君がTwitterで一言発したら、ほんの数時間で日本中のあらゆる競技にわたるアスリートに広がっていくんですね。今まで本当に縦割社会で色々な連盟や選手が交流出来ないところにこれが一気に広がって、一気に横串が刺さっていきました。今回の震災にあたって為末君が立ちあげた「チーム・ジャパン」による義援金の呼びかけについても、一晩で400万円を突破しています。そういった意味でも日本特有の縦社会という壁のなか…、まあ少し語弊はありますが、一気に横串が刺さって一致団結した新しいコミュニティが生まれようとしています。

 ファッション業界も同様です。高級ブランドやストリートブランドで活躍しているような、普段はすごく敷居の高い方々がいて、非常に壁がある業界です。でも、そこに変化が表れています。独自にTシャツをつくるのではなくひとつの大きなブランドをつくって「どんなお店にも置けるようなTシャツをぜひつくろうじゃないか」といった感じで。これもすごく象徴的です。何を言いたいのかというと、今回の震災において、今は初動期だけに被災した方々の命が少しでもたくさん救われるようにと考えていた。電気のことから何から何まで、まずはやらないといけないタスクがいくつかありました。しかし大事なのはそのあとです。初動期を経て次に大切となることは、熱が冷めてしまうのを防ぐことです。その意味で、単発のプロジェクトばかりが立ちあがっているといつしか火が消えてしまうのではないかと僕は思っていました。そこで大きなコミュニティが、この会をきっかけにしてでも生まれていくことによって簡単に止まらなくなる。さらに大きなムーブメントにもなりますし、きっと継続的なプロジェクトになるのではないかということを感じています。

 今は、スポーツ業界、ファッション業界、あるいは芸能界といったところがすごく象徴的に動いていると感じています。しかしそれが経済界をはじめ色々な世界にも広がっていって、今回のことを契機として今までなかなか結びつけられなかったところが手を結んでコミュニティになっていけば嬉しいと思います。もちろん震災からの復興ということについても、本当に継続的なムーブメントを起こしていくのが大事ですから。皆さんの周りにも、さまざまな得意分野を持っている方がいると思います。ですからそのなかで、ぜひ、少しでも大きく力強い絆を持ったコミュニティをつくる。そういったことを意識していくのが良いのではないかというのが、僕の実感としてありますね。

佐藤:そうですね…、あ、はい。では井上さんどうぞ。

井上:今のお話のついでというか…、たまたま僕らは今年から僕ら本物のバレンタインをッ始めようとしていたんですね。海外では男性が女性に花を贈るのですが、日本は逆なので「これを変えよう」と。それで今、業界がはじめて一体になっています。今までは、たとえばあるお花屋さんがやると「うちはやらない」とか、そういう動きが多かった。でも「そういうことは止めて皆でやろうよ」となったら、生産者さんはじめ色々な方々が思った以上に協力してくださるようになり、予想よりも大きな渦が出来ました。結局、自分たちだけでやるのもいいのですが、大きくなればなるほど持続力というものが出てくるのだと感じています。僕としてはその花をなるべく日本全国へお届け出来るようにしたいと。それもうちだけではなく、皆でやっていきたいと思っています。そういったことをバレンタインで実感したのですが、ぜひ、皆さまも自分のところだけでなく、何かこう、業界とか、大きな枠組みで考えていかれたほうが良いのではないかと僕は思っています。

佐藤:はい。では田島さん、お願い致します。

確固たる意志を持って復興するという希望(田島)


田島:あと10分ほどですから最後のコメントにしますが、私は今回のお題をいただいてから、「私たちに今何が出来るのか」ということをずっと考えていました。「なんだろう、なんだろう」って。ひとつ見つけました。誰でも出来ることです。お金持ちでなくても出来ますし、スーパースターでなくてもいい。誰にでも出来ることをひとつ見つけました。たぶんそれは、今は「希望」なのではないかと思うんですね。それも確固たる意志に基づいた復興するという希望です。実際、テレビから流れてくる被害の映像には本当に直視出来ないものもありますよね。悲しくて。だからこそ、今は希望というものがすごく重要になるのではないかと思うんです。

 途上国で働いていると「国の力ってなんだろう」ということに直面する機会がすごく多いんですね。たしかに軍艦をたくさん持っていたら国は強いのかもしれない。資源がたくさんあったら国は強いかもしれない。ただ、私が途上国で仕事をしていて心から感じたのは、結局のところ、国の力はひとりひとりの人間の力なんだということでした。政府ではなく個人個人の力が総体になったとき、爆発的な力が生まれる。それが自分の目で物事を見てきて、強く感じたことです。で、私としてはそれと同じことが今も言えるのだろうと思っています。恐らくこの地震が日本の分岐点になるのではないかと、私はひそかに思っています。復興するか否かは、たとえば政府の方の努力にもよりますが、それだけではありません。私たちひとりひとりの希望の力から生まれた「絶対に復興する。出来る」という気持ちにもよるのではないかと、私は思っています。

佐藤:ありがとうございます。ではそろそろ時間も迫ってきましたので、最後は皆さまに一言ずつコメントいただき、締めに向かいたいと思います。では手前からよろしいですか? 梅澤さんのほうから順番にお願い致します。

梅澤:ひとりひとりが希望を持つという田島さんのお話に加えて、もうひとつ。私としては、誰もが自分のプロフェッションを通じ、いかにこの社会に大きな貢献していくかを考えることが重要になると思っています。それが日本全体で必要なファンディングを成立させる力になるし、復興しなければいけない地域の方々にも希望を与える結果になる。先ほどのお話にあった東電管内の電力不足という話を「とりあえず脇に置いておけば」ですが、要は東京が引っ張って日本の成長を支えていかないと、いよいよ日本経済の今後は厳しいものになる。私も先週末さすがに色々と考えました。しかし、今日からはやはり迷わず、自分の仕事を今まで以上に取り組んでいきます。どれだけ多くの会社が力強く成長させていけるか。私はとにかくその支援を続けようという確信に至りましたし、社員にも今日はそういう話をしました。それによって、この国の復興に必要となるさまざまな経営資源をつくっていけるからです。結果として、その努力が10年後、「あのときがターニングポイントになったね」と言えるようにするのだと。そしてそのとき、「今我々はもう一度素晴らしい国をつくっているよね」と言えるようになるための努力でもあると、固く信じています。

佐藤:ありがとうございました。それでは夏野さん、お願い致します。

夏野:今回の震災で我々が考えなければいけないことは本当にたくさんあると思っています。被災地は復興しかない。ここを助けるのは当たり前です。ただ、東京にいる人間が今は基本的に何も出来ない状態です。募金や節電ぐらいしか出来ない。それならこの状況で我々は何を考えてくべきか。歴史のなかで人類が常にこうした災害を乗り越えていったとき、考え方を変えてなんらかの進化を遂げている。たとえばですが、日本人はもう過去の流れのなかで貯蓄しまくって、最終的に「消費行動が悪だ」と言うようになった。これは一例ですが、「今、そこを変えて消費しようよ」と。貯金を全部使ったっていいじゃないですか。そういった何らかのマインドチェンジをしていかないとだめだと思うんですよ。先ほど休日対応にまつわるお話がありましたが、メインは製造業です。それならもうお花はばんばん売ればいいと思う。だって土日に売るものだから。そんな風に消費していく方向に行って欲しいなというのが、まずはひとつありますね。

 それからもうひとつ。日本は人口減少の国です。日本のような人口減少の国で大きな問題になっているのは、やはり少々不便なところですよね。過疎地あるいは僻地における高齢者の問題です。今まではそこに住むことを前提にしながらいかに助けるかという議論をしていましたが。しかしもう人口は減ってきて、若者が助けられなくなってきている訳です。それならば、もしかしたら住み慣れた土地を諦めて貰うといったことの是非も議論しなければいけない時期かもしれません。これ、メンタルでは誰もが反対ですよ。しかしこれほどの災害があったのだから、今までは政治家がある種タブーにしてなかなか言えなっていたことも民間としては考えていかないといけない。効率的に国土を使うという視点で根本的に考えなければいけない時期に来ているのではないかと僕は思っています。そんな風にして、これをきっかけに今まで当たり前だと思っていた身近なことを、ぜひ皆さんと一緒に考え直したい。よりよい日本のために考え直したいというのが僕からの提案になります。

佐藤:ありがとうございます。では湯本さん、お願いします。

湯本:はい。先ほどのお話と少し重なってしまいますが、僕のほうからは二つほど。ひとつは梅澤さんが仰っていただいたように、やはり自分のプロフェッショナルな部分を生かしつつ、これから何をやっていけるかを真剣に考えていきたいと思っています。それも個ではなく大きなコミュニティで継続的に。実際、今回の震災に対してスポーツ選手に出来ることというのもいくつかのステージに分かれていきます。まず現在は何も出来ない以上、各々スポーツで義援金を集めるための広告塔になろうと。そして次のステージではアスリートからメッセージを発信して現場に元気を送る。実際に現地へ行って励ますといったこともしましょうということですね。そしてさらに次のステージではスポーツを通して子どもたちの元気を呼び起こすという活動をしていきます。何らかの支援をしたり、海外のトップアスリートを招いてチャリティーマッチを行ったり…。それを毎年、継続的にやっていくことが大切になります。もちろん各分野で実現出来ることは異なってくると思います。ただ、それを個人としてでも良いし、コミュニティという組織の力としてでも良いから、とにかく継続させていくことを考えていきたいというのがまずひとつあります。

 もうひとつ。シビックフォースというのは今回のようなときのために準備をしてきた組織です。医療の面で準備をしたり、政府に働きかけてアメリカとも提携したりしつつ、いざ何かが起きたときは皆で手をつないで一気に行こうと。とにかくすばやく現場に駆けつける組織を、これまでは築いてきたと思っていました。しかし今回、実は残念なことがあったんですね。それは順天堂大学との連携について。僕は同校医学部の出身ですが、シビックフォースは順天堂と「何かがあったときはドクターヘリをすぐに飛ばして現場に駆け付ける」という提携をしていたと聞いていました。で、今回もシビックフォースが順天堂にオファーを出した。しかし順天堂のほうは週末が手一杯だったということもあって、お医者さんを出せなかったんです。悲しい気持ちになりましたね。もちろん医者が足りず病院が廻らくなるのはまずいと思います。しかし昨日、順天堂のある教授とお話をしていたら、「実は医者が30人いなくても病院は普通に廻る」と言うんです。「ただ、トップはそういう風に判断出来なかった」と。これについては恐らく色々とリスクヘッジもあったと思いますが、特に日本の医療業界はそういったコラボレーションについて障壁が高く、なかなかスムーズに事が運びません。ですから今後はそういう障壁をなくし、いざというときは皆が本当に力を合わせることの出来る組織づくりをしたいと思っています。

佐藤:ありがとうございます。では小澤さん、お願いします。

小澤:私どものNPOはまさにこのような災害のためにつくられた組織です。ですから我々としては、とにかく今まで想定してきたシナリオに則ってしっかり活動させていただくということに尽きると思っております。ただ、まだ小さな組織です。現場に行って感じたのは、自衛隊も警察も消防も本当に頑張っていらっしゃるということなんですね。特に自衛隊の方々は現地でスターですよ。被災者の方々も皆、自衛隊が来れば「助かった」と仰っています。救助ヘリの方も命を張っていますし、原発では何人も怪我をされていると思いますが、本当に身体を張った活動をなさっています。私どもがそれにとって替わるなんていう立場では当然ない訳ですね。我々としてはただただ、行政の「それでも人が足りない」という部分をなんとか民間のリソースでお手伝い出来ればという気持ちで活動しています。それ以外では、とにかく被災地の現状を皆さんへしっかりお伝えしていきたいと。メディアが伝えきれていない現場の様子を、写真、動画、そしてテキストでリアルに皆さんへお伝えしていきたいと思っています。そんな風にあくまでも補足な立場ではございますが、「初動期から活動出来る」という点では稀有な団体でもあります。ですから、もし皆さま方から資金面で今日ご支援いただけるのであれば、明日にはヘリコプターのチャーター資金にさせていただくことが出来るという意味でも非常に稀有な組織であると思っています。補足な立場ではございますが、皆さま方の「何かしたい」というお気持ちを僕らの力に変えることは出来ます。

 たとえば被災地に入ったときの様子を若干お伝えしますと、ある避難所は本当に整然としていて、略奪も起きていませんでした。「こちらの衣服は濡れた方にしか配れません」と言えば、本当に濡れた人しかやってこないんですね。この国にはそういった素晴らしい文化と素晴らしい国民性があります。しかし、食べるものがそろそろ尽きてしまいます。本当に飢えたとき、これがどうなってしまうのかというのは非常に心配です。ですから一刻も早い救助が初動タイミングで求められているなか、僕らが出来ることは少ないかもしれません。しかしまずは現状を知っていただきたいと。たとえばたくさんの人が高速道路を使ってしまうと、本当に必要な食料が届きにくくもなりますよね。そういったことをご理解いただくという意味においても、情報の適宜開示というものを民間の立場からしっかりやらせていただきたいと思っております。ですからシビックフォースの活動に今後ともご支援と、それからご注目を頂戴出来ればありがたいなと思っている次第です。今日はこのような機会を設けていただきまして本当にありがとうございました。

佐藤:どうもありがとうございました。では西川さん、お願いします。

西川:はい。今回の震災に関して、皆さんも色々と目頭が熱くなってしまうことは多かったと思います。たとえば英雄的な行為がメディアで紹介されたところに感慨を受けたというのもあったでしょうし、震災当日の東京で帰りが大変だったとき、皆さんご自身に色々な人から手を差し伸べて貰ったとか…、色々な機会があったと思います。そして「日本人ってやっぱりすごいな」というか、日本人としての誇りをすごく感じることが出来たと。こんなことを言ったらひんしゅくを買ってしまうかもしれませんが、日本人としての誇りをすべての国民がここまで感じることが出来るようなことが今まであっただろうかと思います。国内だけでなく世界の国々からも声が届きましたよね。海外通信の社説でもそれはありましたし、草の根の声という形でもありました。震災の直後からTwitterに [#prayforjapan]というハッシュタグも出来た。「日本のために祈ろうという」と。そんな世界の声を見聞きするたび、本当に感動して泣いてしまうことが僕にはよくあります。田坂先生が仰っていましたが、そういう思いをすべて心に刻んで「よし、絶対に復興させるぞ」という決意を持つ。それが亡くなってしまった方々に対する最大の弔いにもなると考えています。復興を成功させるために必要となる具体的な戦略と知恵、あるいはお金…、そういったものも色々あるかとは思います。しかし一番の原点は、やはり「絶対に復興させてみせる」という強い意志を全員が持つことなんだろうと思っています。

 もうひとつ付け加えたいことがあります。この巨大な震災から復興するには、30代40代を中心としたG1サミット参加メンバーのような若い世代の力が必要であると僕は思っています。僕らはこの局面で本当に活躍出来ると確信しているんですね。何も遠慮することないです。もう政府でもどこへでも、どんどん乗り込んでいけばいい。「何も怖いものない」と。やろうと思えばいくらでも救助や復興への道のりを拓けると強く思っています。ですから自分に限界をつくらず、やるべきことをやっていきたいなと。結局は田坂先生が仰っていたことの繰り返しとなってしまいますが、20年後、あるいは30年後に今を振り返ったときに、「あの巨大な悲劇は日本が大復活するスタートになっていたのだ」と言えるよう、僕自身も精一杯頑張りたいと思っています。

佐藤:ありがとうございます。井上さん、お願いします。

井上:僕は湯本君たちと一緒にトライアスロンをやっているのですが、トライアスロンというと、当然、レース途中で水やバナナを口にしたりしますよね。でも、それと変わらないぐらい…、いやそれ以上に、「頑張れ」という声援を貰うことで元気が出るんですよね。疲れていてもどれほど追い込まれていても、何かこう、エネルギー出てきちゃうんですよね。声援や精神的なサポートは本当に大事だと思っています。ですから、花は食べる訳にはいかないですし何かの用途で使う訳にもいきませんが、大きな心の支えにはなると。そんな気持ちから、僕のほうでは今、集められるだけの花を集めています。それにプラスαで被災者の方を元気づけようという気持ちから考えたのですが…、湯本君、これ、ぜひスポーツ選手の方に配って貰いたいなと。これ、いいでしょ?

湯本:いいですね。やりましょう。はい。

井上:ね? ぜひやりましょう。

 こんな風にぱっぱぱっぱと物事を決めながらアクション起こしていきたいと思っています。僕は花を集めて、湯本君の友人であるスポーツ選手の方々に現地へ行って貰い、それを被災者の皆さんに配っていただくと。テレビで観ていたようなスポーツ選手からお花を一輪ずつ貰えたら、これは心のエネルギーに繋がるかなと思いますので。湯本君、これはもうぜひやりましょうね。とにかく出来ることはさっささっさと決めて、どんどんアクションに移していただきたいと思っていますので、皆さんもご一緒に頑張っていきましょう。

佐藤:ありがとうございました。では土屋さん。

土屋:では手短に「ピンチをチャンスに」というお話を2点ほど。ひとつは“跳躍力”という言葉について。実は以前、G1のコミュニティでも「敢えて危機を与えなければ日本は元気にならなのではないか」という議論がありました。当然、それに対して「わざわざ与える必要があるのか」、あるいは「与えるというやり方は良くない」といった賛否が色々とありました。しかし、今はまさしく危機な訳です。そういう意味では今は大きく跳躍していくチャンスであると。韓国のIMFであったり、第二次世界大戦であったり…、そういったものと同じように跳躍のチャンスがあるということがまず一点。

 そして二点目。今の日本は「引きこもり」とか「自殺」といったキーワードが示す通り、あらゆる意味で内向き傾向にありました。しかし今回の震災で色々なグループが協力して集まるようになってきています。このとき重要な考え方は、実は助けられる側ではなく助ける側がパワーを貰うという事実です。助ける側が関わっていることで元気になっていくんですね。そのような元気を貰うために皆が繋がっていく訳です。「そのためにも大きなコミュニティをつくって、その勢いを持続させていくということを皆さんでやりませんか?」というお話を、私のコメントにさせていただきたいと思います。

佐藤:ありがとうございます。そうしましたら、締めのお話として堀さんのほうから最後にお願いしたいと思います。

堀:ありがとうございます。今日は皆さん、おこしいただきまして本当にありがとうございます。大震災が起こって二日強ですね。今、日本は英語で言えば‘devastating’となる壊滅的な状況のなか、精神的な部分も含めて本当に大きなダメージを受けています。ただ、僕としては今日ディスカッションを行ったことで、何より自分にとって良かったと思えることが3点ありました。

 一つ目は信じること。僕は、福山さんを信じたいし、原発で作業されている方々を信じたいし、自衛隊の方々を信じたい。信じることが重要だと思うからです。非難をするのは簡単ですが、やはりその人たちを信じて「日本は良い国だ」ということも皆で信じる努力が今は大切なのだと改めて思いました。

 そして二つ目は今日のディスカッションそのものについてです。ここは色々な意見がありました。Twitterでも言われていましたが、「結局、議論だけで行動が生まれなかったら何の意味もない」という意見がありました。ただ、僕はそう思っていません。夢、希望、信念、あるいは勇気や愛といった、目に見えず、お金でもないものが実は重要ではないのかという気持ちがベースにあるのですが、そういったものをメッセージとして多くの方々に送り届けることは行動以外のディスカッションでも可能だと思っているからです。で、この震災にあたってはG1の仲間でも、もう昼も夜も徹した対応にあたっている人がたくさんいる訳ですよ。そういった人々を励ましながらやっていけるようなことが出来るのは、僕は素晴らしいことだと思っていますので。

 そして三点目。僕らは決してひとりではないということも強く感じることが出来ました。僕らにはネットワークがあって、そのネットワークによって励まされているんです。僕は名刺を交換した方が世界中に5000人ほどいるのですが、彼らに今回の震災についてメッセージを飛ばしたらものすごい数の反響が返ってきました。世界中の方々が「手伝いたい」と。「日本に今まで受けてきた恩に対し、僕らはお返しをしたいんだ」といった言葉をたくさんいただきました。そういった世界とも繋がるネットワークにもメッセージを発信していきながら、復興に向けたひとつのきっかけにしていきたい。僕としては今回の集まりにそのような役割も持たせたいと思っています。それはこの場からはじまっていく訳ですし、それによってひとりひとりが「やるんだ」という気持ちを持っていくものだと思っています。ですから僕は小澤さんを信じていますし、誰もが被災地へ飛べるという訳ではない以上、僕らは僕らなりの範囲でやるべきことを力強くやっていきたいと思っています。僕からは以上になります。

佐藤:どうもありがとうございます。ただ今、お話のなかでところどころに「G1」というキーワードが出てきましたが、これは人によっては聞き慣れない言葉だったかもしれません。G1というのは簡単に言いますと、主に若手の経営者や政治家が集まって「この国や地域をより良いものにしていこう」という趣旨で開催されるサミットのことです。堀さんのリーダーシップで行われておりました、そのメンバーとなっている方々にも今日はご登壇いただいたということでございました。

 ただいま堀さんのお話にもありましたように、今回のディスカッッションについては「議論ばっかりやっていても仕方がないじゃないか」といったご批判は正直ありました。しかし今日、実際に開いてみれば、たとえば最後は井上さんと湯本さんのコラボも生まれようとしている訳ですよね。トップの二人がやると仰っている訳ですから恐らく実現するのでしょう。また、フロアのほうからも「僕はこういった情報発信をやります」というお声をいただきました。やはりこれだけ集まって色々な人が知恵を出し合えば、良いアイディアも生まれると思うんですよね。ですからここは臆病にならず、前に進みたいと思っています。なんでもかんでも自粛ではなく、「前に進むんだ」という強い意志が必要だなあと感じました。勇気を持つことも学んだということでございます。

 ちなみに僕は今、髭も生えていますし、私服ですし、大変失礼だったと思っております。実はこの三日ぐらいはほとんどシビックフォースあるいはそれ他のNPOで、支援現場に皆さんの声とお金を届けるべく色々と動いておりました。ジャストギビングというシステムをなんとか維持し、さらに参加してくださる方を増やそうということでうちの社員もほぼ夜を徹してやっておるところでして…、改めて失礼をお詫びしたいと思います。と、格好をつけて言いながらもですね、システムが現在ダウンしておりまして。たくさんの方にご迷惑をおかけしてしまい、これも反省しきりではあります。我々としても想定外だったというか…、これほど一気にたくさんの方々から興味を示していただき、ホームページにアクセスいただけると思っておりませんでした。お恥ずかしいことこの上ないのですが、今からまた現場に戻って頑張りたいと思います。

 そんな訳で、今日は正直、段取りも色々と不十分でございました。事務局の皆さん、そして後方に立っていらっしゃるボランティアの皆さん…、色々な方のご協力でここまで積み重ねられた段取りの良いプロジェクトを、今日は思い切り変えてしまった挙句、このような出来となってしまいましたこと、この場を借りてお詫び申しあげたいと存じます。ただ、皆さんの努力は決して無駄にはなっておりません。皆さんの努力があったから、これだけたくさんの方にお集まりいただけて舞台も整った訳ですから、この点についても重ねまして心からの感謝を申しあげたいと思っております。

 最後に、前段でご紹介させていただいた通り、シビックフォースへの募金をこの場にて進めさせていただけたらと思っております。特に強い反対がなければ進めたいと思いますがよろしいでしょうか。やってみますか(会場拍手)。ありがとうございます。シビックフォースのメンバーは今日も4~5人、被災地におります。彼らに、今日この場で皆さんにいただいたお声や拍手をぜひ届けたいと思います。また、まずは少しで結構ですので募金を添えて届けられたらと思っておりますので、その点、ご協力いただけましたら幸いです。シビックフォースの資料もご用意させていただきました。お帰り際に一枚ずつお取りいただければと思っております。今日はお忙しいなか、また、大変な状況のなか、お越しいただきまして誠にありがとうございました。ご参加者の皆さん、それから登壇者の皆さんにもお礼を申しあげたいと思います。本当にありがとうございました。(会場拍手)


 

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