2013年5月15日水曜日

低線量被曝リスク管理 木村真三 1 ~ 5


低線量被曝リスク管理 1



アップロード日: 2011/11/15
低線量被曝リスク 木村真三

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低線量被曝リスク管理 2



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低線量被曝リスク管理 3



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低線量被曝リスク管理 4



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低線量被曝リスク管理 5



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http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/news_111110.html

低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ

平成23年11月
1.趣旨
 東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故による放射性物質汚染対策に おいて、低線量被ばくのリスク管理を今後とも適切に行っていくためには、国際機関等により示されている最新の科学的知見やこれまでの対策に係る評価を十分踏まえるとともに、現場で被災者が直面する課題を明確にして、対応することが必要である。
このため、国内外の科学的知見や評価の整理、現場の課題の抽出を行う検討の場として、放射性物質汚染対策顧問会議(以下「顧問会議」という。)の下で、低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ(以下「WG」という。)を開催する。
 
2.構成等
(1)WGの構成員は、顧問会議座長が指名する。
(2)WGに、顧問会議座長の指名により主査を置く。
(3)顧問会議の構成員は、WGに出席することができる。
(4)WGは、必要に応じ、関係者の出席を求め、意見を聴取することができる。
(5)その他、WGの運営に関する事項その他必要な事項は、座長が定める。
(6)WGの庶務は、関係行政機関の協力を得て、内閣官房において処理する。

【「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」報告書】
● 低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書(平成23年12月22日)
● 【別添1】発表概要
● 【別添2】海外の専門家から寄せられたメッセージ
【「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ】報告書 英語仮訳版】
● Report:Working Group on Risk Management of Low-dose Radiation Exposure
【「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」報告書に基づくパンフレット】
● 「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」報告書に基づいた健康への影響とこれからの取組み
【過去の会合の模様(政府インターネットテレビ)】
● (11/ 9開催)第1回会合(政府インターネットテレビ)
● (11/15開催)第2回会合(政府インターネットテレビ)
● (11/18開催)第3回会合(政府インターネットテレビ)
● (11/25開催)第4回会合(政府インターネットテレビ)
● (11/28開催)第5回会合(政府インターネットテレビ)
● (12/ 1開催)第6回会合(政府インターネットテレビ)
● (12/12開催)第7回会合(政府インターネットテレビ)
● (12/15開催)第8回会合(政府インターネットテレビ)
*こちらでもご覧いただけます。
● ニコニコ生中継(外部サイト)
● IWJ6ch(外部サイト)
【海外の専門家から寄せられたメッセージ】

【第8回会合:12月15日】
【第7回会合:12月12日】
【第6回会合:12月1日】
【第5回会合:11月28日】
【第4回会合:11月25日】
【第3回会合:11月18日】
【第2回会合:11月15日】
【第1回会合:11月9日】
内閣官房 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1 電話番号 03-5253-2111(大代表)

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第2回 低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ

【第2回会合:11月15日】

発表資料2:チェルノブイリ事故対応からの示唆(木村真三 獨協医科大学国際疫学研究室福島分室長・准教授)

発表概要

http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai2/gaiyou2.pdf

(別紙)

はじめに、文献に頼る報告では真実は見えてきません。真実は自分自身が調査を行ってこそ
見えてくるもので,論文を頼りに机上で考えても新たな発見は望めません。

私見ですが放射線を専門とする研究者だけではなく、血液内科学、神経内科学、免疫学、薬
理学、衛生学、医学統計学など医学系研究者を交えて議論すべきだと思います。
その理由は、放射線を専門とする研究者では、先入観により見逃してしまうことがあるから
です。

私たちはワーキンググループとして、本年6月、北海道大学医学研究科環境医学分野 藤田
博美(ひろよし)教授が事務局をつとめ、東京大学、京都大学などをはじめとする全国の専
門家20名によるチェルノブイリ内部被ばく検討会を行いました。来年度も開催予定です。

① 先生のご意見の骨子を箇条書きにしてください(5 行以内)。

 外部被ばくだけで線量を決定することは危険である。とくに原発事故の場合、内部被
ばくの線量を考慮すべきである。

 内部被ばくの長期的影響は結論が出ていないが、現時点では100mSv 以下の線量はLNT
仮説を支持する。

 避難および一時的な避難の基準値は年間 5mSv にすべきである。妊婦や乳幼児のいる
家庭については、在住の行政区域内で可能な限り線量の低い場所に一時的に避難す
る権利を与えるべき。

② 先生のご意見の根拠となった文献を10編列挙して下さい(10編以内)。
基本的には、調査に基づいた意見であるため参考文献はない。

しかし、概念的にはHealth Risks from Exposure to Low Levels of Ionizing Radiation: BEIR
VII – Phase 2 を参考にしている。

避難および一時的な避難の基準値は年間5mSv の根拠は、今回、森ゆうこ文部科学副大臣がウ
クライナ訪問の際に随行したとき,チェルノブイリ立入り禁止区域管理庁長官ヴォロディミ
ール・コローシャ氏から生涯被ばく線量を350mSv と考えた場合、初期の被ばくを考慮に入れ
ないという条件では、年間5mSv が妥当との回答を得ている。

③ 国民、特に福島県民の方々がご理解頂けるように、できるだけ平易な言葉で先生のご意
見を400字程度でまとめて下さい。

長期的な内部被ばくの影響については、未だ多くのことが解っていません。そのためには、
できるだけ早く内部被ばくが原因で引き起こされる病気について調査を行う必要があります。

事故から25 年たったチェルノブイリ汚染地域に暮らす人々、とくに子どもたちの疫学調査を
含めた健康調査を行うことにより、健康不安に悩む被災地の方々に役立てることができます。

また、福島県では被ばくを避けるために子どもの保養や住宅の除染が行われていますが、

1. 子どもの安全確保のために給食センターに食品汚染計を導入する。また、全国に拡が
る食への不安を払拭するために、全国の給食センターに食品汚染計を設置することが望
ましい。

2. 広範囲に汚染された地域では、政府が発表している年間1mSv 以下にするためには、
住宅の半径100m を除染せねば実現できないので、都市部では住宅地の町内会単位で
除染を進めなくてはならない。現実性を持って対応することが望ましい。農村部は,田
畑の除染を進めなくては生活の糧を失うことになる。

3. 一時廃棄物は、町内会や集落ごとに行い他の地域を自分たちのゴミで汚染させない。
最終処分場は、チェルノブイリ同様、福島第一原発構内が良い。

4. 森の除染は、住宅地に近い場所から100m 程度ずつ伐採し、樹皮、や枝、落ち葉は
濃縮して一時廃棄物とし、幹は材木として震災復興のために利用する。

獨協医科大学国際疫学研究室福島分室

木村真三


発表資料2:チェルノブイリ事故対応からの示唆

http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai2/siryou2.pdf

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第2回 低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ

(11/15開催) 第2回低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ

録画:

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg5572.html?t=68&a=1

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第2回 低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ

【議事録】

http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/gijiroku/dai2.pdf

PDF 1 ~ 36

以下抜粋:

議題 : チェルノブイリ事故対応から示唆

(説明者:柴田義貞 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授
木村真三 獨協医科大学国際疫学研究室福島分室長・准教授)

■ 出席者 :

(有識者側) 遠藤啓吾、近藤駿介、酒井一夫、佐々木康人、長瀧重信(共同主査)、
前川和彦(共同主査)、柴田義貞、木村真三

(政府側) 細野原発担当大臣、中塚内閣府副大臣、森文部科学副大臣、高山環境大
臣政務官、佐々木副長官補、菅原原子力被災者生活支援チーム事務局長
補佐、鷺坂環境省水・大気環境局長、伊藤内閣審議官、矢島内閣審議官、
安田内閣審議官、

(国会議員) 松野頼久、遠藤乙彦、古賀一成、橋本清仁、山井和則

【議事録】

(長瀧主査)
それでは定刻になりましたので、「第2回低線量被ばくのリスク管理に関するワーキン
ググループ」の議事を始めます。本日は、共同座長の前川先生とご相談しまして、細野
大臣のご意見も伺いまして、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科教授の柴田義貞先
生、獨協医科大学国際疫学研究室福島分室長・准教授の木村真三先生のお二方から、
ご説明を伺うことにしております。資料でありますが、ここにお配りした中の、PDFのもの
がございますけれども、それの後ろか前に、こういう一枚の紙が付いております。これは、
ここに書いてありますように、例えば柴田先生については、先生のご意見の骨子を箇条
書きにしてください、というのが5行以内。それから、先生のご意見の根拠となった文献を
10編列挙してください。PDFの次であります。そして、最後に国民、特に福島県民の
方々にご理解いただけるように、できるだけ平易な言葉で先生のご意見を400字でまと
めてください、とうものが付いております。講演の間にパワーポイントと一緒にご拝見、ご
覧いただきたいと思います。木村先生はご都合により19 時ごろご到着ということになりま
すので、まず、柴田先生からお話を伺いたいと思います。

(伊藤審議官)
主査、すいません。出席されている方をご紹介させてください。前後してしまいまして申
し訳ありません。事務局からご説明させていただきます。本日のご出席の一覧表資料な
どを配っているかと思いますけれども、ワーキングの出席者については、この資料にある
方々6名でございます。それから、政府側からは、まだ予算委員会など会議に出席して
参っておりませんが、細野原発担当大臣、中塚内閣府副大臣、それから、チェルノブイリ
の方に視察されました森裕子文科副大臣、それから、高山智司環境大臣政務官も、遅
れて出席の予定でございます。それから衆議院の議院運営委員会のメンバーによります
チェルノブイリ原子力発電所事故調査議員団から、松野頼久衆議院議員、遠藤乙彦衆
議院議員の両先生にご出席いただいております。また、衆議院の災害復興特別委員会
のメンバーによる欧州及び中近東における災害復興等実情調査議員団から団長の古賀
一成委員長、橋本清仁衆議院議員の両先生にもご同席いただいております。それから
本日、メディアの関係の方々にもご案内しておりまして、会議の模様を最後まで傍聴・撮
影していただくことになっておりますことを、ご承知おきいただきたいと思います。すいま
せん、それではまたよろしくお願いいたします。

(長瀧主査)
それでは柴崎先生にお願いいたしますが、柴田先生は、たぶん50 回以上、チェルノブ
イリの現場にいらっしゃいまして、チェルノブイリの疫学に関しては、本当に世界の中心
に立っておまとめになった。今日は全体をまとめて話していただく。では、柴崎先生お願
いします。

(柴田義貞氏)
長瀧先生、ご紹介ありがとうございます。長崎大学の柴田です。今までの経験をご紹
介し、それを踏まえて、今回の事故について私がどういうふうに考えているか、お話させ
ていただきたいと思います。早速ですが、1 枚目のところに、今日どういうふうなお話をす
るかということを書いてあります。PDFをスライドに写しているため見にくいかもしれませ
んが、お手元にも資料がございますので、ご容赦ください。

次、お願いします。背景ですが、福島第一原子力発電所の事故は、国際原子力事象
評価INESでレベル7とされ、チェルノブイリと同じレベルということで、大変な事故です。
しかし、放出された放射性物質は、チェルノブイリの場合の10%程度です。また、放出の
され方ですが、福島の場合は水素爆発、チェルノブイリの場合は水蒸気爆発と、威力が
全然違ったわけです。旧ソ連時代にチェルノブイリ事故が起こったとき、原発制御の設計
ミスが原因ということは当初から言われており、いろいろ問題のある事故だということで、
日本では起こらないだろうというふうに思われていたわけです。しかし、実際に起こってし
まった。この事故は、日本で起こったということで、世界から非常に注目されています。事
故から8ヵ月経ったわけですけれども、この間私自身、長崎にいますから、中央のことは
あまり見えないのですが、率直に申し上げて、チェルノブイリの教訓というのは、あまり学
ばれていないのではないか、というふうに思っています。根拠のないいろんな話をする人
たちが現れて、恐怖感を煽っている。特に内部被ばくということで、これは非常に大変だ
というグループがいるわけですけれども、チェルノブイリで実際に何が起こったかというこ
とをご紹介したいと思います。

次のスライドお願いします。我々は今回の事故が起こる3年ほど前から、リスクコミュニ
ケーションが非常に大事ではないかと考え、私自身、特任教授ということで、大学院セミ
ナーなどを開いていました。スライドの2冊は、その大学院セミナーの記録をまとめたもの
ですが、右側の赤い本は本年3月に出版したものですが、ちょうど印刷に回していた時は、
事故が起こった頃です。

では、次お願いします。リスクという言葉はだいぶ浸透しているようですけれども、たぶ
ん正しくは理解されてないと思います。リスクを理解するためには、確率を理解しないと
いけないわけですが、日本人にとって、確率は非常に馴染みが薄いと思います。なかな
か馴染めない。安全か危険かという二者択一にどうしてもなってしまう。しかし、リスクは
客観的に評価できるもので、科学的にちゃんと評価できる。しかし、安全は主観的な判断
です。つまり、リスクの大きさがある値であっても、それを安全と思うか思わないかは、人
によって違う。さらに不安になってくると、リスクが小さいと言っても、やはり不安だと。つ
まり安全であっても不安だと感じる人がいる。今回の福島での事故で、非常に不安に思
っている人は、そういうところがあるわけで、そういう人を煽っている人がたくさんいる。そ
れが非常に残念だと思います。スライドの右側、これはいわゆるALARP、あるいはALA
RAと言いますけれども、要するにリスクを管理するときに、ここの完全に受け入れられる
というところは、これ以下は誰でも受け入れる。それから、この値より大きければ、これは
もう誰も受け入れない。問題はこの中間のところです。ここのところをどうするかという場
合に、合理的、つまり、実際に合理的に実行できるように、そのレベルにまで下げていく、
低くするということが、特にリスク管理の上で大事だとされています。一般住民に対しての
1ミリは、事故が起こる前の話です。事故が起こる前、1ミリ以下にしなければいけないの
は原発を運転している方でした。今回事故が起こってしまったわけですが、起こってしま
った後も、1ミリでないとそこに人を住まわせない、ということになれば、これは、被ばくし
た人たち、その近くにいた人たちに、極端に言えば、生きるな、ということにもなりかねな
い。そこをこの原則に基づいて少し上げていくべきだと、私自身はそう思っています。

次をお願いします。放射線というと非常に怖がられます。どうしてかということですが、
人が怖がる、リスク認知を高める、そういうものはどういうものかというのをここに書いて
あります。例えば、非自発的、つまり、今回の事故で言えば、別に住民は、自分たちが事
故に遭いたくて遭ったわけではなくて、非自発的に遭わされた。あるいは不公平。それか
ら、例えば、人工的なものとか、よく知らないとか。で、ここに書いてあることが全て、放射
線については当てはまります。放射線は五感で感じることができない。つまり計測器がな
いと分からない。分かってもその値をなかなか理解しにくい。というところで、人は非常に
放射線を恐れる、ということだと思います。

次お願いします。で、私自身は疫学、特に放射線疫学をやっていますけれども、疫学と
いうのは、科学的な方法です。科学的方法がどういうものであるかというのは、今は確立
されていますが、それはこの模式図で示したポパーという科学哲学者の考えです。つまり、
仮説あるいは理論を立てる。そうすると、演繹的な推論、つまり、こういう仮説の下ではこ
ういう結果になると。これはちょうど数学でいうと、こういう仮定の下でこういう定理を証明
しなさい、という話と同じです。数学の世界であればそこで終わっていい。しかし、この仮
説が正しいかどうかということ、それは分からないわけで、これをデータで検証していく。
そういうところに統計学というのが入ってくる。さらにこの得られたデータを帰納的な推論
によって、理論の実証、それを行う。データがこれと矛盾するということになれば、仮説を
捨てて、次の新しい仮説を立てる。このサイクルをぐるぐる回していくのが、科学なのだと。
したがって、科学的な命題というか、科学的な話というのは、こういう枠組みの中で語ら
れているということをご理解いただきたいと思います。

次お願いします。疫学研究というのは基本的には観察研究、特に放射線疫学、放射
線被ばくの影響を見る、となると、これは基本的に実験することはできません。人に放射
線を意図的に与えて、被ばくさせて様子を見るというのは、倫理上許されない。したがっ
て、こういう被ばくした人が出た、例えば日本で言えばまずは原爆被爆者、そういう人た
ちのその後がどうなるか、あるいはチェルノブイリで言うと、チェルノブイリの被災者、そ
の人たちの健康がその後どうなっていったか、ということを見ていって、それで、放射線被
ばくの影響を推測する。その積み重ねによって、リスクというか、そういうものが評価され
ていく。その時に、一つは、時間的順序。これは当たり前で、原因は結果に先行しないと
いけない。つまり、原因から結果に、そこのところで時間的な順序がある。それから、一
致性というのは、例えば、放射線被ばくの話に限定しますと、被ばくした人たちの帰結、
その後の健康状態なら健康状態が、いろんなところで観察しても、同じような方向を向い
ている。つまり、例えば、甲状腺癌は増えるというようなことが日本でも分かるし、あるい
はチェルノブイリでも分かってくる。となれば、やはりそれは、放射線被ばくによって、甲状
腺癌が増えるということがだんだん確かになる。それはそれだけでは不十分で、この関
連が強いと。つまり、被ばくした人の、癌なら癌の発生頻度というのは、被ばくしない人に
比べると高いと。それから、4番目の生物学的勾配、これは量反応関係です。これは、被
ばく線量が高くなればなるほど、発がんのリスクが増えてくると。そういったことが観察さ
れれば、やはりそれは被ばく放射線と発癌というものに、因果関係がありそうだということ
になる。それからこの結果の特異性というのは、原因を取り除いてやれば、その結果は
消えてしまうと。例えば典型的なのは、放射線じゃないですけれども、サリドマイド。あれ
も、日本ではかなり長い間論争があった。しかし、結局サリドマイド販売を禁止すれば、そ
の後は、ああいうような新しい奇形っていう子供が生まれてくる頻度は、もうほとんどゼロ
に近くなっているということで、やはりあれが原因だったということになる。最後に、傍証と
生物学的妥当性。これも非常に大事なことで、生物学的に妥当である、あるいは他の傍
証があるということが、その関係を強化する。最近の傾向として、データを採ってきて、そ
して、関連あると思われるものについて、統計解析を、形式的な統計解析をやって、そこ
で有意になれば、因果関係があるという傾向が強いわけですけど、それはけっこう間違
った結論に導くものが多い。やはり生物学的妥当性がないといけない。この下に書いて
あるのは、時間的順序に関連することですが、例えば、放射線に被ばくした後で、被ばく
した人が何か癌になると、その癌は放射線のせいだ、といったことが言われることがあり
ますが、それは間違いだというのはギリシア時代から言われているわけで、こういったこ
とも注意しないといけないということです。

次お願いします。我々は、91年からチェルノブイリで、この5ヵ所、ウクライナのコロス
テンとキエフ、ベラルーシのゴメリとモギリョフ、それからロシアのクリンシィの診断センタ
ーを拠点にして、検診を5ヵ年間行いました。それで16万人検診したわけです。
次お願いします。これはちょっと見えにくいですけれども、体内被ばく線量の測定結果
を示しています。お手元の資料を見ていただければ、だいたい平均で、体重1キロ当たり
のベクレル数が書いていますけど、30ベクレルくらいはある。つまり体重が40キロであ
れば、その子供の体内被ばく線量は1200くらいになっている。しかし、この人たちは何
も病気をしてなかったということが事実です。

次お願いします。この表は、検診した16万人の中で、データになる12万人について解
析した結果で、まあここを見ていただければ分かりますけど、ゴメリのところで、癌が非常
に高かった、甲状腺癌が高かった、ということが分かります。

次お願いします。甲状腺癌については、91年、92年ごろ、ベラルーシの研究者から
増えてきたということが言われていたわけですけれども、その後、ウクライナ、ロシアから
も報告されるようになった。しかし、その原因というのは未だなかなか分からなかった。
次お願いします。左側にあるのは線量反応関係です。これは原爆被ばく者の場合です。
その線量がきちっと推定できれば、線量反応関係を出すことができていたはずですけれ
ども、残念ながら、チェルノブイリの場合、その被ばく線量を推定するというのは、非常に
困難で、ある意味で不可能に近い話です。それでなかなかやれなかった、というところで
す。

次お願いします。その理由は、このスライドに示すように、被ばくの過程が非常に複雑
だったということで、原爆被ばくのような単純な話ではありません。

次お願いします。我々は、線量推定をしなくても、その増えた甲状腺癌は、事故によっ
てヨウ素131を摂取したことによるだろう、という想定をして、事故前後の子供の甲状腺
を比較するということをしました。

次お願いします。事故前後3年以内に生まれた子ども約2万人、事故前約1万人、事
故後約1万人ぐらいを調査しました。

次お願いします。これが結果です。事故前に生まれた約1万人の中で、31人は甲状
腺癌にかかっている。そして、事故後の1987年以降に生まれた子どもの中には1人も
出なかった。放出されたヨウ素131の量から半減期8日ということで計算すると、1987
年には地表にはもうない、事実上無くなっているということになりました。この真ん中にあ
るのがちょうど体内被ばくに相当するグループです。

次です。実際に、その後ベラルーシの研究者が手術症例をグラフにしたものですけれ
ども、これを見てわかりますように小児甲状腺がんというのは、このあたりで事故前と同
じレベルになっている。ここがピーク。その後は若年、つまり思春期の人たちがこういう風
に増えている。しかし、またこれも2000 年頃から下がっている。あとは、成人が増えてい
る。これは何を意味しているかというと、事故当時子どもであった人たちだけに被害が大
きかったということで、大人にはほとんど影響はしていない。ここは大人が増えているよう
に見えるが、要するに子どもが大人になったということ。ここも子どもがこういう思春期の
年齢に入ったということ。で、これもその後抜けていきますから下がっているということに
なります。

次行きます。これからちょっと、私が関わったチェルノブイリフォーラム2006年の報告
に基づいて、結果をご紹介します。

次お願いします。汚染レベルはこうであるということ。

そして、ちょっと時間が厳しいので、次お願いします。体内被ばく線量ですが、厳重管
理区域という一番汚染されている地域、そこは50mSv以上とかそういうことがわかる。
いわゆる汚染地域というところは10~30mSvの被ばくとなっている。
次お願いします。それで、原爆の被ばくの場合はこういうふうに最初は白血病が増え
て、その後は甲状腺がん、乳がんの順で増えていったわけですけれども、我々を含め世
界中の科学者が、チェルノブイリ事故が起こったときにはこのパターンを想像していた。し
かし、先ほどご紹介しましたように、これまでのところ、結局は小児甲状腺がんしか増え
ていないということがわかりました。

次お願いします。これはチェルノブイリフォーラムなど国際機関の会合で認められたと
いうかコンセンサスが得られた結果ですけれども、増加が認められたのは小児甲状腺が
んのみで、白血病を含めてその他の疾患の増加は認められていません。最大の健康影
響は症状のない精神障害で、これは緊急対策が必要です。

次お願いします。福島に、ここに書きましたけどChris Busby という人が来て、福島から
すぐに避難しないと非常にたくさんの死亡者が将来10年後くらいに出ると警告していま
すが、彼はECRRの主要メンバーです。彼が引用した論文がこれです。ECRRというの
は、物理の人が多くて、医学的なことはあまり話さない。ここに書きましたが、Tondel とい
う人の論文はあまり感心しなかった。それは一つには、いわゆるエコロジカルスタディ、
日本語で地域相関研究といいますけれども、地域レベルで汚染とがん発生率というのを
見ているためです。

次お願いします。彼自身、最近の論文でやはりそういう話というのは一貫性がないとい
うことを認めています。

次お願いします。次のスライドは飛ばさせていただいて、最後に、意見の骨子ですが、
そこにお配りしておりますとおり、リスクは客観的に評価できるが、安全は主観的判断、
安心はさらに心理的要因が加わるということです。それで科学的研究方法及び因果推論
の基礎を理解している研究者の論文と、そういうことを理解していない研究者の論文とい
うものは峻別して読んでいただきたい。そして、チェルノブイリ原発の教訓を学ばなけれ
ばならない。可及的速やかに、汚染地域を合理的に分類し、それぞれの地域に住んでい
た、あるいは住んでいる住民に対する今後の施策をALARPの考え方に基づいて決定し
実行に移さなければならない。大衆迎合政策というのは絶対に避けていただきたいと思
っております。以上です。

(長瀧主査)
ありがとうございました。膨大な量の資料を時間内に御説明していただいてありがとう
ございます。柴田先生のご発表に対しまして質問等ございましたらどうぞ。

(松野頼久議員)
ありがとうございました。衆議院の松野頼久と申します。最後のところに大変重要な興
味深い先生からのお話があったのですが、意見の骨子の3番目でありますけれど、可及
的速やかに汚染地域を合理的に分類し、それぞれの地域に住んでいた又は住んでいる
住民に対する今後の施策を、ALARPの考え方に基づいて決定し実行に移さなければな
らないというところに、非常に関心を持たしていただきました。私はチェルノブイリに行っ
て現地を見たのですが、未だに25年経っても30KM圏内誰も立ち入りをさせていないん
です。そして昨日議運委員会で福島にも行ったのですが、明らかに福島のほうがチェル
ノブイリの30Km圏内よりは私たちの持っていた測量計では高いんです。今の立ち入り
禁止区域内でない地域でもそうです。ですから、やはり汚染地域又は発見されている例
えばプルトニウム等成分によって汚染の中身も違うので、例えば「実行に移さなければな
らない」というのは、具体的な考え方としてはどのようなものをお考えなのかお聞かせ頂
ければありがたい。

(柴田義貞氏)
たぶん最近チェルノブイリに行かれて測った値と今の福島と比べるとかなり違うという
事だと思うのですが、しかし、あそこの30km圏で今も立ち入り禁止にしているというの
は、いろいろな理由があると思います。例えば800人くらいはもう戻っているわけです。
子どもは影響有るわけですが、年寄りはその影響が出るよりも前に自然に亡くなってしま
うというケースが多いわけで、そして、疎開をさせるというリスクが非常に大きいと。今の
福島について全てのところが戻れるとは私は決して言いませんけれど、やはり1mSVで
なければダメだとか、そういうことで疎開をさせるなどということは、どうかなと思っており
ます。

だから可及的速やかにというのは、まずは今の公開されている汚染地図をもとに、プ
ルトニウムというものはそんなに飛ぶわけではないし、量的にも少ないわけですから、や
はりセシウムレベルで分けていって、ただし、旧ソ連で反省しているという点は、強制立
ち退きの区域を広げすぎたとかそういったところがあるわけで、疎開させることと住むこと
とのバランスを考えて決めて行く必要があると思っております。やはり戻れないところは
出てくるのが当然です。

(長瀧主査)
ありがとうございました。他にございませんか。

(佐々木康人氏)
ECRRの考えというのをいただいたのですが、疫学の専門家の国際的なコミュニティ
ーの中でECRRのグループの考え方というのはどんな風に受け入れられているのか。そ
の辺をもう少しお話いただけるとありがたいと思っております。

(柴田義貞氏)
少なくとも私がチェルノブイリとか他の方面で関係している研究者でECRRの話をする
人はいません。それからECRRというのを評価している人もいない。ECRRというのはそ
もそも何かというと、いわゆるチェルノブイリ事故後に、放射線防護に関して従来の専門
家とは哲学が違っているグループが独自に作ったものです。メンバーにはおよそ放射線
防護の専門家として私が知っている人はいません。例えば精神科の先生やグリーンオー
ディッドなど、政治的な色彩が非常に強い。今日は時間が無くてご紹介できなかったので
すが、イギリスでセリエ(CERRIE)の報告書が出ています。この報告書は、イギリスの放
射線防護庁の委託で低線量被ばくあるいは内部被ばくのリスクについて全てレビューさ
せた委員会が作成したものですが、その委員会に実はECRRのクリスバースビーという
人と、もう一人グリーンオーディッドのメンバーも入っていました。セリエは両論併記、つま
りICRPのオーソドックスな考え方も入れるし、そうでないものも入れるとしていましたが、
この2人は最終的には反対して、結局出て行ってしまった。というところで、彼らの理論と
いうのは、実際にデータがあって何かしているというふうなところが見えません。

(長瀧主査)
ありがとうございました。
(古賀一成議員)
議員の発言が続いていますが、私、衆議院の東日本復興特委の委員長を務めており
ます古賀一成と申します。実は時を同じくして我々もIAEA、チェルノブイリ、発震直前の
イスタンブール、トルコにも行って参りました。その中でせっかく行った以上はということで
我々議員団、事務局、ヒアリングの結果を、未定稿であり、我々も素人でございますが、
しかしながらこの問題に対処する一つの知恵になればと思って、我々でまとめた未定稿
のペーパーをお手元に配っております。全体として正しいとかこうあるべきだとか主観は
一切なしにまとめたものでございます。ぜひ専門家の皆様方にもあいまいなところがあれ
ばご指摘頂きたいし、こうなのかと参考たる面があれば参考にしていただきたい。

ヒアリングをした関係者のリストは最後の5ページに書いておりまして、当時の保健相
であったロマネンコさんであるとか、多くのみなさまとじっくり議論した中でのお話を書き
取ったものでございます。そういう意味で25年前の4月にあったチェルノブイリですが、も
ちろん国家体制が違う、草原というか地形も違う、そして線量計もみんなが持っているわ
けではないという時代の事故であったわけですが、結果として2月経たずして30km圏を
強制的に防護して、戻って来れると思っていた人もいたが、戻って来れないということで

今日まで続いていると思います。そこで、提起したいのは、そのときにアトラスをいただき
ましたが、25年まえに比べて調査体制とか飛躍的に向上していると思うので、こういうア
トラスを25年ぶりに作ったのかもしれませんが、いただきました。本当の意味での科学
的知見、測量というものを持つべしと、押さえると、そこに不安とかチェルノブイリでも精
神的なものが相当あっただろうという話も聞きましたが、科学的調査、汚染地域の詳細な
データをとるということの意味が重要だと思っておりまして、この提案をさせていただきま
す。いろんな週刊誌、テレビ等でも書かれることがありますが、ベースはこういう客観的な
調査、データをしっかりと権威をもって国民が納得できる形でまとめることから始めるの
かなと思っております。この点についてご意見をお伺いしたい。

せっかくですから1冊だけチェルノブイリ25周年の論文集をいただきました。こんな分
厚い英文でございますから、我々も全部はご紹介しようもありませんが、ここにいろんな
レポートがありますので、ひとつ政府あるいは専門家の皆様方の参考に供していきたい
とも思っておりますので、その点お伝えしたいと思います。選書の調査、アトラスをしっか
り作るという意味について先生いかがお考えかをお聞かせ願いたいと思います。

(柴田義貞氏)
当然、いま日本でも作っていると思います。随時公表していますし、それはやはり続け
ていくべきと思います。

(長瀧主査)
ほかにございますか。

(遠藤乙彦議員)
同じく衆議院議員の遠藤です。チェルノブイリに先般行ってまいりました。先生のレジメ
の結論に甲状腺の病気、特にがん・結節を除き、増加の確認された病気はありませんと
いうことになっております。現場でいろいろ聞いた意見の中で、またいろいろ現場の論文
を見せてもらったときに、例えば免疫系にダメージを与えることによって、様々な感染症
が引き起こされているということがありました、あるいは遺伝子に対する影響の結果、
様々な出産後の不正常な状況があったとか、心臓血管にも影響があったというような報
告が多々ありまして、そういった問題、本当に全部そういった症状が放射線の影響と関
係ないということを確認されているのかどうかということです。ここに「増加の確認された
病気はありません」とありましたが、逆にそれ以外の様々な症状が放射線と関係ないと
いうことは確認されたのかという点について、その証明はできるのかということをお聞きし
たいと思います。

(柴田義貞氏)
今おっしゃったような、現地に行くとこれも増えた、あれも増えたというのは、最初にお
話しましたポストホックな話ですが、それになりかねないのが多いと思います。きちんと比
較をして、本来の因果関係の推論というか、因果関係を示すということは、事実上は不可
能です。それはなぜかと言うと、例えば、ある人がヘビースモーカーであり、肺がんにな
ったとします。しかし、その肺がんがたばこのせいなのかどうかは分かりません。なぜか
と言うと、その人がたばこを吸わなかった場合に、50歳なら50歳の時の状況がわかれ
ばいいですけど、それはわからない。だから集団として見ていく、つまり疫学的な比較が
必要になるわけです。だからその比較をきちんとした上で、増えているという話になれば
それはわかるんですけれども、そうじゃなくて、これが増えたあれが増えただけでは我々
はそれは納得できない。今おっしゃったいろんな症状についてというのは、それは私は知
りません。知らないというかそういうものを比較するということが、今お話したようにこうい
った症状が実際の放射線のせいで増えたかどうかということを証明というか証明に近い
ことをするには、要するに被ばくしていないグループと比較をしていかないといけない。そ
れは非常にたいへんな仕事でなかなかそれを実際に実行に移すということは非常に難し
くて、たぶんできてないだろうと思います。基本的に現地に行けば病院には患者が来ま
すだからそういう患者を見るというところで、それをきっかけにしたきちんとした疫学的調
査をやればいいんですけれども、そういうことはやはり経費の面でできないということで
やられていない。だからやはりそれは増えたという証拠にもならないということです。

(長瀧主査)
どうもありがとうございました。今の御質問に対してどなたか顧問の先生で追加でお答
えになる方いらっしゃいますか。

(柴田義貞氏)
もう一つよろしいですか。それから、免疫系というのはこれはある意味でいろんな口実
となるわけです。何かが起こったと、それについて、いろいろ証明するわけですが、これ
だというものがないといときに、やはり免疫が異常で起こったということで、免疫ということ
を持ち出せば打ち出の小槌じゃないけれど、なんでも言えるということがなきにしもあら
ずなわけで、やはり科学として見ていくときにはだいぶ注意してみていかないといけない
のではと思っております。

(長瀧主査)
一言だけ座長として申し上げますと、今柴田さんの最後の結論のところは、英語で書
いてあるところは「科学的に認められた病気」ということで書いてありまして、ですから科
学的に認められたものはそこに出てくるのですが、科学的に認められないものは出てこ
ないと。科学的に認められるか認められないかという考え方で、他の病気は科学的に認
められなかったということが先ほどの柴田先生の結論であろうと思いますので、追加させ
ていただきます。

(遠藤乙彦議員)
一言、確かに科学というのは限界があって、科学自体も未発達でありまして、科学だ
けですべてを割り切れるかというとそうでもない。分からない部分があるということについ
て、謙虚になる必要があります。むしろグレーゾーンとして今後科学の発展を待つべきで
あって、片方で証明されていることの逆のことが証明されていないということもあるわけで
す。その点は逆に、不確実ということで謙虚になるべきではないかと、たぶん免疫につい
てはまだわかっていない部分が、医学でもほとんど未発達の部分が多くて、必ずしもす
べてが完全に100%わかったわけではないので、そういった部分については、やはり未
知の領域としてむしろ実態調査を十分にやって比較調査をやってやるのがむしろ筋では
ないかと思っております。例えば、免疫でも高い放射線を受けると白血球が減ったり、確
かに免疫機能の影響を受ける場合があるわけですから、もう少しそういったものはしっか
りと様々な研究を積み重ねてから結論を出すべきではないかと私は思っております。

(柴田義貞氏)
だから、今の時点ではないということです。基本的に、ないということは、すべての科学
において言えません。あるというのは、ものを見せればいいわけです。だから、影響があ
ることは認められなかったと言うわけです。つまりそれは、今おっしゃった意味で、まだ分
からない。そういうことです。

(前川主査)
座長として申し上げますが、この議論は、科学的なスタンスでものを見るか、そうでな
いか、そこだと思う。今、委員がおっしゃったように、白血球が減っているのを拝見しまし
たが、あれはまったく線量とは関係ありません。統計学的にもまったく関係ない。誤差の
範囲です。そういうように、一見、あたかも因果関係があるようなことを言う、論文はたくさ
んありまして、特にチェルノブイリ関連の論文にはたくさんございます。今、おっしゃった、
例えば心臓血管疾患が増えている、中枢神経系の疾患が増えている、感染性以外の疾
患が増えているということも発表されてはいますが、いずれも、私たちが信頼する国際的
な機関では取り上げられていない。私たちが見ても、おかしい。先ほどのトンデルの論文
もそうなのですが、おかしい。ここでは、科学的なスタンスでものを見るかどうかを議論し
ているわけではありませんので、大変申し訳ないですが、その議論はしたくないと思いま
す。ここでは、あくまでも、私たちに与えられた課題、低線量被ばくのリスク管理をどうし
たらいいだろうかということを議論したいと思いますので、科学かそうでないかをこの場で
するつもりはありませんので、あらかじめ御了解いただけたらと思います。

(長瀧主査)
今の、確かに、認められないということは分からないということなのですよね。決して、
分からないことを否定はしていないということだけ申します。それでは、次、どうぞ。

(森文科副大臣)
今日はありがとうございます。文部科学副大臣の森裕子です。私も、議運の皆さんの
あとに、チェルノブイリに行ってまいりまして、後ほどご報告されます木村真三先生にも
御同行いただきました。今のお話ですけど、現地で聞きました話しでございますが、先ほ
ど引用されました、サマリーの部分ですよね、そのサマリーの裏には何千ページの本文
があるわけでして、現地の科学者の主張では、その本文のところで報告をされている、
あるいは議論されたことについて、それが正確にサマリーに反映されていないということ
に注意が必要であるとの指摘がございました。最終的に、コンセンサスが、多くの科学者
によって得られたという部分については、ほんのごくごく限られた部分なのではないかと
思いますし、国内における放射線の、低線量の被ばくの健康に対する影響、その研究の
結果においても、本文では影響がないと、これは放射線影響協会の論文でございますけ
ど、サマリーでは影響がない。しかし、本文をずっと見ますと、明らかな影響があると認
められる内容になっている。これは、国会でもそのように指摘をされたところでして、先生
あの、本文でチェルノブイリ原発事故の健康影響についてどのような指摘があったのか、
多くの指摘があった部分があると思うのですけども、チェルノブイリフォーラムの報告に
ついて、もし全文を読んでいらっしゃるようでしたら、教えていただければ大変ありがたい
のですが。

(柴田義貞氏)
申し訳ないのですけど、全文を読んだわけではありません。丁寧に全文を読んだわけ
ではありません。だけど、私自身は、フォーラムのところでは、甲状腺のグループに入っ
ていて、それは全部読みました。それについては、あの通りです。その他のところで、あ
のグループというのは旧ソ連からも来ている。異論を唱えているのは、旧ソ連のグルー
プです。彼らが影響ありと示しているのが、国際的に評価されているか、そこが問題です。
国際的に評価されていれば、きちんとした雑誌に出るはずですが、そういうものは非常に
少ない。それで、国内で色んなことが言われている。例えば、先ほどお話したような、事
故後こういうものが増えていった、だから影響がある、という論法です。それからもうひと
つは、統計手法についても非常に疑問に思われる部分が結構あります。その辺を勘案し
て議論しないといけないと思っています。

(橋本清仁議員)
被災地宮城、福島第一原発、郡山と福島に近い場所に自治体のあるところの選出の
橋本清仁でございます。東日本大震災復興特別委員会の理事を務めております。私、
先日、チェルノブイリに行かせていただいたわけですけど、そこで、チェルノブイリ原子力
発電所事故当時のソ連ウクライナ共和国保健大臣であるノバレンコ、現在は放射線医
学研究所顧問にお会いました。そのときに、ノバレンコさんがおっしゃっていたのは、真
実のことをいくら言っても、なかなか信用してもらえないと。実の娘が医者であるにもかか
わらず、まったく信用してもらえない、お父さんはうそを言っているのでしょうと、すべてを
話しなさいと、そういったことを言われてしまったと。そして、また、多くの方々の中に、不
安が、特にお子さんをお持ちのお父さん、お母さんの中に、不安があると。先生のこのパ
ワーポイントの中にも、特に小さな子供の母親や妊婦を不安におとしいれてきたとありま
すけども、今、宮城県は特別ですけど、この放射線に対する対応が最悪でして、計るとか
えって大騒ぎになるから計らない方がいいといった発言を県の幹部がして、一部新聞に
も載りましたし、私も直接その幹部から聞いたことがあるのですけど、そういった中で非
常に不安に思っている方々がおられる。細野大臣には直接お越しいただいて、現状を見
ていただいて、除染チームを直接自治体に派遣していただくような形で、現状の認識をし
っかりとするべく対応していただいているのですけど、なかなかこんがらがったというか、
不安におとしいれられている状況の中で、先生としてはこの、精神的にまいってしまわな
いようにするために、今、政治に求められているのは、どういうものか、お伺いしたいと思
います。

(柴田義貞氏)
まず、情報公開です。チェルノブイリのときは、当時は旧ソ連ですから、政府が情報を
隠ぺいした。プリピャチの人達は翌日、事故後36時間以内に避難したわけですが、ゴメ
リとか田舎の人は知らされていない。2週間ぐらいは、そのままの状態で、汚染した牛乳
を大量に飲んだりして、甲状腺が被ばくした。今回も、残念ながら、スピーディのデータの
公開が遅かったということですが、そういうことがあると、国民は、旧ソ連時代もそうでし
たが、まず政府を信用しなくなります。それから、ここ2年ほどキエフの研究者と、いわゆ
るリスク認知について子供と親がどういうふうに思っているかという調査を、小さい調査
ですが行ったわけです。その中のひとつの質問で、どういう人を信用するかということを
聞いたわけですが、その中に、ジャーナリスト、あるいは学校の先生、あるいは教授、そ
ういう人の信用というのは、実はほとんどゼロに近い。どういう人が信用されているか、
エコロジスト、つまり現地に行って除染作業をしていたとか、そういう人は信用されている。
これはだけど、正しいというか、これがいい姿だとは思いません。国民は馬鹿ではない。

こういうことを出すとパニックになるだろうというのは、間違っています。心理学の先生に
言わせれば、それは間違いだと。いわゆるパニックには、大衆はならない。だから、情報
をきちんと出していけば、安心していく。それともうひとつは、放射線についての理解、放
射線の影響についての理解を高めなければいけない。今の1ミリというのは、あれは防
護基準としての話で、ちょうど制限速度を設けるような話です。60km制限のところを、き
ちんと60kmを常に守って走っている人はそんなにいない。60km制限のところを80k
mで走ったところで、状況次第では事故にならない。つまり、今は非常事態で、1ミリでは
収まりません。それからもうひとつは、避難させるということは、非常に精神的な影響が
大きいということです。それは、今回のケースでなくても、卑近な例、例えば東京で言うと、
三宅島の噴火で島の人たちは避難しましたが、それによって非常に精神的にまいってし
まう。そういうことも考えて、それでもここは住まわせるには危険だというところは、もちろ
ん除外しないといけない。そういうことをきちんと丁寧にやっていくということが、信用され
る第一歩ではないかと思います。

(長瀧主査)
どうも、ありがとうございます。大分話題が広がってきましたけど、今日の柴田先生の
お話しのポイントは、先ほどのまとめにもありますように、科学的に国際的に認められる
ものを中心にしてひとつひとつ見ていくと、科学的に認められたのは甲状腺のがんで、そ
れ以外は科学的には認められなかったということを主にお話しいただいたのだと思いま
す。科学的に認められないというところは、また、議論が別にあると思います。柴田先生
のお話、ありがとうございました。

それでは、引き続きまして、大臣がお見えになりましたので、ひとことご挨拶をいただき
たいと思います。

(細野大臣)
本日は皆様お忙しい中、このWGにご参加いただきありがとうございます。多くの皆さ
んがご参加いただけるようにということで、午後6時半から設定させていただいたのです
が、私自身が、予算委員会がございまして、その後、閣議もございましたものですから遅
参をいたしまして、冒頭、お詫びを申し上げます。

今日、2回目なわけですけれども、特にチェルノブイリについてご議論いただくというこ
とで、今日は国会の委員会で派遣をされた皆さん、色々と見聞を広げてこられて非常に
問題意識もしっかり持っていただいていますので、一緒にご参加をいただくという形にな
りました。また、政務三役の中でも、この仕事に直接かかわっているメンバーに加えまし
て、チェルノブイリに行った皆さんにも、ご参加いただきました。そういった皆さんもいらっ
しゃいますので、このWGを是非やりたいと思った思いを、少し時間をいただいて話しをさ
せていただきたいと思います。

私がこのWGを開催したいと思いました目的は、明確でございます。サイトの事故その
ものが徐々に落ち着きをとりもどす中で、この年末から来年にかけてはサイトの外の低
線量被ばくというのをどのように考えるのかというのが、最も大きな問題となってまいりま
す。そして、その中でも特に我々がしっかり考えなければならないのは、20ミリシーベル
トというところでひとつの線を引いているわけですが、この線をどのように考えるのか。も
うひとつ言うならば、1ミリシーベルトの除染ということもやっておるわけですが、こういっ
たことをどのように考えていくべきなのか。こういった低線量被ばくのそれぞれのところで、
我々が事故発災以降引いた線を一体どのように考えたらいいのか、さまざまな議論が、
すでに国会でも国内でも特に被災地では行われていますので、それについて徹底的に、
専門家の皆さんに集まっていただいて、さまざまなご意見をいただいた中で、議論をした
いということでございます。そしてもうひとつは、そうした低線量被ばくというのを考えたと
きに、やはりもっとも我々が考えなければならないのは、子どもさんの問題、また、妊婦
の皆さんの対応をどのようにしたら良いのか。これは単に線量で線を引くだけではなくて、

おそらく、政策でどう対応するのかということもあわせて議論をしなければならないだろう
というふうに思っております。

こういったことをこれからまさに政府としては判断をしていかなければならないわけで
すけども、これまでの政府の情報の皆さんへの提供の仕方、さまざまな対話の仕方、そ
れはおおいに反省をしなければならないと思っています。私どもは精一杯説明をしてき
たつもりでございますけども、途中の検討のプロセスをとばして、結論だけをご説明して、
さまざまな誤解や混乱を招いた部分がございました。また、先ほど、柴田先生のほうから
SPEEDIの指摘がありましたけど、我々も十分しっかりと全体を把握しない中で、情報の
提供というのが遅れて、国民の皆さんからお叱りをいただいた、そういった部分もござい
ました。そういう反省に立った場合には、こうした検討の場所は徹底的に公開して、すべ
ての検討の中身を皆さんに見ていただくしかないだろうというふうに考えました。1回目は
準備も整いませんでしたし、十分告知もできませんでしたから、皆さんに入ってはいただ
きましたが、映像で直接皆さんにお伝えしたり、記録を残していただくことができませんで
した。私の方から、主査の先生方、そして事務局に強く要請をしまして、全面公開でやる
ということをさせていただいています。

今日は、2回目でございますが、これから3回目、4回目と積み重ねまして、8回程度
は予定して、徹底的にやってまいりたいと思っています。この議論を通じまして、ここにお
集まりの皆さんはもちろん、国民の間にも、低線量被ばくという極めて悩ましい問題にど
のように取り組んでいくべきなのか、その理解が広まることを期待しています。遠藤先生
が、先ほどくしくも言われましたけど、科学ではまだ分からないところも確かにあります。

分からないことも含めて、それを認めた上で、なおかつ、なんらかの判断を我々はしない
といけません。これは、日本が背負った宿命とも言える状況だと思います。ですからそこ
にしっかりと、政府はもちろんですけども、国民の皆さんにも向き合っていただけるような、
そういうWGをぜひ開催したいと思っております。
話が長くなりましたので、これで終わりにいたしますが、私はすべての会合に、公務で
例えば国会ということさえなければ、すべて出席しようと思っています。従いまして、今日
来ていただいているメディアの皆さんにぜひお願いしたいのは、一部を取り出して、ここ
だけを取り出して何かおかしな議論をしているというような報道はしないでいただきたい。
すべてをトータルで見て、そして我々が何に悩んで、何に結論を出さなければならないの
かということについて、全体を見ていただいて、その中で、皆さんのそれぞれの視点で、
ここはおかしいのではないかとか、ここは評価できるのではないかとか、そういう報道を
していただくのは結構でございます。ぜひ、この会合の趣旨をご理解いただいて、多くの
皆様に参加をしていただきたいし、また、画面を通して、このWGの検討状況をご覧いた
だきたいと、こういうことを最後に心よりお願い申し上げたいと思います。

今日は、本当にお忙しい中、お二人の専門家の先生、柴田先生、木村先生に来てい
ただきました。先生方お二人に、心より感謝を申し上げます。そして、ご参加いただいて
いる皆様にも心より感謝を申し上げまして、ぜひ有意義な会になるようご協力いただきま
すよう、心よりお願い申し上げます。ありがとうございました。

(長瀧主査)
どうもありがとうございます。続いて、議事を進めさせていただきますが、次は、木村先
生でございます。先ほどと同じように、PDFの後ろに別紙がございます。そこに木村先生
のご意見の骨子、意見の根拠となった文献、国民・特に福島県民の方々がご理解いた
だけるように平易な言葉での先生の意見というものをご覧になりながら、説明をきいてい
ただければ幸いです。それでは、木村先生は、20分間の予定ですけども、よろしくお願
いします。

(木村真三氏)
分かりました。それでは皆さん、すみません。二本松で内部被ばくの調査をしていまし
たので、直接現地から駆け付けたのですが、遅れてしまいまして申し訳ございません。こ
の場をお借りして、お詫びしたいと思います。私の切り口は、論文を出して議論をしていく、
これは私みたいな現場に立つ人間が言うことではない。もっと色々な学識経験をお持ち
の方々が、きちんとやっていけばいいと思っています。私の出る幕ではありません。私か
ら言えるのは、私は現実を見る。現実を実際に、チェルノブイリでも、福島でも、この両方
をきちんと現地で実際に問診をしながら、きちんと取っていくというデータの取り方、これ
は世界でもほとんどやられていない切り口です。それをやっていくという立場で、今まで
論文でああだったこうだったという話しは確かにありますが、今からお話しするのは、私
が実際に自分でデータを取って、自分できちんと解析をすると、さらに私自身が、もちろ
んすべてができるわけではありませんので、それぞれの専門家、例えば医学統計の部
分では、理論物理学者に素粒子物理学をやられていた先生が、医学物理、医学統計を
やられています。そういう方々、実際に数式を作ることができる方々、本当の意味でのス
ペシャリスト、こういう方々に協力していただく。さらにそこに骨子に書いていますが、放
射線の専門家。放射線の専門家というのは逆に、逆バイアスがかかっている。その逆バ
イアスがかかってしまわないために、それぞれの分野の専門家の先生の方々、東京大
学、京都大学、名古屋大学、北海道大学等の先生方をお招きして、それで検討会を実は
6月にも行っています。こういうようなデータを踏まえて、まだまだ実は荒削りで、ぜんぜ
んまだ進んではいませんが、実際に起きている、私が解析して私が取ってきたデータに
ついてお話ししたいと思います。だから、論文の引用うんぬんではありません。実際に私
が取ってきたデータにもとづいて、話しをしていきたいと思います。この趣旨からいうと、
私は非常に違うかもしれませんが、事実を語るというのが私の仕事です。

次のスライドをお願いします。これは、8月1日にニューヨークタイムズで、オバマ大統
領の下に、一人のおばちゃんが立っています。

次のスライドをお願いします。このおばちゃん、これはいわき市の30km圏内にありな
がら、すべての対策、避難準備区域等を外されて、いわき市の安全宣言にのっとってこ
の地区だけは残されて、今でも空間線量が3マイクロを越えている部分があると、そうい
う地域です。これは、細野大臣がいわき市に来た時も、陳情がここの区長からされてい
ます。そこを、私は5月16日に入りまして、つぶさな調査をやってきました。このおばちゃ
んは、なぜニューヨークタイムズに載ったのか。実は、私の取材に来たのですが、志田名
地区を知って欲しくてここに連れて行って、まんまとニューヨークタイムズがこちらにひっ
かかった。これは実は、60過ぎのおばちゃんが通販で中国製の線量計を買って、それで
自分のところを調べてみたら、とてつもなく高かったと。実は、このおばちゃんによって、こ
の地域の高濃度汚染というのが見つかった。というようなところで、こういう写真が出てい
るわけです。

次のスライドをお願いします。これは先ほど言いました、20kmゾーン、30kmゾーン
というようなゾーンがあるなかで、この30kmゾーンの内側に入っているいわき市志田
名・荻地区というのがあるんですが、ここに調査に行っているわけです。

次のスライドをお願いします。これは、もと理化学研究所の岡野真治先生とともに私が
いわき市内、5月16日~17日頃に走った、だいたい走行距離300km以上の、汚染地
図を作ったわけで、道をずっと走っていくことで作ったもの。これでも、明らかに高い地域
が見つかったということ、再発見したということで、ここの調査を始めたということです。

次のスライドをお願いします。これが、先ほど言った汚染地図、詳しい丁寧な汚染地図、
これは志田名地区の住民の方々13名がたった4台の測定器を私が貸し与えて、713箇
所に及ぶ測定データ、このメッシュサイズは50mメッシュですが、実は10mメッシュでも
可能です。が、これ以上縮尺すると点になってしまいますので、実は50mメッシュで区切
らせたという地図です。これを住民だけで作り上げたという、すばらしいデータです。これ
は世界でも、住民が住民のためだけに作ったという汚染地図、これは初めてだと思いま
す。こういうことをしながら、実際に、今置かれている現状というものを志田名地区の
方々は、必死に国に対しても、県に対しても、市に対しても訴えかけているんですが、よ
うやく国が動き出して下さった、圧力をかけて下さったおかげで、ようやくこれからが除染
です、というような地域です。

次のスライドをお願いします。こういうバックグラウンドがあった上で、実際にチェルノブ
イリの話をしないとみなさんお話しについてこれないでしょう。チェルノブイリの話しだけし
ても意味がないんです。事故の状況が違うわけです。事故が違うということをきちんと踏
まえた上で、チェルノブイリは使えるんですよというお話をしないといけない。ということで、
25年経過したチェルノブイリの現状のお話をしたいと思います。

次のスライドをお願いします。こちらは、ジトーミル州のナロージチ地区というところの
汚染地図ですが、これは真っ赤に見えるところが第1ゾーン、そのまわりが第2ゾーン、
その次に黄土色に見えるところが第3ゾーン、そのあとは第4ゾーンと、第1ゾーンから第
4ゾーンまで。ちなみに、この第1ゾーンというのが148万ベクレル/m2、第2ゾーンが
55万5千~148万ベクレル/m2、第3ゾーンが18万5千~55万5千ベクレル/m2で、
第4ゾーンが3万7千ベクレル~18万5千ベクレル/m2というような区域になっている
わけですが、これは専門家の先生には釈迦に説法です。ただ、初めての方々もいらっし
ゃいますので、ご説明しておりますが、これは緊急避難ゾーンが第1ゾーン、義務的避難
区域が第2ゾーン、移住権利を有することができる第3ゾーン、最後に要健康監視区域と

いうことで第4ゾーンがあるというところですが、そのすべてを見ている。ここは、キエフか
ら約150km離れたところです。

次のスライドをお願いします。このナロージチ地区の説明をしますと、地区と言います
が、日本の行政区分で言いますと、郡部に当たります。1町64か村、当時ありました。3
万人の人が暮らす本当に貧しいながら幸せに暮らしていた農村地域です。これが、事故
後2日後に、風の向きが変わった影響で、1時間当たり30ミリシーベルト、あえてカタカ
ナにしているのは間違いではないと、30ミリシーベルトの放射能が通過していった地域
である。ただし、ここは、雨や雪が降らなかったおかげで、土壌汚染が飯館クラスかちょ
っと下くらいというようなところですが、この30ミリシーベルトをきちんと計った人、これは
まことしやかに今まで言われていましたが、実は今年の夏の調査で見つけました。計っ
た人間を見つけましたので、確認を取っています。ということで、こういう地域があった。し
かし、事故から3年後、旧ソ連の人民代議員大会で、この地区出身のアラ・ヤロシンスカ
ヤさん、元ジャーナリストの方で女性ですが、この方が、この地域は避難が必要なほど
汚染があったのかというような話をしたところ、グラスノスチ(情報公開)の下において、
実はそうなんです。ということで大騒ぎになって移住が行われました。しかし、ソ連崩壊後、
去年の公開後経済的・政治的理由から2万人までしか移住できなくて、1万人が取り残さ
れたんです。しかも第一ゾーンは、わずか一週間のうちに移住することが、今回の調査
でも現地で確認をとってきましたが、第二ゾーンはいまだに住んでいます。それが三千人
を超える町、ナロージチ町というところが第二ゾーンになってしまっている、ということで、
先ほどの25年ももしかしたら志田名地区もなにもしなかったらこういう風になるということ
の導入部分で先ほどのお話をさせて頂きました。

これからこの地区が25年後どうなったかということをお話させて頂きます。現在、汚染
地域の住民は国からのわずかな生活補償金、年間80ドルをもらっている。ウクライナの
平均月収が250ドルなので、年間80ドルでは意味がない。更に、汚染された地域です
から内部被ばくの影響がある。内部被ばくの影響を押さえるための支度をしていますと
ウクライナ政府は言っていますが、その補助金は1 か月あたり25円。これは子供が食べ
るスナック菓子1個程度。この程度しか支払えないにも関わらず、この地区では支払すら
滞っていて、数か月に一回支払がある程度。その後、ソ連崩壊後、彼等は食べる物に困
ったので、自給自足の生活に入った。それまではソ連政府から配給、特に、子供に対し
ては3回の給食があてがわれていたが、食べる物がなくなり、禁止されている汚染された
セシウム137濃度の高いキノコ、ベリー類等を摂取し、内部被ばくが進んでいる。年月
が進めば外部被ばく、物理学的な半減期というのは進んでいきます、土壌に染み込むと
いうような地質学的な半減期も進んでいきます。しかし、お腹の中に入っているのは、今
年の夏に私が測った人でも5万8千ベクレルのセシウムをお腹の中に入れている。これ
はエミールさんという31歳の男性です。奥さんは子供を産んだばかりの20代の女性で
あり、彼女も2万ベクレルというとてつもない体内被ばくをしている状況でした。詳細な地
図、これはナロージチ区の中にあるバザール村です。昔は2千人近くいたが、現在は52
6人になってしまった村の汚染地図があるわけです。こと細かな地図、先ほど言った志田

名地区に値する、ただ志田名よりもこちらの方がまだ荒っぽいですが、こういった地図が
あるにも関わらず、村議会議長さんが行政の長なのですが、地図の存在自体知りませ
んでした。誰のための情報かということです。この誰のための情報かということを明らか
にしていくことが、これからの日本の研究者であり、行政マンであり、政治家の役割であ
ると思います。私はこの中で、第1ゾーンを調べることにした。時間がないので割愛した
が、調査をしたのが2年前でありそこから3~4年前にアメリカの調査団によって結節性
甲状腺腫と診断された女性がいました。お腹の中に8か月の子供、横には2歳の子供が
いたが、これが放射能の影響かどうかは柴田先生がおっしゃったようにわかりません。た
だ事実としてこういうことがありました。チェルノブイリの最新の知見、これはウクライナの
放射線医学研究センターで、ナロージチで25年間、年に2回検診を一人でやり続けてき
た、エフゲーニャ・ステパノーヴァ先生という女性がとりまとめた内容です。彼女は元々、
キエフ大学の血液学の教授も務められているが、その分野の中で、彼女が昨年スペイン
の学会で発表したものを翻訳してきました。要約としては、ウクライナ全体の20%を占め
ているのが汚染地区である。そこには250万人の子供が住んでおり、今でも食品により
セシウム137の影響を受けている。内部被ばくに寄与する食品の割合は全体の98~9
9%である。そのうち、寄与率の80%を占めているのが牛乳であり、更に肉、じゃがいも、
野菜、魚、キノコ、パンとなっている。ナロージチでは、キノコの寄与率がかなり大きい。
セシウム137の体内蓄積は、最も放射線感受性の高いといわれている、腸及び造血器
官への暴露への影響が強いだろうと言っています。

これが先ほどの汚染地図ですが、その次のページ、彼らの放射性物質の摂取経路は、
25年前の放射性物質が様々なところに沈着しておりそれが野菜等あるいは野生動物が
濃縮してしまいます。実は、今日、福島県は猟の解禁日だが、朝6時に罠を仕掛けて頂
き、1頭50キロのイノシシを捕まえました。今週末捌いて、各臓器全てにおける放射能
分布を調べる予定です。これが直接的には乳牛が牧草を食べ、その乳が放射能を非常
に含んでいるということで、お子さんへの生体影響が強いのだということになっている。実
際に汚染地区の土壌レベルとして、ナロージチ地区に住む7歳~17歳の子供、2009
年から2010年にかけて調査を行ったものが、543人となっています。これは、当時は1
7歳までが小児という単位になっており、彼女は小児科医ということもあり。血液分析は
ヘモグロビン濃度、赤血球濃度、白血球濃度、血小板数を、内部被ばくはホールボディ
ーカウンターを利用して計測した。分布の割合は平均値で4492ベクレル、重みづけをし
たメディアンでは3032ベクレル。大人のカリウム40の濃度は体重60キロで4000ベク
レルといわれているので、これに近い。お子さんですのでこれより低いはずです。大人よ
りも蓄積しています。内部被ばくは1000ベクレル以下の小児が8.8%、1001から50
00ベクレルの生じが57.8%、5001から10000ベクレルの小児が27.1%、10000
ベクレル以上の小児が6.3%でした。この結果、汚染レベルと濃度に相関性があったと
いうことです。さらにセシウム汚染レベルの増加は血液指標、先ほど申しましたヘモグロ
ビン濃度などとの相関関係が見られた。赤血球濃度、白血球濃度、血小板数が逆相関、
線量が低ければ低い程傾きが高いと、更に赤血球と血清については活性酸素産生量に
直接関係していると述べられています。

その次の図は、私も物理屋だったが、物理屋から見てもこの線の傾きはホンマカイナ
というところですが、傾向としては左肩上がりであると示されている。赤血球についてもな
んとなく左肩上がり。白血球、これも怪しいが、左肩上がりと申している。更に、血小板に
ついて、私ならエイヤと横にしてしまうかもしれないが。それでも、542人について詳細
に調査をするということが重要なことです。だから、日本でもこうしたことをやるべきという
のが、私の提言の一つです。これまでわかってきたことは、私が科研費で2年前から調
査をはじめてきました。今、2年目であり来年が最終年度です。もちろんお金はないが、
その中でやっていくのが知恵。ただ時間がない。チェルノブイリで甲状腺ガンが発生した
のが4年後からと言われている。日本では甲状腺ガンについてはヨウ素過剰気味なので、
それほど影響がないかもしれないが、その他の疾病の影響はあると思う。だから、調査
を続けていかないといけない、特に小児については続けていかなければいけないという
のは、細野大臣と同じ考え方である。

次のページお願いします。これはナロージチ地区で裏庭でとれた野菜とじゃがいもを
豚が半分を食べる、人間が半分を食べる。まったく同じものを食べた豚の臓器について
調べたもの。これはウクライナから日本に持って帰って調べた。セシウムは通説的には
筋肉に沈着すると言われているが、これを見ると筋肉組織これは心臓が多いが、心臓よ
りも腎臓の方が高い。これは核医学の先生ならばよく知っていることではあるが。更に、
その他の臓器にもまんべんなく存在していることがわかった以上、可能性が重要である。

これは国際疾病分類表ということでICD10という分類表を、2年前からナロージチ地区
中央病院に行って、分類の仕方を教えて、事故前の93年から、旧ソ連のカルテの保存
期間が50年、日本は5年だが、たしかに古くデータも怪しいかもしれないが、その地域
の医師が見ているというのはある部分では正しいと思っている。周産期の産褥の異常が
出てきたが、これは事故前から診ていた人であり、最も間違いのないデータ。赤い部分
は有意な差がある。医学統計の先生に解析してもらった。これはゾーン毎の比較であり、
汚染レベルとの関係がある。これがきちっと差があらわれている。あとは、見た目には関
係がありそうだというところは相関関係はない。相関関係があるのは、「損傷、中毒およ
びその他の外因の影響」。あとは、逆相関になっており、理由はわからずこれから調べて
いかないといけないはず、医学統計の先生から方法も指示を受けていますが、「呼吸器
系の疾患」。これは、ホルミシスの影響かもしれないが私はわかりません。「妊娠、分娩
および産褥」にも差が出ている。私は自分の目で見て、自分の結果を信じる。福島でもこ
っちでも同じことを行う。この夏から現地にホールボディーカウンターを持っていき、この
秋は3週間行きました。その時は、岡野眞治先生の作られた簡易式ホールボディーカウ
ンターを日本から持ち込んで測っております。

次をお願いします。提案その一として、汚染されていない食品を子供たちに供給しよう
ではないか。特に、福島を含むような汚染地区で一日3食を供給すること。あとは、全国
の給食センターに食品汚染計を導入すること。これは、メンタル面でも全国的にお子さん

を守りたいという、心配されている方がいます。このためにも、どこにでも汚染はある。今
日の朝日新聞の一面でもアメリカが全国の汚染レベルを出している。どこにでも汚染が
あるかもしれないという面を鑑みた上でも全国に置かなければならない。しかも、お子さ
んということで給食センターである。

次のページをお願いします。被ばく調査ですが、もっともっと調査がすすんでおります。

マスコミの皆さん、このデータを使わないでください。これが独り歩きをしてもらっては困り
ます。正しくデータを出して、一流ジャーナルに出すということが必要だと思っております
ので、ただ、その前に人を守るということで、それが何年後になるかはわかりませんが、
私は新たな予算を要求したいと思います。

次のページをお願いします。避難地域の指定というのは、年間5ミリシーベルト程度に
すべきではないかと考えている。目安としては屋外8時間、屋内16時間と申しておりま
すが、これは被災地ではフイルムバッジ、ガラスバッジを持って三か月間合同調査をや
っております。そこから割り出した、外にいる時間、中にいる時間というのが年間5ミリシ
ーベルトを超える場所を割り出していくのがよいのではないか。この理由というのが、議
員団の先生もいらっしゃったと思いますが、立ち入り区域庁長官のホローシャさんが、一
生で350ミリシーベルトとして計算した場合、最初はぐっと大きいので初期の被ばくを除
いたところでは5ミリシーベルトだった。私も考え方はまったく同じであったので、これを載
せている。除染ですが、2~3ミリシーベルト/h というのは大丈夫でしょう。除染は可能で
す。特に住宅地は大丈夫です。ただし、町内会レベルで広くやるべき。仮置き場は最小
の単位である町内会、集落、昔でいうところの部落レベルでそれぞれが責任を持つ。こ
れは、他人のところにゴミを持って行ってはならないという精神に基づき、倫理的にも説
明がつく。相談にも乗っているが、行政が突き上げられて、国が悪い、東電が悪いと言わ
れていると。簡単なこと、今起こっていることに責任を持つべきと強く言って下さいと。や
らないのはあなた方の責任だと言わないと被ばくの問題は消えませんよ、と強く言うべ
き。

次お願いします。除染の問題点、これは、面で汚染された場合を想定してください。点
線源の場合は距離の2乗に反比例する。面線源の場合では無限遠から飛んでくるとして、
物理的に考えても、散乱線の影響を鑑みても、100メートル先からも放射線が飛んでく
る。これは岡野眞治先生からのご指示で私が見ております。結果、一軒の民家を除染す
るためには半径100メートルの除染が必要だと。これが本当に現実的かどうかを考えて
みてください。私も実際に除染をやってきましたが、どう頑張っても1軒レベルでやっても、
半分にしかならない。これは空間線量率が2.6マイクロを超えているとことです。そこで、
家の中が1.2マイクロ、それがようやく0.64マイクロシーベルトになったという実例もあ
ります。除染の困難さを考える必要がある。森林の除染、これは住宅地に近い森林、森
林汚染はすごいですから、100メートル以上を伐採し、落ち葉を取り除く。これで除染が
できる。これまでスギ・ヒノキでやってきたこと自体が土砂崩れなどの天災を招いてきた。
自然林を再生するというのは一石二鳥、三鳥になる。樹皮と江田は汚染物質として処理
を行い、幹の部分は震災復興のため、建築材料として使用する。そういうことで私は実施
してきている。

これで終わりです。すみません、話の内容が大分ずれてきましたが、私は現実問題に
たったお話をさせて頂きました。ご清聴ありがとうございました。

(長瀧主査)
ポイントをはっきりさせたいのですが、先生のお話では、気が付かれない高放射線地
域があった。それが発見された。そこで内部被ばくを調べたら、相当な内部被ばくがあっ
た。それは福島からしても非常に興味があるところ。25年経って、542名を調べて、客
観的に何が起こったのかをお話頂けますか。

(木村真三氏)
25年経って、明らかに病気、それもガン以外の病気が増加傾向にあります。

(長瀧主査)
傾向?

(木村真三氏)
いや、有意な差が出ています。

(長瀧主査)
先生のスライドに出ているのは、血液が。

(木村真三氏)
違います。これは私の、一緒に研究を御教授されている、ステパノーヴァ教授の結果
をもらったのを最新のデータとして報告させて頂いたのみです。私の結果はその後のや
つです。

(長瀧主査)
その後というのは、この成人の分ですか。

(木村真三氏)
はい。

(長瀧主査)
これは83年からの議論ですね。

(木村真三氏)
全部調べています。現地に行って、全部、現地の統計部の部長と一緒に調べておりま
す。

(長瀧主査)
わかりました。先生はこちらの話ではなくて、これも被爆地で全身被ばくを認めたという
こととはまた別ですよね。

(木村真三氏)
全身被ばく?

(長瀧主査)
内部被ばくも含めて。

(木村真三氏)
内部被ばくはかなり高いでしょう。というのは、空間線量率を含めても今は高いところ
でも0.13マイクロシーベルト/時な訳ですから、明らかに内部被ばく、しかも内部被ばく
の調査も行っております。

(長瀧主査)
そういうことで、どうぞご質問を。

(遠藤啓吾氏)
2点ほどお聞きをいたします。まず最初は、先ほどのステパノーヴァ先生の放射線と
血液障害のデータですけれども、このデータを見まして、赤血球、ヘモグロビンの赤血球
系の方が角度は急ですけどね、白血球系は、有意差があると言われましても、ほとんど
有意差はないですよね。

(木村真三氏)
だと思います。

(遠藤啓吾氏)
このデータは放射線の影響はあると言っているのですか。或いは、ないといっている
のですか。あるいは、わからないのですか。

(木村真三氏)
この後、ミトコンドリア障害を調べてらっしゃいまして、ミトコンドリア障害の報例とあと
細胞内の活性酸素量を測定している結果から言うと、どうやら細胞障害があると風に彼
女は言っておりました。

(遠藤啓吾氏)
私は放射線を使って病気の診断治療をするのが専門ですけれども、放射線の影響が
出るとすれば、先に白血球への影響が出ます。で、赤血球の影響が出ることはまずあり
ません。

(木村真三氏)
先生、それは、内部被ばく、外部被ばくどちらの方ですか。

(遠藤啓吾氏)
どちらでも一緒です。ですから、このデータを単純に解釈すれば、これは放射線の影
響はないという風にむしろ解釈すべきではないか。また、実際に、データを見ていただけ
ましたら、先生もずいぶん首をかしげておりましたけれども、統計的にこれ有意かなと、
疑問があります。

(木村真三氏)
そうですね。ただ、こういう風なことも一所懸命やられている方もいらっしゃいますとい
うデータとして、御呈示させていただいたわけで、私が解析しているわけではないので、
正直にこういう間違いもありますよということも含めたお話をさせて頂いております。

(遠藤啓吾氏)
もう一つの質問は、毎時30ミリシーベルトを被ばくしたというナロージチ地区ですか、
毎時30ミリシーベルトでね、事故から3年後まであまり放射能汚染を知らなかったとかい
うのですけれども、それでは、住民の被ばく線量はこの3年間にどのくらいになっていま
したか。

(木村真三氏)
ものすごい風が通過していっただけですから、これは、沈着していないという想定をし
ていけば、それは、東京都内で私が事故直後に1マイクロシーベルトを超えていると言っ
ているのと同じようなことが、それが、ただの数として大きくなってだけですよね。

(遠藤啓吾氏)
逆にいえば、この地区は、一過性には30ミリシーベルトの放射能が通ったかもわから
ないけれども、住民の被ばくはそれほど高くなかった可能性があるという風なことです
か。

(木村真三氏)
外部被ばくで、積算で言えば、それほど事故当初大きかったけれども、その事故当初
を想定して土壌沈着からのレベルで実は線量計算をしております。これは原爆被爆研究
所の線量評価の友人が実は線量評価をしてくださいましたが、大体300マイクロシーベ
ルト。土壌汚染からいうとそのくらいであろうという風に言ってます。300マイクロシーベ
ルト/1時間。

(遠藤啓吾氏)
0.3 ミリシーベルト/1時間であれば、年間に合わせるとすごい線量になりますよね。

(木村真三氏)
それは、もちろん風が通過していったと。で、実際に25年たった今のデータでみてい
ただくと、初期値は、それはかなり高い高線量であったけれども、ある時期からは逆にほ
とんど消えている訳です。内部被ばくはいまだに起こっているというところですから、両方
を加味して考えなくてはいけない地域であるという風には考えてます。おっしゃる意味は
分かりますが。

(遠藤啓吾氏)
私は先生の話を聞いてね、セシウム137による内部被ばくの健康影響の証拠はない
というような感じで受け取ったのですけれども。

(木村真三氏)
外部被ばくだけで評価ができるということですか。

(遠藤啓吾氏)
内部被ばくの先ほどの血液のデータもね、これも影響はないと考えられる。
(木村真三氏)
ちなみに先生、5 万8 千ベクレルが大体そこからきれいに50年間減少して行ったら、
大体その預託線量というのは大体どのくらいになるか、先生、計算されたことはあります

(遠藤啓吾氏)
いくらになりますか。

(木村真三氏)
5ミリシーベルト一年ぐらいになりますよ。これは継続的、持続的に続いていた場合は
まったく別です。積み重ねです。それから考えますと、これは効いてきますと私は思って
おります。もちろん、初期の急性被ばく症状出された方が結構いらっしゃいました。特に
若い方はそういう風な方がいらっしゃいますが、事故後に生まれた方々でも障害が出て
いると、実は、子供のデータも取っている、持っているんですが、そこにも出てきたら、今
度は、先生、外部被ばく線量の話じゃないよということが出てきます。これはまだ出してい
ないわけです。

(長瀧主査)
先生事実をお話し下さい。ありそうだとか、出る予定だとかではなくて。先生、どういう
結果が、25年経って何があるということをはっきりお聞きしたいのですが。

(木村真三氏)
残念です。子供の方を今日は出していない。出していればはっきり言えたのですが、こ
れは外部被ばくも内部被ばくも両方ある。ただ、先生、内部被ばくだけの影響じゃなくて、
今回、事故が起きたのはどちらもある訳ですよね。赤宇木に対してもそうですよね。赤宇
木地区でも、高線量の地区ですね。

(長瀧主査)
その結果、何が起こったかということをお話し下さい。

(木村真三氏)
それは、25年後に、こういう風に複合的にちゃんと内部・外部の影響が効いて出てい
ると、有意な差が出ているというのが3つありますということは正しいと思います。

(細野大臣)
すみません、今ちょっとおっしゃりかけたのだと思いますけど、先生が5ミリで線を引こ
うという提案は、しっかり我々も受け止めなきゃならないと思います。5ミリがこうだという
ことを御説明されましたけれども、もう一回、5ミリにされる根拠を教えていただけますか。
例えば、内部被ばくでいうと、ここで聞いていただいておりますけれど、測定しているデー
タでは我々が得ているデータでいうと、相当日本の場合には内部被ばくは低いと、これに
該当するなら該当するで、しっかり真摯に受け止めなければならないのですが。

(木村真三氏)
これは実は、これは海洋データが入っていないんです、海のデータ。海の海産物のデ
ータはあまり出ていないんですよね。これを生体濃縮が起きて、出てるというのは、それ
を多く取っているかどうかという、実際その食して内部被ばくが上がっているかというの
は、僕もまだとっていないんです。だから、農作物では思った以上に低かったと、安心で
きると私も思っていますが、海の海産物というものが入った場合は私はわからないと。

(細野大臣)
私が言った内部被ばくは、最近、ホールボディーカウンターで取り出して、セシウム13
7であれば全部残っているということが想定されるわけですよね、基本的には。

(木村真三氏)
いや、生物学的半減期がありますので、出てあります。お子さんの場合は、乳幼児は
10日で排出されますし。

(細野大臣)
もう一回、しっかりお聞きしたいので、5ミリで危険という風に判断される根拠を我々に
も分かるようにお話しいただけますか。

(木村真三氏)
外部被ばく線量のみを考えた場合、これは内部被ばくを無視した場合ですよ、これは
もちろん、ここでみなさん議論されている20ミリシーベルトで大丈夫かということになりま
すが、これ、お子様、成長期のお子様と言いましょう、この方々に対しては、リスクは3倍
に上がるという風にデータが出ています。そしたら、もし20ミリシーベルトで制限をした場
合、成長期のお子様に対しては、実際には60ミリシーベルトを強いることになるというこ
とです。

(長瀧主査)
質問を正確に御理解いただけませんか。先生が5ミリシーベルトといわれたので、そ
の理由は具体的にチェルノブイリでどういう理由で5ミリシーベルトと言われるのかという
のが御質問なのです。どういう事実に基づいて5ミリシーベルトと。

(木村真三氏)
これは、初期の被ばく、空間線量率に被ばくから減衰式を用いて平均値をとっていっ
たとき、安全であろうと考えられる、これは積分値で計算していて、その平均値をとってい
くと。初期はもちろん高いけれども、どんどん下がっていくよといった時に、彼らチェルノブ
イリの汚染地域を管理している方々は5ミリシーベルトぐらいまでなら影響はでないだろ
うと、彼らの認識があったと私は思っています。

(長瀧主査)
彼らがそう言われたということが事実ですか。

(木村真三氏)
はい、事実です。

(長瀧主査)
病気で何が起こったから、彼らは、大丈夫と言っているのですか。

(木村真三氏)
それは病気で何が起こったかはおっしゃっていませんでした。

(長瀧主査)
ではなぜいけないという理由なのですか。

(木村真三氏)
いや、妥当な線というのが、長官にお伺いを森裕子副大臣がされた時に。

(長瀧主査)
科学的な理由を伺っている。

(木村真三氏)
僕もこれは経験的としか言いようがないです。

(森文科副大臣)
どうもありがとうございました。今のお話なのですけれども、ウクライナ非常事態省に
伺いました。で、ホローシャ、チェルノブイリ立入禁止区域管理庁長官をずっと勤められ
た方ですが、現場の最高責任者ですけれども、最初、私どもに、要するに先ほどの第一
ゾーン、第二ゾーン、第三ゾーンというような土壌汚染の汚染密度、これで避難区域を設
定すると、非常に避難区域が広がると、これは失敗であったと。避難区域のチェルノブイ
リの設定は失敗であったということを強調されていらっしゃいました。つまり、チェルノブイ
リにおけるこの避難区域の設定で、今の福島を見ますと、福島の中通り地区は非常に広
い範囲で避難区域にしなければなりません。土壌の汚染濃度というのから見ますと。私
もそのことについてお聞きしたかった訳ですけれども、ホローシャ長官は25年経ってみ
て、この土壌汚染濃度で避難区域を決めたということが、非常に広範囲にわたって、そし
てまた、被曝を防ぐということももちろん重要なのですが、それから、ホローシャ長官が強
調していたのはとにかく内部被曝を防ぐことが非常に重要であると。しかし、一方で、先
ほどお話がありましたように、移住に伴うリスクも高いと。そういうことを非常に強調され

ておりまして、最後に私が、では長官、25年前に立ち返るとして、改めてこの25年間の
様々な経験或いは研究或いは政府としての調査に基づいて、改めて25年に立ち返って
避難区域を設定するとしたらどうですか、というふうにお伺いをしました。長官は、避難区
域は放射線量で決めるべきであると。そして、その値は5 ミリシーベルト/年、これを避
難区域の基準にすると。もちろん当初の事故直後の非常に高い放射線量、これは除い
て、そのある程度一定に落ち着いたところ、そこから計算しますと、先ほど木村先生の御
説明にありましたように、生涯の被ばく線量を350 ミリシーベルトと考えた場合、初期の被
ばくを考慮に入れないということで、それを除いた場合、避難区域は5 ミリシーベルトが妥
当であるというふうにおっしゃいました。また、もちろんこの5ミリシーベルトという値につ
きましても、避難の当初については、若干高めになる可能性があるともおっしゃっており
ました。今、ウクライナ政府は、ここでこういう風な言い方を申し上げてよいかわからない
のですが、当初の被ばく、避難区域の設定が非常に大きくしすぎて、つまり被災者という
か被害者の数が大きすぎて、なかなか補償ができないと そういう意味で、できるだけ、
できるだけ小さくしていきたいと。そういう思いである政府の代表者でありますけれども、
その長官でも、やはり5 ミリシーベルトというふうなお話をされておりましたので、私は今
ほど木村先生のお話がありましたように、一定の説得力があるという風に思っておりま
す。

(細野大臣)
ちょっと口を挟ませてください。私は、この場所であまり経済性とかコストという議論は
しないほうがいいと思っているのですね。徹底的に安全で議論すべきだと思っております、
低線量被ばくについての。ただ知りたいのは、5 ミリの線でどういう低線量被ばくのリスク
あるのか、みんなで共有したいわけです。それがそうだというならば、それは色んな判断
があると。ただ、それが証明されない、もしくは分からないなら、じゃあどうしようかという
議論をしたいのであって、ここにその議論を持ち込みたいとは私は思っていないんですよ。
ですから、まさに、今日、先生方がこういう提言をされて、じゃあ、5 ミリだとどうなのかと2
0ミリとリスクは違うのか同じなのか、チェルノブイリで例えば何らかの示唆はないのかと
いうのを是非情報として共有したい。

(森文科副大臣)
まさにそういう意味で、チェルノブイリの現地の責任者が様々な経験から5 ミリシーベ
ルトという数値を提示されたということについては、これは検討に値するのではないかと
思った次第ですし、木村先生もそのように思われたという風に思います。ちなみに、ステ
パノーヴァ教授というのは、日本でいう放医研の研究者でして、そこは入院患者も受け
入れておりまして、お子さんたちが500 人、大人の方が300 人、そこで医療ケアをすると
同時に、今様々なステパノーヴァ教授の研究、疫学的な研究をされ、それを還元してい
ると、政府に対して、ということでございます。

(長瀧主査)
今確かめたところですけれども、要するに長官がおっしゃったということ。それで何が起
こる云々ではなくて、長官がいわれたというお話ですね。

(遠藤乙彦議員)
私も、長官とお話をしたのですが、旧ソ連の場合は、核実験をしょっちゅうやっていて、
動物実験等もやっておりまして、一番そういう情報、データが蓄積されているんですね。
その彼らが大体議論して決めたのが、5ミリシーベルトだろうという風に推測され、まあ、
あまり詳しい話はしてなかったのですけれどね。低線量の場合、確率的な影響なわけで
すから、確定的ではないですけど、どこかで線を引かなきゃいけないということで、今、
ICRP が1ミリシーベルトというのは、1 万人に1人がガンを発症する確率だと。5ですと5
人だということでしょうけれども、交通事故が大体1万人に1人ということなので、たぶん
社会的に許容しうるのが、そこらへんで線を引くかということでやっていて、だいたい多分
そんな考え方、推測ですが、そんな経験的なところから、たぶん線を引いたのだろうと。
ただ、ソ連の場合、核実験等やっていて、知見があるので、それは非常に重要だと。ちな
みに、国会でも事故調を立ち上げておりますが、私ども議運で行ったグループの超党派
の提案で、徹底してチェルノブイリでの経験を参考にすべきだということで、今、日本とウ
クライナとの間で、事故対処協力協定を結んで、その間で、医学とか農業とか食物とか
あらゆる問題について、徹底した情報交換、専門家の交流、或いは共同研を立ち上げる
という提案をしておりまして、ホローシャ長官も是非呼ぼうと思っておりますので、是非そ
んな中で、さらに詰めた議論をしていきたいと考えております。

(長瀧主査)
細野大臣もおっしゃったように、このワーキンググループは科学的に何が起こるか、本
当に何が起こるかということを議論したいものですから、5ミリシーベルトのご提案はソ連
の専門家がおっしゃったということなので、もう時間もありませんが。

(森文科副大臣)
ちょっと、私たちが科学的じゃない話をしているような誤解を与えますので。

(前川主査)
森先生のご提案の、参考資料の会談4のプレジャニック放射線医療医学研究センター
癌疫学室長は、年間20ミリシーベルトとの避難基準は妥当と。

(森文科副大臣)
それはガンについて。

(前川主査)
そうすると、避難するのはガンを回避するためでないのですか。

(森文科副大臣)
あの、申し訳ないのですが、もちろんガンもありますし、それ以外の影響についても報
告はされている訳です。私は先ほどチェルノブイリフォーラムの全文について内容をお聞
ききしたのはそういうことです。要するに、これはICRPも言っていることなのですが、低線
量の被ばくの影響というのは、ないというのではなく、よくわからないというのが正しい訳
でして、これこそが科学的なのであって、分からないからこそ、その中で、どの数値で避
難を、移住をさせる或いは短期の移転をさせる、色んなあらゆることをやらなければいけ
ない訳で、ALARA(As Low As Reasonably Achievable)の精神に基づいて合理的に達成
可能な限りの放射線防護策を取らなければならない訳でして、我々は、少なくとも私は、
科学的、科学的にと先ほどからおっしゃられておりますが、私はこれが極めて科学的で
あるという風な思いで発言させていただいているところです。

(細野大臣)
ちょっと時間も押してますが、折角いい機会なので、ちょっと色んな方からの意見をい
ただきましょう。それで、何ミリどうこうという話は、最後は色々と判断をしなければならな
いが、ちょっと早いと思うんですね。むしろ、今回はチェルノブイリで何が起こったのかと
いうことについて、しっかり情報共有するということをしたいと思います。すみません、私
が仕切ってしまって申し訳ないです。

(佐々木康人氏)
ICRP の話がでてまいりましたので、私は2009 年の6月までICRP の主委員会の委員
を務めておりまして、2007 年勧告、最新の勧告はほぼ8 年くらいかかってつくったもので
ありますが、その過程が伝わったものと思います。今お話しがあったのは、まさにおっし
ゃるとおりでありまして、遠藤先生がおっしゃったと思いますが、確定的影響と確率的影
響というものがあると。確定的影響というのは実際に毛が抜ける、皮膚が紅くなる、下痢
をするなど、これは1000ミリシーベルトを超えないと起こらないという閾値があるというこ
とになっております。今、問題になっているのは、100ミリシーベルト以下の一般に低線
量と言われている低線量被ばくについては、これは先ほどから、森先生もおっしゃったよ
うに、これは発がんのリスクがあると。疫学的に人のデータで一番国際的にも高く評価さ
れているのが日本の放射線影響研究所の原爆被爆者の寿命影響調査であります。これ
に基づいて150ミリシーベルトを超えないと、150ミリシーベルト以下の被ばく集団と、対
照群といっておりますが、被曝のない群との間には統計的に優位な差がないと。だから、
100mSV 以下の低線量では、はっきりしたデータは無いということになっております。

ただそれは、分からないわけではなくて、あったとしても、100mSv あるいは150mSv
で出てくる発がんの影響よりも低い、きわめて小さなレベルであるかもしれない。
あるかもしれないけれども、統計的には明確な差が出てこない。じゃ、100mSv くら
いの被ばくの発がんの影響というのはどのくらいかと言いますと、これは、1000mSv
で10%くらいのがんの過剰、自然に発生するがんに上乗せする分が1000mSv あたり、
およそ10%ということになっております。これは、原爆ですので、一瞬の被ばくの
時でありまして、こういう急性の被ばくよりは、何年もかかってゆっくり被ばくす
る慢性の被ばくについては影響は少ない。影響は少ないのだけれども、どのくらい
少ないかという議論がたくさんあるようでありますけれども、ICRP や国連科学委員
会では、およそ慢性被ばくの場合には、半分になるというふうに考えております。
したがいまして、1000mSv で5%、したがって100mSv で0.5%、10mSv では0.05%、
1mSv では0.005%のがんの増加があり得る、あり得るのではないかという考えに基
づいて放射線防護体系というのができているわけです。森先生が言われたように、
緊急事態が起こった時に、どこで防護対策をとるかということは、平常の状態では
公衆の被ばくは何とかして1mSv、年間1mSv に抑えようとしているわけであります
けれども、一旦、事故が起こった場合には、まずは重篤な確定的影響が起こる可能
性が出てまいります。これを絶対起こさないようにした上で、確率的影響はある程
度増えることはやむを得ない。それをICRP は、非常事態の時には公衆の被ばくは
年間にして20~100mSv の間で状況に応じて適切な線量を選んで、それを目安にし
て防護活動をいたしましょう。そういう勧告であります。それを守ればよいという
話ではなくて、最適化の指標であります。最適化というのは、つねに少しでも線量
を下げる、余計な線量を浴びないように下げる努力をするというのが、先ほどから
お話に出ているALARA の概念です。ですから、先ほど5mSv でいいのだとおっしゃ
っているのは、一つの目安で、5mSv でやることはいいんですけれども、それでいい
わけではなくて、できればさらに下げる努力はしていかなければいけない。そのど
こまで下げるのかというのは、平常状態の年間1mSv に下げる努力はしていかなけ
ればならない。しかし、現状でどこが適切かというのは、選ぶことはできる。その
時に実際の人の受ける、例えば住民の方の受ける線量を推定して、それからいろい
ろな状況を見定めて、その中で適切な線量を選んで防護活動をしましょう。これが
ICRP の基本的な防護の考え方でありますので、そのことを申し上げておきたいと思
います。

(長瀧主査)
どうもありがとうございました。柴田先生、スピーカーとして何か。

(柴田義貞氏)
今の話ですけれども、100 というかその辺りまでは、本当は分からないというのは、私
の資料の6ページで右の方にある小さな表、これは放影研から出ているものですが、こ
の表で100以下のところでは、直線をたとえ引いても、その直線の傾きは有意ではない、
つまり、0という仮説は否定できないというふうになっています。それからもう一つは、群
間比較というかをやっても差が出てこないということで、100 以下というのははっきりしま
せん。これは、釈迦に説法になって恐縮ですけれども、病気の原因は、例えばがんの原
因というのは無数にあるわけです。その中の一つが放射線であって、そうすると同じ被ば
く線量で被ばくしても、その人たちの他の背景因子の値というのは全部違うわけです。放
影研で調べられたのは、結局、性別と被ばく時年齢とかで、そういったものくらいでしか調
整できていません。たとえば、チェルノブイリでこういうところに相関あり、と言っても、そ
れは別のファクターが効いているためかも知れません。その辺で非常に難しい問題があ
ります。それからちょっとついでに、先ほどの血液データの直線の話ですけれども、あれ
は統計学的検定をすれば、無相関という仮説は棄却されるものが多いと思います。しか
し、あそこにある相関係数R というのは小さすぎます。あれは相関係数で見るのではなく
て、決定係数R2で見るべきです。R2は、回帰が全体のバラつきの何割を説明しているか
という話ですから、あそこに出てくる相関係数0.3 とか0.29 程度だと、1割くらいしか説明
できません。つまり、他の要因によるバラつきが大きいということになります。こういう議
論をする時に形式的な話で済ます人が多いのですけれども、その辺をしっかり考えない
といけないと思います。

(長瀧主査)
どうもありがとうございました。あの、かなり時間もオーバーしてまいりましたが、結局、
「科学的」という言葉だけでは分からない範囲がある。その分からない範囲をポリシーと
して政治的にどう扱うかとい問題だろうと思うんです。全体として、私、科学という言葉を
使いましたけれども、限界があるということをお分かりいただいて、その後は、まさにここ
に出ていらっしゃる先生方の政治的なポリシー、どう対応するかということになってくるの
だと思いますけれども、今日は一応ここでは科学的にチェルノブイリでどんな変化がおこ
ったかということの国際的な合意のまとめが、柴田先生がおっしゃったようなレベルだっ
たいうことを、このワークショップでご理解いただいた。この次の段階は5mSv という話も
出ましたけれども、まだまだ他のデータも含めて、トータルとして議論していただくだろう。
今日のワークショップは、これで全部としたい。

(近藤駿介氏)
先生、質問させてください。木村先生のメモのホローシャさんからお聞きしたお話のキ
ーワードは、これいずれも追加被ばく線量と思うのですが、年間5mSv という数字と
350mSv という生涯被ばく線量の制限値だと思うのです。で、このうち重要なのは、生涯
被ばく線量の追加分の制限値であり、現場においては、これが達成できるように毎年の

追加線量を決めることになるはずです。しかし、もしセシウムからの被ばくが中心的であ
れば、いつも放射性セシウムを取り込むことが避けられないということでもない限り、線量
が次第に減じていきますから、年間5mSv というのを早い段階の制限値として選ぶべきと
いうことにはならないのではないかと思うのです。私どもも初年度の制限値をいくらにす
ると生涯線量がいくらになるかという計算をしていますが、年間5mSv を限度に350mSv
を生涯線量にというのは、70年ずっとこの線量で被ばくしている状況を限度に考えてい
ることになる。外部線量中心だと、初年度を5mSv に制限すると、おそらくこんな生涯被ば
く線量はなりえないと思うのですが、この350mSv をレファレンスに年間5mSv が妥当とい
うのは、どういう被ばく状況のモデルを用いて導いたのかについて何か情報をお持ちでし
ょうか。

(木村真三氏)
すいません。今回に限り、私はそこまでは聞いておりません。

(近藤駿介氏)
今後の議論のために、この350 を生涯被ばく線量のレファレンスとすることの根拠につ
いての情報はきわめて重要だと思いますので、これについては何らかの方法でぜひ追
加情報頂けたら、ありがたいと思います。

(木村真三氏)
直接聞いてみましょう。

(長瀧主査)
それは、350mSv に関しては、私も1990 年からずっとおりますけれども、最初にソ連でイ
リーンという科学総裁が「350mSv 生涯で大丈夫だ」と、ソ連邦の時代にそういうお話で
350 というのが出た。我々が行った時は、ソ連邦の言う350mSv は信用できないというム
ードがいっぱいの時でした。チェルノブイリ事故では350 という具体的に出たのは、ソ連
邦の時の科学総裁のイリーンが、今回の事故で350mSv までは生涯線量と言い出したの
が最初で、あるいはその後はないと思います。

(佐々木康人氏)
あの時間がないのに申し訳ありませんが、多分、生涯350mSv で平均70歳生きると考
えれば、70 で割れば、年間5mSv ということになるんではないかと思います。これは基本
的にICRP の職業被ばくの平時の線量、平時であります。平時に線量限度というのを使
います。これは職業被ばくの線量限度というのは、職業人として生涯に1000mSv 以上の
被ばくを起こさないようにしよう。それは先ほど申し上げました確定的影響は起こさないよ
うにしましょうということとほぼ同義。それから、あまりそういう線量限度いっぱいの人がた
くさん出てきても困るねというようなこともあり、そういう条件から18 歳から65 歳まで働く

とすると47 年になります。今の職業被ばくの線量限度というのは5 年間で100mSv。これ
は日本の法律でもそうなっておりますが、年間平均20mSv。職業人として年間平均
20mSv、毎年毎年浴び続けたとしても47 年間で940mSv。1000mSv は超えない。そのくら
いの職業人であれば、がんのリスク、先ほどちょっとお話が出たんですが、1000 人に一
人くらいになるんですが、そのくらいのリスクは職業として放射線を扱う人たちには容認
できるという考えであります。それで公衆の被ばく、これもいろんな考え方が、一つだけで
はないんですが、限度として、公衆の被ばく限度を定めなければならない状況になった
時に、職業人の約10 分の1にしましょうということから、1mSv、年間1mSv が出てきてお
ります。これは、平時の線量限度であります。これは仮に100 年生きたとしますと生涯で
100mSv になります。そのくらいであれば、もちろん確定的影響も起こらないし、それから
先ほど申し上げましたように、発がんのはっきりとしたデータも無いくらいの線量であって、
これは公衆でも容認できるのではないか。こういう考えに基づいています。これはあくま
でも、平時の線量限度でありまして、その線量限度を守ればいいというわけではなくて、
その上でさらにできるのであれば、無用な被ばくを起こさないようにしよう。それは何らか
のリスクはやっぱり低い線量でもあるので、それは少しでも下げましょう。そういう努力を
いつもやりましょうというのが、ALARA の精神、あるいは最適化の精神であります。失礼
しました。

(長瀧主査)
どうもありがとうございました。大分時間を過ぎてまいりましたけれども、何か最後に何
かございますでしょうか。

(細野大臣)
今日は本当にありがとうございました。やはり政務の皆さんに入っていただいて、チェ
ルノブイリで1 回やってみたかったものですから、ご参加いただいて本当に良かったと思
っております。感謝申し上げます。また、柴田先生、木村先生、お忙しい中ありがとうござ
いました。お二人から非常に示唆に富んだご報告を頂きましたので、一つの大きな検討
の場が設けられたと思っております。私としては一言だけ感想を申し上げると、まさにこう
いう議論をしたかったわけです。いろんな考え方があるし、非常に悩ましい問題なのだけ
れども、やはり専門家の皆さんと、後は政務の我々も含めてどうそこで難しい判断をして
いくのかということをこの場所で議論したかったものですから、いろんな丁々発止のやりと
りも含めてこういう場所が設定できたこと自体、私は良かったのではないかと思っており
ます。

次回もできるだけ多くの皆さんにご参加をいただいてやりたいと思っておりまして、
早々で恐縮なのですけれども今週の金曜日の夕方の6 時から、今度は子どもと妊婦に
対しての配慮のあり方について、専門家の先生方に来ていただいて、同様の形で会をや
りたいというふうに思っております。これは、繰り返しになりますけれども、継続してしっか
り皆さんにご議論いただきたいというふうに思っておりますので、次回もぜひ、皆さんにご

関心を持っていただきますようにお願い申し上げます。今日はどうもありがとうございまし
た。

(長瀧主査)
どうもありがとうございました。
以上

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第2回 低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ

低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ

http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai2/meibo.pdf

出席者一覧

第2回出席者

平成23 年11 月15 日
(五十音順)

遠藤 啓吾 京都医療科学大学学長
(社)日本医学放射線学会副理事長

近藤 駿介 原子力委員会委員長
東京大学名誉教授

酒井 一夫 (独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長
東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻客員教授

佐々木 康人
(社)日本アイソトープ協会常務理事
前(独)放射線医学総合研究所理事長

長瀧 重信
(共同主査)
長崎大学名誉教授
元(財)放射線影響研究所理事長

前川 和彦
(共同主査)
東京大学名誉教授
(独)放射線医学総合研究所 緊急被ばくネットワーク会議委員長

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http://www.nashim.org/060802/

柴田義貞さん(長崎大学医歯薬学総合研究科教授)

柴田義貞さん放射線影響研究所の疫学部長として、チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクトにおいて事故の影響評価にあたり、事故後に小児の甲状腺がんが増加していることを示した。現在、長崎大学においてチェルノブイリにおける健康影響についての疫学調査を継続して行っている。


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http://www.jaero.or.jp/data/02topic/fukushima/interview/sasaki_t.html

ICRPと放射線による健康影響

(公)日本アイソトープ協会専務理事

佐々木 康人氏
佐々木 康人氏(ささき・やすひと)
1937年 東京都生まれ。東京大学医学部医学科卒業後、同大学医学部附属病院第二内科助手、米ジョンホプキンズ大学放射線医学核医学部門研究員、東京大学医学部教授、放射線医学総合研究所長・理事長、国際医療福祉大学副学長・放射線医学センター長などを歴任。国連科学委員会(UNSCEAR)日本代表、国際放射線防護委員会(ICRP)主委員会委員なども務めた。

── 事故以来よく耳にするICRP(国際放射線防護委員会)は、どのような組織でしょうか。
佐々木 ICRPとは、International Commission on Radiological Protectionの略で、日本語では「国際放射線防護委員会」と言います。

 元々は、各国の放射線医学会の連合体である国際放射線医学会の中の一つの委員会として、1928年に当時最も使われていたX線ラジウム防護委員会として発足しました。これが1950年に、現在の名前に名称を変更しました。ICRPは、放射線防護についての理念と原則について勧告を出し、常に助言的な役割を果たしています。
 ICRPは、非政府の機関で、イギリスでは公益法人として登録されています。

ICRPの刊行物
ICRPの刊行物

提供:日本アイソトープ協会

ICRPは、国連科学委員会の報告を科学的な根拠としている

── どんな機関が放射線の影響について研究しているのですか。またICRPは何に基づき勧告しているのでしょうか。
佐々木 ICRPは研究機関ではありませんが、世界中に放射線影響の研究をしている機関はたくさんあります。
 日本の中でも放射線影響研究所(広島、長崎)のように、原爆被爆者の健康影響を長年にわたって調査しているところがあります。放射線医学総合研究所(千葉市)にも放射線の低線量影響の研究をしているグループがあります。そのほか、京都大学、長崎大学、広島大学をはじめとして、多くの研究機関で研究が行われています。
 それらの研究の成果を国連科学委員会(UNSCEAR=United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation 正式な日本語名称は原子放射線の影響に関する国連科学委員会)が集めて、その科学的な健全性を検証した上で、その時々の最新の知見を報告書としてまとめています。

 ICRPは、このUNSCEARの報告を科学的な根拠として、放射線防護の理念と原則を勧告しています。ICRPの勧告を受けて、IAEA(国際原子力機関)がさらに、より具体的な安全基準をつくっています。

 その安全基準やICRPの勧告などを参考にして、各国の政府が放射線の管理、あるいは障害防止の規制をつくっているのです。
 そういった国際的な放射線防護・管理の枠組みが現在ではでき上がっていて、日本もその枠組みの中で国内の放射線障害防止法をつくり、放射線防護管理の体制をつくっています。

── ICRPでは、100ミリシーベルト以下の被ばくとがんのリスクについて、どのように考えているのでしょうか。
 
佐々木 100ミリシーベルトという線量は極めて大事な線量です。放射線の健康影響には2種類あって、1つがしきい値のある影響、「確定的影響」あるいは組織反応で、これは多くの細胞が死滅し、組織・臓器の働きが障害されるために症状として発現するのです。100ミリシーベルト以上でないと絶対に起こらない影響です。ですから、100ミリシーベルトを超えると確定的影響が起こる可能性が出てきますが、それ以下では確定的影響はありません。
放射線防護の考え方
放射線防護の考え方

(原子力・エネルギー図面集2012より)

 一方、放射線によって遺伝子の変化を残したまま生き延びる細胞があると、さらなる変化が重なって、5年以上を経て細胞ががん化する可能性があります。この種の影響を確率的影響と呼びます。体細胞への影響が発がん、生殖細胞への影響が次世代に出ることを遺伝的影響と呼びますが、遺伝的影響は人ではこれまでみられていません。従って、人での確率的影響は将来の発がん、またはがんになって死亡するリスクとして評価されます。

 もともとがんに罹患する人々、死亡する人々は大変大勢います(日本ではおおよそ二人に一人ががんに罹患し、三人に一人ががんで亡くなります)。放射線が原因でがんになる人が増えたかどうかは多数の被ばく集団と非被ばく集団を数十年にわたり追跡調査して初めてわかるのです。先に述べた原爆被爆者の寿命調査、健康調査ではおよそ10万人規模の集団で比較して100〜200ミリシーベルト以上の被ばく集団でがんが増加することが分かりました。がんの増加は線量の増加と比例することもわかり、1000ミリシーベルト当たりおよそ10%非被ばく群よりがんが増えることが分かりました。100ミリシーベルト以下の被ばくでは増え方がさらに少ないので非被ばく群との間で区別がつかないのです。数百万人、数千万人の集団で調査しない限り10ミリシーベルト、1ミリシーベルト程度の発がんリスクは見出せないであろうと考えられています。

 そこで放射線防護の目的では、確率的影響にはしきい値はなく、高線量域で見られる線量増加とがんの増加との比例関係が100ミリシーベルト以下の低線量域でもあると考えることにしました。この考え方は直線しきい値なしモデル(Linear Non Threshold (LNT) Model)と呼ばれています。この考えに基づいて、発がんのリスクの指標として用いるために考案されたのが、放射線防護の中核をなすと言われる「実効線量」という線量単位です。

 また、低い線量の放射線をたくさんの方たちが被ばくしたことから、実効線量と、それを受けた人数を掛け合わせた「集団実効線量」という数値を使って将来のがんの予測に使うことが過去に行われました。しかし、その数値には適切な使い方が必要で、間違った使い方をすると大変誤解を招きやすいので、その点についてはICRP2007年勧告がかなり細かく「適切な使い方」を説明しています。

科学者は自分の考えを社会への影響まで考えて表明すべきかもしれない

── なぜ放射線の健康影響についての見解が学者によって異なるのでしょうか。
 
佐々木 疫学的な調査で非常に大勢の原爆被爆者(10万人規模)を対象とした調査の結果でも、100ミリシーベルト以下の線量についての影響はあったとしても見つけられない程小さい、というのが現実です。

 それでは、絶対に100ミリシーベルト以下のことはわからないのかというと、そうではなく、放射線生物学の研究、特に、最近の分子生物学的な手法を使った研究は非常に進んでいて、おそらくこの研究が進むと、放射線影響の機構解明ができ、放射線の影響について私たちがもっとよく知ることに役立ちます。ICRP2007年勧告も、このような研究を推進する必要を述べています。

 まだわかっていないだけに、放射線の影響に関する研究はたくさんありますので、それぞれの研究者が自分の経験や実験結果に基づいて、いろいろな考えをもっているのは、当然といえば当然です。研究者によって、いろいろな意見の差があり、「非常に低い線量でも危険だ」という考え方から「いや、リスクはそんなに高くない」という考えまでいろいろあるのです。

 ICRPは、そのようなことを十分認めた上で、今のところ、生物学的な研究成果はヒトの放射線防護の中に取り組むほど成熟していないので、まだ放射線防護の体系の中にはその知見は取り組まない、というのが基本的な姿勢です。

 ただ、今のような状況の中で研究者がそれぞれに自分の考えを主張するということが本当にいいことかどうかは、倫理的な問題だと思います。そのために被災者の方たちが大変不安になって、必要以上に生活を制限したり、親子が別れてしまうとか、放射線の影響を避けるために放射線のリスク以上のリスクを負ってしまっている、というようなことが起こっています。科学者が自分の考えをそれぞれにもっていることは当たり前ですが、社会への影響まで考えて表明すべきかもしれません。

60キロの体重の人で7000ベクレルくらい放射能を持っている

── 放射能を理由に被災地の瓦礫が受け入れられにくい状況ですが、放射線のリスクはどのように考えたらよいでしょうか。
 
佐々木 自然界の中には放射性物質があって、地球ができて以来、人類はずっとその自然の放射線の中で生きてきました。例えば、ヒトの体の中にもカリウム40という放射性物質があります。それらを含めて、60キロの体重の人で7000ベクレルくらいの放射能を体内に持っていると言われています。年間にすると約0.3ミリシーベルトくらいの放射線を常に受けていることになります。

体内、食物中の放射性物質
体内、食物中の放射性物質

(原子力・エネルギー図面集2012より)

 これは自然の放射能ですから、制御することはできません。どうしようもないものです。それらを制御する、あるいは防護するということは、ICRPは考えていません。あくまでも、人工的な制御できる放射性物質からの被ばくは「できるだけ少なくしましょう」という考え方です。

 そのような人工的な被ばくは少ないに越したことはないのですが、そのときに「合理的に達成可能な限りできるだけ低くしましょう」というALARA(As low as reasonably achievable)という考え方に基づいて最適化ということをやっているのです。

 今のICRPの勧告は、この最適化を非常に重視しています。できるだけ被ばくは少ないほうがいいけれども、だからといって、わずかな被ばくを避けるために膨大な労力をかけたり費用をかける、あるいはそれによって社会や人々に悪い影響を及ぼすことがあってはなりません。そこはバランスの問題なのです。

 被災地の瓦礫を県外で処理することは、被災地の復興のために極めて大事なことです。本来はお互いに助け合って受け入れる、そのような気持ちを日本人はみんな持っていると思いますが、わずかな放射線のリスクを恐れるあまりにそれを拒否する、というような現象は極めて残念なことだと思います。

 放射線のリスク、特に低線量放射線によるリスクは発がんのリスクですが、発がんの要因は、わかっていないものも含めて、たくさんあります。その中で放射線によるリスクは、発がん要因の中で非常に小さいものです。そういうことも十分認識していただけたらと思います。
 被災地の方々を早く元気にし、復興を進めることのほうがはるかに日本の国にとっても、また被災地の方々のためにも大事なことだと思います。
 (2012年3月8日)

Copyright(c) 2011 日本原子力文化振興財団

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酒井 一夫 (独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長

Press Briefing "Health Risk after Fukushima Daiichi NPP Accident"



公開日: 2013/02/17
公益財団法人フォーリン・プレスセンター
Foreign Press Center/Japan
http://fpcj.jp/

プレス・ブリーフィング:「福島原発事故の健康への影響」(2013年2月15日)
酒井 一夫 (独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長

Press Briefing:"Health Risk after Fukushima Daiichi NPP Accident" (February 15, 2013)
Briefer: Dr. Kazuo Sakai, Director, Research Center for Radiation Protection, National Institute of Radiological Sciences

詳細はこちら↓
http://fpcj.jp/modules/news3/?opt=2&a...

For more information↓
http://fpcj.jp/modules/news3/?opt=2&a...
 
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公立学校共済組合関東中央病院病院長 東京大学名誉教授 前川 和彦

http://www.remnet.jp/newsletter/15/page3.html



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長瀧重信氏(長崎大学名誉教授)~文科省が専門家にヒアリング(2)



アップロード日: 2011/05/31
2011年5月31日
「福島県内の学校生活に関し、文科省が専門家ヒアリング」

●発言
長瀧重信 氏(長崎大学名誉教授(元財団法人放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療協会名誉会­長)

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文部科学省は、5月31日、福島県内で高い放射線量が計測された学校に通う子どもたち­の学校生活に関して、専門家からのヒアリングを行った。これから始まるプールを中止す­べきかどうかなど、被ばくと心身の発達の両面から議論がおこなわれた。文科省が、震災­後、子どもの学校生活に関してヒアリングをしたのは今回が初めてで、メディア関係者の­取材のみで、一般市民には公開されなかった。
 
今回、ヒヤリングを行ったのは、長瀧 重信氏(長崎大学名誉教授(元財団法人放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療協会名­誉会長)、衞藤 隆氏(社会福祉法人恩賜財団母子愛育会日本子ども家庭総合研究所副所長兼母子保健研究­部長)、田中 英高氏(日本小児心身医学会理事長)、友添 秀則氏(早稲田大学スポーツ科学学術院教授)の4名。文科省からは、鈴木寛副大臣らが­出席した。

詳細な記事はこちら。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1080
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制作:OurPlanet-TV
http://www.ourplanet-tv.org/

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長瀧重信

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%95%B7%E7%80%A7%E9%87%8D%E4%BF%A1

東京都生まれ。東京大学医学部卒業後、内科に入局しハーバード大学医学部に留学。東京大学附属病院外来診療所医長、1980年長崎大学医学部教授(内科学第一教室)、学部長、放射線影響研究所(広島・長崎)理事長などを歴任。長崎大学名誉教授、国際被ばく医療協会名誉会長。
長崎大学時代に被爆者の治療や調査にあたっており、チェルノブイリ原発事故がもたらした健康被害の調査活動や東海村JCO臨界事故現場周辺住民の健康管理にかかわった[1][2]

最終更新 2011年9月14日 (水) 23:45

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http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g3.html

チェルノブイリ事故との比較

平成23年4月15日

チェルノブイリ事故の健康に対する影響は、20年目にWHO, IAEAなど8つの国際機関と被害を受けた3共和国が合同で発表(注1)し、25年目の今年は国連科学委員会がまとめを発表(注2)した。これらの国際機関の発表と東電福島原発事故を比較する。

原発内で被ばくした方
*チェルノブイリでは、134名の急性放射線障害が確認され、3週間以内に28名が亡くなっている。その後現在までに19名が亡くなっているが、放射線被ばくとの関係は認められない。
*福島では、原発作業者に急性放射線障害はゼロ(注3)

事故後、清掃作業に従事した方
*チェルノブイリでは、24万人の被ばく線量は平均100ミリシーベルトで、健康に影響はなかった。
*福島では、この部分はまだ該当者なし。

周辺住民
*チェルノブイリでは、高線量汚染地の27万人は50ミリシーベルト以上、低線量汚染地の500万人は10~20ミリシーベルトの被ばく線量と計算されているが、健康には影響は認められない。例外は小児の甲状腺がんで、汚染された牛乳を無制限に飲用した子供の中で6000人が手術を受け、現在までに15名が亡くなっている。福島の牛乳に関しては、暫定基準300(乳児は100)ベクレル/キログラムを守って、100ベクレル/キログラムを超える牛乳は流通していないので、問題ない。

*福島の周辺住民の現在の被ばく線量は、20ミリシーベルト以下になっているので、放射線の影響は起こらない。

一般論としてIAEAは、「レベル7の放射能漏出があると、広範囲で確率的影響(発がん)のリスクが高まり、確定的影響(身体的障害)も起こり得る」としているが、各論を具体的に検証してみると、上記の通りで福島とチェルノブイリの差異は明らかである。


長瀧 重信 長崎大学名誉教授
(元(財)放射線影響研究所理事長、国際被ばく医療協会名誉会長)

佐々木 康人 (社)日本アイソトープ協会 常務理事

(前(独) 放射線医学総合研究所 理事長、前国際放射線防護委員会(ICRP)主委員会委員)


原典は以下の通り。
[注1]. Health effect of the Chernobyl accident : an overview Fact sheet303 April 2006 (2006年公表)
http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs303/en/index.html

[注2]. United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation, SOURCES AND EFFECTS OF IONIZING RADIATION UNSCEAR 2008 Report: Sources, Report to the General Assembly Scientific Annexes VOLUMEⅡ Scientific Annex D HEALTH EFFECTS DUE TO RADIATION FROM THE CHERNOBYL ACCIDENT Ⅶ. GENERAL CONCLUSIONS (2008年原題/2011年公表) P64~
http://www.unscear.org/docs/reports/2008/11-80076_Report_2008_Annex_D.pdf

[注3]. (独)放射線医学総合研究所プレスリリース「3月24日に被ばくした作業員が経過観察で放医研を受診」2011.4.11
http://www.nirs.go.jp/data/pdf/110411.pdf

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福島における「内部被ばく」の現況について~最近の調査から~

 放射線による被ばくには、大きく分けて「外部被ばく」と「内部被ばく」があります。このうち、福島での原発事故後に放出された放射性物質(特に放射性セシウムと放射性ヨウ素)による「内部被ばく」については、事故後2年を経過した現在、ほとんど無くなっていることが最近の調査から明らかとなりました。ここではその調査に基づいて、現況をさらに詳しくご報告したいと思います。

■放射性物質の種類 原発事故により、大気中に特に大量に放出された放射性物質は、セシウム134、セシウム137とヨウ素131でした。まずヨウ素131については、事故後初期の放出による甲状腺被ばくが心配されましたが、その線量は「甲状腺がんが増える可能性がある」とされている数値を下回り、健康上問題となるものではないことが放射線医学総合研究所によって試算されています(1)。また、ヨウ素131の半減期(放射能が半分に減少する時間)は8日ですので、事故後2年あまりを経過した現在は、すでに環境中からは消失しています。一方、セシウム134とセシウム137の半減期は、それぞれ2年と30年です。つまり、今でもこれらが含まれている食品を食べると内部被ばくの原因となってしまうので、引き続き注意を払う必要があります。

■内部被ばくの調査 福島県の方々の体内セシウム量、言い換えれば「内部被ばくの程度」を測定するため、ホールボディカウンターという特殊な装置(2)を使った調査が、現在までに何度か行われています。その結果、いずれの調査報告でも、住民の方々の体内セシウム量は検出できないか、あるいは極めて低い濃度であることが明らかとなりました(3 , 4)。 特に、子どもたちへの健康影響が心配される中、福島県三春町の小中学校生の在校生のうち95%(1,383人)の体内セシウム量を測定したところ、全員が検出限界(検出できる最下限の量)以下でした。 こうした調査結果から、放射性セシウムの内部被ばくによる健康影響、発がんの増加は無いと考えられます。

■内部被ばくを防ぐための食品規制 内部被ばくは、食品中に含まれている放射性物質を摂取するか、あるいは大気中の放射性物質を吸入することによって起こります。前述の通り、原発事故から2年あまりが経過した現在、大気中の放射性物質はもう検出されません。あとは、食品からの摂取に注意を払う必要があります。そのため、市販されているさまざまな食品は、引き続き厳しく規制されています。.

■福島産の米の規制 ここでは食品の中でも特に、福島の代表的な作物の一つでもあり、多くの方が日常的に食べている米の規制についてご説明します。 平成24年8月から、福島県産の米はすべて、放射性セシウムの量を測る検査に回されています。新しく開発された装置を使って、1千万袋(1袋は30kg)以上もの量を、1袋わずか5秒のペースで効率よく検査しています(5)。 その検査で、規制値(1kgあたり100ベクレル)を下回ったもののみ出荷され、規制値を超える米は一切市場に流通していません。なお、規制値を超え、市場に出荷されなかった米は、1千万袋のうち71袋(0.0007%)でした(6)。

■陰膳方式による検査 また、別の検査として、食べる分のほかにもうひとつ余分に同じ食事を作ってもらい、食事中に含まれる放射線量を測定する「陰膳方式」)という手法があります。この手法で、福島県を含め全国100の家庭で検査を行ったところ、放射性セシウムは、93の家庭ではまったく検出されませんでした(7)。残りの7家庭では、1キログラムあたりの値が、セシウム137は最高2.4ベクレル、セシウム134は最高1.3ベクレル検出されましたが、ともに健康に影響のない極めて少ない量でした。 このように、体内のセシウム量を測定するいわば「出口のチェック」と、食事中に含まれるセシウム量を測定する「入口のチェック」というふたつの調査が行われていますが、いずれの結果を見ても、厳しい規制値を下回っている市販の食品を食べている限り、セシウムによる内部被ばくは心配しなくてよいと言えます。

■市販ルート以外の食品の場合 ごくわずかながら、上記のホールボディカウンターを用いる「出口のチェック」で、体内セシウムの濃度が他の方よりは高い方々がいらっしゃいます。その方々が食べていたのは、市場に出回っていない、つまり、自分で採取したり狩りをしたり釣ったりした未検査のきのこ、いのししの肉(セシウムは肉に集まる性質があります)、川魚だったようで、これらの食品からは規制値を超える放射能が検出されています。 しかしこのケースでも、健康に影響が及ぶような数値は検出されていません。また、そのように体内セシウムの濃度が高くなってしまった場合でも、セシウムを含む食事を食べずにいれば、徐々に体外に排出され、体内セシウム量は低くなっていきます。その半減期は、子どもで約10日、成人で約100日と、子どもの方がより速やかに体内から排出されるとされています(8)。

■おわりに なお補足ですが、実は自然界には、放射性物質がたくさんあります。中でもカリウム40はすべての食品に含まれており、当然、人の体内からも検出されます。カリウム40の半減期は13億年で、カリウム40による内部被ばくは、年間0.19ミリシーベルト(2)。私たち人間を含めすべての動植物は、実は普段から、ほんのわずかではありますが、内部被ばくしながら生きているとも言えるのです。 大切なことは、上記のような福島や福島産品の現況を正しく理解すること。その上で、美味しい食事を、楽しみながら、ゆっくり食べるのが、健康によいことでしょう。

遠藤 啓吾
京都医療科学大学 学長
群馬大学名誉教授
元(社)日本医学放射線学会理事長

<参考資料>

(1) 平成24年度原子力災害影響調査等事業(事故初期のヨウ素等短半減期による内部被ばくの線量評価調査) (最終報告書は未公表ですが、概要は福島県の県民健康管理調査第10回検討委員会資料2に公表されています。 
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=24809

(2)第10回コメント「内部被ばくとホールボディカウンター」 http://www.kantei.go.jp/saigai/senmonka_g10.html

(3)Hayano RS et al “Internal radiocesium contamination of adults and children in Fukushima 7 to 20 months after the Fukushima NPP accident as measured by extensive whole-body-counter surveys” Proceedings of the Japan Academy Series B 89 (2013) 157-163 https://www.jstage.jst.go.jp/article/pjab/89/4/89_PJA8904B-01/_article

(4)福島県住民ホールボディカウンタ測定の線量評価の方針について(福島県保健福祉部, 独立行政法人放射線医学総合研究所, 独立行政法人日本原子力研究開発機構) http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=26104

(5)米の全量全袋検査(福島県) http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=31330

(6)ふくしまの恵み安全対策協議会 https://fukumegu.org/ok/kome/

(7)実際の食事に含まれる放射性物質測定調査結果(コープふくしま) http://www.fukushima.coop/kagezen/2012.html http://www.fukushima.coop/kagezen/2012_02.html

(8)体内残留率・排泄率のモデル予想値(独立行政法人放射線医学総合研究所) http://www.nirs.go.jp/db/anzendb/RPD/gpmdj.php

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