http://ja.wikipedia.org/wiki/2010%E5%B9%B4%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E5%8F%A3%E8%B9%84%E7%96%AB%E3%81%AE%E6%B5%81%E8%A1%8C
2010年日本における口蹄疫の流行(2010ねんにほんにおけるこうていえきのりゅうこう)では、2010年(平成22年)の春から夏にかけて、日本の宮崎県南部を中心に広まった口蹄疫の流行について記述する。
2010年3月頃発生し、2010年7月4日の終息確認まで、宮崎県で発生した牛、豚、水牛の口蹄疫の流行である。28万8643頭を殺処分した。畜産関連の損失は1400億円、関連損失を950億円とした[1]。宮崎大学の根岸裕孝准教授(地域経済)は年間426億円の損失で3-5年続くとしている[2]。
国の補償対象は計1,379戸。補償額528億円の内訳は、感染農家が288億円で、ワクチン接種農家が240億円[3]。
口蹄疫が疑われる場合または発生した場合、家畜伝染病予防法・口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針[4]に沿って対応が実施される。家畜伝染病予防法は都道府県の法定受託事務にあたり、国の関与が制限される(詳しくは地方分権一括法を参照)。
2010年10月29日、宮崎県口蹄疫対策検証委員会は中間報告[5]を発表し、発生前の防疫対策は不十分であり「海外で口蹄疫が発生する中で県として危機意識が高かったとは言えない」とした。また1例目の診断時に口蹄疫を疑わなかったことは「典型的な症状や感染拡大がなかったので、意図的な見落としではない」が、「(国に)検査検体を送るべきだった」とした[6]。他に「初期対応段階の判断・処置は適切であったか」「まん延段階、特別措置法に基づく措置の段階での判断・処置は適切であったか」「県の危機管理体制に問題点はなかったか」「国・市町村・各県・各団体との連携・協力はどうであったか」の4つを論点としている。
- 2010年11月24日、農林水産省の口蹄疫対策検証委員会の報告書は宮崎県の防疫の実態や政府の判断ミスを批判している[7]。特に畜産基地として発展した宮崎県の畜産インフラ整備の不備が指摘されている。
- 主な検証点は以下の通りである。
- 1例目で、宮崎県畜産へのダメージを恐れ、家畜保健衛生所が10日間報告を遅らせたと推測している。報告が遅れた他の公的農場の例もある。
- 家畜防疫員は47人で畜産農家約250戸に一人であり、全都道府県でもっとも手薄であった(全国平均は50戸)。初期の感染状況調査は、電話で行っていた。
- 県やJAの施設でも防疫が杜撰であった(10例目・豚の1例目・宮崎県畜産試験場(消毒に効果のない逆性石けんを使い、それも抜け道あり)、13例目・JA宮崎経済連、101例目・宮崎県家畜改良事業団)。長靴・消毒槽がない民間農家や、立ち入り検査時に牛房の半分で症状が出ている大規模法人農場(7例目)があった。
- 5月19日の国の対策が遅かった。
- 宮崎県の種牛の特例救済は間違いであった。
- 牛豚等疾病小委員会の対応や開催頻度には問題があったと考えられる。(p7)(検証委員会に当時の小委員会メンバーは入っていない)また国、県、市町村の対策や連絡体制の不備が指摘されている。
- 2011年1月14日に宮崎県の最終報告(委員長:宮崎大学工学部教授原田隆典)が出た。
3月
4月
- 4月9日
- 都農町の和牛1頭に口腔びらん等の症状を確認。開業獣医師(青木淳一[19])から宮崎家畜保健衛生所に病性鑑定を依頼。宮崎家畜保健衛生所の家畜防疫員(獣医師)が当該農場の立入検査を実施したところ、症状がある牛が1頭のみで現時点では感染力が強いといわれている口蹄疫とは考えにくいため、経過観察とした(この段階では疑似患畜としては確認されず、公表もされていない。何の病性鑑定の依頼があったのかも不明)[20]。また、口中のかさぶた状の潰瘍と発熱、食欲不振、わずかなよだれはあったが、口蹄疫特有の水疱や激しいよだれが見られず、しかも発熱は1日で治まってすでに4日が経過していたことからも口蹄疫とは診断できなかった。口蹄疫ウイルスの潜伏期間は、牛の場合で約1週間であるため、獣医師は12日まで毎日往診したが、異常のある牛は見つからなかった[16][21]。
- 4月16日
- 夕方、同じ症状の牛がみられるという報告。
- 4月17日
- 再度、立入検査を実施したところ、別の2頭に同様の症状があることを確認。同日、病性鑑定を開始。
- 防疫指針には「発症家畜が複数である場合には至急、動物衛生課に電話で連絡する」とあり、その対応を批判する声もある[22](3月31日の時点で4頭に異常が見られたとの報道もある)。
- (※指針によれば上記の報告は、“所有者、獣医から口腔や蹄などに水疱の形成等の異常が見られたと通報を受けた場合”を前提として(3)都道府県畜産主務課の措置 ア異常畜報告時 の項目に記載されており、イ 本病が否定される場合と続くため、獣医師の診断とは無関係)(家畜防疫員は所有者、獣医師等から“口腔や蹄などに水疱の形成等の異常が見られる”と通報があった場合に家畜保健衛生所長、都道府県畜産主務課へ報告するとの記述もある)(詳しくは「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針[23]」第2防疫措置を参照)
- 4月19日
- 4月20日
- 4月21日
- 精液ストローのほぼ全量(年15万本)を生産する県家畜改良事業団が供給停止した。流通在庫は約2ヶ月分、在庫は約1年分。
- 赤松農林水産大臣が規格外の野菜販売促進の為、東京都内にあるジャスコ品川シーサイド店野菜売り場を視察する[29]。
- 4月22日
- 4月23日
- 4月25日
- 新たに4頭の感染が確認。殺処分予定は1108頭に上り、この時点で過去100年間で最多の口蹄疫流行となることが確定。
- 宮崎県が感染疑い農場周辺を通る県道307号尾鈴川南停車場線の一部区間(1.5km)を一時封鎖[36]。
- 4月27日
- 4月28日
- 国際連合食糧農業機関(Food and Agriculture Organization、FAO)は、日本と韓国における最近の口蹄疫発生(outbreaks)に関し、「4ヶ月に3件の発生は非常に懸念すべき事態」と指摘して、口蹄疫の脅威増加を警告[38]。また、日本と韓国から2001年に南アフリカ、英国、欧州で起きた口蹄疫蔓延の惨事が繰り返される可能性と、その被害が数百万ドルに達する可能性に言及し、国際的監視強化(heightened international surveillance)を呼びかけた[39]。(5月21日、5月26日を参照)
- 10例目の感染を確認。農林水産省は第2回口蹄疫防疫対策本部を開催し[40]隣接県全域での全額国庫負担による消毒薬散布、宮崎県における迅速な殺処分等の防疫措置を支援する獣医師などの増員等を決定した。また当初の感染例から約70km離れた宮崎県えびの市でも感染が疑われる牛が確認された(9例目)ため、「口蹄疫に関する特定家畜伝染病防疫指針」に基づきえびの市の発生農場にも移動・搬出制限区域の設定などの防疫対策が行われた。なお、えびの市の発生農場は疫学関連農場であった。
- 自民党の谷垣禎一総裁が現地視察のためJA尾鈴(川南町)などを訪問。
- 4月30日
- 相次ぐ感染報告(4月30日時点で12例4369頭の報告)から、政府は支援対象地域を4県(宮崎・鹿児島・大分・熊本)全域に拡大[41]。
- 自民党の口蹄疫対策本部が口蹄疫対策について、舟山康江農林水産大臣政務官と松井孝治内閣官房副長官に申し入れる[42]が、山田農林水産副大臣は政府主導で事態は収束に向かっているため、自民党案は不要との見解を示した[43]。
- 自民党の浜田靖一国対副委員長が赤松農相に、国内の口蹄疫対処を優先して外遊を中止すべきだと進言(5月19日で後述)。
- 赤松農相がメキシコ、キューバ、コロンビアへの外遊に出発する[44]。帰国は5月8日。福島瑞穂内閣府特命担当大臣(消費者行政/少子化担当)が外遊期間中の農林水産大臣臨時代理を務めた。
- 5月1日
- 5月2日
- 感染累例15例、殺処分対象数8974頭。
- 5月4日
- 5月5日
- 5月6日
- 農水省は、今回日本で発生した口蹄疫ウイルスが韓国型に似ていると5月3日に発表したが、パーブライト研究所(口蹄疫の公式最終確認機関)の遺伝子分析の結果(配列解読は日本の動物衛生研究所)、2010年の中国・香港型にも非常に良く似ており、O/MYA/7/98(DQ164925)型とされると発表[51]。
- 宮崎県は作業に従事する職員らの疲労が限界に達しつつあるとして、全市町村の対策本部を通じて人員の募集を開始[52]。
- 感染が疑われる農場や畜産試験場は宮崎県内の35箇所に拡大。殺処分の対象は44,892頭に達した。
- 山田農林水産副大臣は記者会見で赤松農林水産大臣が外遊先の国々と友好を深めたことを報告した[53]。
- 5月7日
- 民主党の小沢一郎幹事長が宮崎県を訪れるが、具体的対策の提示はなかった[54]。
- 5月8日
- 5月9日
- 舟山大臣政務官が外遊から帰国。
- 5月10日
- 新たに川南町の11農家の牛と豚に感染の疑いがあると発表。新たに殺処分対象となった牛と豚は合計1万2498頭、殺処分される牛と豚は計7万6852頭となる[57]。殺処分される豚は川南町全体の約半分になった。
- 農水省は、香港当局から口蹄疫発生に伴い、設定された移動制限区域及び搬出制限区域以外で生産された豚肉の輸入を認めたとの連絡を受け、香港への豚肉輸出手続きを再開することを発表[58]。
- 赤松農相が口蹄疫発症後の宮崎県を初めて訪問し、東国原知事、農業団体長、自治体長らと会見。赤松農相は「権限の問題ですべてを国がやれないのが宿命だが、大事なのはまず収めること。この難局は力を合わせてあたっていくしかない」[59]、「全く問題ない。万全の態勢でやってきた」「幸いにして3キロ圏内に封じ込められている」などの認識を述べた。自民党の古川禎久衆院議員(宮崎3区)が「現場は災害。何度も農水省、官邸に対策を申し入れている。今日、回答が出ると期待して来たのではないか」と赤松農相に発言すると、無所属で民主党会派に所属する川村秀三郎衆院議員(宮崎1区)が「具体的に回答している。PRしたって駄目だ」と赤松農相を援護したため、口論となった[60]。
- 5月11日
- 5月13日
- 農林水産委員会が開かれる[62](視聴可能)。
- 新たに川南町の9ヶ所と、えびの市の1ヶ所の農場で、合わせて18頭の牛と豚に感染の疑いがあると発表。これで宮崎県内で処分の対象となった家畜は86例8万200頭余りになり、この10日間で9倍近くに増える[63]。
- 5月13日 - 14日、宮崎県の畜産業にとって特に重要なエース級の種牛6頭を24km離れた西都市尾八重農場跡地(制限区域内)に移動。移動したのは「福之国(ふくのくに)」、「勝平正(かつひらまさ)」、「忠富士(ただふじ)」、「秀菊安(ひできくやす)」、「美穂国(みほのくに)」、「安重守(やすしげもり)」の6頭。
- 「宮崎大学口蹄疫対策本部」(4月21日発足)が開催した「学内口蹄疫防疫対策説明会」に221名参加[31]。
- 5月14日
- 5月15日
- 5月16日
- 5月17日
- 宮崎県立農業大学校(高鍋町)で感染確認[72]。高鍋町で2例目。そのほか、新富町でも乳牛が感染の恐れ(その後確認)、殺処分開始[73]。
- 宮崎市の宮崎市フェニックス自然動物園が感染予防のため無期限臨時休園[74]。
- 鳩山首相は17日昼に赤松農相に対し、口蹄疫防疫対策に2010年度の予備費から1000億円充てるように指示[75](ただし、同日夕刻の野田佳彦財務副大臣の財務省の記者会見で「額は確定していない。1000億円という数字が出てくるとは思えない」と述べ、1000億円の拠出に否定的な考え[76]。同日夕刻のぶら下がり取材にて、鳩山首相は額は決まっていないと発言)。政府の口蹄疫防疫対策本部の本部長を赤松農相から鳩山首相に格上げし、夕刻開催した。山田正彦農林水産副大臣を長とし小川勝也首相補佐官も加わる対策チーム(スタッフ19人、農水省からは平尾豊德消費・安全局長ほか)が現地に常駐し、3チームで行動予定[77]。政府は特別措置法を検討中であり、財政当局は100 - 200億円規模を予定[78]。
- 感染累例126例、殺処分対象数11万4177頭(牛・水牛8564頭、山羊4頭、豚10万5519頭)。
- 5月18日
- 東国原知事が非常事態宣言を発令[79][80]。
- 農水省専門家委員会で全頭処分とワクチン接種を検討し、県に非公式に打診。内容は半径10km圏で全頭ワクチン接種後処分、半径20km圏で全頭買い上げ後食肉加工して廃棄処分する計画[81]。
- 農水省が川南町・高鍋町・新富町の農場で新たに感染の疑いがある家畜が確認されたと発表(公表資料112例目~126例目[82]、127例目~131例目[83])。新富町では初の事例[13]。
- 北海道ホルスタイン農業協同組合が全国最大規模の総合畜産共進会(9月)の開催を来年に延期決定[84]。
- 兵庫県が但馬牛種牛12頭の半分程度と冷凍精液2ヶ月分を加西市から朝来市へ移す方針を決定[85]。
- 宮崎県は肉用牛産肉能力検定所(高原町)が飼育する生後1年前後の種牛候補の牛16頭を、高千穂町へ避難させた。
- 千葉県旭市農水産課によると、消石灰を1500袋4月30日に配布した以後、手に入らない状況が続いている[86]。
- 感染累例131例、殺処分対象数11万8164頭、処分未完了約6万頭。
- 5月19日
- 政府口蹄疫対策本部が「基本的対処方針」を公表[87]。主な感染地域から半径10キロメートル内の全頭をワクチン接種後殺処分することを発表。対象となる牛・豚は30万頭を超える見込み[88]。
- 自民党の浜田靖一国会対策委員会副委員長は、「4月30日に赤松農相に対して、『対応策を練るために海外出張を取りやめたらどうか』と申し入れたが、振り切って海外に行ってしまった」ことを明かした[89][90]。
- 衆議院外務委員会(15号)で、小野寺五典[91](自由民主党・無所属の会)は、赤松農水相の外遊について質問。小野寺はメキシコ、キューバ、コロンビアの3国とも不要不急[92]の訪問であったとして、この外遊は「社会主義の先輩の国のカストロさんと会うこと、これが赤松さんの最大の目的」であり、日本政府ではなく赤松農水相にとって個人的に大事な用件[93]だったと主張し、「口蹄疫で泣いている宮崎の農家の皆さんのことを差しおいて」外遊を強行したことを批判した。
- 鹿児島県、貴重な県産ブランド牛「鹿児島黒牛」の種牛12頭を鹿児島市から約100キロ離れた口永良部島(屋久島町)や種子島などに分散避難させる方針を固める[94]。精液の一部も分散保管決定(保管先は公表しない)。
- 5月20日
- ワクチン接種および発生10km圏内の全頭殺処分の「基本的対処方針」について、山田農水副大臣と、川南町など宮崎県の2市7町の首長が会談。首長側は、方針が地元を無視した形で一方的に決定された上に、具体的な損失補償の内容が示されていない現状では地元の同意が得られないとして、畜産農家との協議と具体的な補償内容の明示を要望。山田副大臣は前日の記者会見で住民の同意を重視する趣旨の発言をしたが、会談後には理解を得たいとしつつも、「(ワクチン接種は)地元の同意がなくても可能」と発言。同席した東国原知事は「鳩山首相には大枠でいいので地元が納得のいくような補償を明示してほしい」と語り、法的には同意がなくてもワクチン接種は可能だが、全自治体から同意を得なければ実行は困難であるとの見解を示した[95][96]。
- 民主党、全頭処分の対象となる畜産農家に対し、肉専用牛1頭当たり5万9000円、肥育豚1頭当たり1万2000円などの経営再開支援金を支払う方向で検討に入る[97]。
- 自民党、被害拡大中に外遊を続けた赤松農相に対する不信任決議案を、来週にも衆議院に提出する方針を固める[98][99]。石破茂政調会長や浜田靖一国対副委員長も相次いで批判。衆院決算行政監視委員会でも阿部俊子衆院議員が、自民党議員らの進言を振り切って外遊に出かけた赤松農相を批判。赤松農相は「対処に問題は無かった」として、「外遊を物見遊山で責任放棄したように言われるのは非常に心外だ」と答弁した。連立与党の社民党からも、重野安正幹事長が口蹄疫拡大の責任を『第一に赤松、第二に福島』と表現し、所管大臣と臨時代理の初動に不十分さがあったのなら責任は取らねばならないとの見解を示した[100]。
- 自民党は家畜を殺処分した畜産農家に対し、国が損失を全額補償するとした「緊急措置法案」を、来週中に国会に提出することを決定[101]。
- 感染累例159例、殺処分対象数13万258頭、殺処分完了7万2776頭(56%)、未完了5万7482頭。
- 衆院本会議にて江藤拓議員が赤松大臣に口蹄疫について質疑を行う[102](視聴可能)。
- 国道10号の日向市と都農町境界付近と、JA日向美々津支店付近に消毒マットを設置[103]
- 5月21日
- 日本政府は、国連食糧農業機関(FAO)からの宮崎県で拡大している口蹄疫封じ込めのために専門家チームを送るという提案を断った[104]。
- 民主党は家畜を殺処分された生産者に対し、国が損失を(評価額ベースで)全額補償するとした「特別措置法案」を来週中に国会に提出することを決定[105]。
- 西都市尾八重牧場跡地に避難中のエース級種牛6頭のうちトップ(6頭の精液の内4分の1を供給する)「忠富士(ただふじ)」(7歳、BMS7.3)がPCR陽性反応(19日分と20日分の2回が陽性)、処分決定。残りの5頭は経過観察(19日分と20日採取分の2回が陽性)[106](気性が荒いためこの牛だけ「2m(1部屋置いて)離れた」別室で飼育[107])。
- 通例ならば、同施設で飼育されている全頭が殺処分対象となる所だが、残りの5頭も殺処分となると宮崎県産子牛は完全に根絶やしになるため、特例措置が設けられた。
- 感染地域が西都市(2例)と木城町(1例)にも拡大。制限区域を新たに設定。
- 北海道が口蹄疫侵入防止対策本部(本部長・高原陽二副知事)を発足[108]。
- 熊本県山都町で500リットルの消毒液が入るプラスチック製口蹄疫消毒用タンクに穴。県は誰かが故意に開けたものとみて警察に被害届[109]。
- 感染累例171例、殺処分対象数13万3011頭(牛1万7370頭、山羊5頭、豚11万5636頭)。
- 5月22日
- 5月23日
- 5月24日
- 5月25日
- 赤松農水相が「反省していないとは言っていない。結果としてこれだけ被害が広がったことは申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と発言[118]。
- 209例、147,894頭(牛19,720頭、豚128,159頭、山羊7頭、羊8頭)、川南、都農、新富、木城(きじょう)の9件。
- Yahooボランティアインターネット募金、20,820,108円、募金人数41,563人。
- 5月26日
- 国連食糧農業機関(FAO)が宮崎県の口蹄疫流行は「世界的にみても過去10年間では最大規模の発生となっている」として、日本政府に、他国に感染させないよう全国規模で感染を封じ込める対策を徹底するように要求。農林水産省は、日本政府が要請すれば国際的な専門家を派遣するというFAOの意向に対し、現時点で受け入れる考えはないと伝えていたことを明らかにした[119]。
- 218例、152,357頭(牛22,438頭、豚129,903頭、山羊8頭、羊8頭)川南町6、都農町1。ワクチン接種済みが10頭含まれる。
- ProMED Mail - 国際感染症学会のArnon Shimshonyは、ワクチン接種者による感染拡大という危険が心配されるとコメントしている。[120][121]
- 自民党の法案を基に、被害拡大を防ぐための特別措置法案が衆議院農林水産委員会で可決。民主・自民・公明の合意による議員立法で、2年間の時限立法である。主な内容は国の責任で未感染家畜の殺処分や埋設が強制的に実施可能として、被害農家手当金や処分費用を国の負担とすることなどで、予算は1000億円とされた。この法案で民主党が歩み寄ったため、自民党は赤松農水相不信任決議案の提出をいったん見送った[122]。
- ワクチン接種の99.5%が終了(接種対象125,200頭中124,698頭)した。まだ12農家の同意が得られていない(3人1組の接種チームを80チームまで増強)[123]。
- 新宿みやざき館KONNNEでの募金が300万円以上、「ふるさと納税」も急増、昨年度計約400万円だったが、今年は今月7~24日だけで2800万円を突破。同県川南町にも、既に昨年度の約7倍に当たる355万円が寄せられた[124]。
- 5月27日
- 宮崎県口蹄疫被害義援金、27日現在総額4億7710万5,204円。
- 221例、152,403頭(牛22,484頭、豚129,903頭、山羊8頭、羊8頭、殺処分完了91,846頭(60%)、未完了60,557頭(うち埋却地未定約8,000頭[125])。1日の殺処分5,856頭)
- 愛媛県が宮崎県に派遣した職員による講習会を開く。「4人がかりで牛1頭を殺処分した。薬品が十分に効いていなかった牛に蹴られてけがをした防疫員がいた」などの内容もあった[126]。
- 5月28日
- 特別措置法案が参議院を全会一致で通過、成立する口蹄疫対策特別措置法案 全文。
- 処分農家への補償金の概算払いが始まる[127]。
- Yahoo ボランティア募金額2482万5,418円、募金人数5万0,088人
- 224例、155,182頭(牛22,547頭、豚132,619頭、山羊8頭、羊8頭)(新規は川南町と高鍋町)。
- 自由民主党、公明党、みんなの党、たちあがれ日本の4野党は、赤松農水相の不信任決議案を衆院に提出[128]。
- 山田対策本部長が九州農政局で知事らと意見交換し「隣県に飛び火する可能性は高くなっている。消毒、防御をしっかりやっていただきたいとお願いした。(感染が広がったときに)県有地を用意し、即座に埋却処分できるような体制を整えておいていただきたい」と述べた[129]。
- 2000年に動物衛生研究所主任研究官として宮崎で診断や抗体検査、防疫対策を対応した岐阜大学猪島康雄准教授が「前回のウイルスは伝染力が弱く、抑え込めたため、今回は対応が遅れたのではないかという印象がある」とし「発熱と下痢だけで口蹄疫を疑うのは難しい。見逃したとか、1人の獣医師に責任をなすりつけないで。発生農家が悪いのでもない」と述べた[130]。
- 熊本県は山都町で、21日口蹄疫の感染防止のための消毒に使うタンクに何者かが穴を開けたとして警察に被害届を出したが、警察の調べで消毒液を噴射する機械の排気口からの熱で穴が開いた可能性が高いことがわかったとして28日、被害届を取り下げ[131]。
- 5月29日
- 全国肉牛事業協同組合・日本養豚協会は宮崎県に対し、特例で避難しているエース級種牛5頭の殺処分を求めた。49頭の種牛の延命を求めたり、発症を国に報告しなかったことを「犠牲を強いられた生産者及び全国の生産者に対する裏切りで、疫学上あり得ない言語道断の行為」として非難した[132]。「(感染の可能性のある)種牛を残すことで、他県の生産者が心配で(子牛の)購入に行けない」と強調した[133]。
- 埋却した牛や豚が、28日までで計約10万頭に達した。今後、ワクチン接種後の牛豚を含め、さらに約18万頭の処分が必要で、殺処分数は計約28万頭となる[134]。(埋却地が60ha必要)
- 宮崎県家畜改良事業団が延命を求めていた種牛49頭の中の2頭が発熱し口蹄疫に感染したことを、宮崎県が国に報告していなかったことが発覚。発熱は22日と26日に1頭ずつ出ていた。東国原英夫知事に報告していたが農林水産省への報告はなく県ぐるみの隠蔽工作[135]。
- 232例、162,159頭(牛28,669頭、豚133,474頭、山羊8頭、羊8頭)、川南4件・都農1件、高鍋3件(158例目に391頭の追加)。新規全件ワクチン接種済み。
- 5月30日
- 5月31日
- Yahoo ボランティア54,386人、26,515,986円
- 「安平」を含む種牛49頭処分完了。残りは5頭(西都市尾八重牧場の新畜舎2棟に)。
- 247例、164,057頭(牛30,567頭、豚133,474頭、山羊8頭、羊8頭)川南4件、都農4件、高鍋1件。殺処分前提でのワクチン接種を終了した牛豚を含めると277,055頭に[139]。(殺処分対象頭数の推移のグラフ)
- 宮崎県は口蹄疫対策として、総額426億2153万円の一般会計補正予算案を発表(4回目で総額は542億3169万円)[140]。
- 家畜の移動制限区域にある「ミヤチク」都農工場で搬出制限区域から受入れた家畜の食肉処理を開始[141]。
- 6月1日
- 鳩山首相が宮崎入りするも、滞在時間は約2時間[142]。
- 253例169,881頭(牛31,711頭、豚138,154頭、山羊8頭、羊8頭)。248例目 - 253例目合計6件5824頭、都農3件、川南1件、高鍋1件、西都1件(全例24日 - 26日にワクチン接種済み)。
- 6月2日
- 264例(6月1日分追加を含む)、都農4件、川南6件、高鍋1件。合計頭数は、179,207頭(牛32,045頭、豚147,145頭、山羊9頭、羊8頭)(22日 - 28日にワクチン接種済み)。
- 本日までの殺処分対象は、疑似患畜・患畜分が179,207頭、ワクチン分が92,881頭。合計272,088頭。殺処分・埋却終了が127,027頭。殺処分が6,896頭(豚が6,768頭)[143]。
- 6月3日
- 269例、180,004頭(牛32,226頭、豚147,761頭、山羊9頭、羊8頭)。新規は新富1件、都農1件、川南2件、高鍋1件(一部PCR未判定分を含む)。24日 - 26日ワクチン接種済み。
- Yahooボランティア、27,773,654円、56,791人。
- 宮崎県口蹄疫被害義援金の状況(平成22年6月3日現在)
- 総額 8827万円
- 県に対する寄付金(5月28日現在)36件、1,237万円
- ふるさと納税(5月28日現在)申込 3,900件、入金 1,898件、総額 4740万円
- 6月4日
- えびの市が清浄地域に。4月28日の1例目以来5月13日の4例目で最後。農家数406戸。
- 口蹄疫対策特別措置法施行。
- 殺処分完了140,526頭(牛14,726、豚125,794、山羊・羊16)。
- 宮崎県全域が車両消毒義務地域に(口蹄疫対策特別措置法)。
- 6月5日
- 274例、181,413頭(牛32,704頭、豚148,692頭、山羊9頭、羊8頭)川南1件、新富1件、木城1件。殺処分対象頭数272,191(牛66,451、豚205,723)。昨日までの殺処分完了140,526頭(牛14,726、豚125,794、山羊・羊16)。
- 6月6日
- 宮崎牛の種牛5頭、PCR検査2週間陰性、抗体検査も陰性。
- 殺処分4,159頭(牛1,127、豚3,032頭)。殺処分完了は144,685頭(53%)、殺処分対象全頭数は272,191頭、未処分127,506頭。
- 6月8日
- 宮崎県口蹄疫被害義援金等の受付状況
- 宮崎県口蹄疫被害義援金総額 10億2632万4,256円
- 県に対する寄付金の申込み43件、総額 1億2380万0,000円
- ふるさと納税申込 4,299件、入金 2,208件。総額 6211万0,061円
- 宮崎県口蹄疫被害義援金等の受付状況
- 6月9日
- 280例目、新市町村…都城市高崎町大字江平、肉牛250頭(鹿児島県に隣接)。都城市に対策本部設置。(国内有数の畜産地帯、2,600戸の牛飼育農家で76,585頭、190戸の養豚農家で398,804頭、2006年の肉の生産額が牛151億円、豚225億円で、市町村別で全国トップ。[144][145])
- 280例、牛33,361頭、豚152,871頭、山羊・羊17 頭、計186,249頭。
- 宮崎市跡江(新地域)1件(豚1,325頭)、西都市下三財1件(牛550頭)、日向市平岩(新地域)1件(牛349頭)
- 国は獣医師30人を大学などから追加派遣予定。獣医師30人、補助員20人が不足しているため。6月9日現在100人の獣医師を動員しているが、各県農林部局が中心だった[146]。
- 川南町川南1件(豚627頭、5月24日ワクチン接種)、木城町高城1件(豚1,760頭、5月23日ワクチン接種)
- 285例、190,818 頭(牛34,250頭、豚156,551頭、山羊9頭、羊8頭)。
- 都城市「ミヤチク」高崎工場(10km圏内)が操業停止。4月20日に停止した都農町都濃工場(5月31日に制限区域内の処理を開始)、6月11日に日向市の南日本ハム(日本ハム子会社)が停止するため、宮崎県内の豚、牛の処理能力が半減、20km圏内の食肉処理にも影響[147]。20km搬出制限圏内には県畜産試験場(高原町)、都城市食肉センター(平江町、年間牛1万頭、豚25万頭)、都城地域家畜市場(黒毛和牛子牛年約5千頭)がある。
- 「コブクロ」(小渕健太郎、宮崎市出身、宮崎工高)と今井美樹(高鍋町出身、高鍋高校)、今井の夫でギタリスト・シンガーの布袋寅泰が応援曲「太陽のメロディー」を作詞・作曲[148]。(今井美樹は既に宮崎県に500万円寄付)
- 新たな確認5,594頭。殺処分5,963頭。殺処分対象275,692頭。殺処分完了164,595頭(60%)。未殺処分111,097頭。
- 6月11日
- 川南町川南1件(牛74頭:6月8日ワクチン接種済)、西都市茶臼原1件(牛1,351頭:5月24日ワクチン接種済)。
- 鹿児島県は24時間消毒を実施中の主要道路7本を除く、80本の道路を封鎖要請するが、各市は難色を示す。都城市は32所のうち市道6カ所を12日午後にも封鎖する方針。20カ所の市道と農道では通行を地元車両に限定する規制。県道など残り5カ所は県が対応する。曽於市は6本の市道を封鎖、20本を住民の車両に限定する。志布志市と霧島市は規制を行わない姿勢。九州各県から警官の応援[149][150](人員・手段は県から自治体に丸投げで困惑している[151])。
- 車線の封鎖や看板の設置などを行っているが、通行の是非は運転手に任されているのが実態。[152]。
- 監視員1-2名を置いた(建設会社のボランティアと警備会社) 。
- Yahooボランティア、午後9時に3001万円、62,517人。
- 宮崎市では11日午前6時半から80人で開始し、午後5時半までに1425頭の埋却完了。日向市は10日から始め、11日午後10時までに349頭の埋却を完了した。
- 6月12日
- 菅直人首相、宮崎市内の畜産農家と県庁を訪問。「国家的危機との認識を持っている。政府の責任者として全力を挙げる。必要なことは人、物、金含めて対応していきたい」と強調した[153]。
- 山田大臣などが約束した特別措置法による対策費(現在約400億円)政府全額負担が、関係省庁の反対で決まらず。ワクチン接種関連費の県の1/5負担(110億円以上)が焦点となっている模様[154]。
- 県立中央図書館、「生目の杜運動公園」を含む宮崎県と宮崎市の194箇所の公共施設を臨時閉鎖。都城市も開館したばかりの歴史資料館「都城島津邸」など、108施設を11日から閉鎖した[155]。
- 大分・熊本・鹿児島の3県全域が車両消毒義務地域に(口蹄疫対策特別措置法)。
- 288例目、新富町大字新田、豚921頭、5月23日ワクチン接種済み
- 288例、197,685 頭(牛36,788頭、豚160,880頭、山羊9頭、羊8頭)
- 都城市消毒24ヶ所消毒ポイント20ケ所、消毒マット2ヶ所、消毒プール2ヶ所
- 6月13日
- 6月14日
- 新発生地1km圏内で抗体検査(サンプル)。
- 政府は20日までに全処分完了の意向。
- 都城市の人気施設「高千穂牧場」(年間来場52万人)が閉鎖(オンラインショッピングは可能)[157]。
- 鹿児島県の小学校2校が修学旅行の行き先変更。1校は宮崎・西都市の予定を熊本市に、もう1校は高千穂牧場から霧島市の「県上野原縄文の森」に[158]。
- 6月15日
- 6月16日
- 290例目、新市町村:東諸県郡国富町大字木脇、牛234頭、ワクチン未接種。
- 篠原孝農水副大臣(政府現地本部長、京大農学博士)は、径10~20kmの搬出制限区域の早期出荷について「感染が治まれば急いでやる必要はない」とし、事実上断念する事を明らかにした[160]。
- 5月の子牛取引前年比6割減、価格1割上昇[161]。
- 大分県豊後大野市(橋本祐輔市長)が口蹄疫感染の宮崎住民は断る。公民館や体育館、小中学校など約100か所で川南町や宮崎、西都、都城の各市など終息したえびの市を含む5市6町の住民。(畜産農家341戸、牛約5,300頭、豚約7,300頭を飼育。2007年度の畜産生産額は約29億8000万円。[162])
- 6月17日
- 6月18日
- 291例目、宮崎市大字跡江(宮崎市2例目、10km圏外、ワクチン未接種)、肉牛38頭
- 国が全額補償する政令を決定(総額199億円を予定)(6月12日には県に100億円以上負担を求めていた)[165]。
- 殺処分7,709頭。これまで殺処分対象276,040頭。処分完了211,544頭(77%)、未処分64,469頭。患畜・疑似患畜の未処分12,474頭(牛8,624頭 豚3,850頭)。
- 6月20日
- 川南町の感染疑い牛・豚約14万5千頭の殺処分が終了した。西都市と高鍋町で残る約8,400頭の処分を急ぐ。ワクチン接種家畜のうち、未処分の約4万9千頭(19日時点)についても作業を本格化させる。高鍋町では20日は雨のため対象5農場のうち4農場で作業を断念した[166]。
- 家畜共済が支払い対象とならず、「加入している意味がない」などと苦情が寄せられ、県共済連が対応に苦慮している。法では疑似患畜の場合、国の補償が4/5と決まっており、残りを補償していた。今回は生後23カ月の繁殖雌牛の場合、評価額81万円で4/5を掛けて64万8千円。共済連評価額50万円で、損失が発生しない計算となり支払いができない[167]。
- 6月24日
- 午後1時54分、疑似患畜の発生が確認されていた全ての農場において殺処分が終了した[168]。
- 口蹄疫防疫措置実施マニュアル 平成22年6月24日22消安第2898号 農林水産省消費・安全局長通知公表
- 農場から家畜保健衛生所に通報があれば、2時間以内に立ち入り検査
- 動物衛生研究所の遺伝子検査を待たず、写真で感染疑いを早期に判定
- 疑い確認から24時間以内の殺処分、埋却
- 6月25日
- 宮崎県新富町で国に報告せず牛1頭を殺処分した疑い。(2010年7月15日発覚)
- 6月26日
- ふん尿など未処理の排泄物が大量に残っていることが分かった。指針では排せつ物も農場内で埋却・焼却することが原則であるが、とても手が回らないし場所もない[169]。
- 6月27日
- 6月30日
- 殺処分対象だった約27万6,000頭の家畜の処分が完了した。
- 7月9日
- 宮崎県が殺処分の対象になっている種牛6頭を処分せず、県側で無償で引き取る特例措置を要求。これに対し山田農林水産大臣は「宮崎県は口蹄疫の危機意識があまりにもなさすぎる。認識の甘さが被害拡大を招いた。特例は認められない。」と厳しく批判した。[175]。
- 7月10日
- 東国原知事が山田農林水産大臣のこの発言に対し、「口蹄疫は国家的危機管理の問題であり、地方の責任だという国家がどこにあるのだろうか?口蹄疫が宮崎県に抑えられただけでも奇跡に近く、ここまで口蹄疫の感染を抑えた宮崎県民もとい隣県等の多大なる関係者に失礼ではないか?」と批判した。[176]。
10月
- 菅直人内閣が宮崎県の復興支援政策を決定。宮崎県が地方債を発行し、1000億円規模の基金をつくることを認め、その運用益を県内の市町村支援や観光振興などに充てる内容で、国は「基金33億円」と地方債1000億円の「利息の3分の2」を負担する[185]。
- 農林水産省が国際獣疫事務局(OIE、本部・パリ)に口蹄疫の発生がないとする「清浄国」の認定を申請[186]。
- 国際獣疫事務局に申請した「清浄国」の認定が認められる[186]。
- 4月で口蹄疫発生から一年が経つ事から宮崎県は4月を「口蹄疫防疫月間」と定めて、もし口蹄疫が再び発生したとしても迅速に対応出来る様にと県職員による口蹄疫が発生したとの想定での防疫対処の訓練が行われる。
- 4月26日
- 都城市で口にただれが見られ、口蹄疫の疑いもある牛の遺伝子検査の結果が判明。結果は陰性で、口にただれが見られた牛を飼育する農場から半径20km圏内の移動制限区域は解除される。
- 3月31日、宮崎県は口蹄疫の発生を受けて設置していた「防疫対策・復興対策合同本部」を約3年間で復興にめどがついたと判断し解散した[187]。
- 4月20日、2010年の口蹄疫発生から3年を迎えた4月20日、最初の感染疑いが出た都農町で、殺処分された牛や豚などを慰霊する畜魂祭が町主催で行われた[188]。
- 口蹄疫の潜伏期間は「口蹄疫ウイルスと口蹄疫の病性について」[189]によれば牛6.2日、豚10.6日。ウイルスの量が少なければ潜伏期間が長く、多ければ短くなる。必ずしも一定では無い。
- 最新の資料では潜伏期間は2 - 14日であり、3 - 5日の場合が多い。
- 感染した日時と、発症する日時に差がある。
- また、「豚の飼養密度が高い地域に発生すると、地域のウイルス汚染度が高まり、空気伝播や風による伝播が起こりやすくなって、防疫が困難になるとの指摘がある」との記述もある(最新の権威ある文献によると、「1頭の感染した豚は毎日4億個のウイルス粒子を放出し、たった10粒で牛を感染させることが出来る」という)。
- えびの市での症状確認、豚への感染確認と大きな変化の見られた27日9例目・10例目[190]についてウイルス量による潜伏期間の変化を無視して考えた場合は以下のように考えられる。
- 豚の症状が確認された10例目は5月15日 - 16日の時点で感染していた可能性が高い。
- えびの市への感染が確認された9例目は5月20日 - 21日の時点で感染していた可能性が高い。
- 西浦と大森による宮崎の流行データ分析結果[191]によると、牛の農場は豚の農場よりも4.2倍(95%信頼区間:3.9,4.5)感受性が高く、感染しやすい。一方で、豚の農場は牛の農場よりも8.0倍(95%信頼区間:5.0,13.6)感染性が高く、2次感染を起こしやすい。これは英国の2001年流行でも見られてきたことである。
政府
- [3]家畜防疫互助基金(未加入でも支払う)と同額を生活対策費として支援する。(農水省の見積もり)
- 肉用牛繁殖農家(30頭)で477万円
- 肉用牛肥育(160頭)で944万円
- 養豚一貫経営(1880頭)で3218万円
- 酪農経営(45頭)で707万5000円
- [1]殺処分する牛、豚は時価評価方式で全額を補填
- [2]ワクチン接種から殺処分までの飼育コストは一日あたり単価で飼養日数実績で支払う
- [4]埋却に要する経費支援では、農地の使用不能による逸失利益(地代相当)と環境対策に要する経費を支援(町による土地購入は別途検討)
- [5]経営再開支援策は▽リース方式による家畜導入への助成、▽家畜疾病経営維持資金の融資枠の拡大等する、の5項目[192]。
5月1日、宮崎県の口蹄疫被害拡大により殺処分の対象頭数が急増したため、東国原宮崎県知事は防衛省・自衛隊に児湯郡川南町への災害派遣を要請した。テレビ報道では、自衛隊員が獣医とともに白い防疫服を着用して畜舎を掃除し、殺処分後の埋却を行う映像が繰り返し報道された。同年7月27日に陸上自衛隊第43普通科連隊と航空自衛隊第5航空団は待機を解かれ完全撤収する[193]。
- 派遣部隊(5月23日現在)
-
- 陸上自衛隊 - 埋没処理の掘削作業 及び殺処分支援 消毒ポイントの運営業務
-
- 九鬼東一連隊長(47歳)、延べ19,187人(終息まで)[194]
- 派遣規模
-
- 人員
- 約220名(延べ約3,330名)
- 車両
- 約40両(延べ約960両)施設車両等含む
- 派遣内容
- 埋却関連
- 検問(9ヶ所)
- 埋却地の提供
国際連合食糧農業機関
- 日本の口蹄疫拡大を懸念し警告を出していた国際連合食糧農業機関(FAO)では、家畜の感染症対策に当たっているルブロス主席獣医官が「国連として日本に対し専門的な支援を行いたい」と述べ、日本政府から要請があれば助言のために国際的な専門家を派遣する考えを示した。それに対し、農林水産省の担当者は「今は日本としても感染対策を懸命に行っているところであり、今後、必要であれば受け入れを検討したい」と述べ、 FAOに対し現段階では専門家を受け入れる考えはないと伝えた[197][198][199]。
宮崎県での口蹄疫被害が拡大・長期化するのに伴い、各県、政令指定都市が政府の支援とは別に独自に設定した口蹄疫対策予算や対応策。
- 主な動き(5-6月)
- 全畜産農家に対する清浄性調査
- 種牛、種豚、冷凍精液の分散
- 家畜伝染病予防法(9条[227])に基づいた知事命令による消毒
- 消毒薬(炭酸ソーダ中心)や消石灰の無料配布
- 対策資金の準備・配布、無利子融資、仮払金
- 動物園、役所、イベントなどでの消毒槽の設置
- 県や市町村の対策本部の設置、第1回会議
- 空港や港などでの消毒液設置
- 宮崎、熊本、鹿児島、大分県では車両消毒の義務化(6月初旬から)
- 宮崎県では人の集まる公共施設の閉鎖(県立図書館や公民館など)
- セリ市、各種畜産イベントの中止、延期
- 動物園などでのふれあい中止
- 牧場体験学習など受け入れ停止
- 埋却用地の確保
- 営農相談、経営相談、心のケア
- 異常家畜発見時の生産者等からの24時間通報体制(夜間休日も)を整備。
- 宮崎県
- 種牛55頭、現在5頭(美穂国6歳、福乃国13歳ほか)。年間子牛出荷78,391頭(2009年)、4割を県外に。2008年第9回全国和牛共進会で内閣総理大臣賞7頭独占(5年に1回)。
- 宮崎牛、佐賀牛、松阪牛の4割、常陸牛の3割、信州和牛(但馬牛にはならない[228]
- 4月28日、緊急対策として総額約33億円の今年度一般会計補正予算を専決処分することを決定し、家畜を薬殺処分した農家や小売業者らへの融資枠を245億円分設定した[229]。
- 5月12日、口蹄疫で影響を受けた豚・牛の農家に対し、当面の生活資金として200万 - 100万円を上限に無利子・無担保で貸し付ける新たな制度など、約2億1000万円の一般会計補正予算を専決処分した[230]。
- 6月11日県、宮崎市、都城市で公共施設を閉鎖。県図書館、運動公園、公民館など。
- 鹿児島県
- 種牛24頭。鹿児島牛、松阪牛、さつま黒豚。
- 和牛飼育37万頭(北海道に次ぐ)全国2位、豚飼育134万頭、全国一位。
- 曽於中央家畜市場の子牛の年間取り扱い2万6千頭。全国1位。
- 宮崎県の南に隣接…自動車だけではなく風雨による感染が心配
- 5月7日知事命令による消毒[231]
- 5月20日、県内の各自治体やJAは、宮崎県の口蹄疫に伴う競り市延期で、子牛農家支援策を決定[232]。
- 5月24日種牛の半分12頭を離島に移動する第1陣として、県肉用牛改良研究所(曽於市)(宮崎県境まで7.5km)の6頭を喜界島に向けて船積み[233](他に冷凍精子の一部を移動予定)。
- 5月25日現在、24時間消毒ポイント9ヶ所。
- 5月26日種豚改良協会(霧島市)などの種豚候補のうち20頭を、県農業大学校(日置市)に移動させた。また、種子島へ移動させる予定だった種牛、種牛候補の計6頭と種豚候補約120頭は、屋久島に移すことに変更した[234]。
- 6月12日宮崎県都城市の感染に伴い道路封鎖80本を要請するが、自治体の体制が整わず一部にとどまる。
- 大分県
- 種牛36頭。豊後牛(「勝福平」2010年2月最優秀検定ほか)
- 肉用牛64,600頭(2008年)
- 4月30日、口蹄疫の県内発生予防に万全を期するとともに、畜産農家の経営支援を行うため、「大分県口蹄疫総合対策本部」を設置[235]。
- 5月28日3ヶ所で24時間消毒液マットによる全車両消毒を開始[236]。
- 6月11日県畜産研究部(竹田市久住町)の種牛36頭のうち、主力種牛7頭を国東市の国東町畜産振興公社畜舎に避難させた。さらに現在精液を供給する基幹種牛12頭のうち最大5頭も避難させる[237]。
- 6月11日宮崎県境の国道3カ所だけの消毒ポイントを、12箇所新規設置し宮崎、熊本県境に拡大する[238]。
- 熊本県
- 種牛16頭。くまもとあか牛。肉用牛147,600頭。
- 5月13日、困窮した農家への経営支援策として総額80億円の無利子融資枠を設定し、追加の防疫対策をまとめた[232]。
- 5月25日現在、消毒ポイント9ヶ所(7ヶ所は7-19、1ヶ所24時間、1ヶ所7-17)
- 5月27日県は県農業研究センター(合志市)の「くまもとあか牛」4頭と黒牛の種牛と種牛候補の計6頭を、来週にも県内2ヶ所(阿蘇市と天草地方)に分散させることを決めた。凍結精液6万本のうち約1万本も八代市に移動させる[239]。
- 6月20日、4月下旬から休止中の家畜市場6カ所は、えびの市で感染終息が確認された翌日の6月5日に7月1日再開を決定。飛び火したが、15日の再協議で、当初決めた通り7月再開を確認した。出荷待ちの子牛が1千頭を超える南阿蘇畜産農協(高森町)。塚元組合長(56)は「高齢や女性の生産者が多く、牛が成長しすぎて手に負えなくなったり、畜舎に収容しきれなくなったりして悲鳴を上げている」と早期再開を訴える[240]。
- 長崎県
- 佐賀県
- 福岡県
- 沖縄県
- 島根県
- 香川県
- 高知県[251]
- 愛媛県(宮崎県の海向かい)
- 兵庫県
- 肉用牛58,600頭。
- 但馬牛(超エース級6頭(8割)、エース級6頭、種牛候補28頭)
- 生産農場2,566戸 92,850頭(乳用牛502戸 19,300頭、肉用牛2,022戸 47,500頭、豚42戸26,050頭)
- 4月30日、農林水産技術総合センター畜産技術センターで集中管理している12頭の基幹種雄牛の凍結精液のうち、約5,300本(6頭、約2ヶ月分)を北部農業技術センターへ移動。
- 5月25日、農林水産技術総合センター(加西市)の但馬牛のエース級種牛3頭を含む6頭と、北約50キロの北部農業技術センター(朝来市)にいる種牛候補6頭を、お互いに交換し移し替える予定[253]。
- 5月28日、来週中の県下一斉消毒を決定[254]。
- 異常家畜発見時の生産者等からの24時間通報体制(夜間休日も)を整備。
- 岡山県
- 岩手県
- 肉用牛112,400頭(全国4位・宮崎、鹿児島、北海道のつぎ)
- 県畜産研究所種山畜産研究室(住田町)にある凍結精液18万本と種牛18頭。凍結精液のうち3万本を6月14日から20km離れた宮古市県宮古地区合同庁舎で保管する。
-
-
- 宮崎県外に口蹄疫が広がった場合、特に優れた種牛12頭を種山に残し、残りの6頭は50km離れた外山畜産研究室(盛岡市)に移す。県内で発生した時には種山では種牛だけを飼育し、残りすべて別の場所に移す[256]。
-
- 新潟県
- 339戸で約12,600頭の肉用牛。うち、黒毛和種は296戸で約4,500頭。黒毛和種は年間約1,800頭が食肉用に、うち約800頭が高級和牛「にいがた和牛」として流通[257]。
- 新潟県口蹄疫発生時対策要領:危機対策課、畜産課(P18)
- 地域振興局番:口蹄疫対応標準マニュアル平成22年5月31日 新潟県:防災局危機対策課農林水産部畜産課(p48)
- 山口県
- 三重県
- 肉牛が222戸、乳牛が69戸、養豚が64戸などで、計約16万4000頭の牛や豚
- 6月12日調査、7割が埋却用地確保。
- 滋賀県
- 牛2万2千頭、豚1万頭(子牛1万頭の4割は宮崎産)(2009年7月)
- 神奈川県
- 529農家、乳牛9830頭、肉牛4788頭、豚7万9791頭(2010年2月)
- 予防策パンフレットを全529農家に配布。
- 消石灰60kgを全農家に配布[258]。
口蹄疫ウイルスは99.85%の確率で、中国や北朝鮮または韓国のウイルスと同定されている。
最終更新 2014年3月23日
=====================================================
2010年に宮崎県で発生した口蹄疫の対策に関する調査報告書
(二度と同じ事態を引き起こさないための提言)
平成23年1月
宮崎県口蹄疫対策検証委員会
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/parts/000151738.pdf
=====================================================
口蹄疫対策検証委員会報告書
平成22年11月24日
口蹄疫対策検証委員会
http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/kensyo_hokoku_sho.pdf
目次
ページ
第1 はじめに.........................................1
1 本委員会の開催の経緯..............................1
2 基本的状況認識...................................2
3 本報告書の内容...................................3
第2 今回の防疫対応の問題点............................5
1 国と都道府県・市町村などとの役割分担・連携の在り方..5
2 防疫方針の在り方..................................6
3 我が国への口蹄疫ウイルス侵入防止措置の在り方........8
4 畜産農家の口蹄疫ウイルス侵入防止措置の在り方........8
5 発生時に備えた準備の在り方.......................10
6 患畜の早期の発見・通報の在り方...................11
7 早期の殺処分・埋却などの在り方...................13
8 その他の初動対応の在り方........................14
9 初動対応では感染拡大が防止できない場合の防疫対応の
在り方.........................................14
10 防疫の観点からの畜産の在り方.....................15
11 その他.........................................15
第3 今後の改善方向..................................17
1 国と都道府県・市町村などとの役割分担・連携の在り方.17
2 防疫方針の在り方................................18
3 我が国への口蹄疫ウイルス侵入防止措置の在り方......20
4 畜産農家の口蹄疫ウイルス侵入防止措置の在り方......21
5 発生時に備えた準備の在り方.......................22
6 患畜の早期の発見・通報の在り方...................23
7 早期の殺処分・埋却などの在り方...................25
8 その他の初動対応の在り方........................26
9 初動対応では感染拡大が防止できない場合の防疫対応の
在り方.........................................27
10 防疫の観点からの畜産の在り方.....................28
11 その他.........................................28
第4 おわりに.......................................30
口蹄疫対策検証委員会 委員名簿........................31
口蹄疫対策検証委員会の開催実績........................32
参考資料.............................................35
第1 はじめに
平成22年4月20日に宮崎県で1例目の発生が確認された口蹄疫は、
同県川南町を中心とする地域において、爆発的に感染が拡大し、家畜
伝染病予防法に基づく殺処分、移動制限などの措置のみではまん延防
止を図ることが困難となった。これにより、我が国で初めて、防疫措
置として、患畜及び疑似患畜以外の健康な家畜にもワクチンを接種し
た上で殺処分を行わざるを得なくなり、このため、口蹄疫対策特別措
置法が制定された。最終的な殺処分頭数は我が国の畜産史上最大規模
の約29万頭に及び、防疫対応に相当の財政負担が必要になるとともに、
地域社会・地域経済に甚大な被害をもたらした。国及び宮崎県の防疫
対応についての問題点も指摘されるに至った。
こうしたことを踏まえて、平成22年7月、農林水産大臣の要請によ
り、9名の第三者から成る口蹄疫対策検証委員会が設置され、8月5
日に第1回委員会を開催した。本委員会は、今回の口蹄疫の発生前後
からの国、宮崎県などの防疫対応を十分に検証し、問題点を把握した
上で、我が国で二度と今回のような事態が起こらないように、今後の
防疫体制の改善の方向を提案するものである。
1 本委員会の開催の経緯
本委員会では、口蹄疫疫学調査チームの調査状況を詳細に聴取す
るとともに、宮崎県、県内市町村、生産者、生産者団体(全国段階
を含む)、他県、獣医師、防疫作業従事者などの多数の関係者から
のヒアリングを実施した。
これらのヒアリング結果などを踏まえて意見交換を行い、9月15
日の第7回の委員会において「これまでの議論の整理」のとりまと
め・公表を行った。その後、ヒアリングの対象に地元マスコミ、家
畜衛生の専門家などを加え、「これまでの議論の整理」についての
意見聴取も行った。ヒアリングの実施対象者数は、合計で41名に上
った。
加えて、10月19日の第12回の委員会において、宮崎県口蹄疫対策
1
検証委員会との意見交換も行い、議論の客観性のさらなる向上にも
努め、合計17回の委員会を開催した。
2 基本的状況認識
本委員会は、次のような基本的状況認識に立って検証を行った。
口蹄疫は、国際連合食糧農業機関(FAO)などの国際機関が「国
境を越えてまん延し、発生国の経済、貿易及び食料の安全保障に関
わる重要性を持ち、その防疫には多国間の協力が必要となる疾病」
と定義する「越境性動物疾病」の代表例である。原因ウイルスによ
る成畜の致死率は低いものの、伝染力が他に類を見ないほど強く、
一旦感染すると治癒しても長期にわたり畜産業の生産性を著しく低
下させる。また、外見上治癒したように見えても、継続的にウイル
スを保有し新たな感染源になる可能性がある。
したがって、口蹄疫がまん延すれば、畜産物の安定供給を脅かし、
地域社会・地域経済に深刻な打撃を与え、国際的にも口蹄疫の非清
浄国( 資料4 ( P. 4 0 )参照)として信用を失うおそれがある。この
ため、現在の科学的知見のもとでは、口蹄疫清浄国(資料4(P.40)
参照)で発生した場合には、早期発見及び迅速な殺処分・焼埋却を
基本として防疫対応を講じている。
口蹄疫については、世界各地から発生が報告されているが、近隣
のアジア諸国においては、今世紀に入り畜産が盛んになってきてい
る中で、今年に入って発生した例に限っても、中国(断続的に、O
型、A型及びAsia1型の3種類の血清型が発生)、韓国(1~3月
:A型、4~6月:O型)、台湾(2月、6月及び8月:O型)、香
港(2月及び3月:O型)、ロシア沿海地方(7月:O型)、モンゴ
ル(4~6月:O型)と、東アジアでの発生が確認されており、我
が国においては一層実効性のある防疫体制を再構築することが急務
となっている。
今回我が国で発生した口蹄疫の原因ウイルスについては、遺伝学
的には今年アジア地域で発生した口蹄疫のウイルスに最も近縁であ
2
り、これらの国から人あるいは物を介して何らかの形で我が国に侵
入した可能性が高い。
アジアで活発な流行がみられる中で国際的な人や物の往来が増加
していることから、今後も我が国に口蹄疫ウイルスが侵入する危険
性は高く、国際空港・海港における水際での検疫を強化する一方で、
国内では口蹄疫ウイルスは侵入する可能性があるという前提に立
ち、国、都道府県、市町村、獣医師会、生産者団体及び畜産農家が
明確な役割分担の上に連携・協力して、実効ある防疫体制を早急に
整備する必要がある。
また、原因ウイルスは変異しやすく、多くの動物種に感染するな
ど、口蹄疫は「多様性」が特徴の疾病であることから、従来の知識
・経験だけにとらわれず、最新の状況を把握し、警戒と準備を怠ら
ないことが重要である。
一方、我が国の畜産業は、輸入飼料に依存することで規模拡大と
生産性の向上を進めてきた結果、地域レベルでの飼養の密度も高ま
っており、ひとたび口蹄疫が発生した場合にまん延する危険性が高
くなっている。
今回は、10年前の口蹄疫の発生を踏まえて作られた防疫体制が確
実に実行されず、また、十分に機能しなかった点も指摘されており、
防疫体制を実際に機能するものにする必要がある。
加えて、口蹄疫以外にも、人獣共通感染症や食料の安定供給に支
障を与える重大な感染症は多種存在しており、これらにも、有効な
防疫体制を構築していくことが重要である。
3 本報告書の内容
以上のような経緯と基本的状況認識の下に、今回の防疫対応の問
題点と改善方向を整理したのが、本報告書である。
内容は多岐にわたっているが、最も重要なのは、「発生の予防」
3
と「早期の発見・通報」さらに「初動対応」である。ここに財政資
金の投入も含めて関係者が力を注ぐことが結果的に国民負担も小さ
くすることにつながる。この点を特に強調しておきたい。
4
第2 今回の防疫対応の問題点
1 国と都道府県・市町村などとの役割分担・連携の在り方
(1) 家畜伝染病予防法では、国が予防及びまん延防止のための指針を
作り、この指針に基づいて都道府県が措置を執ることになっている。
しかし、まず10年前の口蹄疫の発生を踏まえて作られた「口蹄疫に
関する特定家畜伝染病防疫指針(平成16年12月1日)」を中心とす
る防疫体制が今回の宮崎県での口蹄疫の発生に際して確実に実行さ
れず、また、十分に機能しなかった。国と宮崎県・市町村などとの
役割分担が明確でなく、連携も不足していた。
今回の宮崎県での口蹄疫の発生では、口蹄疫疫学調査チームによ
る疫学的解析により1ヶ月以上前(3月中旬頃)から口蹄疫ウイル
スが県内に侵入していたことが明らかにされている。この時点で確
認できなかったことにより初動が遅れ、第1例目が確認された4月
20日の時点では、すでに養豚農家も含む10ヶ所以上の農場に口蹄疫
ウイルスが侵入していた。このため、対策がより困難なものとなっ
た。宮崎県の対応は、防疫訓練などの実施による日常的な予防や初
動対応に不十分なところが多く、10年前の発生で得られた教訓は生
かされていなかった。
また、都道府県に対する口蹄疫の防疫に関する国の指示は、近隣
諸国での発生を通知するだけで事務的であった。国にも10年前の口
蹄疫の対応の成功により、口蹄疫に対する対応に甘さが生じていた。
実効性のある口蹄疫の防疫の指示が十分に国から都道府県に伝わっ
ていたとは考えられない。
口蹄疫に対する具体的な防疫措置の一義的な責任は都道府県にあ
るが、全体を統括するのは国であり、宮崎県も国も責任を十分自覚
し、今後の防疫対応を改善していく必要がある。
(2) 国や自治体、それに自衛隊など様々な組織が関わる口蹄疫の防疫
対応では、組織間の連携、指揮命令系統の一元化が何よりも重要で
ある。このため防疫指針では、口蹄疫が発生した場合、家畜保健衛
生所などに現地対策本部、発生県に県防疫対策本部、及び農林水産
省に中央対策本部の設置をし、その対応に当たるようにしている。
しかし、それぞれの役割がはっきり記されていない上に、今回は
5
さらに宮崎県に国の現地対策本部、市町村に対策本部、首相官邸に
も国の対策本部が出来るなど、対策本部が乱立した。対策本部の間
では、権限と役割について混乱が生じ、時には対策をめぐって意見
が対立するなど、連携もとれていなかった。このため現場で対策に
当たる担当者や畜産農家に多くの混乱をもたらすことになった。
迅速な作業が要求される防疫作業で、指揮命令系統が混乱するこ
とはあってはならない。対策本部の役割と権限を整理する必要があ
る。
(3) 宮崎県と市町村、獣医師会、生産者団体などの連携が不十分で、
口蹄疫の発生が確認された時点では消毒ポイントは4ヶ所しか設定
されていなかった。また、地域の状況に詳しい市町村との間で埋却
地の選定に対する十分な話し合いがもたれていないなど、特に口蹄
疫が発生した初期段階においてこのような連携不足の問題が見られ
た。さらに、市町村や生産者団体においても発生前には口蹄疫に対
する認識の欠如が認められ、口蹄疫の防疫への備えがなかった。平
素からの口蹄疫に関する研修会、講習会や防疫訓練も実施されてい
なかった。
2 防疫方針の在り方
(1) 世界における口蹄疫の発生状況やその科学的知見は、国及び宮崎
県の段階で理解されていたに過ぎない。また、これをもとに策定さ
れる防疫指針についても同様で生産者には理解されていなかった。
さらに、国と宮崎県の間で、ワクチンの接種時期や種雄牛の取扱い
などをめぐって多くの食い違いがあった。
(2) あらかじめ定めた防疫方針に基づく初動対応では感染拡大を阻止
できなかった場合、国は状況に応じて新たな対策を打つ必要がある。
豚への感染が起こったことなどにより急激に発生件数が増加したこ
とから、殺処分できずに待機させられる感染家畜は増加し、さらに、
十分な埋却地も確保できなかったことから、5月のはじめには防疫
方針の改定が必要となっていた。5月19日に殺処分を前提とする緊
急ワクチン接種が決定されたが、結果的に決定のタイミングは遅か
ったと考えられる。
6
国が新たな防疫対応を講じる場合には、基本的に食料・農業・農
村政策審議会家畜衛生部会牛豚等疾病小委員会(以下「牛豚等疾病
小委員会」という。)の意見を聴くこととなっている。牛豚等疾病
小委員会は、今回、発生が確認された4月20日、28日、5月6日と
開催されたものの、それ以後は5月18日まで開かれておらず、牛豚
等疾病小委員会の対応や開催頻度には問題があったと考えられる。
(3) 宮崎県が所有する種雄牛をめぐっては、宮崎県や国は特例措置を
繰り返し、現場に多くの混乱をもたらした。
まず移動である。宮崎県では種雄牛55頭を宮崎県家畜改良事業団
1ヶ所で飼育し、宮崎県内の繁殖農家に精液を提供してきた。とこ
ろが、近隣で口蹄疫が発生し、事業団が移動制限区域内に含まれて
いるにもかかわらず、宮崎県は牛を移動させた。さらに、移動先で
うち1頭に感染の疑いがあることが明らかになると、口蹄疫の防疫
指針が「患畜と同じ農場において飼育されている偶蹄類の家畜の全
部」の殺処分を求めているにもかかわらず、宮崎県は残り5頭の殺
処分も再び見送った。
種雄牛の重要性を考えると、あらかじめ種雄牛を分散しておくか、
必要量の精液をストックしておくべきであった。
宮崎県の要請を認めた国も問題である。口蹄疫の拡大を防ぐため
には、なによりルールに従って対策を確実に行う必要がある。
29万頭に及ぶ家畜が殺処分される中で、なぜ宮崎県が所有する種
雄牛が特別扱いとなるのかについて、現地での不満は収まっていな
い。また、民間の種雄牛との取扱いの差についても多くの人がいま
だ疑問に思っており、宮崎県と国に対する畜産農家の不信感を深め
ることになった。
(4) 5月19日、国の追加対策の柱のひとつとして、早期出荷促進緊急対
策が決定された。ワクチン接種区域周辺の搬出制限区域(10~20Km圏
内)の牛・豚のうち、出荷適期に達していない若齢のものについても
出荷させ、緩衝地帯を作ることで口蹄疫のまん延を防止するというも
のだった。
しかし、食肉処理能力が不十分なこと、通常と畜残さの処理を行っ
ていた化製場が利用できず、他の施設の手当に時間を要したこと、移
動制限区域内の食肉処理場を開くという特例措置をとったため畜産農
家の不安が払拭できなかったこと、そして通常通りの出荷を行ってい
7
た2農場で感染したことなどにより、予想以上に畜産農家の不安が増
幅した。その結果わずか2件の実績で終わった。
本対策については、非常に有効な対策としてアピールされたが、予
めつかめるはずの食肉処理施設などの状況も踏まえておらず、現実性
の乏しいものであった。
3 我が国への口蹄疫ウイルス侵入防止措置の在り方
(1) 平成12年には日本周辺で広く口蹄疫が発生して、その年の3月に
92年ぶりとなる口蹄疫の国内発生があった。平成22年にも同様に日
本周辺の中国、台湾、韓国で口蹄疫が発生しており、国は危機感を
もって対応する必要があった。
(2) 国際空港・海港においては靴底消毒などの検疫措置を実施してい
たが、オーストラリアやニュージーランドのような徹底した口蹄疫
ウイルスの侵入防止に係わる入国管理は実施されていない。また、
口蹄疫発生国からの海外旅行者の口蹄疫侵入防止への理解や協力に
対する働きかけも不十分であった。
4 畜産農家の口蹄疫ウイルス侵入防止の在り方
(1) 国では平成16年に、家畜伝染病予防法に基づいて、飼養衛生管理
基準を設けた。この飼養衛生管理基準では、伝染病から家畜を守る
ために牛、豚、鶏の所有者が日常的に守るべき10項目が示されてい
る。
しかし、今回の感染の広がりをみても、畜産農家段階において飼
養衛生管理基準が守られていたとは言い難く、家畜保健衛生所も十
分な指導を行っていなかったと見られる。
宮崎県では10年前に口蹄疫が発生し、病気に対する危機感が高ま
った。しかし、今回の発生農場においては、踏み込み消毒槽、動力
噴霧器並びに専用の作業着及び長靴の未設置など概してバイオセキ
ュリティーの低い状況が確認されている。前回の発生から時間がた
つ中で、防疫意識が低下していたと考えざるを得ない。
8
(2) 今回は、宮崎県の畜産試験場(10例目)やJA宮崎経済連(13例
目)、宮崎県家畜改良事業団(101例目)においても感染が確認され
た。本来バイオセキュリティーのレベルが高いはずのこうした施設
でウイルスの侵入を許したことを、関係者は深刻に受け止めなけれ
ばならない。
まず、豚での感染が確認された宮崎県の畜産試験場(10例目)で
ある。
畜産試験場では、従来より関係車両は車両消毒槽や装置を通過さ
せていた。しかし、従業員の通勤用の車両はそこを通過せず、別の
出入口を利用していた。また、使われていた消毒薬も口蹄疫ウイル
スには効果のない逆性石けんであった。さらに、養豚エリアへの人
の入出場においては、シャワー施設があったにもかかわらず、従業
員はそれを使用せず着替えのみで出入りしていた。
続いて、豚3 , 8 0 0頭あまりを飼育していたJA宮崎経済連(13例
目)である。
種豚を多く飼育するこの施設では、養豚エリアへの人の出入りに
際してはシャワーを浴びることを義務付けていたが、外周の塀が低
く、猫などが自由に侵入していた他、12例目農場の堆肥処理施設が
近接していた。
さらに、飼育していた牛が感染した宮崎県家畜改良事業団(10 1
例目)である。
事業団では車の出入りには注意を払っていたが、牛の飼育エリア
への人の入場は着替えのみで、シャワー設備があったにもかかわら
ず、使用していなかった。しかも、宮崎県内での発生が明らかにな
った4月20日以降も、入場時のシャワー使用を義務付けていなかっ
た。
(3) 飼養衛生管理基準は、伝染病予防のポイントとして10項目を掲げ
ているものの、緊迫感や具体性に欠け、実効性に乏しいものであっ
た。
消毒槽を設置していないなど、飼養衛生管理基準を遵守している
とは思えない管理を行っている畜産農家が多数あったことを考えれ
ば、国は飼養衛生管理基準をより具体的に示し、畜産農家が確実に
遵守できるようにすべきであった。
(4) 飼料などを運ぶために複数の農場間を行き来する車両や人は、一
9
旦ウイルスが付着すると、広範囲に感染を伝播させる危険性を持つ。
口蹄疫疫学調査チームによれば、農場間でのウイルスの拡大をめ
ぐっては、家畜、たい肥、飼料又はその他の畜産資材の運搬、従業
員の移動などに伴う人や車両の動きによって伝播した可能性が高
い。
また、感染が確認され、移動制限が実施された後においても、家
畜、死亡畜、飼料、敷料などに関わる流通関係業者において、タイ
ヤや車体などの消毒は徹底するものの、運転者や運転席などの消毒
が不十分であったなど、一部衛生対策の不徹底が見られた。
5 発生時に備えた準備の在り方
(1) 口蹄疫が中国でまん延し、近隣諸国で頻繁に発生していることを
考えれば、海外での発生状況は、防疫対策を行う上で重要な情報で
ある。
国は、韓国での口蹄疫発生を受け、平成22年1月7日と4月9日
に都道府県に対して口蹄疫の発生状況及び注意喚起のための通知な
どを発出し、家畜の臨床症状などの観察や衛生管理の徹底などを関
係者に周知するよう依頼している。
しかしながら、宮崎県は、こうした情報を受けて市町村、JAの
関係者にまでは情報を伝達していたが、畜産農家にまで情報が伝わ
っていたかどうかの確認を行っていなかった。
(2) 宮崎県は、肉用牛の数は全国3位、養豚は全国2位の畜産県だが、
家畜保健衛生所の数は県内に3ヶ所、家畜防疫員も47人であり、こ
のため、家畜防疫員(家畜保健衛生所の獣医師)一人当たりでみた
場合の管理頭数は15,342家畜衛生単位(牛、豚、鶏の飼養頭数を換
算係数(牛:豚:鶏=1:0.2:0.01)に基づき換算したもの)(全
国平均 4,244家畜衛生単位)、畜産農家戸数は246戸(全国平均 5
2戸)と、他の都道府県と比較して家畜防疫員の負担が格段に大き
い。
伝染病発生に対する早期対応のためには、都道府県や家畜保健衛
生所が日頃から農場の所在地や畜種、頭数などについて把握してい
ることが重要である。しかし、宮崎県では、そうした最新の情報を
十分に把握していなかった。このため初動対応などが遅れ、被害を
10
広げたと考えられる。
(3) 口蹄疫の防疫指針では、埋却などのまん延防止措置については原
則として農場経営者が行い、都道府県は場所の確保に努めるように
指導、助言を行うとされている。
しかし、大規模に飼養している畜産農家を中心に、埋却地を確保
していない畜産農家が多かった。また、宮崎県は、自己所有地での
埋却が困難である場合の対応について具体的な検討をしていなかっ
た。このため、発生後、埋却地の確保を試みたものの、掘ってみて
地下水が出たり、住民の反対などで早期の確保が出来なかった。こ
のことが、発生地でのウイルス量を増やし、感染を拡大させた一因
となった。
(4) 口蹄疫がまん延した場合の地域産業や社会に与える影響の大きさ
を考えれば、万が一に備えての訓練や準備は重要である。
宮崎県では平成19年に鳥インフルエンザの発生があったため、鳥
インフルエンザについては研修や訓練は毎年行われていたものの、
口蹄疫を想定した研修や訓練は行われていなかった。
また、消毒薬の準備については、口蹄疫防疫指針でも「都道府県
は、緊急時の防疫資材の入手方法などを検討するとともに、初動防
疫に必要な資材の備蓄に努める」としている。しかし、消毒液など
の備蓄は必ずしも十分ではなかった。
こうした訓練の取組の遅れや必要な資材の不足は、初期の混乱を
引き起こした原因となったと考えられる。
6 患畜の早期の発見・通報の在り方
(1) 口蹄疫のまん延防止には、早期発見、早期とう汰が何よりも重要
である。ところが、今回の事例では、異常畜の発見の見逃しや通報
の遅れがあり、これが感染を広げる大きな原因となった。
一つ目は、6例目のケースである。
6例目のケースでは、3月26日に初期の症状が見られ、30日には
獣医師から家畜保健衛生所へ通報があった。宮崎県の家畜保健衛生
所は数度にわたってこの畜産農家を訪問し、検査を行ったにもかか
わらず、口蹄疫を疑わず見逃していた。
11
二つ目は、1例目のケースである。
1例目のケースでは、4月7日に流涎など初期の症状を示し、9
日には獣医師が口蹄疫の可能性が否定できないと判断し、家畜保健
衛生所に通報した。しかし、家畜保健衛生所は、口蹄疫の検査は行
わず、経過観察が適当と判断した。宮崎県が国の検査機関に検体を
送ったのは、10日後の19日であった。
口蹄疫防疫指針では、異常畜を発見し、口蹄疫が否定できない場
合には、検体を採取し、動物衛生研究所に送ることになっている。
また同時に、病性決定までの間に、殺処分の場所や防疫対策の検討
などを行うようにしている。
しかし、送った検体が陽性であった場合、宮崎県としてのダメー
ジが大きく、現場ではできれば口蹄疫であってほしくないという心
情が強く働いたと考えられる。このことは宮崎県だけの問題ではな
いが、こうした心理的な圧力が国への連絡を遅らせ、結果的に感染
を広げたことは間違いない。韓国で口蹄疫がまん延し始めていたこ
とを考えると、宮崎県はもっと早期に検体を国に送るべきであった。
そして、三つ目は、7例目の大規模農場である。この農場では、
4月上旬には食欲不振の症状を示す牛が多発し、4月22日には10数
頭に流涎やびらんを確認したものの、社内での連絡を優先し、家畜
保健衛生所に通報を行ったのは24日であった。家畜保健衛生所が立
入検査を行った時点では半分程度の牛房(畜舎の中を柵などで囲っ
た牛の飼養スペースで、肥育牛の場合には、1牛房で数頭から十数
頭の牛を飼養するのが通常である。)において流涎を示す牛の存在
が確認されていることから、すでに口蹄疫が農場内にまん延してい
たと考えられ、通報の遅れは明らかである。
(2) 宮崎県家畜改良事業団では、5月13日に肥育牛一頭に発熱を確認
したが、肥育牛5頭に発熱、流涎が広がった翌14日になってはじめ
て家畜保健衛生所に通報している。
職員によると、13日には流涎などが無かったため口蹄疫を疑わな
かったとしているが、近隣ですでに感染疑いが発生しており、しか
も、種雄牛という貴重な牛を扱う事業団は、本来、牛の健康状態や
伝染病に関して多くの経験と高度な技術を持っているはずである。
事業団では12日に国に対して6頭の種雄牛を特例として移動させ
る協議を始めており、13日には牛を移動させる事になっていた。万
が一感染していれば、移動先に感染を広げるおそれがあるため、牛
12
の健康管理にはより一層の注意を払っていたはずであり、この通報
の遅れは問題である。
牛の移動を優先したと思われかねないケースで、事実、6頭のう
ち1頭が移動先で口蹄疫に感染していたことがわかり、移動先一帯
が移動制限区域となった。
(3) 国では、ワクチン接種した家畜であっても、疑わしい症状が認め
られれば感染の有無を確認することを求めている。ところが、宮崎
県では、6月25日、発疹やびらんという症状が見られる牛が見つか
ったにもかかわらず、国に報告せずワクチン接種家畜としてそのま
ま処分していた。
口蹄疫の典型的な症状とは認められなかったというのが宮崎県の
説明だが、念のため写真を撮ったり、検体を採取するなど適切な調
査をすべきであった。
7 早期の殺処分・埋却などの在り方
(1) 診断確定後24時間以内の殺処分、72時間以内の埋却ができなかっ
たことが、感染を拡大させた。迅速な殺処分と埋却ができれば、感
染が他の産業動物や農場にこれほどの拡大をせずに、終息できた可
能性がある。伝染病対策の重要な柱の1つである感染源対策が十分
に取られていなかった。
(2) 当初、宮崎県は、同県職員の獣医師で対応しようとし、民間獣医
師を活用しようとしなかったため、作業が円滑に進まなかった。感
染が拡大し、家畜保健衛生所のみで対応できなくなった段階で、実
際の殺処分などは速やかに民間獣医師に依頼するべきであった。ま
た、都道府県職員たる獣医師の任務に殺処分も含まれていることか
ら、このような業務に対応できるように日頃から訓練しておくべき
であった。
(3) 殺処分・埋却などの具体的な作業のイメージがないため、獣医師
が保定作業(診断、処置などの際に家畜が暴れることなどを防止す
るためその動きを制御すること。)を行わざるを得なくなるなど、
作業が円滑に進まなかった。また、現場における指揮命令系統が確
13
立されておらず、適切な作業分担ができていなかったことが、防疫
作業の遅れにつながった。
宮崎県当局及び家畜保健衛生所職員による人員・物資の確保、現
場の指揮命令などに問題があったのではないかと考えられる。
(4) 埋却地の確保や了解の取付けに時間がかかりすぎた。
8 その他の初動対応の在り方
(1) 各地域における第1例が確認された際の周辺農場に対する調査を
感染の拡大防止の懸念から、立入検査ではなく電話による聞取調査
のみとしたのは、不十分であった。
(2) 発生当初は国道10号線沿いの4ヶ所しか消毒ポイントが設置され
ず、抜け道が多かったことなど、消毒ポイントの設置の仕方が不十
分だった。
(3) また、この関係で、通行遮断などの交通規制に際しては、警察・
国・宮崎県の事前協議に多くの時間がかかりすぎた。
9 初動対応では感染拡大が防止できない場合の防疫対応の在り方
(1) 豚への感染が起こったことなどにより急激に発生件数が増加した
ことから、殺処分できずに待機させられる感染家畜は増加した。さ
らに、十分な埋却地も確保できなかったことから、殺処分・埋却の
作業が発生に追い付かなくなり、5月のはじめには防疫方針の変更
が必要になっていたが、結果的に変更の決定のタイミングは遅かっ
たと考えられる。
(2) 今回、我が国で初めて、防疫対応として、患畜及び疑似患畜以外
の健康な家畜にも殺処分を前提としたワクチン接種が行われた。し
かし、経済的な補償を含めた法的裏付けがなく、その決定及び実行
に時間がかかった。
14
10 防疫の観点からの畜産の在り方
我が国では国際競争力強化や生産効率向上のため、戦後一貫し
て規模拡大政策が進められてきた。
こうした規模拡大政策は、輸入飼料に依存することによる生産性
の向上という形で、畜産業に一定の成果をもたらした。しかし、農
場の大規模化が進むとともに、狭い範囲に多数の家畜を飼育する「密
飼い」も行われるようになった。「密飼い」は、ひとたび家畜の伝
染病が発生した場合におけるまん延の危険性を高くする。
本来であれば、大規模化に伴って規模に見合う防疫体制がとられ
るべきだが、必ずしもそうした体制がとられていなかったところに
問題がある。
11 その他
(1) 産業動物に対する獣医療体制には様々な問題がある。獣医学教育
でその意義や魅力についての教育機会が少ないこと、大学での実習
・卒業後の獣医療技術・新技術などの研修が不十分であることな
ど、産業動物の獣医師が現場で役割を十分発揮できる教育システム
になっていない状況にある。
産業動物の獣医師や都道府県などで家畜衛生行政などに携わる公
務員の獣医師は、口蹄疫などの家畜伝染病の防疫や食品の安全確保
に重要な役割を担っているが、それらの獣医師の確保も円滑に行わ
れているとは言い難い。
国は、平成22年8月、10年後の平成32年度を目標年度とする「獣
医療を提供する体制の整備を図るための基本方針」を定めたが、今
後、都道府県が都道府県計画の策定を進めるに当たり、今回の口蹄
疫発生の教訓を十分生かしていく必要がある。
(2) 口蹄疫発生後、宮崎県は、地域の畜産農家から発生農場の場所な
どに関する情報を求められたにもかかわらず、個人情報保護を理由
として求められた情報の提供を行わなかった。
しかし、個人情報保護法においては、「人の生命、身体、財産の
保護に必要な場合」などには、第三者への情報提供は制限されない
15
こととなっており、宮崎県個人情報条例においても、「緊急性があ
る場合」や「相当の理由がある場合」などには第三者への情報提供
ができるとされている。
口蹄疫問題で重要なことは、直ちに防疫措置を講じることであり、
それに必要な情報は、直ちに必要なところに提供されなければなら
ない。宮崎県が個人情報保護を理由に発生場所などに関する情報の
提供をしなかったことは、問題であった。
(3) 口蹄疫については、まだまだ科学的知見が不十分である。初期症
状や感染の有無の判定などの早期発見のための技術開発や、感染が
どのように広がるのかを予測する手法の開発などが遅れている。さ
らに、検査方法やワクチンの有効性、消毒方法やその効果などにつ
いての研究も遅れている。
科学的知見は防疫の基礎であり、研究が進めば防疫対応は改善が
可能となる。
(4) 口蹄疫疫学調査チームの調査では、今回の侵入経路を特定するま
でには至らなかった。侵入経路の疫学的解析にも限界があり、極め
て難しいのが国際的にも認識されているのは事実ではあるが、人、
飼料などの物品、車両などの出入りが農場において記録されていな
かったことも、口蹄疫が発生した後での感染ルートの特定が困難と
なる要因となった。
16
第3 今後の改善方向
1 国と都道府県・市町村などとの役割分担・連携の在り方
(1) 防疫対応については、混乱なく迅速・的確な防疫が実施できるよ
うに、国・都道府県・市町村などの役割分担を明確にしておくべき
である。口蹄疫などの重要な疾病に対する防疫対応は国が全面的に
行うべきとの考え方もあるが、現実の防疫対応は日ごろから現場の
状況を十分に把握していないとできないものであり、このために、
各都道府県に家畜保健衛生所・家畜防疫員が置かれていることか
ら、
① 防疫方針(予防、発生時の初動、感染拡大時の対応など)の策
定・改定は、国が責任を持って行う、
② 防疫方針に即した具体的措置は、都道府県が中心となって、市
町村、獣医師会、生産者団体などとの連携と協力の下に迅速に行
う、
ことを基本とすべきである。
(2) 防疫対応上最も重要なのは、畜産農家への口蹄疫ウイルスの侵入
防止といった「予防」であり、畜産農家段階の予防的措置について
は、国が示す防疫方針(飼養衛生管理基準など)に従って、都道府
県が徹底して取り組むことが重要である。このため、都道府県は十
分な家畜防疫員の確保など体制整備を行うべきである。
(3) 特に「初動」は、国があらかじめ示す防疫方針に従って、都道府
県が迅速・確実に行動することが重要である。このため、都道府県
は、日ごろから十分な準備をしておくべきである。
( 4 ) 国は、(1 )の防疫方針の策定・改定に責任を持つとともに、その
方針に即した都道府県段階の具体的措置が確実に行われるよう、支
援を行うべきである。
具体的には、
① 日ごろから各都道府県段階の予防措置の実施状況、発生時に備
えた準備状況、市町村・獣医師会・生産者団体などとの連携状況
などを把握し、必要な改善指導を行う、
17
② 定期的に全国一斉及び都道府県ごとの防疫演習を行う、
③ 発生時に直ちに次の職員・専門家を派遣する
ア国の防疫方針を都道府県に正確に伝達し、調整する職員
イ具体的措置に習熟し、必要な資材も準備した緊急支援部隊
ウ感染の実態など、国の防疫方針の改定に必要な情報を正確に
把握する防疫専門家
などの支援を行うべきである。
(5) 対策本部については、
① 国の防疫方針を決定する農林水産省の対策本部、及び
② 国の防疫方針に即した実施の指令塔となる都道府県の対策本部
が必須であり、これ以外の対策本部については、その目的を明確に
し、屋上屋を架すことや判断権者の空白状態が生じないようにする
ことが重要である。
また、都道府県の対策本部は、国から派遣された職員・専門家、
市町村、獣医師会、生産者団体などの関係者も一堂に会するなど意
思疎通を十分に図り、迅速・的確に意思決定して実行する体制を作
ることが必要である。この旨を、国の防疫方針にも明記する必要が
ある。
(6) 都道府県段階の防疫対応においては、都道府県が中心となりつつ
も、市町村、獣医師会、生産者団体などとの緊密な連携の下に防疫
にあたることが重要である。このため、日ごろから連携の在り方を
明確化しておくべきである。
( 7 ) 都道府県が市町村に消毒や埋却などについて協力を求める場合
に、国の財政支援措置が確実に市町村に及ぶようにすべきである。
(8) 県境付近で口蹄疫が発生した場合を念頭に置いて、隣接都道府県
同士の連携・協力体制も日ごろから準備し、防疫演習などを共同で
実施して具体的に実効性のあるものにしておくべきである。
2 防疫方針の在り方
(1) 国が定める防疫方針については、海外における発生の状況(地域、
18
型など)や、科学的知見・技術の進展(抗ウイルス薬、ワクチンな
どの開発状況)などを常に把握し、これを踏まえて定期的に見直す
など、常に最新・最善のものとしておくべきである。
また、国は、口蹄疫による被害とその波及的影響、防疫措置の内
容・目的、科学的根拠などについて、関係者に分かりやすく説明し、
共通認識にしておくべきである。さらに、税の負担者であり、消毒
・検疫などの協力を求めることになる一般国民にも分かりやすく説
明しておくべきである。
(2) 特に、予防措置と発生時の初動対応は、都道府県が確実に実行で
きるよう、それぞれをあらかじめ明確に示しておくべきである。そ
の際、国は、その措置を執行する都道府県、獣医師会や市町村など
の意見も十分に聴取すべきである。また、国は、定期的に全国一斉
及び都道府県ごとの防疫演習を開催し、問題点の把握とその解消に
努めるべきである。
(3) 防疫方針が時間とともに風化しないようにするために、国や都道
府県における技術行政の継承を担保する仕組みを検討すべきであ
る。特に、人事面での工夫(責任者の在任期間の長期化、責任者が
異動する場合の十分な引き継ぎ期間の確保など)が必要である。
(4) あらかじめ定めている防疫方針の初動対応で感染拡大が防止でき
ない場合には、速やかに防疫方針を改定することが必要である。こ
のため、国は、第1例の発生後直ちに防疫の専門家を現地に常駐さ
せ、感染の実態を正確に把握した上で、感染拡大を最小限とするた
めの防疫方針の改定を判断できるようにすべきである。
また、国は、口蹄疫などの特定の家畜伝染病について、その防疫
や疫学の専門家を育成することに努めるべきである。
さらに、国は、牛豚等疾病小委員会を適切なタイミングで開催す
るとともに、小委員会の在り方についても検討するべきである。
(5) 種雄牛を含め畜産関係者の保有する家畜については、特例的な扱
いを一切認めるべきではない。畜産関係者は、このことを前提とし
て、凍結精液や凍結受精卵などによる遺伝資源の保存、種畜の分散
配置などにより、リスク分散を行うべきである。
なお、稀少動物や展示動物など、種の保存が必要な感受性動物種
19
の扱いについては、特例的な扱いも考慮する必要があり、あらかじ
め関係者が協議してその扱いを決めておくべきである。
(6) 早期出荷により緩衝地帯を作り出すという計画は、現場の実情に
合ったものであれば有効な対策となり得ると考えられることから、
国は、地域の実態を十分に把握し、措置の現実性を十分に検討した
上で実施の決定を行うべきである。
3 我が国への口蹄疫ウイルス侵入防止措置の在り方
(1) 東アジアでは、口蹄疫が極めて頻繁に発生しており、これまで清
浄性を維持できていたのは日本や韓国などに限られていたという状
況の中で、強い危機感をもって国際防疫に取り組む必要がある。
(2) このため、国は、日ごろから国際空港・海港において靴底消毒な
どの検疫を徹底するとともに、オーストラリアをはじめ諸外国の例
もよく研究した上で、口蹄疫ウイルスの侵入を防止するための措置
を強化すべきである。
例えば、次のようなことを検討すべきである。
① 入国者に対し、過去一定期間の海外における農場立入りの有無
を申告させる。農場に立ち入った者に対しては、手荷物などの検
査とともに、必要に応じて、関係する物品の消毒を行うことがで
きることとする。
② 入国者に対し、手荷物中の靴の持ち込みの有無を申告させる。
靴を持ち込む者に対しては、手荷物中の靴の検査とともに、必要
に応じて、当該靴の消毒を行うことができることとする。
③ 検疫探知犬を活用した手荷物を中心とした持ち物の検疫強化を
図る。
(3) 海外旅行者・国内の関連企業などに対して、口蹄疫の感染力の強
さや感染した場合の国内外への影響などを強く訴え、検疫強化への
協力を求めるべきである。
(4) この他、口蹄疫の国内発生時には、国は、発生地から出発する国
内線、国際線と接続する国内線などにおける消毒の強化も行うべき
20
である。
4 畜産農家の口蹄疫ウイルス侵入防止措置の在り方
(1) 口蹄疫の発生防止のためには、日ごろからの畜産農家の口蹄疫ウ
イルス侵入防止措置が何よりも重要である。このことは、口蹄疫に
限らず、広く家畜の伝染病の発生・まん延を防ぐ意味でも重要であ
る。
このため、畜産農家は、ウイルス侵入防止の重要性を十分認識し、
日ごろから責任をもって、効果的な侵入防止措置を実行していく必
要がある。
また、都道府県は、畜産農家の防疫に対する意識を高め、畜産農
家に家畜の飼養についての最低限の規範である飼養衛生管理基準を
確実に遵守させるためにも、定期的な研修を行ったり、畜産農家か
ら飼養衛生管理基準の遵守状況を定期的に報告させたり、家畜防疫
員による定期的な立入検査(現行法でも拒否した場合は罰則)を行
うべきである。このため、市町村、獣医師会、生産者団体とも十分
に連携・協力すべきである。
(2) 飼養衛生管理基準を遵守していない畜産農家や遵守指導を徹底し
ていない都道府県に対しては、手当金などの削減・返還を含めて、
何らかのペナルティを課すべきである。
(3) 畜産農家への口蹄疫ウイルスの侵入防止を日ごろから徹底する観
点から、飼養衛生管理基準の内容を、より具体的なものとする必要
がある。
例えば、次のようなことを検討すべきである。
① 農場の敷地を人の生活用と家畜生産用の敷地に分け、家畜生産
用の敷地も管理区域と家畜飼養区域に分ける、農場の出入口を1
ヶ所にするなど、衛生面を考慮した作業動線を構築する。
② 踏込消毒槽、動力噴霧器などの消毒用設備・機器を備えるとと
もに、専用の作業着及び長靴を常時設置させ、これらの活用を徹
底する。
③ 発生国に滞在していたためウイルスを伝播させる可能性がある
人(観光客・研修生を含む。)や発生国から輸入された物品を農
21
場に近づけない。
④ 畜産農家は、発生時の侵入経路の早期特定のためにも、人、飼
料などの物品、車両などの出入りを正確に記録する。
⑤ 大規模経営については、感染した場合の影響が大きいことから、
早期の発見・通報などが確実に行われるようにするため、家畜保
健衛生所・獣医師会などと連携のとれる獣医師を置く。
(4) 特に高いレベルのバイオセキュリティーが求められる施設(都道
府県の試験場など)においては、独自の基準を設けるなどより高い
レベルの衛生管理を行うべきである。
(5) 口蹄疫疫学調査チームの報告からみても、飼料や家畜、生乳など
の運送などで農場間を移動する車両については、ウイルスの侵入・
拡大の原因となる可能性が高く、日ごろから消毒を徹底すべきであ
る。車両の外側のみならず、運転席内や運転者の靴底などの消毒な
どを徹底させるべきである。また、発生時の疫学考証のため、立ち
寄り先の記録を残すべきである。
(6) 複数農場に立入りする獣医師、人工授精師、削蹄師、家畜運搬業
者、死亡獣畜処理業者、飼料運搬業者などが感染経路となることも
あり得ることから、これらの人が農場に立入りする際についても消
毒を徹底すべきである。
(7) たい肥場が感染源となる可能性もあることから、その設置場所、
消毒方法などについて十分注意する必要がある。
5 発生時に備えた準備の在り方
(1) 国は、都道府県への通知を出すだけでなく、ウェブサイトに、最
新の発生状況や、農場への侵入防止のための具体的な注意点などを
分かりやすく掲載し、畜産農家、生産者団体、家畜保健衛生所、獣
医師を始め、現地の関係者が情報を共有できるようにすべきである。
また、積極的な情報発信として、都道府県や獣医師会などとの連携
により、畜産農家に対する定期的な研修会などを開催して、畜産農
家の防疫に対する意識を高めるべきである。
22
(2) 都道府県は、農場の所在地、畜種、飼養頭数、畜舎の構造、飼養
管理の状況などを日常的に把握しておくべきである。このため、家
畜伝染病予防法に基づく立入検査を定期的に実施するとともに、市
町村、獣医師会並びに生産者団体などと十分に連携すべきである。
また、こうしたことを的確に行えるようにするため、全国平均に
比べて家畜防疫員の数が少ない都道府県は、家畜防疫員の増員に努
めるべきであり、都道府県内の家畜保健衛生所の配置についても畜
産農家までの距離などを考慮した適切なものとすべきである。
さらに、国も、都道府県の把握した情報を統一的な防疫マップと
して共有するなどの工夫をすべきである。
(3) 埋却地の事前確保は、畜産農家がその規模などに応じて責任を持
って行うべきであるが、口蹄疫が発生した際に埋却地が確保できて
いなければ、初動対応で終息させることはできない。このため、防
疫対応を実施する都道府県は、埋却地の確保状況を把握し、埋却地
を十分に確保できていない畜産農家に対して必要な指導を行うとと
もに、畜産農家による事前確保が十分でない場合の対応(公有地の
活用による埋却地の確保、焼却・レンダリングの実施、そこまでの
運搬経路・運搬方法など)を準備すべきである。
(4) 口蹄疫が発生した場合に備え、都道府県は、日ごろから防疫演習
などを活用して消毒薬などの防疫資材の必要数を把握し、十分な量
を備蓄しておくべきである。
また、国は、口蹄疫の大規模な発生に備え、大型防疫機器などを
用意しておくべきである。
(5) 口蹄疫が発生した場合に備え、都道府県は、防疫演習を毎年度定
期的に行い、それにより防疫体制を点検し、改善していくべきであ
る。
6 患畜の早期の発見・通報の在り方
(1) 口蹄疫が発生した際には、防疫措置が一日遅れても被害が飛躍的
に増大する。このため、疑い症例の発見・通報及びそれに対する責
23
任機関の迅速な対応は、一刻を争う重要な初動のポイントである。
疑わしい家畜が出た場合に、獣医師・畜産農家から家畜保健衛生所、
家畜保健衛生所から都道府県の畜産部局、さらに都道府県の畜産部
局から国に、迅速に通報される体制が必要である。
通報した場合の各種の影響を考慮して通報に慎重になる傾向を排
除するため、通報が遅れた場合の方がいかに影響が大きいかを、今
回の教訓から学び、関係者にも十分に理解してもらうことを徹底す
べきである。また、早期通報者が社会から評価されるようにしてい
くことも必要である。
(2) 早期の発見・通報を徹底するための手段として、具体的な通報ル
ールを作るべきである。
例えば、国があらかじめ示した一定の症状に照らし、口蹄疫を否
定できない家畜については、獣医師・畜産農家から直ちに家畜保健
衛生所に、かつ、家畜保健衛生所から直ちに都道府県の畜産部局に
連絡するとともに、症状が分かる写真を添付した検体を直ちに家畜
保健衛生所から国(動物衛生研究所)に送るといったルールを定め
るべきである。
また、こうした通報を行う際に当該農場などで行う出荷停止など
の具体的な防疫措置についてもルールを定め、それに伴う損失につ
いても財政支援を行うべきである。
(3) 早期の発見・通報の徹底に資するため、ルールに従って通報した
畜産農家の患畜・疑似患畜については、十分な財政支援を行うよう
にするとともに、ルールに従わずに通報が遅れた畜産農家、都道府
県などに対しては、手当金などの削減・返還を含めて何らかのペナ
ルティを課すべきである。
(4) 患畜などを早期に発見するため、家畜保健衛生所や都道府県の段
階でもPCR法や簡易検査法により口蹄疫の診断を行えるようにす
べきとの意見もあるが、確定検査については、
① 確定検査で陽性となる症例を取り扱った場合には検査場所その
ものが感染の起点となる可能性があること、
② PCR法の検査結果を確認するためには、比較対照として感染
力のある口蹄疫ウイルスを用いる検査が必要であり、それには高
度のバイオセキュリティーレベルを有する施設が必要であるこ
24
と、
③ 正確な判定を行うためには、相当な検査経験が必要であること、
などから、諸外国と同様に、我が国においても、条件を満たす動物
衛生研究所で行うべきである。
一方、畜産農家段階で行う簡易検査については、農場から外部に
ウイルスを拡散させることがないので、精度などの面で実際に使え
る手法開発を促進すべきである。
なお、簡易検査については、陽性を陰性と判定するなど、その結
果が確定検査と異なる結果となる可能性があることから、その活用
に当たってはルールを的確に定め、慎重に取り扱う必要がある。
7 早期の殺処分・埋却などの在り方
(1) 都道府県は、早期に殺処分・埋却などが確実に終了するよう、日
ごろから埋却地の事前確保、作業のやり方・手順の明確化(迅速・
確実な安楽殺方法の検討を含む)、作業チームの人的構成の明確化
(作業を的確に行える経験者を入れることが必要)、獣医師会を中
心とした民間獣医師、自衛隊などとの協力体制の整備を進めておく
ことが重要である。その際、防疫従事者の安全面にも配慮すること
が必要である。
(2) 都道府県は、日ごろから、獣医師会などと連携して、作業に習熟
している民間獣医師の能力を十分に活用できるようにしておくべき
である。
(3) 国は、今回の経験を踏まえ、作業現場で実践的に活用できる作業
マニュアル(作業のやり方、それに必要な人材と役割分担、現場に
おける指揮命令系統の決め方、円滑に作業を進めるための留意事項
など)を定め、防疫演習により、現場に定着させておくべきである。
(4) 国は、日ごろから、作業に習熟した人材から成り、必要な資材も
準備した緊急支援部隊を用意しておき、口蹄疫の発生後直ちに現場
に送って、都道府県を中心とする防疫作業を支援すべきである。
(5) 埋却地の事前確保については、畜産農家がその規模などに応じて
25
責任を持って準備すべきものであるが、口蹄疫が発生した時点にお
いて不十分な面は、防疫対応を実施する都道府県が市町村や国の協
力を得て対応するしかなく、都道府県は、このための準備をあらか
じめ行っておくべきである。
(6) このためには、公有地の活用による埋却地の確保や既存の施設を
活用した焼却・レンダリング処理を考えておくべきである。また、
焼埋却などのために輸送が必要な場合には、完全に密閉した形で輸
送できる車両が必要であり、このための研究・開発を行うことが必
要である。さらに、移動式レンダリング車などの実用化も有力な方
法であり、研究・開発を進めるべきである。ふん尿処理の方法につ
いても、同様に検討すべきである。
8 その他の初動対応の在り方
(1) 各地域における第1例の確認時には、電話による聞取調査のみで
なく、家畜防疫員による周辺農場への立入検査を速やかに実施し、
臨床検査、抗原検出検査、抗体検査などにより、浸潤状況を的確に
把握し、速やかに防疫対応に活かすべきである。その際、立入検査
を実施した者を介した感染拡大のないよう十分に配慮する必要があ
る。
(2) 国は、ウイルス感染を拡大しないための効果的な消毒ポイントの
設置の考え方や、効果的な消毒方法を明確に示したマニュアルを決
め、防疫演習を定期的に行うことにより現場に定着させておくべき
である。その際、科学的有効性などを示すことが必要であり、こう
した研究を促進すべきである。
(3) 都道府県は、口蹄疫が発生した場合を想定し、日ごろから消毒ポ
イントの具体的な設置場所や消毒方法について準備しておくべきで
ある。発生時の具体的な消毒ポイントの設置場所の決定などについ
ては、日ごろから、都道府県と地域の交通事情に詳しい市町村とが
協議・調整を図っておくべきである。
(4) 通行遮断などの交通規制について、都道府県の畜産部局は、日ご
26
ろから、警察や国・都道府県・市町村の道路管理部局との間で具体
的な実施方法について協議・調整を図っておくべきである。
9 初動対応では感染拡大が防止できない場合の防疫対応の在り方
( 1 ) 初動対応では感染拡大が防止できない場合の防疫方針について
も、ある程度の考え方を示しておく必要があるが、実際の適用につ
いては、国が責任を持って機動的に対応する必要があり、第1例の
発生後直ちに防疫の専門家を現地に常駐させ、的確な判断ができる
ようにすべきである。このため、国は、口蹄疫などの特定の家畜伝
染病について、その防疫や疫学の専門家を育成することに努めるべ
きである。
(2) 初動対応によって感染拡大を防止するのが最良であり、緊急ワク
チン接種や予防的殺処分に安易に依存すべきではない。特に、今回
は国が備蓄していたワクチンの抗原性状が有効性の範囲内にあり、
ワクチンが効果を発揮したが、口蹄疫のウイルスには様々な型があ
り、さらに同じ型であっても流行株の抗原変異が進めばワクチン効
果が期待できなくなることがあるため、有効なワクチンが常に調達
できるとは限らないことについて、十分な周知を図るべきである。
また、現在のワクチンの限界、例えば、感染は完全には防ぐこと
ができないことなどの現行ワクチンの性能限界と使用目的について
も十分な周知を図るべきである。
(3) 以上のことを踏まえて、感染が拡大した場合の対策案を、最新の
科学・技術を前提に、多角的に検討しておくべきである。例えば、
ワクチン接種のほか、使用できる抗ウイルス薬などがあればその活
用、ワクチンを使わない予防的殺処分なども検討しておくべきであ
る。
(4) 予防的殺処分を行わないで済む状況を作ることが望ましいが、初
動防疫では感染拡大が防止できないときの対策として、経済的補償
も含めて、予防的殺処分を家畜伝染病予防法に明確に位置付けてお
き、速やかな対策が実施できるようにしておくべきである。
27
10 防疫の観点からの畜産の在り方
(1) 家畜衛生の視点を欠いた畜産振興はあり得ない。このため、畜産
の在り方については、規模拡大や生産性の向上といった観点だけで
なく、防疫対応が的確に行えるかという観点からも見直すべきであ
る。
(2) こうした観点から、飼養規模・飼養密度などを含めた畜産経営の
在り方について、国や都道府県は一定のルールを定めたり、コント
ロールしたりできるように法令整備も検討すべきである。その際、
国は、我が国における畜産経営の在り方に関する基本的な方針を示
すべきである。また、防疫方針に基づく防疫対応の実施が都道府県
中心に行われ、実際の状況が都道府県ごとにかなり差がある以上、
防疫対応を円滑に行えるようにする観点から、都道府県に具体的な
権限を付与すべきである。
(3) 特に、大規模経営については、感染した場合の影響が大きいこと
から、早期の発見・通報などが確実に行われるようにするため、
① 家畜保健衛生所・獣医師会などと連携のとれる獣医師を置く、
② 現場の管理者に対し獣医師・家畜保健衛生所へ速やかに通報す
ることを社内ルールで義務付ける、
などの手当が必要である。
(4) また、10年前の発生事例では、その原因として輸入飼料が疑われ、
その対策の強化が行われたが、ウイルスの侵入防止という観点から
も輸入飼料に過度に依存しないよう、粗飼料の完全自給などを目指
していくことが重要である。
11 その他
(1) 獣医学系大学における産業動物に関する実習の強化、獣医師免許
取得後の産業動物に関する研修の強化、獣医師以外の獣医療に従事
する者の資格(動物看護師など)の制度化など、国家防疫という観
点から産業動物に関する獣医療体制を実効のあるものとするように
28
強化推進すべきである。
(2) 家畜保健衛生所の業務範囲が、牛海綿状脳症や高病原性鳥インフ
ルエンザなどの防疫業務に加え、公衆衛生、食品衛生、環境衛生及
び野生動物対応など、飛躍的に拡大している現状にあることから、
発生時に家畜防疫の要となる家畜防疫員の現場対応能力を、処遇の
改善や研修制度の充実といった環境整備も含めて補強していくこと
が急務である。
(3) 口蹄疫のような感染力の強い伝染病の拡大防止を図るためには、
地域の畜産農家に発生農場の場所などに関する基本的な防疫情報を
提供することは必須である。都道府県は、発生農場への取材の殺到
や感染拡大などが起こらないようマスコミの協力を求めた上で、地
域の畜産農家などに対して情報提供を的確に行うべきである。
(4) 今後の発生予防に万全を期す観点から、試験研究の促進は必須で
あり、口蹄疫の検査方法、ワクチン、抗ウイルス薬、消毒の方法・
効果など、口蹄疫全般について実効性の高い研究を進めるべきであ
る。
また、口蹄疫ウイルスを取り扱う研究施設は、国際防疫やテロ対
策上の国際基準を満たすことが要求されることから、口蹄疫ウイル
スの所持などを管理する仕組みを構築すべきである。
また、国の防疫対応において重要な役割を果たす動物衛生研究所
については、国と一体となった機動的な対応を容易にするなどの観
点から国立の機関として位置付け、また、体制を強化していくこと
についても検討すべきである。
(5) 口蹄疫ウイルスの侵入経路の早期特定を容易にする観点から、今
後は、畜産農家に人、飼料などの物品、車両などの出入りを正確に
記録することを義務付けるとともに、国及び都道府県は発生確認後
直ちに疫学的調査を開始すべきである。
29
第4 おわりに
これまで述べてきたように、今回の防疫対応をめぐっては、国と
都道府県・市町村などとの役割分担・連携、ウイルス侵入防止措置、
発生時に備えた準備、患畜の早期の発見・通報、初動対応、感染拡
大後の防疫対応などの様々な点において、多くの改善すべき事項が
認められた。
本報告書を踏まえて、国においては、家畜伝染病予防法の改正、
的確な防疫方針の提示をはじめとした様々な具体的な改善措置を早
期かつ着実に実施することを期待する。
また、都道府県においては、具体的防疫措置の実行責任者である
ことを深く自覚し、国の防疫方針に基づき、市町村・獣医師会・生
産者団体などとの連携・協力をしつつ、予防、発生時に備えた準備、
発生時の早期通報や的確な初動対応などに万全を期することを期待
する。
さらに、畜産農家には、人・車・物の出入りに際して消毒に万全
を期し、自らの農場にウイルスを侵入させないようにするなど、衛
生管理を適切に実施することを期待する。
「はじめに」でも述べたが、最も重要なのは、「発生の予防」と
「早期の発見・通報」さらに「初動対応」である。財政資金の投入
も含めて関係者がこの点に力を傾注することを強く期待する。
30
口蹄疫対策検証委員会委員名簿
日本放送協会解説委員合瀬宏毅
おおせひろき
全国消費者団体連絡会前事務局長神田敏子
かんだとしこ
弁護士郷原信郎
ごうはらのぶお
( 独) 農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究所研究管理監
( 国際獣疫事務局科学委員会事務局長) 坂本研一
さかもとけんいち
北海道農政部食の安全推進局畜産振興課長塚田善也
つかだよしや
自治医科大学地域医療学センター公衆衛生学部門教授中村好一
なかむらよしかず
○ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授眞鍋昇
まなべのぼる
帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科教授村上洋介
むらかみようすけ
◎ 日本獣医師会会長山根義久
やまねよしひさ
(50音順。◎は座長、○は座長代理。)
31
口蹄疫対策検証委員会の開催実績
8月5日第1回会合本委員会での論点及び今後の議論の進め方について
8月18日第2回会合関係者からのヒアリング
牛豚等疾病小委員会、疫学調査チーム等
8月24日第3回会合関係者からのヒアリング
宮崎県、宮崎県内市町村、宮崎県内生産者等
8月31日第4回会合関係者からのヒアリング
生産者団体(宮崎県、全国)、他県、獣医師、
防疫作業従事者等
9月8日第5回会合フリーディスカッション
9月10日第6回会合フリーディスカッション
9月15日第7回会合「これまでの議論の整理」のとりまとめ
9月24日第8回会合フリーディスカッション
9月30日第9回会合関係者からのヒアリング
大規模肉用牛生産者
10月5日第10回会合関係者からのヒアリング
地元マスコミ、大規模養豚生産者、
家畜衛生の専門家
10月13日第11回会合関係者からのヒアリング
家畜衛生の専門家、宮崎県内市町村
10月19日第12回会合宮崎県口蹄疫対策検証委員会との意見交換
32
11月1日第13回会合フリーディスカッション
11月10日第14回会合フリーディスカッション
11月12日第15回会合フリーディスカッション
11月18日第16回会合フリーディスカッション
11月24日第17回会合「口蹄疫対策検証委員会報告書」の取りまとめ
※上記ヒアリングのほか、疫学調査チームから、随時、調査状況を聴取
33
34
参考資料
35
36
発生後の経緯について
4月 5月 6月 7月
政
府
の
対
応
宮
崎
県
の
対
応
口蹄疫防疫対策本部設置
宮
崎
県
口
蹄
疫
防
疫
対
策
本
部
設
置
牛
豚
等
疾
病
小
委
員
会
開
催
口
蹄
疫
疫
学
調
査
チ
ー
ム
設
置
牛
豚
等
疾
病
小
委
員
会
開
催
自
衛
隊
派
遣
牛
豚
等
疾
病
小
委
員
会
開
催
赤
松
大
臣
と
宮
崎
県
庁
との
意
見
交
換
県
種
雄
牛
の
移
動
制
限
区
域
外
へ
の
搬
出
特
措
法
及
び
政
省
令
の
公
布
・
施
行
牛
豚
等
疾
病
小
委
員
会
開
催
「
口
蹄
疫
」
非
常
事
態
宣
言
知
事
記
者
会
見
(ワ
クチン
接種の
実施を表明)
ワ
クチン
接
種
開
始
県
種
雄
牛
一
頭
の
感
染
確
認
ワ
クチン
接
種
地
域
内
に
おけ
る
臨
床
症
状
に
よ
る
疑
似
患
畜
判
定
導
入
政
府
口
蹄
疫
対
策
本
部
及
び
現
地
対
策
本
部
設
置
え
び
の
市
地
域
の
移
動
制
限等
解
除
牛
豚
等
疾
病
小
委
員
会
開
催
尾
八
重
地
域
の
移
動
制
限解
除
現
地
調
査
チ
ー
ム
設
置
口
蹄
疫
防
疫
措
置
実
施
マニュ
アル
公
表
疑
似
患
畜
全
頭
の
殺
処
分
終
了
ワ
クチン
接
種
家
畜
全
頭
の
殺
処
分
終
了
「
口
蹄
疫
」
非
常
事
態
宣
言
の
一
部
解
除
都
城
市
地
域
の
移
動
制
限等
解
除
日
向
市
地
域
の
移
動
制
限等
解
除
西
都
市
地
域
の
移
動
制
限等
解
除
国
富
町
地
域
の
移
動
制
限等
解
除
児
湯
地
域
の
移
動
制
限
等解
除
(ワ
クチン
非
接
種
農
家
地
域
を除
く)
民
間
種
雄
牛
の
殺
処
分
を
実
施
ワ
クチン
非
接
種
農
家
地
域
の
移
動
制
限
解
除
宮
崎
市
地
域
の
移
動
制
限等
解
除
「
口
蹄
疫
」
非
常
事
態
宣
言
の
全
面
解
除
20日20日26日28日
20日13日
1日6日10日17日18日
18日
21日
21日22日
31日4日13日
4日13日
22日24日
24日29日1日2日3日6日8日16日17日18日27日27日
排
泄
物
等
の
処
理
に
係
る
通
知
を
発
出
1日
家
畜
の
再
導
入
に
係
る
通
知
を
発
出
16日
政
府
対
策
本
部
にて
ワ
クチン
接
種
の
実
施
を
決
定
20日 19日
20日
第
1
例
目
の
確
認
第
1
例
目
の
確
認
資料1
37
28,454
9,441
0
1
2
3
4
5
6
7
4/20 4/27 5/4 5/11 5/18 5/25 6/1 6/8 6/15 6/22
万頭
県有種雄牛処分の経緯と発生頭数等の推移
発生頭数
埋却頭数
埋却処理対象頭数
累計発生頭数199,309
累計埋却頭数199,309
埋却すべき残頭数0
県知事要
5/13-14
5/14
残
り
4
9
頭
殺
処
分
発生
殺処分待機
疑似患畜のピーク時
自衛隊派遣5/1
5/28
都城市即
日殺
処分
6/9
6/4
口蹄疫対策
特別措置法施行
県の
種牛移動
5/17
政府口蹄疫
対策本部設置
5/22
ワ
クチン
接種開始
発生頭数と殺処分頭数
6/29
殺処分待機疑似患畜
都城市で
発生
即日殺処分
6/9 口
蹄
疫
対
策
特別措置法成立
計画的殺処分
開始
発生のピーク
6/14
発生頭数
ワクチン接種家畜の
殺処分・埋却頭数
疑似患畜の殺
処分・埋却頭数
宮崎県調べ
殺処分頭数約29万頭
資料2
38
0
50
100
150
200
250
4/25 5/2 5/9 5/16 5/23 5/30 6/6 6/13 6/20 6/27 7/4 7/11
宮崎県外からの獣医師の派遣人数
獣医師の派遣人数
自
衛
隊
派
遣
ワ
クチン
接
種
殺処分終了
(人)
日付
※都道府県、動物検疫所、動物医薬品検査所、(独)家畜改良センター、(独)動物衛生研究所、
(独)農林水産消費安全技術センター、民間団体、獣医系大学等から派遣
農林水産省調べ
資料3
39
資料4
~ヨーロッパ(39カ国)~
アルバニア
オーストリア
ベラルーシ
ベルギー
ブルガリア
クロアチア
キプロス
サンマリノ共和国
ハンガリー
アイスランド
アイルランド
イタリア
ラトビア
リトアニア
ルクセンブルク
マルタ
スウェーデン
セルビア
モンテネグロ
ボスニア・ヘルツェゴビナ
スイス
ウクライナ
英国
口蹄疫の発生状況
~アジア(4カ国)~
インドネシア
韓国
シンガポール
ブルネイ
チェコ
デンマーク
エストニア
フィンランド
マケドニア
フランス
ドイツ
ギリシャ
オランダ
ノルウェー
ポーランド
ポルトガル
ルーマニア
スロバキア
スロベニア
スペイン
~アフリカ(4カ国)~
スワジランド
マダガスカル
モーリシャス
レソト王国
~オセアニア(4カ国)~
オーストラリア
ニューカレドニア
ニュージーランド
バヌアツ
~南北アメリカ(15カ国)~
カナダ
チリ
コスタリカ
キューバ
エルサルバドル
グアテマラ
ガイアナ
ホンジュラス
ニカラグア
パナマ
米国
ベリーズ
ドミニカ共国
ハイチ
メキシコ
2010年11月16日現在
ワクチン非接種清浄国( 66カ国)
=非清浄国のうち、現在口蹄疫の
発生している国
=ワクチン接種清浄国(1カ国)
=非清浄国
※1 清浄国とは、過去一定期間(ワクチン非接種清浄国:1年間、接種清浄国:2年間)、口蹄疫の発生がない等の条件を満たす国として、OIEが公式に認定した
国。清浄国で口蹄疫が発生した場合には、殺処分等の防疫措置終了後、一定期間(ワクチン接種畜を殺処分する場合:3か月間、殺処分しない場合:6か月間)
発生がない等の条件を満たすことにより、清浄国に復帰可能。
※2 OIE通報及びOIEの公式認定ステータスリストをもとに作成。
=ワクチン非接種清浄国(66カ国)
ワクチン接種清浄国(1カ国)
ウルグアイ
40
資料5
中国、香港、台湾、韓国、モンゴル、ロシアにおける口蹄疫の発生状況
(2010年1月以降の発生)
新疆ウイグル自治区
2010年1月18日(A型) 牛・羊・山羊
2010年4月20日(O型)豚
2010年6月10日(O型)豚
2010年6月19日(O型)豚
2010年8月23日(O型) 牛・羊・山羊
※1 日付は発生日(各々の事例が初めて観察された日)
※2 OIE通報をもとに作成
韓国(京畿道)
①抱川2010年1月2日(A型) 牛
②抱川2010年1月13日(A型) 牛
③抱川2010年1月15日(A型) 牛
④抱川2010年1月15日(A型) 牛
⑤連川2010年1月18日(A型) 牛
⑥抱川2010年1月19日(A型) 牛
⑦抱川2010年3月9日(A型) 鹿
北京市
2010年1月18日(A型) 牛
広東省
2010年2月22日(O型) 豚
2010年3月4日(O型) 豚
甘粛省
2010年3月14日(O型) 豚
2010年4月7日(O型)豚・羊・山羊
2010年4月17日(O型)豚
2010年7月27日(O型)牛・羊・山羊・豚
江西省
2010年3月28日(O型) 豚
山西省
2010年3月25日(O型) 牛
2010年11月16日現在
貴州省
2010年4月13日(O型) 牛・豚
寧夏回族自治区
2010年4月23日(O型) 豚
香港
2010年2月(O型) 豚
2010年3月(O型) 豚
台湾
①2010年2月12日(O型)豚
(澎湖縣馬公市)
②2010年6月22日(O型)豚
(雲林縣褒忠郷)
③2010年8月10日(O型) 豚
(桃園縣新屋郷)
チベット自治区
2010年5月17日(O型) 豚
2010年10月4日(O型) 牛
青海省
2010年6月22日(O型) 豚
2010年8月23日(O型) 牛
ロシア(ザバイカリエ地方)
2010年7月5日(O型) 牛・豚・羊・山羊
2010年8月26日(O型)牛・豚・羊
モンゴル(ドルノド県)
2010年4月21日(O型) 牛・羊・山羊・ラクダ
2010年5月14日(O型) 牛・羊・山羊
2010年6月14日(O型) 牛
2010年9月2日(O型)牛・羊・山羊・ラクダ
韓国(仁川広域市江華島)
①2010年4月8日(O型) 牛
②2010年4月9日(O型) 牛
③2010年4月9日(O型) 豚
④2010年4月9日(O型) 牛
⑤2010年4月10日(O型) 牛
⑥2010年4月21日(O型) 牛/山羊
⑦2010年4月27日(O型) 豚
韓国(忠清北道忠州市)
2010年4月21日(O型) 豚
韓国(忠清南道青陽郡)
①2010年4月30日(O型) 豚
②2010年5月6日(O型) 牛
③2010年5月30日(O型) 牛
④2010年6月4日(O型) 猪
韓国(京畿道金浦市)
2010年4月19日(O型) 豚
モンゴル(スフバータル県)
2010年8月26日(O型) 牛・羊・山羊・ラクダ
モンゴル(ケンティー県)
2010年11月7日(O型) 牛
41
42
43
1.96 3.29 6.53
17.56
33.74
49.12
92.04
125.18
150.00
221.28
1.18 1.36 2.21 4.25 6.47 9.19
30.68
50.12
76.27
91.68
0.00
50.00
100.00
150.00
200.00
250.00
1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006
1963410
1162720
797300
449600
352800
287100
221100
154900
110100
85600
2313010
1576900
1759000
1912000
2281500
2639000
2805000
2901000
2806000
2755000
0
500000
1000000
1500000
2000000
2500000
3000000
3500000
1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006
23.73
31.17
37.25 38.89
38.53
38.66
41.22 43.71
45.3
48.51
41.32
50.93
55.12 55.51 55.23
56.24
58.27
60.23
61.44
64.48
0
10
20
30
40
50
60
70
1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006
10
1986
44
29.64
30.98
30.01
28.95
31.32
32.82
36.03
38.77
41.04
42.44
51.23
49.69
47.71 46.76
48.92
51.41
55.88
59.23
61.69 63.54
0
10
20
30
40
50
60
70
1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006
10
907780 714300
398300
195600
126700
74200 36000 16000 10800 7800
2603590
5158370
6904000
7459000
10065000
11061000 11335000
9900000
9788000
9620000
0
2000000
4000000
6000000
8000000
10000000
12000000
1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006
2.49 4.00 7.30 33.20
84.50
209.60
531.80
938.00
1240.20
1507.60
2.87 7.20 17.30 38.10
79.40
149.10
314.90
618.80
906.30
1233.30
0.00
200.00
400.00
600.00
800.00
1000.00
1200.00
1400.00
1600.00
1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006
45
55
38
34
28 27 26 26 26 25 25
92
85
80
78 77 78
31
17
14
10 11 10 11 11 11 11
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
S40
(1965)
S45
(1970)
S50
(1975)
S55
(1980)
S60
(1985)
H2
(1990)
H7
(1995)
H12
(2000)
H17
(2005)
H21
(2009)
10
46
0 件のコメント:
コメントを投稿