2013年5月11日土曜日

黒田・異次元緩和:インタビュー 早稲田大ファイナンス総合研究所顧問・野口悠紀雄氏

毎日JP  (毎日新聞)

http://mainichi.jp/select/news/20130510ddm008020070000c.html

以下転載:

黒田・異次元緩和:インタビュー 早稲田大ファイナンス総合研究所顧問・野口悠紀雄氏


毎日新聞 2013年05月10日 東京朝刊

 

◇規制緩和、賃上げに必須−−野口悠紀雄氏(72)


−−黒田日銀は2年で物価上昇2%を達成するとしています。
◆物価上昇だけなら、円安による輸入物価の上昇などを通じて達成は不可能ではない。だが、そんなことをやっても意味がない。賃金が上がらなければ、国民生活は貧しくなるだけだからだ。賃金が上がり、モノやサービスに対する需要が増え、物価が上がるなら望ましい経済といえる。ただ、賃金は金融政策ではコントロールできない。今春、賃上げした企業はごく一部で、大規模緩和の経済全体への波及効果はほとんど見られない。

−−なぜ賃金が上がらないのですか。
◆国内の製造業の雇用が、中国など新興国の工業化により奪われ、賃金の低い介護などのサービス業が雇用の受け皿になっているためだ。物価下落も、中国で生産されるテレビなど、耐久消費財の価格低下が主因。同じ課題に直面した米英は、ITなどの分野で新しい産業が生まれ、デフレにならなかった。製造業より高い賃金を払える新しいサービス産業を作らなくてはならない。そのためには規制緩和を進め、政府が口を出さないことが大事だ。エコカー減税や家電エコポイントなどで古い産業を温存しようとするから、新しい産業が出てこない。規制緩和は賃金上昇の必要条件といえる。

−−円安・株高は進んでいます。
◆(物価が上がると予測する)インフレ期待が株価、為替、不動産などの資産価格を動かすのは事実だ。しかし、企業の設備投資は将来の需要予測に左右されるから、インフレ期待だけでは動かない。円安が進んだ3月の輸出は、数量ベースで前年同月比9・8%減と伸びていない。実体経済が引き続き悪い中での株高は、バブルと言え、いずれ崩壊する。

−−日銀の緩和策では実体経済をよくできないのですか。
◆マネタリーベース(資金供給量)倍増と物価目標2%の関係があやふやだ。金融機関からの貸し出しや設備投資がどう増えるのかについて、数字で見通しを明らかにすべきではないか。2001年からの量的緩和、10年からの包括緩和では、日銀がいくらお金を供給しても企業側の「借りたい」という需要は増えなかった。何度やっても結果は同じだ。日銀が国債を大量に買うことで、国債価格の暴落を防いでいるという点では意味がある。だが、財政赤字が膨らんでも、日銀が買ってくれるので財政規律が緩むという問題も抱えてしまう。【聞き手・窪田淳】=おわり


■人物略歴

 ◇のぐち・ゆきお

1940年生まれ。東京大工卒。大蔵省(現財務省)、一橋大教授、東京大教授、早稲田大大学院教授などを経て11年から同大ファイナンス総合研究所顧問。著書に「バブルの経済学」「『超』整理法」など。

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