2014年12月7日日曜日

The Sahara Solar Breeder Project : 21世紀のアポロ計画 - サハラソーラーブリーダー計画

21世紀のアポロ計画 - サハラソーラーブリーダー計画が始動 : DigInfo



2010/10/21 にアップロード

DigInfo - http://jp.diginfo.tv
 

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The Sahara Solar Breeder Project : DigInfo



2010/11/23 にアップロード
DigInfo TV - http://diginfo.tv
 

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http://www.jsap.or.jp/activities/award/outstanding/prizewinner2013-2.pdf

第14 回応用物理学会業績賞(研究業績)候補者と推薦理由
件名:酸化物薄膜材料に関する先駆的研究
受賞者:鯉沼秀臣   所属:東京大学

以下抜粋

鯉沼秀臣氏は,真空機器を用いた酸化物薄膜の合成技術としてコンビナトリアル手法を確立し,それまでバルクの物質が主流であった酸化物材料のナノ薄膜化と集積化を実現した点に独創性・先駆性がある.これにより,
酸化物新電子機能の発見とデバイスへの応用が大きく開け,「酸化物エレクトロニクス」という大きな潮流の創造と発展に貢献した.
鯉沼氏は,有機化学合成手法であるコンビナトリアル・ケミストリーの概念を,真空プロセスによる薄膜合成に応用し,高速で効率的な材料開発の手法として確立した.
マスクを用いたり,基板温度に傾斜をかけるなどの,成膜プロセスに整合した技術は,従来の化学合成の概念を超えた新概念の提唱といえる.
この技術を用いて,成膜条件を短期間で決定することに成功し,世界に先駆けた酸化物高温超伝導体の薄膜合成や,透明磁性体の発見,透明導電性薄膜の作製等を行った.組成や反応条件をデザインし,ナノ構造を制御した機能性酸化物薄膜を一括合成することで,国際的にインパクトのある論文を数多く発表した.コンビナトリアル技術は,多元系の酸化物材料を網羅的に探索する際,成膜パラメーターを系統的に制御することによって最適な条件を短時間で見出す技術として,今日広く知られている.
鯉沼氏は,この手法を提唱することで,応用物理学会における酸化物エレクトロニクスという新しい分野の創出と発展に大きな貢献をした.
現在,誘電体,メモリ材料,LED,太陽電池などに用いられる様々な薄膜材料の探索研究や産業応用に,本技術の適用が拡大しており,今後も酸化物以外の材料合成も含め,幅広い分野への応用展開が期待できる.鯉沼氏は2007 年に自らベンチャー企業を設立し,産業界との連携や技術移転にも積極的に取り組んでいる.
鯉沼氏は数多くのプロジェクトを推進するリーダーとして学生や共同研究者を指導し,これらの研究成果に結び付けた.その若手研究者が現在,世界的に活躍する人材となっていることも,候補者の学界レベルでの貢献度の広さ・高さを示している.
以上のように鯉沼氏は,酸化物薄膜材料を系統的に研究開発する手法として,コンビナトリアル技術を世界に先駆けて提唱・実践し,酸化物エレクトロニクスという新しい分野の創出と発展に多大な貢献をした.酸化物薄膜材料は,広範な機能を有する材料群であり,基礎科学のみならず,今日の様々な産業への応用が進展していることから,将来的な展開にも期待がもたれる.本技術を用いることにより,世界的な発見も多数なされており,これらの成果をもたらした数々の研究プロジェクトの推進と,若手研究者の指導育成という総合的観点からも,鯉沼氏が応用物理学会に果たした貢献は極めて大きく,応用物理学会業績賞(研究業績)として真にふさわしいものである.




鯉沼秀臣氏(こいぬま・ひでおみ) 略歴
1941 年東京生まれ
1970 年東京大学工学系大学院博士課程修了(工博)
カンサス大学化学科博士研究員
1972 年東京大学工学部助手
1987 年東京工業大学工業材料(現応用セラミックス)研究所教授
1995 年ヘルシンキ工科大学客員教授
2000 年無機材質研究所客員研究官「コンビナトリアル材料科学」PJ 代表
2002 年東京工業大学応用セラミックス研究所所長
2005 年独立行政法人物質・材料研究機構理事
東京大学・新領域創成科学研究科客員教授
2006 年東北大学・未来科学産学共同研究センター客員教授
2007 年株式会社・コメット創立,取締役会長
2008 年韓国釜山国立大学World Class University教授
2011年SATREPS:サハラソーラーブリーダーPJ 代表
2012年筑波大学北アフリカ研究センター客員教授

応用物理学会フェロー,APAMフェロー,日本化学会,高分子
学会,セラミックス協会,MRS 会員,日本学術会議連携会員,
パキスタン半導体学会名誉会員,インド材料学会名誉会員.
800 編の原著論文,200 編の総説・解説論文,40 編の共著
書,150 件の国際会議招待・基調講演,80 件の国内外特許取
得.「酸化物結晶表面の原子レベル平坦化と分子層エピタキ
シー」研究に対し日本化学会賞,日本セラミックス協会学術賞.
「コンビナトリアル固体化学システム開発と工業化」に対し井上春
成賞(JST),向井賞.「透明磁性酸化物の発見とスピントロニク
ス」に対しThomson Research Front Award,文部科学大臣賞
(研究部門)受賞.開拓した3 研究分野(Oxide Electronics,
Combinatorial Material Science & Technology, Asia-Arab
Sustainable Energy Forum)の国際会議創設


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Sahara Sand vs. Solar Energy: How to Keep Panels Clean - Hi-Tech



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Desertec - Power for Europe from Africa | Made in Germany
 
 

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Saharan Solar Project to Power Europe



2014/11/05 に公開

A solar energy project in the Tunisian Sahara aims to generate enough clean energy by 2018 to power two million European homes. Full Story: Called the TuNur .

The TuNur project aims to generate clean energy from a giant solar plant in the Tunisian Sahara from where it will be connected to the European electricity g.

DigInfo TV - 27/7/2010 The University of Tokyo, Hirosaki University, NIMS, Tokyo Institute of Technology, Chubu University, National Instit.

The idea of tapping into the power of the sun over the Sahara desert and using it to provide Europe with energy is a brilliant one. Now 20 large German compa.


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Solar Power Plant in Africa to Supply Europe



2014/10/28 に公開

By 2018, a large solar power plant in the Tunisian part of the Sahara desert may start sending power to energy-hungry Western Europe. The company running the plant says once it is fully operational it will generate almost twice as much electricity as an average nuclear plant and supply two million homes in Europe. VOA’s George Putic reports.
Originally published at - http://www.voanews.com/media/video/25...
 

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Sahara solar plan takes big step



2009/07/13 にアップロード

A group of companies kickstart an ambitious solar power project, the Desertec Industrial Initiative, which aims to harvest the sun's Sahara Desert rays.


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http://www.good.is/posts/sahara-solar-breeder-project-aims-to-power-half-the-world-by-2050
 
The Sahara Desert has two things in abundance: sun and sand. What if those could both be used symbiotically to eventually provide half the world's energy? Talk about huge ideas. A team of scientists from the University of Tokyo are teaming up with Algerian universities on this "Sahara Solar Breeder Project."
Here's the plan: Build manufacturing plants around the Sahara Desert that will extract the silica from the plentiful sand, and use it to make photovoltaic solar panels. The first solar panels, in turn, will be used to build some initial solar power plants, the energy from which will be used to power more silicon manufacturing plants—or to "breed" more solar power plants—which will provide more clean energy to manufacture more PV panels, which can power more silicon plants, and on and on and on. Until, eventually, there are enough solar power plants in the Sahara to churn out enough photovoltaic panels to provide half the world's electricity needs by 2050.

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参考:
1キロワット      1KW=1,000W
1メガワット   1MW=1,000KW=1,000,000W
1ギガワット  1GW=1,000MW=1,000,000KW=1,000,000,000W
1テラワット   1TW=1,000GW=1,000,000MW=1,000,000,000KW=1,000,000,000,000W


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http://www.ssb-foundation.com/j-index.html


 

鯉沼秀臣

学術の動向 2010年1月号


サハラソーラーブリーダー計画
  
―地球エネルギー新体系に向けた科学技術課題と国際貢献―

1、はじめに
 経済強国としての地位を確立した日本の外交は、東南アジアへの経済支援を中心に展開してきたが、BRICs、 特に中国、インドの急速な経済力、科学技術力の向上とともに、アジアにおける日本の影響力は急速に低下している。もの作りを基盤とする産業競争力には、原 料・エネルギー資源確保の外交戦略が基本的に重要である。部族間対立や教育水準、貧困等の問題を抱えるアフリカ諸国は、192の国連加盟国のうち53を占める最大勢力で、豊かな鉱物・エネルギー資源を有する国も多い。中東から北アフリカにかけたイスラム圏(MENA)は、世界経済における影響力を高め日本の技術に対する信頼も高い点でも[1]、日本の科学技術力を外交活用し、地球エネルギー・環境問題に貢献するパートナーとして注目される。
 40年を超える物質・材料研究の中での個人的国際体験(アメリカ留学(1970-72),短期の客員研究(ポーランド、フィンランド)、博士学位取得20名を含む外国人留学生・ポスドクの教育・研究、パキスタン工科大学の設計と設立支援(2006-2008)、韓国釜山大学でのWorld Class University協力(2009-)など)は、科学技術外交を論じるには不十分ではあるが、学術会議を通して世界に発信した「グローバルクリーンエネルギースーパーハイウェイに向けたサハラソーラーブリーダー(SSB)計画」を中心に、具体的な科学技術外交に向けた最近の提案と動きを紹介したい。
 
2、科学研究費と科学技術力
基礎、応用を問わず一般に、科学技術の高度化とともに研究開発には巨額の資金が必要となる。ものづくりや産業につながる応用研究では、試料作りや評価装 置の大型化、高度のスキルを有する人材確保、他の研究機関や外国との競争に勝つために、開発資金の量ばかりでなく投入のタイミングを図る戦略も重要にな る。短期的な成果を求める独創性の低い最先端研究ほどその傾向は強い。では、豊富な研究資金を背景に世界の科学技術研究開発をリードしてきたアメリカは、 いつまでもそのリードを保つことができるのだろうか?世界第2の経済大国に成長し、EUに匹敵していても足りないといわれる日本の研究費は、多ければ科学技術力や経済力を維持できるのであろうか?
科学技術の成果は研究費の多寡に依存することは確かであるが、問題は分析のし易い資金の出所(誰が出したか)だけでなく、どこに行ったか(誰が使った か)にある。短期の研究成果は出資者のものであっても、未来の成果を作るのは先端技術を身につけた研究者であろう。今、世界で一番多額の研究費を出してい るのは勿論アメリカであるが、使っているのは誰なのか?答えは既に明白であるが、高度成長を支えた日本の産業、経済の発展に、科学技術外交の成功例を見た 国々といえよう。未だ貧しかった戦後の日本の研究者の多 くは欧米に留学し、当時の最先端の研究設備に触れ、技術を身につけて帰国し、科学技術の復権と経済成長に貢献した。世界各国から多くの留学生を受け入れた アメリカでは、日本人は99%帰国するのに対して、他のアジア諸国の人は研究者として成功しても99% 帰国せずアメリカ残留を希望すると言われた。急速な経済成長期に到達した韓国、台湾に始まり、今や先端技術を体得した研究者の本国回帰の波は中国、インド に及び世界の科学技術マップを塗り替える勢いにある。日本でも最先端研究を支える大学院博士課程の学生とポスドクの半分は外国人(主にアジア系)で、欧米 と同様な状況にある。欧米に出かけて研究費を使い知識や技術を身につける日本の若者が少なくなっているばかりでなく、日本の研究費も使っているのは主に外 国人であるという現状を認識する必要がある。国際化という甘い言葉は、数だけでない多くの問題を抱えている。これまでの状況を分析し、特定の国に偏らず、 バランスの良い今後の戦略を設定することが日本の科学技術外交の第1のキーポイントであろう。ヒントのひとつは、アメリカ、中韓にない日本の利点(?)、すなわち兵役に使わない時間と税金を如何に、科学技術創造立国を担う若手人材教育に活用するかであろう。
研究費と人に関わる上記の課題に加えて、さらに大きな科学技術外交課題として顕在化してきたのが地球環境・エネルギー問題である。先進国、発展途上国を問わず、人類が自ら種を蒔いた地球環境の維持にかかわる共通の、かつ日本の貢献が期待される課題である。1997年の京都議定書に続き、200912月にコペンハーゲンで開催されるCOP-15で、どのような合意が得られるか不明であるが、G8+5ヶ国の学術会議は3月にローマに集まり、「低炭素化社会への新エネルギー技術」テーマについて討議し、7月のイタリアサミットとCOP-15に向けた声明を発した。このローマ会議で日本学術会議は、数値の議論を超える具体的な提案「グローバルクリーンエネルギースーパーハイウェイに向けたサハラソーラーブリーダー計画」を提案した「23」。夢物語のようなこの構想の背景、科学技術的可能性と国際連携による実現を目指す外交戦略について考える。

3、エネルギー・環境問題とG8+5 学術会議
地球上のエネルギー資源は、大きく3種類に分類できる。①地球の誕生以来内蔵されてきた地熱や核燃料、②40億年の地球の歴史の中で太陽エネルギーを蓄積・濃縮した化石燃料、③太陽光をリアルタイムまたは数十年以下の短期サイクルで利用する再生可能な自然エネルギーである。何億年かけて蓄積してきた②の化石燃料を、人類は100年のスケールで大量消費し、大気中CO2濃 度の上昇と地球温暖化をもたらしたばかりでなく、ジェット燃料や化学品の原料など未来社会においても欠くことのできないエネルギー、材料資源の枯渇も予見 される事態を招いている。人類という種は、自らの手で老齢化を加速し、老衰を迎えようしているのかもしれない。問題は、エネルギーの形態多様性、質や量、 コスト、に加えて、時間(変化に対処するタイムラグが大きい)と政策因子(エネルギー技術が自立的発展するには1%の臨界シェアがあり、そこに至るまでの 政策支援を必要とする)に関する十分な考察力、先見性、戦略設計が重要である[4]。ことが露見してからあわてても遅いのである。
地球全体、人類の生存にかかわる問題の顕在化に対して、国連やG8(米、英、仏、独、日、伊、加、露)を中心とする政府首脳が国際問題を議論するサミットの場での議論が始まり、1997には京都議定書でCO2削減目標が設定された。学術界も、2005年からG8に中、印、伯、墨、南アなどを加えた諸国の学術会議代表が、サミット開催の数ヶ月前に開催国に集まって各年2件の重要テーマを取り上げて議論し、サミット向け声明をまとめる作業を始めている。5年間のテーマを表1に示す。持続的エネルギーと気候変動問題はコンスタントに取り上げられ、地球の未来に関する国際的最重要課題としての認識を反映している。2008年7月の洞爺湖サミットでは、G8+5(中、印、伯、南ア、墨)が「気候変化:適応策と低炭素社会への転換」について、2009年のイタリアサミットには、エジプトをオブザーバーに加えた3月末のローマ会議で、「エネルギーのための新技術」テーマについて議論し声明をまとめた[5]。



今回を含め、これまでの会議の議論と提言の主体がCO2削減や平均気温の抑制に関する概論(数値目標設定)に留まっている背景のもと、日本学術 会議は具体的な対策案として、「サハラソーラーブリーダー計画」を提案した[2,3]。世界最大のサハラ砂漠を新エネルギー資源として活用し、地球エネル ギー新体系構築の起点とする構想の概念を図1に示す。構想の実現にはアフリカ諸国との連携が不可欠であり、その過程で科学技術人材育成にも貢献できる




化石燃料からのCO2発生と資源枯渇を同時に解決し、開発途上国の生活向上に必須のエネルギー需要増大にも応えるカギは、太陽―地球―宇宙空間を結ぶ自然 エネルギーの定常的な流れへの回帰である。不毛の砂漠は太陽光にあふれ、それを電気エネルギーに効率よく変換する太陽電池をつくる半導体シリコンの原料 (珪砂や珪石)も無尽蔵に供給することができる。砂漠とその周辺に太陽光発電所を設置し、その電力でSiおよびSi太陽電池を増殖し、砂漠の4%をカバー すれば人類が現在使っている全エネルギーを賄い、自然エネルギー資源の宝庫に転化することができる[6]。しかし、太陽光発電は燃料不要で自然界のエネル ギーバランスを崩さない利点の一方で、時間、天候、地域による変動という弱点を有し、ローカル電源としての利用にはエネルギー貯蔵、平準化装置の併設が必 要である。電気抵抗ゼロの高温超伝導(HTSC)線材の長尺化技術の最近の進歩は、銅線による従来の高圧送電よりもはるかに低損失の1,000kmスケー ル直流送電技術の実用化を視野に入れてきている。
 
 太陽光発電(PV)とHTSC送電の組み合わせによる電力貯蔵・平準化を不要化する地球新エネルギーネットワークのコンセプトは、1989年の桑野によるGENESIS(Global Energy Network Equipped with Solar cells and International Superconducting grid)提案に始まるが[7]、30年の時を経て、日本の先進技術による実用化が見え始めてきたといえよう。

 1960年代の新幹線、化学工業の公害防止、最近のハイブリッドカーなど、課題先進国[8]としての我が国が取り組むべき夢の地球エネルギー新体系技術と考える。

3, サハラソーラーブリーダー(SSB)計画の技術課題と開発体制

 PV の普及が進行し、 HTSCケーブル技術の可能性が高まってきたとは言え、わが国が真に21世紀の地球環境・エネルギー問題に貢献できる巨大計画:SSB(ソーラーシリコン 工場/Si太陽光発電所の増殖的建設+グローバル超伝導直流送電)に至る道は遠く長い。初期の5年で達成すべき具体的な目標を以下に設定するが、同時に 2050年を想定したSSB計画達成目標に向かっての地図を作り、到達するための道具を揃え戦略を設定する必要がある。未開発の資源と人的・経済的発展性 を有する北アフリカをパートナーとし、洗い出した要素技術を検証して出発点の明確化と計画のグランドデザインを作る。

初期計画案

1)サハラをはじめとする不毛の砂漠資源であったシリカ(SiO2)を原料とするソーラーSi(純度~6N)の直接的あるいは間接的還元によるプロトタイプ技術開発と、低コスト増殖的生産のテストプラント作製

2)砂漠における各種太陽電池の性能(効率、耐久性)の定量的データ取得とソーラーブリーダー用太陽電池の選択、各種太陽電池の課題と対策の提示

3)砂漠地帯の太陽電池活用法(海水淡水化、砂漠の緑化など)の検証と実用化提言

4)エネルギーの長距離・低損失輸送手段としての高温超伝導ケーブルシステム運用に関する問題点の摘出と対策の提示

5)アフリカのエネルギー工学教育拠点の形成(アルジェリア、チュニジアとの交渉開始)
  この初期計画のうち、真に世界のエネルギー問題に貢献できる年産100GW以上の太陽電池生産を実現するには、特に1)の砂漠の砂から高純度Siの製造と 4)高温超伝導直流長距離送電システムの研究が重要である。太陽電池は色々な半導体材料から、200μm程度の厚みを有する結晶状やガラス等の基板上薄膜 (<1μm)として作られるが、100GWの年産を達成できる半導体は、地殻のもっとも豊富な資源であるシリカから作られるSiに限られる[4]。図2に 低コストのソーラーグレードSi製造技術のキーポイントを示す。基礎から始まるこの分野での国際的開発競争が密かに進行中であり、現行技術の問題点を分析 し革新的技術を早急に開発することが望まれる[9]。超伝導線材は現時点で住友電工のBi系(Tc~100K)が世界をリードし[10]、中部大学がユ ニークなシステム研究をリードしている[11]。日本の技術優位性を生かした実用化に向け、長距離送電の基礎データが得られる1km級のテスト施設建設を 急ぎたい。SSBの起点となるアフリカでの研究開始拠点のモデルを図4に示す。










 
4、SSB:新アポロ計画への国際戦略
 
砂漠のソーラーパワーを活用する新エネルギープロジェクトとしては、既にIEA-PVPS分科会の”Energy from the desert”[6], “Mediterranian Solar Power (MSP)“ [12], “Desertec” [13] などがEUを中心に計画されている。我々が提案しているSSBとは以下の相違点がある。
 
① SSB以外は、既存のPV(太陽電池)やCSP(集光型太陽熱発電)と高圧直流送電の組み合わせが中心で、革新的研究開発要素は少ない
 
② SSBの珪砂からソーラーシリコンを作る部分は、過去にいくつかの類似研究例はあるが(シーメンス社、日本板硝子・川崎製鉄社など)、未開発の基礎研究か らスタートすべき挑戦的研究であり、HTSCによる送電についても交流送電の研究例はあるが直流送電システムの開発は中部大での要素研究が始まった段階
 
③基礎研究段階からスタートするSSBでは、初期の研究からアフリカ諸国と連携することによる科学技術教育と人材育成も重視
 
④ SSBの成果は世界の他の砂漠(ゴビ、アタカマ[14]、タクラマカン、など)に共通に適用でき、GENESISの夢の実現につながる。
 
明確な目標を掲げ、達成 時期を決めた遠大な科学技術計画としてアメリカのアポロ計画があった。2050年に人類の使うエネルギーの50%をPVにより変換したる電気エネルギーで 賄い、高温超伝導直流送電で世界に供給するSSBは、日本発の技術でエネルギー・環境問題を解決し、世界のエネルギー問題、アフリカの科学技術力の向上に 貢献する夢がある。アポロ計画に対比したSSB計画の概要を表2に示す。
 
 
 
5、今後に向けて
 
 SSB 計画の素案はアルジェリア[15]、チュニジア[16]等の国際会議で提示し、現地の研究者、政策関係者は大きな興味を示し、連携の意思を表明している。 50兆円の資金を集めビジネス展開を始めていると伝えられるDesertec関係者からも、これまでの太陽熱発電以外にPV利用の基礎研究も考えていて連 携したいとのアプローチがあり、SSBに関する世界の関心も高まってきている。一方、日本の科学技術力を伸ばすとともに外交的にもインパクトの高いと信じ るSSB計画は、未だ実質的な資金はなく研究開発がスタートできない状況にある。多くの趣旨賛同者、待機中の研究者に感謝するとともに、早急な行動開始に 向けた関係各機関のご支援をお願いしたい。
 
  中国、インド、韓国に比べると少数とはいえ、海外に定住して研究教育や現地の生活改善に努力している人達がいる。国内にもパキスタン工科大学の設立につい て、2006年当時のパキスタン高等教育相で、世界的に著名な天然有機化学者であるDr. Atta-ur-Rahmanとの個人的つながりで献身的な努力をされた故名取靖郎徳島大名誉教授のような方々もいる[17]。世間に名を知られることは なくても地道な活動を続けている現場の人達に接し、声に耳を傾けることが科学技術外交の最大のキーポイントではないだろうか?
 
参考文献
[1] 北村陽慈郎(2009):「イスラムマネーの奔流」、講談社
[2] H. Koinuma, I. Kanazawa, H. Karaki, K. Kitazawa (2009): “Sahara solar breeder plan directed towards global clean energy superhighway”: G8+5 academies’ meeting (Rome, Mar. 26-27, 2009);
[3] 鯉沼秀臣(2009):「サハラソーラーブリーダー計画―太陽電池と高温超伝導によるグローバルエネルギーイノベーション」、化学と工業、Vol. 62-8, 905-906
[4] 鯉沼秀臣 (2009):「太陽光発電は真に地球環境・エネルギー問題を解決できるか」、現代化学、2009年3月号、pp. 20-25
[6] K. Kurokawa ed.(2009), “Energy from the desert III”, IEA-PVPS Task-8 Report, James & James Ltd. UK
[7] Y.Kuwano (1989):”GENESIS: Global E#nergy Network Equipped with Solar cells and International Superconductor grids”, Proc.4th.Int.Photovol.Science and Engineering Conf. @Sydney ; エコノミスト別刷、1989, 8/15,22合併号
[8] 小宮山宏 (2007):「課題先進国」日本、中央公論社
[9] 鯉沼秀臣、新倉ちさと、角谷正友、野田武司、竹内正之、川喜多仁 (2008):NIMS NOW, Vol.8, No.11. pp. 2-6; H. Koinuma, M. Sumiya, N. Matsuki, T. Ishigaki, K. Endo, T. Hashimoto, 14th APAM Conf.,pp.28-29 (2008)
[10] 佐藤謙一(2008):「自然エネルギー時代の切り札-磁気と電気の未来-」、ケミカルエンジニアリング、Vol. 53, No.1, 8
[11] 中部大学藤原洋記念超伝導送電研究センター:www.chubu.ac.jp/organization/institute/sustainable_energy/index.html
[12] 鈴木剛司 (2009):「地中海ソーラープラン、NEDO海外レポート、#1037
[13] デザーテックプロジェクト: http://desertec-africa.org/
[14] Solar TAO プロジェクト:http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/TAO
[15] International Conference on New Materials Design Technology for the Next Generation of Performed Components (NMDT-NGPC’2009 @Alger)
[16] Solat Tunisia International Seminar (2009): www.plansolairetunisien.tn
[17] 日本学術会議化学委員会・アジア化学イニシャティブ分科会(2008):記録「アジア・アフリカ化学技術新教育プログラム-グローバル複素大学教育モデルの提案 -」
 
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【住友電工】超電導とは  



2010/03/04 にアップロード

住友電工が超電導技術についてわかりやすく解説致します。
http://www.sei.co.jp/super/


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http://www.ssb-foundation.com/j-index.html

地球を救う革新的材料技術

― ゼロエクセルギー酸化物の化学とサハラソーラーブリーダー計画 ―

未来材料 Vol.10 No.11

研究開発には夢と根性が必要だ。大学におけるおもしろ半分研究ばかりでなく、企業の目的研究においても、当面の目的の先を見て、科学的にルート探索する 過程で夢を増幅することができる。特に大学付置研や国立研究機関では、どこでもだれでもやっている‘はやり’の研究に流されず、科学技術創造立国の基盤と なる中長期的課題の夢を設計し、信念をもって戦略的に実行することが望まれる。

地球エネルギー・環境問題の根源は、宇宙空間の特異点である地球上で擬定常的なエネルギーの流れを乱す局所的、刹那的加熱状態が出現したことによる。近 年の文明進化に伴うエネルギー消費の急増は、何億年もかけて太陽エネルギーを凝縮した化石燃料や地球誕生以来の遺産である核燃料利用に依存してきた。これ に伴って、燃料は大気中で化学熱力学的に安定な物質に転化してゴミ(廃棄物)となり環境に蓄積する。自然界の復元作用である光合成では追いつかない老廃物 を、大気中のみならず水圏、地殻表層に大量に堆積しているのである。役に立たない老廃物を新たな化学資源として、機能材料開発やエネルギー体系の革新に活 用する新技術の開発は、真に地球のエネルギー・環境問題を解決する展望を拓くであろう。

  本稿では、まずエネルギー・環境に関する基本問題について考察し、現行の化石燃料生産+タンカー輸送にかわる砂漠発の太陽光発電エネルギー生産+高温超伝 導電力輸送への新エネルギー体系構築を目指す「サハラソーラーブリーダー(SSB)計画」を紹介する。究極のエネルギー・環境対策としてのSSB計画の夢 を実現する技術課題と国際戦略について議論する。

▶ 人類とエネルギー
 
 エネルギーと食料を含む物質・材料は、人間の生命活動の原動力である。人類は火を征服し、産業革命以降は宇宙のエネルギーフローから見れば非定常な化石 燃料の大量消費によって文明を加速的に発展させてきた。最近まで、エネルギー源として最も重要な因子は量とコストであった。多種のエネルギーは相互に変換 できるので、使い勝手の良い電力にしても、それが火力、原子力、あるいはクリーンな太陽電池によるかは消費現場では区別がつかないという事情があった。1960年代~1970年代の日本の高度成長を支えた2本 柱は、安価な天然ガスや中東の原油を巨大タンカーやパイプラインで運ぶエネルギー体系と、製鉄を中心とする素材と自動車を中心とする機械・電気を組み合わ せたものづくり産業体系であった。今、化石燃料を基盤とする世界のエネルギー体系は、資源と地球環境の両面から大きな問題に直面し、産業体系の環境にも大 きな変化の兆しがある。
 
 地球上でわれわれが使えるエネルギー資源は3種類ある。①地球の誕生以来内蔵されてきた地熱や核燃料、②40億年の地球の歴史の中で太陽エネルギーを蓄 積・濃縮した化石燃料、③太陽光をリアルタイムまたは数十年以下の短期サイクルで利用する再生可能な自然エネルギーである。地球が何億年もかけて蓄積して きた②の化石燃料を、人類は100年のスケールで大量消費し、大気中CO2濃度の上昇と地球温暖化をもたらしたばかりでなく、未来社会においても欠くこと のできないエネルギー、材料資源枯渇の懸念を招いている。地球を支配した人類は、はかない栄華の果てに自らの手で老齢化を加速し、老衰期に突入しているの かもしれない。CO2地球温暖化犯人説は、Climate gate事件もあって一時的に沈静化したように見えるが、その可能性は依然として高く、時間因子を無視した脱化石エネルギー対策の遅れは人類の生存を脅か す危険を秘めている。
 
 グリーンイノベーション、あるいはグリーンニューディールというキャッチフレーズのもとに、アメリカの政策を参考にしたエネルギー科学技術戦略が提言さ れている1)。 基本は、ボトムアップとトップダウン技術と見ることができる。前者は、産業から「日々のくらし」に至るエネルギー消費の省エネ化を徹底するとともに、ス マートグリッドによる多種・多様なエネルギーの効率的活用を、後者は新エネルギーの開発を促進する科学技術・政策の強化である。アメリカをはじめとする先 進国では省エネ技術の展開余地が大きいが、脱貧困を求める開発途上国ではエネルギー消費の増大を伴う生活向上が優先する。今後も上昇を続ける世界のエネル ギーニーズと環境との調和には、持続的発展に必要なマキシマムエネルギーをトップダウンに設定し、サイエンスベースの未来展望に基づいてエネルギー需要の 増大を余裕を持ってカバーし、なおかつsustainabilityを確保できる大胆な構想と技術設計が不可欠である。地球規模エネルギー課題の顕在化に 対して、日本の科学・技術力の向上と未来の世代に貢献する本質的な提案をし、世界の研究開発をリードすることはできないだろうか?2)
 
▶ ゼロエクセルギー物質の化学
 
 酸素濃度20%の地球大気環境下で、われわれは種々の物質Rの酸化反応(燃焼)によってエネルギーを取り出す。
 
Rx + 1/2 O2 → RxO + 反応熱(-ΔH)
 
 エンタルピーHの基準は元素単体をゼロとし、通常の熱力学では各種反応熱測定から求めたΔHを物質固有の化学エネルギーとしている。上記の反応は一般に 発熱であり、生成する酸化物のΔHは 負の大きな値になり、化学的安定性、電気絶縁性(大きなエネルギーギャップ)につながっている。一方、物質には固有のエネルギーのほかに温度、圧力、濃度 などの状態に依存するエネルギーが付随するので、物質系がどれだけの使えるエネルギーをもっているかを通常の熱力学パラメーター(H,エントロピーS,自 由エネルギーG)値から視覚的に推測することは難しい。
 
 地球環境・エネルギー問題を議論するには、新たな熱力学パラメーター: エクセルギー(Ex)で評価するのが便利である。Exは地球標準環境(状態)で最も安定な物質のHをゼロ基準とし、物質の状態に伴う補正を加えて算出され る。基本的に負の数値がないので、縦軸だけで有効(仕事に使える)エネルギーを評価できる3)。人間はExの高い物質状態を低いExにする過程で発生する エネルギーを利用している。最終生成物はエネルギー価値のない(ゼロエクセルギー)物質であり、それを代表するのが酸化物、すなわち気相のCO2(厳密に は大気中の濃度0.04%で)、液相のH2O、固相の金属酸化物MOxである。地球の遺産である燃料(化石、核)の消費はゼロEx物質の発生・蓄積と同義 であり、増え続けるありふれた酸化物をお金とエネルギーまで使って貯め込むCCS(Carbon Capture and Storage)のような方法はあまり賢いとは思えない。
 
 ゼロEx酸化物の化学革新(再生利用)こそ、前向きに地球環境・エネルギー問題を解決するカギと言えよう。
 
 図1に、代表的ゼロEx酸化物としてCO2,H2O,SiO2をとりあげ、その再生利用の基本構想を示す。大気環境下で不活性な酸化物の物質状態を変え るには、なんらかの外部(できれば太陽)エネルギーの注入が必要である4)。
 
 地球温暖化ガスとして知られるCO2対策の例に示したのは、化学エネルギー(高Ex物質)の注入による有用準安定化学物質への固定である。筆者が40年 も昔の大学院時代に見つけたのは、高ひずみエネルギーを有する3員環エーテル(エポキシド)との交互共重合によるポリカーボネート合成である5)。炭酸ガ スを直接原料(モノマー)とする世界初のポリマーとして、また生分解性を有する合成高分子として注目され日米の特許も取得した。
 
 この日本オリジナルポリマーは日本オイルシール工業とアメリカのエアープロダクツ社にライセンスし、アメリカではパイロットプラントによるサンプル出荷 も行われたが、有機亜鉛・助触媒(H2Oなど)の触媒効率、新規ポリマーの用途開発、コスト競争力が不十分で工業化には至らなかった。しかし、最近になっ て中国・海南島でこのCO2ポリマーが工業化されたと伝えられ、欧米でも関心が復活し研究が活発化している。開発の焦点は高活性触媒開発とアロイ化による 物性の制御、新機能化にある。
 
 

 
なお、石灰石の焼成過程でCO2を大量発生して作るセメントは、高Ex物質としてやがてCO2を吸収固定し、低Exの安定構造化するCCS材料と見るこ ともできる。CO2に外部エネルギー(光,電気,プラズマ等)を注入する化学変化も可能であるが、エネルギーの多くがCO2分子の分解に使われる形では価 値は低い。

 太陽エネルギーの力でCO2とH2Oをリサイクルする光合成は、生物の生存に必須のプロセスである。この過程で太陽光はCO2には直接作用せず、H2O の分解に関与する。すなわち、発生する酸素はCO2ではなくH2Oに由来する(図1)。

 自然界で進行する光合成は常温、常圧、CO2濃度400ppmという条件下での非常に巧妙なプロセスではあるが、光⇒化学(炭水化物)へのエネルギー変 換効率は1%程度に過ぎない。TiO2などの光触媒による水の光分解もこのカテゴリーに属し、40年前の本多・藤嶋効果の発見以来化学者を中心とする多く の研究が行われている6)。可視光励起プロセスの可能性も確認されているが、エネルギー変換効率は低く実用レベルには遠く及ばない。

 固体ゼロEx物質を代表するシリカSiO2は、クラーク数1,2くらいの元素からなる地球表層で最も豊富な資源である。半導体素子や太陽電池に使われて いる高純度(>10N)SEG―Siは、60年以上前に開発されたシーメンス法で作られている。


 
SEG―Siへのドーピング(微量B,P添加)とpn接合形成で太陽電池をつくれば、その光⇒電気の変換効率は15~25%に達し、光合成の光⇒化学エ ネルギー変換効率に比べて10倍以上高い。ところで、太陽電池を作るのに使ったエネルギーをその太陽電池で回収するEPT(エネルギーペイバックタイム) は、現在の技術で約2年である。

 Si太陽電池の寿命は20年以上に達するのでEPR(エネルギー利得)は10以上となる。それでもこの数値は燃料を使う火力や原子力のエネルギー変換効 率40%やEPR 20に比べると低いように見える。しかし、両者の効率、EPRの算定基準には決定的な違いがあり、燃料エネルギーを計算に加えると、火力、原子力では EPR<1,EPT=∞になるはずである7)。燃料不要の太陽エネルギー利用は、1億5,000万km彼方の天然の巨大核融合炉からの放射エネルギーを無 為に地表や海面に吸収させず、いったん電気として利用して地球に戻す。地球周辺のエネルギーバランスを崩さず、燃料フリーでゼロEx廃棄物を発生しないク リーン技術なのである。

 なお、SSB計画では、酸化物高温超電導体(HTSC)による長距離直流送電を想定している。HTSCを含む複酸化物(MxM′yOz)のEx値は不明 であるが、母体のCuの原子価が2の定比酸化物La2CuO4やYBa2Cu3O6.5は、ワイドギャップの絶縁体でありエクセルギー値は低いと推定され る。Cuの原子価変化を伴う(Cu􀔆⇒Cu􀔇)元素置換(La⇒Ba)や酸素量の注入(O6.5⇒O7‒x(x≒0.15))によるキャリア(正孔) 注入は、定比酸化物の高Ex不定比高温超伝導体への転換に相当するのであろう。

▶ 太陽光発電と材料

 太陽電池は適当なエネルギーギャップEgを有する半導体に、pn接合や界面ショットキー接合による内部電界を形成し、太陽光で励起されたキャリアを分離 して電極から取り出すデバイスである。太陽光のスペクトルにマッチしたEgを有する各種半導体材料が使えるので、主流を占めるSi以外にも、化合物半導体 (GaAs,InP,CuInSe,CdTe,など)などの多くの材料から太陽電池は作ることができる。新材料といわれる有機・ポリマー半導体,有機色素 /TiO2,アモルファスSi(a―Si),量子ドット半導体でも20年以上前から研究が持続している。太陽電池研究への異分野からの新規参入者の期待は 高いが、Si結晶系を超える見通しは依然立っていない。

 1973年の第1次オイルショック直後の1974年に始まったNEDOのサンシャイン計画で、日本の太陽光発電(PV)研究は、アモルファスシリコン (a―Si)薄膜系を中心に世界をリードし、工業生産では結晶Si系を主流に数年前にはシェア50%を占めダントツの世界一であった。2000年以降、地 球環境問題の顕在化を背景に、世界の太陽電池生産は年率30~50%の勢いで伸びた反面、日本では2007年にはマイナスに転じ急速に地位を低下させてい る。主要な原因は、PVの主原料であるSEG―Siの供給不足と価格の急騰に打つ手を誤ったことにある。日本の産官学の研究開発方向は、結晶Siを回避し 半導体原料使用量の少ない薄膜(a―Si,化合物,色素増感,有機,量子効果)系に向かっている8)。間接半導体で吸光係数の低い結晶Siでは 100~200lm厚みのウェーハを用いるのに対し、他の材料はほとんどが1lm程度の薄膜で良いメリットが強調されるが、4~7mm程度の厚いガラス基 板上に作られる薄膜太陽電池における質、重量、コスト全体の優位性は保証されていない。2008年にスタートしたNEDOの革新的太陽電池国際研究拠点プ ログラムでも、ほとんどが薄膜多接合の基盤技術を志向している。しかし、薄膜系太陽電池には、質、重量、コスト以上に深刻な量的限界がある。

 人類に必要なエネルギーの10%以上(100GW級/年)の太陽電池を供給し続けることは、原料資源から推算した発電総容量から見て無理がある7)。図2に、元素戦略の対象となる主な元素の資源量データを示す9)。

 たとえば、Inを使う系では総発電量100GW以下、最近急成長のCdTe系でも500GW程度にすぎない。有機材料や色素は安価で豊富な資源があると 直感的に主張されるケースが多いが、カラープリンターのインク価格やしばしば用いられる金属錯体色素の価格、供給可能量を考慮した定量的評価が必要であ る。革新的新材料太陽電池も大変大事な研究テーマである。しかし、問題は現在、その方面の研究開発にのみ公的資金の助成が限られ、一見古いけれど新しい Si基礎研究が取り残され、真のグリッドパリティ(火力等の現行発電コストと同等)への材料開発の道が閉ざされていることにある。


 


何故、①世界のSi原料は供給不足に陥り、②日本では喫緊のSi原料開発に目を向けず、いつになるかわからない薄膜高効率化に時間と研究費を集中しているのであろうか?

 答えのヒントは現行のSEG―Si製造プロセスに対する思い込みと、過去の新Siプロセス開発研究の挫折にあると言えよう。SEG―Siプロセスはほぼ 完成され、改善の余地はないと多くの太陽電池関係者は思い込んでいる10)。60年以上前に開発されたシーメンス法は、確かに高品質(純度>10N)で無 転移の単結晶Si製造に適し、高コストの欠点も高集積化が進む半導体素子では大した問題ではない。一方、面積を必要とする太陽電池では、純度レベル、コス トに対する要求が基本的に異なる。Si原料不足に対する応急処置として現行シーメンス法の増設が中国や欧米、東南アジアで進んでいるが11)、化学的欠陥 の多いプロセス(後述)の量産効果によるコストダウンだけでグリッドパリティーを達成するのは容易でない。

▶ サハラソーラーブリーダー(SSB)計画

 世界に主要なエネルギーを供給し続けてきた中東から北アフリカ(MENA)にわたる砂漠地帯は、化石燃料の枯渇とともに再び強い日光が照りつける不毛の 砂漠に戻るのであろうか? 砂漠の2つの価値―日射と未利用の広大な土地、に目をつけた自然エネルギー、特にソーラーエネルギーの利用についてはすでに、IEA分科会12)や EU13)の調査研究、およびEUを中心とするビジネス展開をねらったDESERTEC 14)や地中海ソーラー計画(MSP)15)等の活動が始まっている。当然のことながら、アラブの国々も次の時代に向けていかに石油収入を未来に活用する か、次世代、次次世代の人材を育成するかについて真剣に考えはじめていて、科学技術先進国・日本への期待も高い16)。

 地球全体、人類の生存にかかわる問題に対して、国連やG8(米,英,仏,独,日,伊,加,露)を中心とする政府首脳が国際問題を議論するサミットが毎年 開催されている。学術界も、G8を中心にした各国の学術会議代表がサミット開催の数ヵ月前に開催国に集まって、各年2件の重要テーマを取り上げて議論し声 明をまとめて各国首脳に手渡している。2008年7月の洞爺湖サミットでは、「気候変化:適応策と低炭素社会への転換」、2009年のラクイア(イタリ ア)サミットでは、3月末のローマ会議で、「エネルギーのための新技術」テーマについて議論し声明をまとめた17)。CO2削減や平均気温の抑制に関する 議論が大まかな数値目標設定にとどまっている背景のもと、日本学術会議(SCJ)はローマ会議で具体的な対策案「サハラソーラーブリーダー(SSB)計 画」を提案した18)19)。提案は図3に示す2つの革新基盤技術の開発と結合からなる。世界最大のサハラ砂漠を起点に、地球エネルギー新体系の構築を目 指す遠大な構想である。


 

  化石燃料からのCO2発生と資源枯渇を同時に解決し、開発途上国の生活向上に必須のエネルギー需要増大にも応えるカギは、太陽―地球―宇宙空間を結ぶ自 然エネルギーの定常的な流れへの回帰である。砂漠には広大な土地と豊富な日射ばかりでなく、第3の価値、すなわち日射を電気エネルギーに効率よく変換する 太陽電池用シリコンの原料(珪砂や珪石)が無尽蔵にある。

発展途上地 域開発のための科学、技術、およびイノベーションの役割」のモデルケースの一例と見ることができる22)。

 ソーラーブリーダーや太陽光発電(PV)とHTSC送電の組み合わせは、1980年代GENESIS(Global Energy Network Equipped with Solar cells and International Superconducting grid)23)等のコンセプトとして提案されてきたが、30年の時を経て日本の先進科学・技術による実現目指して挑戦すべき機が熟してきたのである。

 1960年代の新幹線、化学工業の公害防止、最近のハイブリッドカーなど、課題先進国24)としてのわが国が取り組み、地球を救う夢をアフリカの人材と共有して追求する計画である。

 遠大な計画は、JST/JICA連携の地球規模課題対応国際共同研究事業に採択され、アルジェリアのオラン科学技術大学(USTO),Saida大学を パートナーとする“Sahara Solar Energy Research Center(SSERC)”プロジェクトとして第一歩を踏み出そうとしている25)。SSBCプロジェクトのアフリカ拠点となるUSTOと地中海沿岸北 アフリカの未来モデルを図4に示す。東京大学(新領域,生研,工学研究科),東京工業大学,弘前大学,中部大学,国立情報研究所,物質・材料研究機構 (NIMS),アラブ経済研究所からなる日本側連合チームとのSSERCプロジェクトの具体的な共同研究課題は以下の6項目である26)。

1) USTOにSSERCを設置し、SSBのアフリカ研究開発(Initiative)拠点を構築する
2) 砂漠の砂の高純化と低コストソーラーSi生産技術の研究開発
3) ソーラーシリコン太陽電池製造とブリーダープラントの設計
4) HTSCケーブルによる砂漠環境直流送電のための基礎データ集積
5) 太陽光発電テスト施設の設置と砂漠環境での性能・耐久試験,利用技術開発
6) 初期からの共同研究参画,ネット教育活用によるアフリカの科学技術人材育成

▶ SSB計画で追求すべき革新的材料研究開発

 太陽電池の普及拡大とともにSi原料が不足する事態はすでに1980年代の初めに予測され、NEDO委託の「太陽電池用Si原料調査委員会」が設置され 27)、第1次Si材料開発ブームが出現した。これに関連する、上記6項目のうち課題2のソーラーシリコン製造技術について重点的に考えてみよう。

 

図5に示すSi製造プロセスのうち現行の主流はシーメンス法①,すなわち蒸留により揮発性液体SiHCl3を高純化し、Si表面上で熱分解する気相合成 (CVD)法である。揮発性化合物への変換とその再還元を経ず、冶金的精製で6N程度のSOG―Si合成をねらうアプローチ②も1980年代から検討され た。それぞれに対応して、CVD法の改善を目指す信越化学流動床(FBR)法と、質を少し落としても低コスト/量産化を狙う川崎製鉄冶金精製法がNEDO の助成により実施された28)。いずれも所期の目標をクリアしたとされたが、前者では炉からの不純物によるSEG―Siレベルへの到達度に、後者では金属 (MG―)SiからのB濃度低下のためだけに高エネルギーの熱プラズマを使うなど、コスト削減に問題が残った。



 その後、CVDの流れとしてトクヤマのVLD法29)が、直接還元に冶金精製を組み合わせた流れとして珪砂の水ガラス精製を経る日本板硝子/川鉄法30)のNEDOプロジェクトが実施された。

 プロジェクトの目標は達成されたことになっているが、SEG―Siの余りで十分足りる状況にあった当時、新プロセスを工業化に展開するインセンティブは 見いだせなかった。早すぎた研究開発のネガティブイメージは、21世紀を迎えて本当に必要になったソーラーSi新技術再開発の芽を摘み、日本の太陽電池研 究開発を、「そんなことをやっている場合か?」と言いたくなる方向に向けるよう作用した感さえある。当時の研究者、技術者も大半が会社を去り、貴重な技術 は継承されないまま忘れ去られようとしている。

 日本の太陽電池世界一を陥落させた根源はSi原料の不足であった。この問題に正面から取り組まず、薄膜に逃げて事態をさらに悪化させているように思われる日本の太陽電池の起死回生策はあるだろうか?

 30年来の太陽電池研究の歴史から見て、最近世間で‘はやり’の太陽電池研究に希望的観測はいっぱいあっても、真にグローバルなエネルギーに貢献するシ ナリオは読めない。Grid Parityを実現するための革新的Siスマートプロセスの可能性を、あらためて真剣に、かつ早急に再検討する必要がある。SSERCプ ロジェクトの一部として始まったわれわれのソーラーシリコン学術研究を、「シリコンを制する者が太陽電池を制する」の旗印を掲げ、学産官の加速的技術開発 に発展すべきである。シーメンス法は化学の観点から詳細に検討すると、完璧どころか超高純度を達成するために反応速度や反応収率を犠牲にし、エネルギー消 費も高い欠陥プロセスであると言っても過言ではない。先述のFBR法やVLD法は反応速度の向上には有効でも、反応収率の向上とSEG―Siレベルの純度 に課題を残している。



 熱力学,動力学,計算科学に遡る反応解析と設計,実験的検証を並行して進めているわれわれのソーラーSiアプローチとGrid Parity太陽電池戦略を図6に示す31)。

 これらの技術革新について、学(東京大学,日本大学,弘前大学,東北大学),官(NIMS),産(セメント,カーボン,ミネラル等)の連携研究が、ささ やかにスタートしている。①CVD法の革新のねらいはSEG―Siの製造コストダウンであり、キーポイントは低収率の原因となっている副反応をおさえ、水 素の活性化で反応速度と収率の両者を上げることにある。このアプローチでは、CVD原料の精留・高純化を経るので、SEGグレードへの到達が目標である 32)。

 直接還元②のねらいは、現行シーメンス法の珪石(塊状)を木炭で固相還元してMG―Siを作る過程を、珪砂のカーボン粉による還元に置きかえ、さらに大 幅なコストダウンを達成することにある。珪砂を原料とすることで以下の利点が期待できる。珪砂(シリカ)は地球上で最も豊富な世界中で手に入るありふれた 天然資源である。目標達成のキーポイントは、反応炉の材質を含めたクリーン化設計、反応過程の計算科学と診断、研究者の信念と研究資金であろう。

1) 素原料(シリカ,カーボン)の段階で不純物(特にB,P)を除くことができる。
2) SiO2/C比を適当に調整しペレット化した高速熱還元反応によるアップグレードMG―Si(≒99.9%純度)の合成。
3) アップグレードMG―Sの一方向凝固による6N純度のSOG―Si一段合成。

 シリカの直接炭素還元は、化学的・精錬的に見て製鉄技術と共通性がある。高炉による鉄鉱石のコークス還元は珪石の木炭還元に、粉末シリカのカーボンによ る還元は粉末冶金に類似する。製鉄と対比したシリコン製造の状況を図7に示す。


 
Siの生産は大きく伸びてはいるものの、現在の金属Siの生産量は鉄の1/1,000以下、SEG―Siでは1/10,000以下にすぎない。純度レベ ルが大きく異なり還元に必要なエネルギーも大きいとはいえ、より豊富な資源を有するシリカから100万t(日本の鉄鋼生産の1%)のSOG―Siを作るの は不可能な目標ではないだろう。現行の結晶Si系太陽電池10g―Si/Wで計算すると、1万tのSiから1GWの太陽電池、100万tからは100GW (1億kW)の太陽電池が生産できる。日本の太陽電池世界一への復権は、一見遠回りに見えるSOG―Siの革新技術開発が本命ルートになると考える。
 
 100GWの太陽電池は、日本の日射量を考慮した利用率12%として、1,200万kW、サハラでは2,500万kWに相当する。太陽電池パネルが20 年使えるとして、1/4を国内に、3/4を輸出に回せば、日本の電力需要の半分くらいを賄うと同時に巨大輸出産業が出現することになる。製鉄/自動車を軸 とする日本の産業構造に製珪/太陽電池を軸とする新クリーンエネルギー産業が生まれるのである。
 
▶ SSB計画の展開
 
 SSB計画のもう1つの柱は高温超伝導(HTSC)線による長距離直流送電技術である。技術の現状を図8に示す。
 
 HTSCケーブルにはBi(Bi2Sr2ca2Cu3Ox)系(Tc>100K)とYBCO(YBa2Cu3Oy)系(Tc≒90K)とがあり、現時点 ではBi系の方がプロセス(熱圧延)的にも特性的にもリードしている。直径16cmのCu線に相当する電流を流す4mm×0.2mmのAgに埋め込んだ 2kmテープ(住友電工製)を連続製造できる20)。この線材を使った200mの液体窒素冷却直流送電システムが中部大学に建設され、世界唯一の専用研究 施設として動いている21)。送電ロスの少ないHTSC直流送電は500km以上の長距離送電ではコスト的にも高架線に比べて有利になる可能性を有し、地 下送電はセキュリティー上も優れている。  アルジェリアとの連携で始まったSSERCのその先にあるSSB計画は、隣国のチュニジアはじめアラブ諸国の関心を高めつつある。特に、従来のODAの ように、既存技術の移転と現地での運転技術指導ではなく、未開発のソーラー技術を最初から協力して研究開発することで、自ら考える科学技術人材育成に協力 する日本の姿勢を高く評価している。アラブマネーで基礎研究の加速的推進を支援する機能を含むSSB foundationを設立し、日本とアラブの協力を基礎研究から、雇用,産業育成,ビジネスに展開するプランの準備も進行している。

 アフリカはいつまでも開発途上国でなく、オイルマネーで急速に経済成長し自らの人的、経済的資源を用意して科学技術人材、産業の育成を目指している国も 多い。将来に役に立つ技術開発には、高い知的水準を維持し目先の利権を求めない日本との連携が期待されている。

謝辞:本稿に関連するサハラソーラーブリーダー計画の提案と世界への発信、サハラソーラーエネルギー研究センター(SSERC)を拠点とする計画の発進 (Initiative)についてご支援、ご協力いただいている日本学術会議(SCJ),科学技術振興機構(JST),国際協力機構(JICA),関係 者,およびSSERCプロジェクトメンバーの藤岡洋,下山淳一(東京大学),黒川浩助(東京工業大学),角谷正友(NIMS),古屋泰文,佐藤裕之,伊高 健治(弘前大学),山口作太郎(中部大学),松浦孝(UCL),上野晴樹(国立情報研究所),北村陽慈郎(アラブ経済研究所),橋本拓也(日本大学),お よびAmine Stambouli教授をはじめとするオラン科学技術大学(USTO)の各氏に感謝する。

[文 献]
1) JST―CRDS編:グリーンニューディール, 丸善プラネット,2009.
2) 前田正史:Beyond Innovation―「イノベーションの議論」を超えて,丸善プラネット,2009.
3) 笛木和雄,鯉沼秀臣:日本機械学会誌,86 (778), 1089( 1983).
4) H. Koinuma: Reactive & Functional Polymers, 67, 1129( 2007).
5) S. Inoue, H. Koinuma, T. Tsuruta: J. Polymer Sci., Part B, 7, 287( 1969).
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7) 鯉沼秀臣:現代化学,3,20 (2009);材料 開発から見た太陽電池の課題,化学,48 (8), 37(1993).
8) NEDO「太陽光発電ロードマップ:PV2030+」,2009年6月. 一木修・監修:太陽光発電ビジネス,日刊工業新聞社,2010.
9) NIMSプレスレリース(元素戦略)2007年2月15日,
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10) JST―CRDS(科学技術振興機構・研究開発戦略センター)戦略プログラム「太陽光エネルギーの利用拡大基盤技術」(CRDS―FY2008―SP―03).
11) ㈱資源総合システム:太陽電池用シリコンの最新動向レポート2008年版.
12) K. Kurokawa et al. ed.: IEA―PVPS Report, “Energy from the Desert”, Vol.1, Science Publishers (2003); Vol.2, Earthscan (2007), Vol.3, Earthscan(2009)
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14) Desertec Project: http://desertec-africa. org/
15) 鈴木剛司:NEDO海外レポート#1037「地中海ソーラープラン」,2009.
16) 北村陽慈郎:イスラムマネーの奔流,講談社,2009.
17) 日本学術会議「G8学術会議声明」,
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18) 日本学術会議,G8+5 Academies' meeting 提案 “Sahara solar Breeder Plan directed towards global clean energy superhighway”, Rome, Mar. 2009.
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http://www. sei.co.jp/super/
21) 中部大学藤原洋記念超伝導送電研究センター(山口作太郎センター長),
http://www.chubu.ac.jp/organization/institute/sustainable_energy/index.html
22) G8サミットに向けた各国学術会議の共同声明,日本学術会議資料No.5, 日本学術会議 協力財団(August, 2010).
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25) 北沢宏一:科学技術は日本を救うか,丸善プラネット,2010.
26) JST/JICA連携地球規模課題対応国際共同研究事業2010年採択課題「サハラソーラーエネルギー研究センター(SSERC)」,
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28) H. Koinuma, M. Sumiya: ChemRawn Proc., 4, 147(1996).
29) NEDO委託開発「溶融析出法によるSOG―Si製造技術の開発:トクヤマVLD法」,平成16―18年度成果報告(2007).
30) 昭和63年度NEDO委託業務成果報告書「低コストSi実験精製検証」「高純度シリカ及びSi製造技術開発」,日本板硝子・川崎製鉄,1988.
31) H. Koinuma, K. Kurokawa: RE2010―Task8 Symposium, Yokohama, June 30, 2010. 32) Mini International Workshop on Chemical and Metallurgical Initiative towards Solar Silicon, Organized by M. Sumiya and H. Fujioka, NIMS並木, March 30, 2010.
                        


現代化学450 号特集(2008年9月号, pp.18-19)

太陽電池に見る政策と化学

                                       鯉沼秀臣
 
 4年前の400号特集に「科学技術の進歩を‘かたち’にする固体材料化学」と題して、地球環境とエネルギー問題に関するCO固定、太陽電池材料、酸化物エレクトロニクス研究の重要性を指摘した。関心はますます高まっているが、450号記念に寄せて、化学の知恵と技術を結集して挑戦すべきSiのテーマを抽出し、政策との関連を考察する。
 
 研究開発にはアイディアと人とお金が必要である。どこから研究費が得られるかは、社会環境や外国戦略を反映する政策と密接に関連する。特に大きな政府資 金を投入すべき研究として、基礎科学のフロンティア開拓(再生医療、量子ビームなど)、先端計算・計測(スーパーコンピューター、量子計算など)、人材育 成に関連する未来の夢への投資(宇宙開発、超伝導リニアなど)、経済活性化対策(産業技術、資源・エネルギー、環境)がある。科学技術創造立国を掲げるわ が国では、総理大臣を議長とする総合科学技術会議が設置され、グローバルな視点を含めて研究分野を評価し重点的に資金配分をすることになった。昨年度から の第3期科学技術基本計画では、前期五カ年計画に続いて環境、バイオ、IT, ナノテク・材料が重点4分野にあげられている。このような計画科学技術が機 能するには、第一線に立ち国際的視野を持った研究者の意見を計画に反映する政策設定が重要である。昨今のエネルギー価格の高騰と地球温暖化問題によって、 重点4分野以上に関心とニーズが高まっている自然エネルギー、特に太陽電池に関する研究開発と政策の関係を考えてみよう。(下表参照)

太陽電池(PV)の歩み
1943  高純度シリコンプロセス(シーメンス法)開発
1954 単結晶シリコン太陽電池(Pearson)
1973 第1次オイルショック
1974 日本の「サンシャイン計画」を初め、米・欧で国家プロジェクトがスタート
1975  a-Siの価電子(p,n)制御 (Spear, UK)
1980年代~ 各種(CIS, CdTe, 湿式、量子ドットなど)太陽電池研究
1992 個人住宅用系統連繋太陽光発電システムで世界に先行
1996    新エネルギー導入大綱策定
2004    フィードインタリフ制度による太陽光発電助成導入(ドイツ)
ドイツのPV導入量世界1に
2005  2030年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV2030)
2006  ソーラーアメリカイニシャティブ(超高効率中心)
2007 日本の太陽電池の年間生産量が100万kW(ほぼ原発1基相当)直前で足踏み
アジア(中国、台湾、韓国、フィリピン)のPV生産量急増し日本を超える
2008   NEDO革新的太陽電池国際研究拠点プログラムスタート

 サンシャイン計画がスタートした翌年には、アモルファスシリコン(a-Si)の価電子制御が見出され、高価な結晶Si不要でプロセスも簡単な薄膜太陽電 池として、産官学連携研究の活性化と太陽光発電の普及促進に役立った。しかし、当初の期待に反して量産レベルのa-Si太陽電池の変換効率は10%以下に 留まり、光劣化による効率の低下も基本的な解決がないまま、効率・信頼性に優れた結晶Si系が太陽電池の主役の座を占めて今日に至っている。この間、太陽 電池電力の系統連繋など、新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)による普及支援策によって日本の太陽電池産業は世界一に発展した。1974年当時 の数kWの生産量、数万円/Wの価格は1982年には2MW, 2,000円/Wになり、この勢いが続けば主流を占める結晶Si系太陽電池の原料が足りなくなることが懸念された。筆者も幹事として参加したSi原料調査 委員会が活動を開始し、国内外の状況と新プロセスの可能性を検討した。当時の半導体用高純度Siの生産量(約9,000t)に対し、2MWの太陽電池に必 要なSiは40t程度に過ぎなかったが、今日再検討されているプロセス研究の多くはこの頃から始まっている。
 
 25年を経てSi原料不足は現実となり、見通しを誤った日本の太陽電池は世界一の座を譲ろうとしている。主要な原因はドイツの積極的なPV支援の政策に 求められる。緑の党の連立政権参加により導入されたフィードインタリフは、PVを既存の電力の約3倍で買い上げる制度である。日本への適用を仮定してみよ う。一ヶ月に500kWhの電力を使う家庭に、3kWのソーラーパネルを載せると一ヶ月で約300kWhの電力が得られる。日本の制度では太陽電池の電気 も同じ値段で電力会社が買い上げる。¥20/kWhとして6,000円/月の電気代還元では、太陽電池の寿命までには元が取れない。一方、3倍で買い上げ れば18,000円で太陽電池電力が売れるので、8,000円を受け取れる。一ヶ月18,000円の太陽電池電力の売り上げは、1年で20万円になる。初 期投資を200万円としても、太陽電池パネルを手に入れた上に10%の配当があることになり、銀行から借りても設置したい強力なインセンティブになる。こ の制度はスペインやイタリアにも拡大し、韓国などのアジアにも波及する動きがある。
 
 Si原料確保の国際戦略に躓いた日本の太陽電池生産は、半導体原料の少なくて済む各種薄膜系への設備投資に、研究開発はアメリカと同様な超高効率 (2050年までに40%)を目指す革新的拠点形成に向いている。この背景には、既存の電力よりも3倍以上電力コストの高い薄膜系太陽電池でも、品不足の 結晶Si系を補填するためヨーロッパを中心に飛ぶように売れている現実がある。フィードインタリフマジックがどこまで続くのか、Si原料の増産体制が整い 結晶Si系太陽電池の供給不足が解消されたとき、薄膜系は対抗できる実力を確保できているだろうか? Si原料の増産は国内でも進行中であるが、中国、ドイツ、アメリカに比べてスケールはかなり小さい。
 
 シーメンス法Siプロセスは、収率30%以下の反応が60年以上にわたって続いてきた化学の不思議である。Siの高純度を維持し、収率を70%以上に向 上して大量生産できる技術の開発は、太陽光エネルギーの夢を実現する第一歩である。1万tのSiからはおよそ1GW(100万kW)、時間平均すると12 万kW出力の太陽電池が生産できる。太陽電池用Siの需要は近未来に100万tを超える可能性がある。地球環境とエネルギーの未来のために、そして自動車 に代わる巨大産業創出に向けて、Si技術開発の推進と政策設計が望まれる。
 

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注記

 http://mric.jogmec.go.jp/public/report/2011-07/Si.pdf

 SEG―Si  : 集積回路などの半導体素子に使用する超高純度のケイ素(純度11N 以上)

 SOG―Si  : 太陽電池用(ソーラーグレード)シリコン

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エクセルギー

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%AF%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC

エクセルギー (: exergy) とは、 与えられた外界条件のもとで、 あるから 理論上取り出せる最大の仕事量のことである。 availability、有効エネルギー などとよばれることもある。
 
熱力学第二法則によると、 熱を仕事に変換するには常にカルノー効率による制約が伴うので、 熱に関連したエネルギーを扱うときには、 そのうちの有効に仕事に変換できる部分とできない部分とを区別して扱うことが必要である。 前者がエクセルギーであり、後者はアネルギーとよばれる。
 
エネルギーの総和は不変である(エネルギー保存則)ので、 外界を含めた拡大した全体系では、エネルギーは一定となる。 「省エネルギー」、「エネルギーを節約する」と言うときの「エネルギー」は、 エクセルギーを意味していると考えられる [1] [2]。 省エネルギーを念頭において機器の開発や改良を行う際には、 エクセルギーを用いた評価法は極めて有力な手段となる。
 
「熱から最大いくらの仕事が取り出せるか」との問に最初に答えようとしたのは、 カルノー (Nicolas Leónard Sadi Carnot)であり(1824)、 その 1/4 世紀後に、トムソン(William Thomson, Baron Kelvin) と クラウジウス(Rudolf Julius Emmanuel Clausius)らにより 熱力学が確立される基礎となった。 このカルノーの問題意識はエクセルギーに対する問そのものであり、 熱力学第二法則がその答となっている。
 
エクセルギーの意味の availability という用語は、 1868年のテイト(Peter Guthrie Tait) の書籍で 初めて「熱の仕事として利用できる度合い」の意味で用いられた。 マクスウェル(James Clerk Maxwell)や トムソンはこれを available energy とよんでいた。 1873年にギブス(Josiah Willard Gibbs)が自由エネルギーの概念を発表し、 1889年にグイ(M.Gouy)が、1898年にストドラ(Aurel Boleslav Stodola)が エントロピー発生とエクセルギー損失の関係(グイ・ストドラの定理)を発見した。
エクセルギー概念に対して、 1956 年にユーゴスラビア(現スロヴェニア)の工学者 ゾラン・ラント (Zoran Rant) がエネルギー(en + ergon; energy 内への仕事)に倣って、 ラテン語由来の接頭辞 ex(外へ)とギリシア語 εργον(仕事)の合成語として、 エクセルギー(exergy)との術語を提案し、 現在ではほぼエクセルギーが一般的に使用されている [3] [4]
 

熱流のエクセルギー

は物体から他の物体へ移動するエネルギーのひとつの形態であり、 物体の温度に密接に関連したエネルギーである。 温度 T の物体からとりだした Q の熱から得られる仕事の最大値は、 外界(温度 T0)との間でカルノーサイクルを動かしたとして、次式となる。
 

  W = \left( 1 - \frac{T_0}{T} \right) Q  \qquad \qquad \qquad \qquad (1)
 
 
外界よりも温度の低い物体は「冷熱」を持っているということもあり、 この場合の Q は負の値であると考えられる。 外界を高温熱源、物体を低温熱源とするカルノーサイクルを用いれば、最大
 

  W = \left( 1 - \frac{T}{T_0} \right) Q_0
 
 
の仕事が得られる。 ただし、Q0 は温度 T0 の外界から取り出す熱であり、 温度 T の物体に吸収される熱量 -Q [注釈 1]との間に
 

  \frac{Q_0}{-Q} = \frac{T_0}{T}
 
 
の関係がある。 これを用いると、
 

  W = \left( 1 - \frac{T}{T_0} \right) \frac{T_0}{T} (-Q) = \left( 1 - \frac{T_0}{T} \right) Q
 
 
となり、前記の Q > 0 の場合の式 (1) と同じ形となる。 冷熱の場合は、Q の値は負であり、カルノー効率 (1 - T0/T) も負であり、 結果として得られる仕事量は正の値となる。
 
結局、冷熱の場合も含めて、温度 T の物体が放出する熱流(物体から出る方向を正とする) Q のエクセルギーは
 

  E = \left( 1 - \frac{T_0}{T} \right) Q       \qquad \qquad \qquad \qquad (2)
 
 
で表される。
 
ある機器から放熱がある場合、放熱の間の物体温度は未知の場合も多いが、 放熱の間、物体の温度が一様に低下する(熱容量が一定)ならば、 放熱前後の温度 T1 と T2 の対数平均値
 

  T_m = \frac{T_1 - T_2}{\ln (T_1/T_2)}
 
 
を用いて、
 

  E = \left( 1 - \frac{T_0}{T_m} \right) Q     \qquad \qquad \qquad \qquad (3)
 
 
とすることができる。
 

注釈


  1. ^ 物体から取り出す熱を正と考えて、Q < 0 ゆえ、正の値にするためにマイナス符号をつけている。

 
 

物質の持つエクセルギー

ある状態の物質の持つエネルギーは 物質の出入のない系(閉じた系)では内部エネルギー、 そうでない系(開いた系)ではエンタルピーであるが、 この中には、仕事に変換できる部分とできない部分が含まれている。 物質が外界と平衡するまで状態変化を行うとき、 そこから取り出せる仕事の最大値が物質の持つエクセルギーである。
 

補助熱機関を加えた より大きい系

対象とする物質(系)が任意の状態変化をするとき、 系は外界に対して仕事をし、同時に熱を放出する。 外界に対して行った仕事は上記の仕事の一部となるのに加えて、 外部へ放出した熱も、その後仕事に変換できる可能性がある。
 
 


図 1 補助熱機関を加えたより大きい系

そこで、右図のように系と並行して動作し、 系が放出する熱を受け取って仕事を取り出す補助熱機関を考える [注釈 1]。 系自身が行う仕事 Wi を内部仕事とよび、 補助機関が行う仕事を外部仕事とよぶ。 系から取り出せる仕事は、内部仕事と外部仕事を合わせた有効仕事 Wg = Wi + We である と考えることができる [2] [注釈 2]。 ある状態の物質の持つエクセルギーは、 外界と平衡するまで状態変化を行うときに取り出せる有効仕事の最大値である。
このような有効仕事に対して、次の定理が成立する[2]
『与えられた二つの状態間で変化が行われる場合、 変化が可逆の場合に有効仕事が最大(符号も含めた代数的意味で最大)となる。 可逆であれば、有効仕事は変化の経路に依存せず、両端の状態のみにより定まる。』
(証明)
状態1から2へ至る二つの状態変化 R と I を考える。 状態変化 R は外部に対して有効仕事 WgR を行い、外界へ -QR の熱を放出し, 状態変化 I は外部に対して有効仕事 WgI を行い、外界へ -QI の熱を放出するとする。
状態変化 R が可逆変化であるとき、R の向きを逆にして、1から I に沿って2へ行き、 R に沿って 1 へ戻るサイクルを考えると、 有効仕事と熱の出入りは 右図 のようになる。
 
 


図 2 二つの経路の比較

サイクル後は系および補助熱機関は元の状態に戻るので、 熱力学第一法則(エネルギー保存則)より
 

  W_{gI} + (-Q_I) = W_{gR} + (-Q_R)
 
 
つまり
 

  (-Q_R) - (-Q_I) = W_{gI} - W_{gR}
 
 
が成立する。
もし、WgI > WgR であれば、 外界から (-QR) - (-QI) の熱を受け取り、 それをすべて仕事 WgI - WgR に変換する第二種永久機関となる。 したがって、熱力学第二法則に矛盾しないためには WgI ≤ WgR でなければならない。 つまり、可逆変化 R の有効仕事は任意変化 I の有効仕事より必ず大きくなる (等号は下記のように、双方共に可逆変化の場合に対応)。
I も可逆変化である場合には、上の R と I を入れ替えた結果も成立するので、 WgI = WgR でなければならず、 可逆変化の有効仕事は、経路のいかんにかかわらず等しくなる。 (証明終わり)
以上より、ある状態の物質のもつエクセルギーは、 現在の状態から外界と平衡するまで任意の可逆経路に沿って変化したときに行う 有効仕事として求まる[2]
 

閉じた系のエクセルギー

閉じた系の微小変化では熱力学第一法則より次式が成立する。
 

  dQ = dU + dW_i
 
 
ここで、系は外界で囲まれているとすると、 系が行う内部仕事 dWi には、 外界の圧力 p0 に抗して行う排除仕事 p0 dV も含まれているが、 これは取り出すことはできないので、後で取り除かなければならない。
この間、系が放出する熱は -dQ であり、これより補助熱機関が dWe = (1 - T0/T) (-dQ) の外部仕事を行うので、 この間の有効仕事は次式となる。
 

  dW_g = dW_i + dW_e = dQ - dU + \left(1 - \frac{T_0}{T}\right) (-dQ)
       = - dU + \frac{T_0}{T} dQ
 
ここで、dQ/T = dS は系のエントロピー増加量であるので、
 

  dW_g = - dU + T_0 dS
 
 
これを 現在の状態 (U, S) から外界と平衡する状態 (U0, S0) まで積分して
 

  W_g = - (U_0 - U) + T_0 (S_0 - S) = (U - U_0) - T_0 (S - S_0)
 
 
閉じた系のエクセルギーは、 この有効仕事から排除仕事 p0 (V0 - V) を除いた次式となる [2][4] [5]
 

  E = W_g - p_0 (V_0 - V) = (U - U_0) - T_0 (S - S_0) + p_0 (V - V_0) \qquad (4)
 
 

自由エネルギーとエクセルギーの関係

ヘルムホルツの自由エネルギー F およびギブスの自由エネルギー G は、 次式で定義される状態量である。
 

\begin{align}
  F &= U - T S \\
  G &= H - T S
\end{align}
 
 
等温条件下ではこれら自由エネルギーの変化量は
 

\begin{align}
  dF &= dU - T dS \\
  dG &= dH - T dS
\end{align}
 
 
と表される。
 
一方、等温変化での閉じた系のエクセルギー変化量は、 系と外界が熱平衡である(T = T0)として、
 

  dE = dU - T dS + p_0 dV
 
 
となる。
 
系の体積が一定に保たれているときは、 dV = 0 であるので、
 

  dE = dU - T dS   = dF
 
 
となる。 また、系の圧力が一定に保たれているときは、 p0 = p と置き換えて、 U + pV = H を用いれば、
 

  dE = dU - T dS + p dV = dH - T dS = dG
 
 
となる。 つまり、ヘルムホルツの自由エネルギーの変化量は、 等温等積条件におけるエクセルギーの変化量であり、 ギブスの自由エネルギーの変化量は、 等温等圧条件におけるエクセルギーの変化量である。
自由エネルギーは、温度一定の条件で生じる変化の方向を示すのに用いられる。 体積一定の系ではヘルムホルツの自由エネルギーが減少する方向に変化が生じ、 圧力一定の系ではギブスの自由エネルギーが減少する方向に変化が生じる。 これは、一般の変化では、エクセルギーが減少する方向の変化だけが生じることと合致している。
温度一定に保たれた系で、膨張を伴わない仕事 dWe (例えば、電池等の電気的な仕事、液柱を持ち上げる等の仕事など) を生じるとすると、 その非膨張仕事の最大値は、 体積一定の系では dWe ≤ -dF となり、 圧力一定の系では dWe ≤ -dG となる [6]。 一般の変化で系から取り出せる 仕事の最大値 は、 系のエクセルギーの減少量 dW ≤ -dE であることと合致している。
以上より、 等温等積または等温等圧の条件での自由エネルギーの概念を、 一般の変化に拡張したものがエクセルギーであると考えることができる。 ただし、自由エネルギーは物質の状態だけで決まる状態量であるのに対して、 エクセルギーは、外界条件を固定しなければ値が確定しない点に注意を要する。
 
 
 

開いた系(流れ系)のエクセルギー

 



図 3 開いた系のエクセルギー

実用的な多くの系は、物質の出入を伴う開いた系となる。 開いた系の微小変化では、 熱力学第一法則 dQ = dH + dWi より、 内部仕事は、
 

  dW_i = dQ - dH
 
 
と表される。 また、補助熱機関が行う外部仕事は、閉じた系と同一であるので、 有効仕事は次式となる。
 

\begin{align}
  dW_g &= dW_i + dW_e = dQ - dH + \left(1 - \frac{T_0}{T}\right) (-dQ)
        =  - dH + \frac{T_0}{T} dQ \\
       &= -dH + T_0 dS
\end{align}
 
 
ただし、dQ/T = dS は可逆変化における系のエントロピー増加量である。
これを現在の状態 (H, S) から 外界と平衡する状態 (H0, S0) まで積分すれば、 開いた系で物質がもつエクセルギーは次式となる [2][4][5]
 

  E = W_g = H - H_0 - T_0 (S - S_0)                       \qquad \qquad (5)
 
 

 


注釈


  1. ^ このような補助熱機関を考える理由は、 系の取り得る変化経路として任意の経路を対象とするためである。 もし、補助熱機関をなくした状態で系が可逆変化を行うならば、 可能な可逆経路は、現在の状態から外界温度まで断熱変化を行い、 その後外界温度と熱平衡を保ったまま 圧力が外界と平衡するまで等温変化する経路だけが可能となる。 これ以外の経路は有限温度差での熱移動を伴うため、 すべて非可逆となる。
  2. ^ 後述するように、 物質の出入りのない閉じた系で取り出せる仕事は、 この Wg から 排除仕事 p0 ΔV (ただし ΔV はこの間の系の体積増加量) を差し引かねばならない。 元の文献では、Wg を「総仕事」とよび、 排除仕事(開いた系では 0 )を差し引いたものを「有効仕事」と呼んで区別しているが、 ここでは簡略化のために区別せずに一括して「有効仕事」とした。 したがって、開いた系では両者は一致するが、 閉じた系で実際に得られる仕事量は Wg から排除仕事を差し引いた値となる。
 

いくつかの物質のエクセルギー計算式



物質がエネルギー変換に関与する実用的なプロセスのほとんどは流動系であるため、 以下では開いた系に限って説明する。 また、単位量(質量、標準体積またはモル)あたりのエクセルギー(比エクセルギー)を対象とする。
 

  e = E/G = h - h_0 - T_0 (s - s_0)
 
 
ただし、 h は比エンタルピー、s は比エントロピーである。
 
 
 

比熱一定の物質

多くの固体や液体では圧力の影響は無視することができ、 狭い温度範囲であれば比熱は一定と見なすことができる。 この場合は、dh = c dT, ds = (c/T) dT = c d(ln T) より、 次式より比エクセルギーを求めることができる[5]
 

  e = c \left[ T - T_0 - T_0 \ln \left(\frac{T}{T_0}\right) \right]
    = (h - h_0) \left[ 1 - \frac{T_0}{T - T_0} \ln \left(\frac{T}{T_0}\right) \right]
                       \qquad (6)
 
 

気体

多くの場合、気体を理想気体(完全ガス)で近似することができる。 このとき、比熱 cp, cv は一般に温度の関数になるが、 狭い温度範囲であれば、これも一定と見なせる。 この場合は、 h = cp T, s = cp { ln T - [(κ-1)/κ] ln p } となるので、 次式から比エクセルギーを求めることができる。
 

  e = c_p (T - T_0)
    - c_p T_0 \left[ \ln \left(\frac{T}{T_0}\right)
                    - \frac{\kappa - 1}{\kappa} \ln \left(\frac{p}{p_0}\right) \right]
                                                          \qquad (7)
 
 
ただし、κ = cp/cv は定圧比熱と定積比熱の比であり、 2原子分子気体では約 1.4 となる。
 

燃料

燃料についても、化学的エネルギーを含めたエンタルピー、エントロピーを知ることとができれば、 式 (5) を用いてエクセルギーを求めることができる。 しかし、石油、石炭等の化石燃料では化学的組成を含めて正確に知ることは難しく、 実用上はいくつかの近似式が用いられている [4]。 その例を下表に示す。
 
表 1 燃料単位質量あたりのエクセルギー(Rant の近似式)
燃料種別
計算式 (kJ/kg)
石炭
e = Hl + 2440 w
炭化水素
液体
e = 0.975 Hh
気体(メタンを除く)
e = 0.95 Hh
メタン
e = 0.93 Hh
w: 石炭の水分 (kg/kg), Hl : 低位発熱量 (kJ/kg) , Hh : 高位発熱量 (kJ/kg)


エクセルギー評価の方法


グイ=ストドラの定理


外界を含めた全体系のエントロピーの増加量を ΔS* とすると、 エクセルギー損失 LW (Loss of Work の略)は次式で表される。
 

  LW = T_0 \Delta S^*
 
 
 
これは グイ=ストドラ(Gouy=Stodola) の定理と呼ばれている。
 
(証明)
 
補助熱機関を加えた大きい系が、 図 2 のように状態 1 (H1, S1) から状態 2 (H2, S2) へ非可逆変化し、 その間に WgI = WiI + WeI の有効仕事をし、 外界へ -QI の熱を放出したとする。 この間の全体系のエントロピー増加量は次式となる。
 

  \Delta S^* = S_2 - S_1 + \frac{-Q_I}{T_0}
 
 
もし状態 1 から状態 2 へ可逆変化をする場合は、 有効仕事 WgR = WiR + WeR をし、 外界へ -QR の放出をするとすると、 この場合の全体系のエントロピー増加量は 0 であるので、次式が成立する。
 

  \Delta S^*_R = S_2 - S_1 + \frac{-Q_R}{T_0} = 0
 
 
したがって、
 

  \Delta S^* = - \frac{-Q_R}{T_0} + \frac{-Q_I}{T_0} = \frac{(-Q_I) - (-Q_R)}{T_0}
 
 
と表すことができる。
 
一方、熱力学第一法則(エネルギー保存則)より W_{gI} + (-Q_I) = W_{gR} + (-Q_R) つまり
 

  (-Q_I) - (-Q_R) = W_{gR} - W_{gI}
 
 
が成立する。 したがって、
 

  \Delta S^* = \frac{W_{gR} - W_{gI}}{T_0}
 
 
となり、これより 有効仕事の減少量つまりエクセルギー損失は
 

  LW = W_{gR} - W_{gI} = T_0 \Delta S^*
 
 
となる[2](証明終わり)。
 
 
 
 
 

エネルギー収支とエクセルギー収支

物質の出入りを伴う開いた系では、 熱力学第一法則(エネルギー保存則)により、 出入りするエンタルピー、熱、仕事(工業仕事)の間に保存則が成り立つ。 したがって、ある機器に流入するエネルギーと流出するエネルギーを リストアップし、 両者の差を求めれば、 それは、放熱や漏洩などにより(機器外へ逃げて)失われたエネルギーとなる。 このような作業は通常、熱管理、熱勘定、熱収支、等とよばれている。 ある機器のエネルギー(エンタルピー)の流れは右図のようになる。
 
 


図 4 エネルギーフロー

一方、エクセルギーは、機器内で非可逆変化が生じれば、 グイ=ストドラの定理にしたがって必ず減少する。 出入りする物質、熱、仕事のエクセルギー差を求めれば、 それがこの機器におけるエクセルギーの損失 LW である。
ある機器のエクセルギーの流れは右図のようになる。 エクセルギー評価は熱力学第二法則に基づく評価ということもできる。
 
 
 


図 5 エクセルギーフロー

各機器のエクセルギー評価は、以下のような手順で行えばよい。
 
  1. 外界と平衡する状態を選定する。これには、次節を参考にできる。
  2. 系(機器)に流入する物質、熱、仕事を列挙し、流入エネルギー(エンタルピー)を求める。物質のエンタルピーの原点は通常は便宜的(例えば三重点の水等)に定められているので、外界と平衡する状態のエンタルピーとの差を用いるのがよい。
  3. 系から流出するエネルギー(エンタルピー)についても同様に行う。
  4. 両者の差を求めて、未知のエネルギー損失(放熱、漏洩等)を推定する。
  5. 推定した放熱、漏洩等も含めて、流入・流出エネルギーをエクセルギーに換算する。
  6. 流入エクセルギーと流出エクセルギーの差を求めて、機器内のエクセルギー損失を推定する。
エンタルピーを用いたエネルギー収支では、 その機器内でどれだけの(エクセルギーの)損失があったかは分からない。 この種の損失は、 熱と動力の変換を伴う設備(熱機関、冷凍機、各種化学プラント等)で、 設備を構成する全機器のエネルギー収支を集計した結果、 外界へ放出する熱量の増加となって現れる。 しかし、どの機器の何を改善すれば損失が減るかは、 勘と経験をもとにして試行錯誤を行わなければ知ることができない。
これに対して、エクセルギーを用いた評価では、 それぞれの機器ごとに原因別に損失の内訳が明らかになるので、 これを用いて見通しよく改善策を立案することができる。 ここにエクセルギー評価の最大のメリットがある。
 
 
 

外界との平衡状態の選び方

エクセルギーを求めるには基準状態となる「外界と平衡する状態」を確定する必要がある。 熱力学で平衡という場合、通常、(1)熱的平衡、(2)力学的平衡、(3)化学的平衡 の 3 者を満たすことを意味している。 しかし、このうち、関与するプロセスによってはいくつかの条件を満たさなくてもよい場合があり、 また、実用上考慮しなくてよい場合もある。 以下に実用上妥当な外界条件の決め方を例示する [2] [4]
 
  • (A) [熱的平衡] 温度が外界温度に一致する。 復水式蒸気タービン設備や空調機の室外機などのように、系と外界とが伝熱管等を介して間接的に(熱的にのみ)接触する場合、圧力は外界と同じになる必要はなく、また化学的な平衡も必要ない。
  • (B) [熱的平衡+力学的平衡] 温度および圧力が外界に一致する。内燃機関、ガスタービン、ボイラなどの燃焼排ガスは外気と直接接触混合するので、温度に加えて圧力も外界と一致する必要がある。
  • (C) [熱的平衡+力学的平衡+化学的平衡] 温度、圧力が外界に一致することに加えて、拡散・反応によって外界を構成する物質と化学的にも平衡する。前記の燃焼排ガスが外界(大気)と平衡するのは、厳密には排ガス成分の拡散や何らかの化学反応を経た後となるが、現実には、拡散過程やこれらの化学反応から有用な仕事を得る手段がないため、化学的平衡を無視しても問題ない。実用上、このタイプの平衡を考えなければならない場合は多くないと思われる。

エクセルギー評価の具体例

対象設備


右図のようなボイラとタービンを用いた自家発電(熱電併給)設備を例に、 エクセルギー評価の方法について解説する。
 
 
 


図 6 全プロセスの模式図

ボイラで燃料を燃やして過熱蒸気を発生する。 燃焼プロセスと熱交換プロセスを検討するために、 ボイラを燃焼器と熱交換器に分けて扱う [注釈 1]。 ボイラで発生した過熱蒸気は長い管路を通って、蒸気タービンへ導かれる。 タービンでは動力を取り出して発電すると共に、 タービン途中から一部の蒸気を抽気し、またタービン背気(約 5 気圧)を用いて、 工場内の種々の加熱用熱源として利用する(熱電併給、コジェネレーション)。
また、比較のために、外界温度の復水器を用いて全て動力として取り出す場合(発電のみ)も 並行して計算し、検討の材料とする。
このような自家発電設備は、実際はかなり複雑な構成となるが、 ここではエクセルギー評価の概要と利点を紹介することを目的としているので, 空気予熱器や脱気器などの副次的な機器はないものとし、できる限り簡略化した構成とする。 対象とした設備の各部における蒸気等の条件 [6] を下表に示す。 タービン出口の条件は、タービン内部効率が 80 % となるように定めた。
 
表 2 各プロセスの諸条件
項目
圧力(MPa)
温度(℃)
流量(燃料 1 kg あたり)
備考
燃料
20
1 kg/s
Hh = 44200 kJ/kg、 Hl = 41400 kJ/kg
空気
0.1013
20
12.2 Nm3/s
理論空気量=10.89 Nm3/s、空気比=1.12、 cp = 1.30 kJ/(Nm3 K)
燃 焼 器 ( ボ イ ラ )
燃焼ガス
0.1013
2560
12.2 Nm3/s
cp = 1.30 kJ/(Nm3 K)
サブクール水
9.0
150
11.5 kg/s
h = 637.5 kJ/kg, s =1.8323 kJ/(kg K)
熱交換器(ボイラ)
燃焼ガス
0.1013
375
12.2 Nm3/s
cp = 1.30 kJ/(Nm3 K)
過熱蒸気
9.0
550
11.5 kg/s
h = 3510 kJ/kg, s = 6.814 kJ/(kg K)
配管抵抗
過熱蒸気
8.0
530
11.5 kg/s
h = 3472 kJ/kg, s = 6.819 kJ/(kg K)
タ ー ビ ン
抽気
1.8
337.5
1.02 kg/s
h = 3115 kJ/kg、 s = 6.968 kJ/(kg K)
背気
0.51
219
10.48 kg/s
h = 2895 kJ/kg、 s = 7.134 kJ/(kg K)
(排気)
0.002337
20
11.5 kg/s
h = 2291 kJ/kg、 s = 7.825 kJ/(kg K)、 かわき度 x = 0.899
また、用いた外界条件を下表に示す。
表 3 外界条件
物質
温度・圧力等
備考
燃料
20 ℃、760 mmHg
空気
20 ℃、760 mmHg
cp = 1.30 kJ(Nm3 K)}
燃焼ガス
20 ℃、760 mmHg
(空気で近似)、cp = 1.30 kJ(Nm3 K)
水・蒸気
20 ℃(17.53 mmHg)、飽和水
h0 = 83.9 kJ/kg 、s0 = 0.2963 kJ/(kg K)


燃焼プロセス(ボイラ)




図 7 燃焼プロセス

右図に示すように、C 重油を燃料とする燃焼器(ボイラ)で、 燃料の化学的エネルギーを熱エネルギーに変換するプロセスを取り上げる。 燃料の C 重油の高位発熱量は Hh = 44200 kJ/kg, 低位発熱量は Hl = 41400 kJ/kg であり、 燃料 1 kg/s あたり、20℃ の燃焼用空気(比熱 1.30 kJ/(N m3 K) ) を12.2 N m3/s 供給して燃焼させ、 2560 ℃ の燃焼ガス 12.2 N m3/s が発生したとする。 燃焼ガスの比熱も空気と同じく 1.30 kJ/(N m3 K) として扱う。

エンタルピー収支

流入エンタルピーは、燃料の化学的エネルギー(低位発熱量) 1×41400=41400 kJ/s と、 空気のエンタルピー 12.2×1.30×(293.15 - 293.15) = 0 kJ/s を合わせて、41400 kJ/s である。
流出エンタルピーは、燃焼ガスのエンタルピー 12.2×1.30×(2560-20)=40284 kJ/s であり、 差 41400 - 40284 = 1116 kJ/s が、放熱によるエネルギー損失となる (放熱自身は測定困難であるので、エンタルピー収支から推定することになる)。
エンタルピー収支の結果を下表のエンタルピー欄に示す。
 
表 4 燃焼プロセス(ボイラ)のエネルギー収支
区分
項目
エンタルピー
エクセルギー
kJ/s
%
kJ/s
%
流入
燃料
41400
100
43095
100
空気
0
0
0
0
41400
100
43095
100
流出
空気(燃焼ガス)
40284
97.3
29738
69.0
放熱
1116
2.7
823
1.9
LW
---
---
12534
29.1
41400
100
43095
100
 
 

エクセルギー収支

ラントの近似式(表 1 )を用いて、 燃料のエクセルギーは e = 0.975 × 44290 = 43095 kJ/kg となる。 流入エクセルギーは、燃料の 1 × 43095 = 43095 kJ/s だけである。
燃焼ガスが持ち出すエクセルギーは、式 (7) より
 

  E = 12.2 \times 1.30 \times
      \left[ 2560 - 20 - (273.15+20) \times \ln\left(\frac{273.15+2560}{273.15+20}\right) \right]
    = 29738 {\rm kJ}
 
 
となる。 また、前記の放熱 1116 kJ/s は燃焼ガスから外界へ放出されたと考えると、 燃焼前後の温度 20 ℃ と 2560 ℃の(絶対温度の)対数平均値
 

  T_m = \frac{2560 - 20}{\ln[(273.15+2560)/(273.15+20)]} = 1119 ~\mbox{K} = 846 ~\mbox{deg.C}
 
 
を式 (3) に用いて、 放熱量 1116 kJ/s のエクセルギーは 1116 ×(1-293.15/1119) = 823 kJ/s となる。 流入、流出エクセルギーの差 43095 - 29738 - 823 = 12534 kJ/s が エクセルギー損失 LW となる。
放熱 1116 kJ/s の放熱温度をいくらに選ぶかによって、放熱のエクセルギーと LW との内訳が変わるが、 いずれにしてもこの両者がエクセルギーの損失であることに変わりない。
エクセルギー収支を上の表のエクセルギー欄に示す。
 

評価

燃焼に伴い 29.1 % という大きなエクセルギー損失が生じている。 燃焼のように熱以外のエネルギーが熱エネルギーに変わる際には、 このような大きな損失が生じるが、 このことは、エンタルピー収支では見ることはできない。
   

熱交換プロセス(ボイラ)

右図に示すように、燃焼ガスを用いて蒸気を発生する熱交換プロセスを取り上げる。
 
 


図 8 熱交換プロセス
 

エンタルピー収支

流入するエンタルピーは、燃焼ガスのエンタルピー 12.2 × 1.30 × (2560 - 20) = 40284 kJ/s と 水のエンタルピー 11.5 × (637.5 - 83.9) = 6366 kJ/s の 計 46651 kJ/s である。
流出するエンタルピーは、燃焼ガスのエンタルピー 12.2 × 1.30 × (375 - 20) = 5630 kJ/s と 蒸気のエンタルピー 11.5 × (3510 - 83.9) = 39401 kJ/s の計 45031 kJ/s である。 残りの 1620 kJ/s が周囲への放熱となっている。
エンタルピー収支の結果を下表のエンタルピー欄に示す。
 
表 5 熱交換プロセス(ボイラ)のエネルギー収支
区分
項目
エンタルピー
エクセルギー
kJ/s
%
kJ/s
%
流入
燃焼ガス
40284
86.4
29738
96.2
6366
13.6
1189
3.8
46651
100
30926
100
流出
燃焼ガス
5630
12.1
1941
6.3
蒸気
39401
84.5
17428
56.4
放熱
1620
3.5
1299
4.2
LW
---
---
10258
33.2
46651
100
30926
100
 
 

エクセルギー収支

流入エクセルギーは、燃焼ガスのエクセルギー 12.2×1.30×{2560 - 20 - 293.15×ln[(273.15+2560)/293.15]} = 29738 kJ/s と 水のエクセルギー 11.5×[637.5 - 83.9 - 293.15×(1.8323 - 0.2963)] = 1189 kJ/s の 計 30926 kJ/s である。
流出エクセルギーは、燃焼ガスのエクセルギー 12.2×1.30×{375 - 20 - 293.15 × ln[(273.15+375)/293.15]} = 1941 kJ/s と 蒸気のエクセルギー 11.5×[3510 - 83.9 - 293.15×(6.814 - 0.2963)] = 17428 kJ/s となる。 放熱量 1620 kJ/s の持っていたエクセルギーは、 放熱温度を2560 ℃ と 375 ℃ の対数平均値
 

  T_m = \frac{2560 - 375}{\ln[(273.15+2560)/(273.15+375)]} = 1481 ~\mbox{K} = 1208 ~\mbox{deg.C}
 
 
を用いて、1620×( 1 - 293.15/1481 ) = 1299 kJ/s となる。 したがって、残りの 30926-1941-17428-1299 = 10258 kJ/s が LW となる。
エクセルギー収支を上の表のエクセルギー欄に示す。

 

評価

エンタルピー収支では、損失は 3.5% の放熱によるものだけであるが、 エクセルギー収支では、33.2 % もの LW が生じる。 これは有限温度差での熱交換に伴う損失であり、エンタルピー収支では見出すことはできない。

 

管路抵抗

右図に示すように、ボイラからタービンまでの管路における損失を取り上げる。 圧力 9.0 MPa 温度 550℃ の過熱蒸気が配管内を流れ、 管路抵抗により圧力 8.0 MPa 温度 530 ℃ となるものとする。
 
 


図 9 管路抵抗による圧力損失

エンタルピー収支

流入蒸気のエンタルピーは 11.5×(3510 - 83.9) = 39401 kJ/s 、 流出蒸気のエンタルピーは 11.5×(3472 - 83.9) = 38964 kJ/s である。 両者の差 437 kJ/s が放熱によるエンタルピー損失である。
エンタルピー収支の結果を下表のエンタルピー欄に示す。
 
表 6 管路抵抗のエネルギー収支
区分
項目
エンタルピー
エクセルギー
kJ/s
%
kJ/s
%
流入
蒸気
39401
100
17428
100
39401
100
17428
100
流出
蒸気
38964
98.9
16974
97.4
放熱
437
1.1
279
1.6
LW
---
---
174
1.0
39401
100
17428
100
 
 

エクセルギー収支

流入蒸気のエクセルギーは 11.5×[3510 - 83.9 - 293.15×(6.814 - 0.2963)] = 17428 kJ/s 、 流出蒸気のエクセルギーは 11.5×[3472 - 83.9 - 293.15×(6.819 - 0.2963)] = 16974 kJ/s である。 放熱量 437 kJ/s の持っていたエクセルギーは、 放熱温度を 550 ℃ と 530 ℃ の平均 540 ℃ として 437×[ 1 - 293.15/(273.15+540) ] = 279 kJ/s となる。 したがって、残りの 17428-16974-279 = 174 kJ/s が LW となる。
 

評価

管路抵抗による圧力損失は等エンタルピー変化であり、 エンタルピー収支では損失として出てこない。 エクセルギーで評価してはじめて損失として算出することができる。 ただし、この例の 1 MPa の圧力損失は大きめの値であるが、 これでも 1 % 程度であり、予想に反して大きくはない。
 

動力発生プロセス(熱電併給)

右図に示すように、背圧タービンでの動力発生プロセスを取り上げる。
 
 


図 10 タービン(熱電併給)

圧力 8.0 MPa 温度 530 ℃ の過熱蒸気を燃料 1kg 換算で 11.5 kg/s をタービンに導き、 途中の 1.8 MPa の位置で 換算 1.02 kg/s 取り出し(抽気)、 残り 10.48 kg/s をタービン出口の 0.51 MPa まで膨張させる(背気)。 タービンからは発電機を介して電力を取り出すと共に、 抽気と背気を工場内の種々の加熱用熱源として活用する。 タービン内部効率は 80 % としている。 

エンタルピー収支

流入エンタルピーは、蒸気の 11.5×(3471.6 - 83.9) = 38959 kJ/s である。 流出エネルギーは、電力の 6254 kJ/s、 漏洩蒸気の 0.04×(3471.6 - 83.9) = 136 kJ/s、 抽気の 1.02×(3115.1 - 83.9) = 3092 kJ/s、 背気の 10.44×(2895.4 - 83.9) = 29352 kJ/s であり、 残りの 38959 - 6254 - 3092 - 29352 - 136 = 125 kJ/s が放熱ということになる。 漏洩蒸気は、安全側に見て入口状態の値を用いた。
エンタルピー収支の結果を下表のエンタルピー欄に示す。
 
表 7 タービンのエネルギー収支(熱電併給)
区分
項目
エンタルピー
エクセルギー
kJ/s
%
kJ/s
%
流入
蒸気
38959
100
16971
100
38959
100
16971
100
流出
電力
6254
16.1
6254
36.9
抽気
3092
7.9
1097
6.5
背気
29352
75.3
8427
49.7
漏洩蒸気
136
0.3
59
0.3
放熱
125
0.3
67
0.4
LW
---
---
1067
6.3
38959
100
16971
100
 
 

エクセルギー収支

流入エクセルギーは、 蒸気の 11.5×[3471.6 - 83.9 - 293.15×(6.8186 - 0.2963)] = 16971 kJ/s である。 流出エクセルギーは、電力の 6254 kJ/s、 漏洩蒸気の 0.04×(3471.6 - 83.9 - 293.15×(6.8186 - 0.2963)]) = 59 kJ/s 、 抽気の 1.02×(3115.1 - 83.9 - 293.15×(6.9684 - 0.2963)]) = 1097 kJ/s、 背気の 10.44×(2895.4 - 83.9 - 293.15×(7.1337 - 0.2963)]) = 8427 kJ/s である。
放熱量のエクセルギーは、 放熱温度を 530 ℃ と 219 ℃ の対数平均値
 

  T_m = \frac{530 - 219}{\ln[(273.15+530)/(273.15+219)]} = 635 \mbox{K} = 362 ~\mbox{deg.C}
 
 
を用いて、125×( 1 - 293.15/635 ) = 67 kJ/s となる。 したがって、残りの 16971-6254-1097-8427-59-67 = 1067 kJ/s が LW となる。
エクセルギー収支の結果をエクセルギー欄に示す。
 

評価

電気的エネルギーはエクセルギーに等しい。 それに対して、抽気、背気等の比較的低温の蒸気の場合、 エンタルピーとエクセルギーの間に大きな差があることに注意されたい。

 
 
設備全体のエネルギー収支


以上の機器別収支を集めてまとめた設備全体のエネルギー収支を、下表に示す。
 
 
表 8 設備全体のエネルギー収支(熱電併給)
区分項目エンタルピーエクセルギー
kJ/s%%kJ/s%%
流入燃料4140086.71004309597.3100
燃焼用空気0000
ボイラ給水636613.311892.7
4776610044284100
流出発生電力625413.181.1625414.135.6
抽気熱量30926.510972.5
背気熱量2935261.5842719.0
ボイラ排ガス563011.811.819414.44.4
燃焼器放熱11162.37.28231.95.7
熱交換器放熱16203.412992.9
配管放熱4370.92790.6
タービン漏洩1360.3590.1
タービン放熱1250.3670.2
燃焼器 LW------01253428.354.3
熱交換器 LW------1025823.2
配管 LW------1740.4
タービン LW------10672.4
3895910016971100

エンタルピー収支では、抽気・背気の熱量を額面どおり過大に評価する。 本設備のように背気の熱を加熱用熱源として利用する場合は、 損失がほとんどないとの誤った印象を与える。
一方、エクセルギー収支を見ると、 大きな損失がボイラ(燃焼器・熱交換器)での燃焼と熱交換にあることがわかる。 この損失を少なくするには、 燃焼温度を(燃焼用空気量を理論空気量に近づけて)高くして、 ボイラの圧力と温度を高くして燃焼ガスとの温度差を小さくする 等の対策を行うのが有効と思われる。 さらには、ボイラ排ガスの持ち出すエクセルギーも少なくないことから、 排ガスを用いた給水加熱、燃焼用空気・燃料の予熱、その他の対策も必要と思える。
 
 
 

復水タービンを用いて発電のみを行った場合の試算

比較のため、 同じ蒸気を用いて外界温度の復水器圧(20℃ の飽和蒸気圧 0.00234 MPa )まで 復水タービンで膨張させて仕事を取り出す場合について、計算する。
 
 


図 11 タービン(発電のみ)

タービンのエンタルピー収支(発電のみ)

流出エネルギーのうち、電力は 13360 kJ/s となり、 排気エンタルピーは 11.46 × (2291 - 83.9) = 25294 kJ/s、 放熱が 170 kJ/s となる。 排気は20 ℃、89.9 % の湿り蒸気となっている。
 
表 9 タービンのエネルギー収支(発電のみ)
区分
項目
エンタルピー
エクセルギー
kJ/s
%
kJ/s
%
流入
蒸気
38959
100
16971
100
38959
100
16971
100
流出
電力
13360
34.3
13360
78.7
排気
25294
64.9
0
0.0
漏洩蒸気
135
0.3
59
0.3
放熱
170
0.4
72
0.4
LW
---
---
3480
20.5
38959
100
16971
100
 
 

タービンのエクセルギー収支(発電のみ)

流出エクセルギーは、電力の 13360 kJ/s、 排気の 11.46 × [(2291 - 83.9 - 293.15 ×(7.8252 - 0.2963)]) = 0 kJ/s である。 放熱量のエクセルギーは、 放熱温度を 530 ℃ と 20 ℃ の対数平均値
 

  T_m = \frac{530 - 20}{\ln[(273.15+530)/(273.15+20)]} = 506 \mbox{K} = 233 ~\mbox{deg.C}
 
 
を用いて、169 × ( 1 - 293.15/506 ) = 72 kJ/s となる。 したがって、残りの 16971-13360-59-71 = 3480 kJ/s が LW となる。
 

設備全体のエネルギー収支(発電のみ)

この場合の設備全体のエネルギー収支を下表に示す。
 
表 10 設備全体のエネルギー収支(発電のみ)
区分
項目
エンタルピー
エクセルギー
kJ/s
%
%
kJ/s
%
%
流入
燃料
41400
86.7
100
43095
97.3
100
燃焼用空気
0
0
0
0
ボイラ給水
6366
13.3
1189
2.7
47766
100
44284
100
流出
発生電力
13360
28.0
81.1
13360
30.2
30.2
排気熱量
25294
53.0
0
0.0
ボイラ排ガス
5630
11.8
11.8
1941
4.4
4.4
燃焼器放熱
1116
2.3
7.2
823
1.9
5.7
熱交換器放熱
1620
3.4
1299
2.9
配管放熱
437
0.9
279
0.6
タービン漏洩
136
0.3
59
0.1
タービン放熱
170
0.4
71
0.2
燃焼器 LW
---
---
0
12534
28.3
59.8
熱交換器 LW
---
---
10258
23.2
配管 LW
---
---
174
0.4
タービン LW
---
---
3480
7.9
38959
100
16971
100
この場合、 排気は外界と平衡しているので、ここから仕事(および熱)を取り出すことはできない。 しかし、エンタルピー収支では 20 ℃、89.9 % の湿り蒸気を飽和水まで 冷却して得られる熱量 25294 kJ/s を計上しているので、 「タービン排気に大きな無駄がある」という誤った結論につながりやすい。
エクセルギー収支によれば、タービンの損失が 7.9 % に増加しているのがわかる。 復水タービンで蒸気を低圧まで膨張させたため、 元々良くなかったタービン効率の影響が大きく現れたものと判断される。 復水タービンとするのであれば、タービンの改良が必要かもしれない。
 
 

注釈


  1. ^ 実際は燃焼中の火炎からの放射伝熱で蒸発管内の水を加熱するので、 燃焼と伝熱が同時に進行する。 このため、ここでの計算による燃焼ガスの温度などは、 実際とはかなり異なった値になっていると思われる。

エクセルギー評価のメリット

熱力学第二法則によると、熱エネルギー以外のエネルギーと熱エネルギーとは等価ではなく、 また同じ熱エネルギーの間でも、その温度によってそこから取り出せる仕事量は異なる。 エンタルピーを用いた従来のエネルギー評価ではエネルギーの質の違いを無視しており、 エネルギーの価値を正しく評価することができない。
エクセルギーはエネルギーのうちの有効な部分だけを取り出したものであり、 質の違いを含めたエネルギーの正しい評価方法である。
上のケースで見た例は、産業への応用分野で広く見られる例である。 火力発電所の場合を例として見てみると、得られた蒸気でこの後タービンを回して発電し、 タービンを出た低温の蒸気を海水で冷やして元の水に戻す。 その際、大量の熱を海水中に捨てることになるが、エンタルピーで評価する限りは、 ここで大量のエネルギーを海水中へ捨てて無駄が生じていることしか分からない。 この無駄を少なくするためには、発電プラント全体の種々の条件を様々に変えて、 繰り返し計算して最適の条件を見つかなければならない。 膨大な作業となる可能性がある。
エクセルギーを用いて評価すると個々の機器(要素プロセス)ごとに損失を計算でき、 さらにその損失の原因を特定することができるため、 どこを改善すべきかは容易に判断できる。 損失の機器別・原因別分析 を的確に行うことができる。 エネルギー問題や地球環境問題が重要な課題となっている現代において、 エクセルギーは省エネルギーのための極めて有力な手段であるといえる。
 
  

参考文献


  1. ^ 小出昭一郎、『物理学〔三訂版〕』』裳華房 (1997) 202ページ
  2. ^ a b c d e f g h 石谷清幹 他、『熱管理士教本 エクセルギーによるエネルギーの評価と管理』、 共立出版 (1977)、ISBN 4-3200-8000-9.
  3. ^ 小出昭一郎、『基礎物理学2 熱力学』東京大学出版会 (1980) 80ページ
  4. ^ a b c d e 久角喜徳 他、 『エクセルギーデザイン学の理解と応用 続熱管理士教本』大阪大学出版会 (2012).
  5. ^ a b c 伊藤猛宏・山下宏幸、2002、『工業熱力学(1)』初版、 コロナ社〈機械系 大学講義シリーズ 17〉 ISBN 4-339-04051-7.
  6. ^ a b P.W.Atkins (千原秀昭、中村亘男 訳), 『アトキンス 物理化学(上)』、東京化学同人 (2001)、ISBN 4-8079-0529-5.
最終更新 2014年12月2日
 
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以下抜粋:
事業事前評価表
 
作成日:平成22年10月5日
独立行政法人 国際協力機構
担当部課:産業開発部エネルギー・資源課
 
 
サハラを起点とするソーラーブリーダー研究開発(1)
 
2.協力概要
(1) 事業の目的
本研究協力では、サハラをはじめとする不毛の砂漠を、シリコン太陽電池の原料であるシリカ及び日照の宝庫として活用し、太陽光発電パネルの主材料となるシリコンを還元する基礎研究、および還元されたシリコンから太陽光発電用パネルを製造し、砂漠に太陽光発電所を建設し太陽光発電を行っていく増殖的(ブリーダー)な計画実施のための研究、及び、アフリカにおける太陽光発電の有効活用、長距離低損失送電の可能性を実証する国際共同研究を開始する。具体的には、アルジェリア国(以下、「ア」国と称す)のオラン科学技術大学に現地連携拠点「サハラ太陽エネルギー研究センター」を設置し、シリカと炭材の高純度化技術の開発、ソーラーシリコン新合成法の開発とテスト装置の設置を行う。
 
(2)
協力期間
2011年1月~2015年12月(5年間)
(1) 「ソーラーブリーダー」とは、砂漠に太陽光発電所を建設し、発電した電力と砂漠の砂に含まれるシリコン原料を使って太陽光パネルを生産する。生産したソーラーパネルを使って太陽光発電所を建設し、ソーラーパネルの生産規模を拡大する。これを繰り返すことによって、砂漠を太陽光パネル生産と太陽光発電の拠点とし、さらに超電導ケーブルで繋ぐことで全世界の電力をカバーしていく構想である。
(2) 「超伝導」とは、特定の金属や化合物などを極低温に冷却したときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象。電気抵抗がゼロとなることにより、一度流れ始めた電流が電圧降下なしに永続する。
(3) 「WEB-ELS」とは、Web-based E-Learning Systemの略。
普通のパーソナルコンピュータ(PC) で使える、汎用e-Learning /e-Communication 統合プラットフォームを提供するシステムである。マルチOS 対応であり、特別なソフトウェア・ハードウェアの準備は不要である。
(3) 協力総額(JICA側)
合計:約3億円(JICA予算ベースのみ、国内協力期間、独立行政法人科学技術振興機構(JST)等外部資金を含まない)
(4) 協力相手先機関
責任機関: 高等教育・科学研究省
(Ministry of Higher Education and Scientific Research: MHESR)
実施機関: オラン科学技術大学(University of Science and technology, Oran, USTO)
協力機関: サイーダ大学(Saida University)
アドゥラル 再生可能エネルギー開発ユニット(Development Unit of Renewable Energy, Adrar)
対象地域:オラン市、サイーダ市
(5)国内協力機関
実施機関: 東京大学(代表研究機関)、東京工業大学、弘前大学、中部大学 独立行政法人国立情報研究所、独立行政法人物質・材料研究機構他
(6)裨益対象者及び規模、等 本研究協力による直接的な裨益者とその規模は以下のとおりである。
①オラン科学技術大学(以下、「USTO」と称す)、サイーダ大学の管理者、研究者:USTOの本研究協力にかかる管理者6名、およびC/PとなるUSTO、サイーダ大学の研究者17名、両大学の本研究協力関連の研究を行う学生
②アドゥラル 再生可能エネルギー開発ユニットの研究者:アドゥラル 再生可能エネルギー開発ユニット5~10名程度の研究者
また、本研究協力を通じ、新たな研究、開発に大きな成果が出た場合、上記研究機関に加え「ア」国の一般市民に対しても間接的な裨益が及ぶこととなる。
3.協力の必要性・位置づけ
(1)「ア」国におけるエネルギーセクターの現状及び問題点
「ア」国は、豊富な炭化水素資源を有しており、石油に関しては、世界の総生産量では世界で14位、また、天然ガスに関しては、世界で第6位の生産量を誇っている(4)。また天然ガスをはじめとする炭化水素関連産業は、2008年のデータで国家歳入の60%、GDPの約30%を占め、「ア」国経済の中心的な役割を果たしている。
こうした「ア」国経済構造の下、2000年半ばからの世界的な原油高を背景に、「ア」国の財政は黒字を続け、2008年の実質GDP成長率は3.0%、また、一人当たりGDPは4,588ドル、対外累積残高は、ピーク時の1999年の336億ドルから57億ドルまで減少し、中進国へと発展しつつある。
(4)出典:U.S. Energy Information “Country Analysis Brief, Algeria”。参考URLは以下のとおり。 http://www.eia.doe.gov/cabs/Algeria/Full.html
このように、「ア」国経済は良好に推移しているが、同時にエネルギー需要も急増しており、将来の炭化水素資源枯渇への不安に加えて炭化水素資源の使用によるCO2排出量の増加による地球温暖化への懸念も広がりつつある。
一方、炭化水素資源に大きく依存した「ア」国の経済構造は、「ア」国社会の大きな不安要素となっている。炭化水素関連産業は、「ア」国に膨大な利益をもたらしているにもかかわらず、雇用吸収率は2%に過ぎず、同国の雇用機会の創出への貢献度は低い。「ア」国の2007年における失業率は11.8%となっており、雇用の創出・新規産業の育成、そして産業を担う人材の育成が重要な政策課題となっている。
こうした状況の中で、「ア」国はアフリカ大陸で2番目に広大な国土面積を有し、太陽光日射量においては、南部地域で6kWh/㎡/day(東京の約2倍)と、世界有数の太陽光日射量の多い地域に位置することから、太陽光発電の可能性への期待が高まっている。一方、「ア」国の国土は約9割が砂漠(サハラ砂漠)であり、国土面積の3.5%が農地として活用されているのみである。そのことから、現状活用されていない砂漠の砂からシリコンを還元し、太陽光発電パネルの主材料として活用すること、そして還元されたシリコンを活用し、砂漠地帯に太陽光発電所を建設し、エネルギー生産拠点として活用すること、またこれら共同研究を通じ、研究人材を育成されていくことについても大きな期待が寄せられている。 (2)「ア」国におけるエネルギーセクター政策上における本事業の位置付け
「ア」国経済に大きな影響を与えるエネルギー分野については、石油・ガス等の炭化水素資源を如何に長期にわたって効率的に活用する視点から、1986年に制定され、2005年に改定された「ア」国の炭化水素法に基づき、資源全体の把握(既存推定埋蔵量と新規発掘サイトに関するデータベースの開発)と戦略的活用に向けた調査研究が開始されている。
また「ア」国政府は、エネルギーの多様化促進の視点から原子力発電、太陽光をはじめとした再生可能エネルギーに関する研究開発を重点課題として位置づけており、2015年までに太陽光発電、太陽熱発電などの太陽エネルギーにより総電力需要の5%を賄うことを目標として掲げている。
こうした状況の中で「ア」国政府は、我が国に対し、「サハラを起点とするソーラーブリーダー研究開発」プロジェクトを要請した。本件研究は上述の太陽光発電に関連した研究開発の重点課題にった内容となっている。
本件研究協力においては、ソーラーブリーダー計画の実現により太陽光エネルギーを「ア」国の基幹産業とするための研究基盤の整備と研究者をはじめとした人材育成を求めている。 また、長期的な視点から、太陽光エネルギーにより発電された電力を、超伝導ケーブルシステムにより長距離送電する可能性を検討するための基礎データの収集も含まれている。
(3)他の援助機関の対応
太陽光発電に関しては、他の援助機関による支援は特に無い。しかし、太陽熱発電に関しては、世界銀行が、「ア」国やヨルダンなど中東・北アフリカ5カ国に対し、官民協調により、今後3~5年の間に11施設を建設する予定など、太陽熱発電所建設に55億ドルを投資する計画がある。
また、ドイツ総合電機メーカー・シーメンスやドイツ・ミュンヘン再保険などドイツの民間企業12社が中心となり、総額4,000億ユーロを投入し、「ア」国をはじめとした北アフリカ地域に太陽熱・風力を利用した発電設備を建設する計画がある。本計画は、「デザーテック(DESERTEC)計画」と呼ばれており、太陽熱・風力発電した電力を、欧州・地中海高圧電力送電網と呼ばれる高圧直流送電(HDVC)網を使って送電する計画となっている。
今後も各ドナーにより「ア」国に対しての再生可能エネルギー分野への投資計画が発表される可能性もあり、常時、情報収集を行っていく必要がある。
(4) 我が国援助政策との関連、JICA国別事業実施計画上の位置づけ
我が国が2010年6月に策定した「ア」国事業展開計画の中で、「産業基盤の整備」を重点分野の一つと位置付け、「ア」国の産業構造多様化への支援を計画している。
かかる方針の下、JICAは産業基盤としてのエネルギーセクター及び研究者人材育成分野において、課題別研修「中東地域太陽光エネルギーの発電技術」を計画し、また「オラン科学技術大学若手教官育成のための長期研究」(国別研修)、「地域産業育成のための産学官連携コーディネーター養成」(課題別研修)などを支援する予定となっている。
さらに、昨今途上国において、我が国の科学技術を活用した地球規模の課題に対する国際協力への期待が高まるとともに、日本国内でも科学技術の外交やODAでの活用の必要性・重要性が謳われてきた。内閣府総合科学技術が取りまとめた「科学技術外交の強化に向けて」(平成19年4月、平成20年5月)や、平成19年6月に閣議決定された「イノベーション25」においては、開発途上国との科学技術協力を強化する方針が打ち出されている。
そのような中で、環境・エネルギー、防災及び感染症対策をはじめとする地球規模課題に対し、開発途上国との共同研究を実施するとともに、開発途上国側の能力向上を図ることを目指す、「地球規模課題に対応する科学技術協力」事業が平成20年度に創設された。本研究協力はこの一つとして採択されており、我が国の援助方針・科学技術政策に合致している。 なお、「地球規模課題に対応する科学技術協力」事業は、文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構(以下、「JST」と称す)、外務省、JICAの4機関が連携するものであり、国内での研究支援はJSTが行い、開発途上国に対する支援はJICAが行うこととなっている。
 
4.協力の枠組み
(1) 協力の目標
プロジェクト目標:
ソーラーブリーダー(ソーラーシリコン工場と太陽光発電所)の持続的な拡大の可能性を検証し、地球エネルギー新体系の基盤研究(太陽光電池の性能、超伝導ケーブルの導入)、人材開発の基礎を確立する。
指標:
地球エネルギー新体系の基盤研究、人材開発の基礎が確立される。
(年報、研究会予稿により確認)
(2)
成果(アウトプット)と活動
成果1:
シリコン製造の熱力学的プロセスデザインを行い、現在用いられている珪石ではなく、砂漠に豊富にある硅砂を原料とするシリコン還元プロセス技術を開発する。
活動:
1-1. シリコン製造の熱力学的プロセスデザイン
1-2. 砂の高純度化
1-3. 砂漠
の砂(シリカ:SiO2)を原料とするシリコン還元プロセス技術の開発(弘前大学で実施)
指標・目標値:
1. 2012年末において硅砂シリカ(SiO2)を原料とする新還元法によるシリコン純度において、硼素・リン濃度が10ppm以下(EDX、ICPによる元素成分分析)
成果2:
砂を原料とするシリコン製造のテストプラントのアルジェリアへの移設とプロセスの確立
活動:
2-1. 弘前大学での装置調整
2-2. アルジェリア側への装置移設(テストプラント構築)
2-3. アルジェリアでのシリコン還元プロセスの確立
指標・目標値:
2-1. テストプラントが生産能力を年間1
トン以上となる。
(生産量のチェック、生産物の成分分析)
成果3:
各種太陽電池の性能(効率、耐久性)の定量的データを蓄積し、課題と対策を整理する。
活動:
3-1. 太陽電池パネルの調達と据付
3-2. データの収集、課題と対策の整理
3-3. 活用 方法の検討(砂漠地域における太陽電池の活用法を含む)
指標・目標値:
3-1. 太陽 電池の性能(効率、耐久性)の定量的データ蓄積のために、太陽電池の種類が2種以上で、運用期間が2年以上となる。
成果4:
高温超伝導ケーブルシステム運用に関する問題点の摘出と対策を考察する。
活動:
4-1. 測定 装置の調達と据付
 
4-2. デー タの収集、課題と対策の整理
指標・目標値:
4-1. 超伝導ケーブル配管を目指したアルジェリアにおける地中温度の長期記録(
延べ100日以上)
成果5:
アフリカ地域のエネルギー工学研究の拠点を形成し、日本発の多機能遠隔教育・情報交流システム:WebELSを活用した複素エネルギー教育・研究を行う。
活動:
5-1. WebELSシステムを活用するインフラの構築。指導員の養成
5-2. オラン科学技術大学に開設するサハラソーラーエネルギー研究センター(SSERC)における上記研究と共に、WebELSを活用した地球規模エネルギー分野の研究者育成支援
指標・目標値:
5-1. WebELSサーバ、会議システムの導入
5-2. E-learningによるエネルギー工学講義の実践延べ人数年間8人以上、博士学生教育のべ5人以上となる。
成果6:
サハラソーラーエネルギー技術開発ワークショップの開催(日本・アルジェリア交互:2011-2016) 活動:
6. 日本アルジェリア国際会議を毎年開催
指標・目標値:
6-1. 日本
アルジェリア国際会議を毎年開催する。
(3) 投入(インプット)
日本側
a) 専門家: 長期専門家 1名(業務調整) 短期専門家 13名(研究者リーダー、熱力学プロセス、
還元プロセス、太陽光発電、超伝導システム、遠隔教育他)
b) 本邦研修及び第三国研修 2-3名/年 X 5年間
c)機材 還元装置、太陽光パネル、気象データ測定システム、純水装置、原子顕微鏡、電子顕微鏡
d) その他の経費 国際セミナー開催に必要な経費
② 「ア」国側
a) 人材
・プロジェクトダイレクター
 
以下省略

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超伝導

 
超伝導(ちょうでんどう、Superconductivity)とは、特定の金属や化合物などの物質を非常に低い温度へ冷却したときに、電気抵抗が急激にゼロになる現象。電気工学分野では「超電導」と表記されることもある。1911年、オランダの物理学者ヘイケ・カメルリング・オンネスにより発見された。この現象と同時に、マイスナー効果により外部からの磁力線が遮断されることから、電気抵抗の測定によらなくとも、超伝導状態が判別できる。この現象が現れるときの温度は超伝導転移温度と呼ばれ、この温度を室温程度に上昇させること(室温超伝導)は、現代物理学の重要な研究目標の一つ。
金属は温度が下がると電気伝導性が上がり、逆に温度が上がると伝導性は減少する[1]。これは温度の上昇に伴って伝導電子がより散乱されるためである[2]。この性質から、絶対零度に向けて金属の電気抵抗はゼロになることが昔から予想されていた。このことを検証する過程で、超伝導は1911年にヘイケ・カメルリング・オネスによって発見された。超伝導となる温度(臨界温度、Tc)は金属によって異なり、例えばニオブは9.22K、アルミニウムは1.20Kとなる[2]
特定の物質が超低温に冷やされた時に起こる現象は「超伝導現象」(Superconductivity phenomenon)、超伝導現象が生じる物質のことは「超伝導物質」(Superconductor)、超伝導物質が超伝導状態にある場合「超伝導体」と呼ばれる。
液体窒素の沸点である-196℃(77 K)以上で超伝導現象を起こすものは特に高温超伝導物質(Cuprate superconductor)と呼ばれる。

物質が超伝導状態になるということは「水が氷になるように、まったく新しい相へ移行すること(相転移)」を意味する。このため超伝導相に移り変わる温度を、(超伝導)転移温度という。超伝導に転移する前の相は常伝導という。

超伝導体には電気抵抗がゼロになる他にも、物質内部から磁力線が排除されるマイスナー効果によって「磁気浮上」現象を起こす。この時、磁力線の強度への応答の違いから第一種超伝導体 (type-I superconductor) と第二種超伝導体 (type-II superconductor) とに分類される。第二種超伝導体では磁力線の内部侵入を部分的に許すことで高強度の磁力に対してマイスナー効果が発生する。第二種超伝導体では、ピン止め効果によりゼロ抵抗を維持している。
 
超伝導体には電気抵抗がゼロになる他にも、物質内部から磁力線が排除されるマイスナー効果によって「磁気浮上」現象を起こす。この時、磁力線の強度への応答の違いから第一種超伝導体(Type I superconductors)と第二種超伝導体(Type II superconductors)とに分類される。第二種超伝導体では磁力線の内部侵入を部分的に許すことで高強度の磁力に対してマイスナー効果が発生する。第二種超伝導体では、ピン止め効果によりゼロ抵抗を維持している。

これらの現象はいずれも、量子力学的効果によって起きていると考えられており、基本的なしくみはBCS理論によって説明される。日常では扱わない低温でしか発生しない現象で、その冷却には高価な液体ヘリウムが必要な事から、社会での利用は特殊な用途に限られていた。20世紀末にようやく上限温度(転移温度)が比較的高く安価な液体窒素で冷却できる高温超伝導体が相次いで発見されてから一般への認知も大きく進んだ。今後はさらに一般的な低温環境や室温で機能する実用的な超伝導体の発見が期待されている。

最終更新 2013年7月25日 (木) 21:28
 
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神原研究室:新しい高温超伝導体による究極の送電線の開発
 
 
 
2010/10/19 にアップロード
 
神原研究室では新しい高温超伝導体の探索と、それを利用した超伝導体のケーブル化、す­なわち線材化に取り組んでいます。現代社会で実用化されている銅、アルミなどの普通の­金属は、電流を流すとジュール熱という電気の無駄が発生し、使用可能な電力が小さくな­りを失います。
 
Q「10発電した場合に電力というのは、電線と介して使う方まで10運べないんです。­しかし、超伝導体を使いますとそのジュール熱が発生しません。電気抵抗率が全くないの­で。そうしますと10発電したものが使う側で10使う。使う方はパソコンだったり何だ­ったり一杯あると思いますけれども。使う方で10使える。そういった非常によい電線に­なります。」
 
現在もっとも超伝導転移温度(Tc)の高い銅酸化物や鉄オキシニクタイドなどのセラミ­ックスはもろく、加工技術の開発も大きな課題になっています。
 
Q「大抵高いTCの物はもろいです。セラミックス、陶器。そのセラミックスを多少加工­しやすい曲げたり動かし易いメタルで覆ってあげます。超伝導体をメタルで覆ってやっと­線材として使える様になるんですね。ただ、この超伝導体をメタルで覆うという作業は問­題が発生します。超伝導体とメタルが反応してしまうんですね。で、反応してよくわから­ないものになってしまう。このよくわからない部分を減らすための研究というのが、線材­化の研究といえるのではないかと思っています。」
 
また、現在最高のTcは138ケルビンで、この温度でも高温超伝導体よばれていますが­、300ケルビンの室温で電線などに利用するにはまだ温度が低いのです。そうした中で­、神原陽一氏は、典型的な磁石である鉄が正方格子状に無限に広がった結晶構造を持つ物­質群が、超伝導体に適していることを発見しました。
 
Q「例えば半導体として使われているシリコンだったり、あとは絶縁体で宝石として使わ­れているダイヤモンドであったり、あと驚くべき事に構造、建築材料ですね、セメントの­一種や、あとは鉄ですね。磁石である鉄も少し化学組成を変えてあげたり、高圧をかけて­あげたりすると超伝導体になります。」
 
いろいろな元素を利用して、室温下で超伝導体として使用可能な送電線が実現すれば、無­駄のない電力の発電、利用が可能になります。
 
Q「現在ですとリニアモーターカーの磁場を発生させる装置に使うとか、あとMRIの強­磁場を発生させるための装置として使用する、そういった応用例がありますのでそこに使­えような応用研究が出来たらなと思っています。」
 
 
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ナノテクリポート ~10億分の1の世界の夢~ (5)高温超伝導~薄膜が拓く可能性 NTT先端技術総合研究所
 
 
 
2014/01/15 に公開
2002年 29分
 
科学技術というだけではなく、経済、社会と様々な方面において大きな注目を集めている­「ナノテクノロジー」開発に携わる研究者たちは、世の中を変えるかもしれない全く新し­い技術を夢見て研究に励んでいる。最先端のナノテクノロジーの現場をレポートし、研究­者たちの生の声を聞く。
 
人物
科学館/研究所
 
NTT物性科学基礎研究所 山本秀樹 NTT先端技術総合研究所 NTT先端技術総合研究所
 
 
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超電導ケーブルと従来ケーブルとの比較(700MVA/3cct)


 
 
 
高温超電導ケーブル実証プロジェクト
 
 

 

 

設備紹介




 
超電導ケーブル > 東電実用性検証試験
 
 
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太陽電池

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%AA%E9%99%BD%E9%9B%BB%E6%B1%A0

太陽電池(たいようでんち、Solar cell)は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器である。光電池(こうでんち、ひかりでんち)とも呼ばれる。一般的な一次電池二次電池のように電力を蓄える蓄電池ではなく、光起電力効果によって光を即時に電力に変換して出力する発電機である。タイプとしては、シリコン太陽電池の他、様々な化合物半導体などを素材にしたものが実用化されている。色素増感型(有機太陽電池)と呼ばれる太陽電池も研究されている。
太陽電池(セル)を複数枚直並列接続して必要な電圧と電流を得られるようにしたパネル状の製品単体は、ソーラーパネルまたはソーラーモジュールと呼ばれる。モジュールをさらに複数直並列接続して必要となる電力が得られるように設置したものは、ソーラーアレイと呼ばれる。
単結晶シリコン型太陽電池


太陽電池の基本原理そのものは1839年フランスの物理学者アレクサンドル・エドモン・ベクレルによって最初に発見された[1][2][3]。しかし実際に発電が可能となったのは1884年アメリカの発明家Charles Frittsによる、半導体性のセレンと極めて薄いの膜とを接合したものからである[4]。これにより得られた変換効率はわずか1%ほどであった[4]。この発明は後にセレン光電池として1960年代までカメラ露出計などに広く応用されていたが、シリコン型の普及とともに市場から去っていった。(光起電力効果#歴史露出計も参照)
 
電力機器としての太陽電池の先駆けは、1954年、ベル研究所のダリル・シャピン(Daryl Chapin)、カルビン・フラー(Calvin Fuller)、ゲラルド・ピアーソン(Gerald Pearson)によって開発された、結晶シリコン太陽電池である[5]。通信機器に用いる電池が熱帯地方での使用に耐えなかったため、その代わりの電源として開発された[5]。当時は Bell Solar Battery と呼ばれ[3]太陽光エネルギー電力に変換する効率は6%だった[6]。当初は通信用・宇宙用等が主な用途で、一次電池を用いた世界最初の人工衛星スプートニク1号が21日の寿命しかなかったのに対し、太陽電池を用いた最初の人工衛星ヴァンガード1号[7]は6年以上動作し、その有用性を示している。その後無人灯台など徐々に用途を拡大し、日本でも1960年代に量産が開始された。しかし電源としての本格的な開発が始まったのは1974年石油ショック以降である。開発当初は数W分に過ぎなかった[5]生産量は、2010年時点でその数十億倍(23GWp/年)に増えている(太陽光発電の市場動向を参照)。
変換効率の向上と太陽電池の多様化も進み、現在では変換効率40%を超える化合物多接合型太陽電池も開発されている(右図)。


                      各種太陽電池の変換効率の向上の歴史(研究レベルの世界記録)


用途




 

結晶シリコン型太陽電池の代表的構造

太陽電池が電源として採用される主な理由として次のようなものが挙げられる。
 
    ●電池交換や給電線を不要とし、利便性向上やコスト削減を図る:電卓腕時計道路標識、庭園灯、街路灯、駐車券発行機、携帯電話の充電器など   ●他からの電力供給が難しいもしくは不可能な場所のエネルギー源:海洋や山岳地帯の観測機器、人工衛星宇宙ステーション、道路標識、庭園灯、街路灯、携帯電話の充電器、離島、送電網の未熟な地域など   ●温室効果ガス排出量削減用   ●需要ピーク時の補助電力用   ●可搬式電源  
    ●非常用電源
など。太陽光発電の項も参照のこと。
 
原理
 
概要
 
太陽電池は、の持つエネルギーを、直接的に電力に変換する。その変換過程では・蒸気・運動エネルギーなどへの変換を必要としない。太陽電池内部に入射した光のエネルギーは、電子によって直接的に吸収され、あらかじめ設けられた電界に導かれ、電力として太陽電池の外部へ出力される。 光起電力は特異な現象ではなく、亜酸化銅セレン等、半導体においては普遍性のある現象である。
 
pn接合型の場合
 
 

 
pn接合における光起電力効果

 
現在一般的な太陽電池は、p型とn型の半導体を接合した構造を持つ。即ち、大きなpn接合ダイオードフォトダイオード)である。下記のシリコン系化合物系の太陽電池がこれに該当する。 発光ダイオードと逆の過程を通じて電子に光のエネルギーを吸収させ(光励起)、半導体の性質を利用して、エネルギーを持った電子を直接的に電力として取り出す。詳しくは光起電力効果の項を参照のこと。
 
色素増感太陽電池の場合
 
色素増感太陽電池では、pn接合型とは様相が異なる。入射光によって、二酸化チタンに吸着された色素中の電子が励起される。この励起された電子を二酸化チタンを介して電極(陰極)へと導き、直流として取り出す。送り出された電子は外部回路を経由して対向電極(陽極)に戻り、電極間に挟まれた電解質中のイオンを介して再び色素吸着部へと戻る[8][9]
 
 回路部品としての動作


太陽電池の等価回路


太陽電池の等価回路は左図のようになる。最も単純なモデルでは抵抗成分を無視して、電流源I_{ph} と(理想ダイオードではない)ダイオードのみで表される。抵抗成分を無視した太陽電池の暗電流は、I_o逆方向飽和電流、qを電気素量、Vを電圧、nを理想ダイオード因子、kをボルツマン定数、Tを温度として
 
I = - I_o \Big\{ \exp \Big( \frac{qV}{nkT} \Big) - 1 \Big\}
のように表される。ここで n=1 としたものがpn接合の理想I-V特性である。
実際の素子を近似するには、直列抵抗(series resistance)R_s と並列抵抗(shunt resistance)R_{sh} 成分も考慮する。直列抵抗成分は素子各部を電流が流れる時の抵抗成分であり、これが低いほど性能が良くなる。並列抵抗はpn接合周辺における漏れ(リーク)電流などによって生じ、これが高いほど性能が良い。抵抗成分を含めた太陽電池の光照射時の電流-電圧特性は次のように表される。
 
I = I_{ph} - I_o \Bigg[ \exp \Bigg\{ \frac{q(V+R_sI)}{nkT} \Bigg\} -1 \Bigg] - \frac{V+R_sI}{R_{sh}}
  
 
太陽電池の電圧-電流特性
 
 
太陽電池の電圧-電流特性は右図のようになる。光照射時に於いて、端子を開放した時の出力電圧を開放電圧(open circuit voltage V_{oc})、短絡した時の電流を短絡電流(short-circuit current, I_{sc})と呼ぶ。またI_{sc} を有効受光面積S で割ったものを短絡電流密度J_{sc})と呼ぶ。最大の出力電力を与える動作点Pmax最大出力点(maximum power point, 最適動作点最適負荷点)と呼ぶ。また  FF = \frac{V_{\rm max}\cdot I_{\rm max}}{V_{oc}\cdot I_{sc}}曲線因子(fill factor)と呼ぶ。 照射光による入力エネルギーを 100mW/cm2(または1000W/m2)で規格化した測定では、公称変換効率は
 
\eta _n = V_{oc} \cdot J_{sc} \cdot FF
で与えられる。
太陽電池から効率よく電力を得るには、太陽電池を最大出力点付近で動作させる必要がある。このため大電力用のシステムでは通常、最大電力点追従装置(Maximum Power Point Tracker, MPPT)を用いて、日射量や負荷にかかわらず、太陽電池側からみた負荷を常に最適に保つように運転が行われる。  


種類


光吸収層の材料、および素子の形態などにより、多くの種類に分類される。 それぞれ異なる特徴を持ち、用途に応じて使い分けられている。
 

シリコン系

シリコンを用いる太陽電池は、材料の性質の観点からは、大きく結晶シリコンアモルファスシリコンに分類することができる。またその形態から、薄膜型や多接合型などを分別することができる。その形式や性能は非常に多様であり、近年は複数の型を複合させたものも実用化されている。このため、ここに挙げた分類法も絶対のものではないことを付記しておく。太陽電池に用いられるシリコンの純度、格子欠陥は集積回路用に比べて基準がゆるく、これまでは集積回路用のシリコンが用いられてきたが、太陽電池の生産量が増加するに従い、ソーラーグレードのシリコン材料の供給が望まれてきた。シリコンの高純度化には従来、水素とシリコンを反応させて蒸留して純度を高める化学的な手法が使用されていたが、近年は冶金的な手法により、真空中で電子ビームを照射する事によってシリコン中の不純物の気化精製、凝固精製を行い不純物を除去する事により、純度を高めるプロセスも開発されている[10]
 

シリコン膜の構造による分類

結晶シリコンの禁制帯幅は 1.12 eV であり、太陽電池に用いた場合、近紫外域から 1.2 μm 程度までのを吸収して発電できる。間接遷移型の半導体であるため光吸収係数が低く、実用的な吸収量を得るには最低200μm程度のシリコン層が必要とされてきた。しかし表面テクスチャなどを用いた光閉じ込め技術が発達してきており、近年は結晶シリコンであってもシリコン層が数 μm~50 μmなどと非常に薄く、薄膜太陽電池に分類できるものも開発されている。c-Siなどと略記される。
 
単結晶シリコン型








高純度シリコン単結晶ウエハを半導体基板として利用するもので、最も古くから使われている。変換効率は高いが高純度シリコンの利用量が多く、生産に必要なエネルギーやコストが高くなる。そのため近年は下記の多結晶シリコンや薄膜シリコン太陽電池に移行が進んでいる。

多結晶シリコン型








結晶の粒径が数mm程度の多結晶シリコンを利用した太陽電池。他のシリコン半導体素子の製造過程で生じた端材やオフグレード品のシリコン原料を利用して製造できる。単結晶シリコンに比べると面積あたりの出力(変換効率)は落ちるが、生産に必要なエネルギーは少なく、エネルギー収支やEPT、GEG排出量の面では単結晶シリコンより優れる。コストと性能のバランスの良さから、現在の主流となっている。近年はウエハを薄型化するコスト削減技術の競争が進んでおり、2004年の300μm厚から、2010年には150μm厚に半減すると予想されている[11]。また、ガラス上に非常に薄い多結晶シリコン太陽電池を形成する、CSG(またはSOG)技術の普及も有望視されている[12]化学気相成長により成膜するため生産過程でSiH4、NH3、H2などのガスを使用する。

微結晶シリコン型








微細な結晶で構成された薄膜をCVD法などにて製膜するものである。多結晶型の1種と見なせるが、製膜条件によってはアモルファス的な性質も併せ持つ。μc-Si などと略記される。比較的新しい技術で、インゴットを切断する手間が省け、資源の使用量も削減できるほか、製法によっては200℃程度の低温での製膜が可能で基板を選ばない、などの特長がある。今後、広範囲な応用が期待されている[13]化学気相成長により成膜するため生産過程でSiH4、PH3、B2H6,GeH4、H2などの気体を使用する。

アモルファスシリコン型
シランガスから化学気相成長 (CVD) させてできるアモルファスシリコンを利用した太陽電池で、a-Si などと略記される。形態的には薄膜シリコン太陽電池にも分類できる。アモルファスシリコンは、タウツギャップと呼ばれる通常 1.75~1.8 eV 程度のエネルギーギャップと、それより小さな裾準位を介したエネルギーギャップを持つ。結晶シリコンに比べてエネルギーギャップが大きいため、高温時も出力が落ちにくい特性を持つ。太陽電池にそのまま用いた場合は主に 700 nm 以下の短波長の光が利用され、見た目には赤っぽく見える。結晶構造の乱れにより、光学遷移にフォノンの介在を必要とせず、光吸収係数が高い。このため 0.5 μm 程度の厚さでも実用になり、使用するシリコン原料が少なく、エネルギーやコスト的にも有利である。極端な低照度下での効率が高いことや、蛍光灯の短波長光に感度があることから、主に電卓など室内用途に使われてきた。太陽光で劣化しやすいのが欠点だったが、技術の進歩により長寿命化され(アモルファスシリコンの光劣化参照)、近年は屋外用にも市販されている。エネルギー変換効率が10%以下と低い(設置面積が大きくなる)のも欠点だったが、多結晶シリコン等と積層した多接合型とすることで高性能化されている。またタウツギャップの大きさはドーピングによって1~2eV程度の範囲で可変であり、これを利用してアモルファス層のみで構成された多接合型太陽電池も実用化されている。近年は下記の薄膜太陽電池の一種として論じられることも多い。化学気相成長により成膜するため生産過程でSiH4、PH3、B2H6、GeH4、H2などの気体を使用する。また、アモルファスシリコン太陽電池の開発過程で培われた大面積ガラス基板上での半導体製膜技術はTFT液晶ディスプレイパネルの生産技術にも役立った。
薄膜シリコン型








シリコン層の厚みを薄くすることで、使用原料、生産に要するエネルギー、コストなどの削減をはかったもの。比較的新しい技術で、様々な形態が存在するためひとくくりにするのは難しい。広義には省資源化の意味で、従来の数百μmよりも薄いもの全般(例えば 100 μm 以下)を指す。狭義には柔軟性なども充分に得られる厚みの意味で、例えば 10 μm 以下のものを指す。シリコン融液から表面張力でリボン状に引き出すストリングリボン法[14]を用いた型や、CVD法などを用いる微結晶型などが代表的である。厚みは生産方法の選択によって100nm(0.1μm)単位から数百µm以上まで連続的にカバーでき、目的に応じて使い分けられる。インゴットから切断したウエハを用いて製造する場合は通常数百 μm 単位になるのに対し、融液から直接薄膜の形にするリボン法などでは100 μm 以下、CVD法などを用いた場合(アモルファス型や微結晶型など)では0.5~数μmまで薄くなる。薄膜のままでは充分に入射光を吸収できないため、表面テクスチャや中間層を用いて光学的特性を制御し、入射光の利用率を高める工夫が施される(ライトトラッピング)。効率の低下分よりも生産時の使用エネルギーやコストが多く削減できるため、環境負荷の観点から優秀なものが多い。

ハイブリッド型(HIT型)
結晶シリコンとアモルファスシリコンを積層した太陽電池である。通常の結晶シリコンに比して変換効率が高く、温度特性も良いなどの特長を有する[15][16]。シリコンの使用量が減らせる他、両面受光型にも出来る。日本の三洋電機が主な製造者である。なお、吸収波長域の異なる材料同士を積層するという点では下記の多接合型太陽電池に似るが、pn接合は1つ(単接合)である。
多接合型(タンデム型)
吸収波長域の異なるシリコン層を積層したもの。アモルファスシリコンと各種の結晶シリコンを積層したものの他、通常のa-Siに吸収波長域の異なるa-SiCやa-SiGeを積層したものなどが開発・実用化されている。高効率で温度特性などに優れるものが多い。多接合型太陽電池の項を参照。
球状シリコン型
球状シリコン型太陽電池とは、無数の球状シリコン粒子(直径1mm程度)と、集光能力を上げる直径2~3mmの凹面鏡(電極を兼ねる)を組み合わせた太陽電池のことである[17]。一般的な結晶シリコン型の1/5程度のシリコン使用量で、アモルファスシリコンよりも高い変換効率が期待できる方式である。2007年初めの時点で10%を超える発電効率が報告されている。球状シリコンの生産方法は、プラズマで溶かしたシリコン液滴を1~2秒程度自由落下で滴下させ、表面張力でシリコン液滴を球状とし、落下中にレーザー照射により結晶化させることにより生産される。個々のシリコン粒子は単結晶である。高純度シリコン原料の供給が追いつかない状況が続く中、シリコンの供給状況に影響されにくく、生産工程も簡易なことから、コストを下げやすい方式として普及が期待されている。また基板が板状ではないため、曲面にも設置可能でかつ軽量であるメリットがある[18]。2007年秋から日本企業にて量産開始、2008年より一般販売されている[19]
電界効果型
従来のpin接合構造を持つアモルファスシリコン型のp型窓層の役割を、絶縁された透明電極から電界効果によって誘起される反転層に置き換えた構造を持つ。p型窓層内で再結合により失われていたキャリア電界によって速やかに分離する効果等により、変換効率を飛躍的に改善するものと期待される。研究が行われていた1996年当時の従来型に比べ最大50%の効率改善がシミュレーションより得られたが、製造プロセス等の課題により実験レベルでの大幅な効率改善には至っていない[20][21]

化合物系









InGaAs太陽電池








シャープが開発した。3層の結晶構造がほぼ一致するように原材料の元素を掛け合わせ、さらに層の間に緩衝材を入れて、層のひずみを解消した。2009年10月現在、世界最高の変換効率(35.8%)である。インジウムを使い、コストが高いので、用途は宇宙用に限られる[22]

GaAs系太陽電池








単結晶のGaAsを用いるもので、禁制帯幅 1.4 eV で太陽光のスペクトルに良くマッチし、単接合セルでは最も高い変換効率を出せる(2005年末の世界記録は25.1%;Kopinら)。宇宙用など、特に高い変換効率が必要な用途に用いられている。

CIS系(カルコパイライト系)太陽電池








新型の薄膜多結晶太陽電池。光吸収層の材料として、シリコンの代わりに、Cu、In、Ga、Al、Se、Sなどから成るカルコパイライト系と呼ばれるI-III-VI族化合物を用いる。代表的なものはCu(In,Ga)Se2 やCu(In,Ga)(Se,S)2, CuInS2 などで、それぞれCIGS, CIGSS, CIS などと略称される。製造法や材料のバリエーションが豊富で、低コスト品から高性能品まで対応できるのが特長。また多結晶であるため、大面積化や量産化に向く。フレキシブルなものやカスタマイズ品も作りやすい。シリコン太陽電池が苦手とする分野から実用化が始まっているほか、禁制帯幅が材料次第で自由に変えられることから将来の多接合型太陽電池への応用も期待されている。日本でも量産化が始まっている[23]

CIGS太陽電池はCu(In、Ga)Se2という化合物からなる太陽電池である。携帯電話で搭載できる程度に面積が小さくて軽くとも、大量の電力を生み出す高効率の太陽電池として注目され、利点として次が挙げられる[24]
 1. 光電変換効率が高い。  
 2. 数μmの薄さでも十分に機能する。  
 3. 経年劣化が少ない。  
 4. 黒一色で色合いが落ち着いている。
特に1.に関しては、2010年に産業技術総合研究所が開発したCIGS薄膜型太陽電池は19.4%の光電変換効率を実現したという、キャリアがある[25]。この技術の応用により、セラミックス、金属箔、ポリマーなど様々なフレキシブル基板を用いた高性能な太陽電池の作製に成功した[26]
Cu2ZnSnS4(CZTS)太陽電池
近年開発が始まった材料系。上記のCIS系に形態が似るが、利用する材料がより豊富かつ安価なのが特長。日本の長岡工業高等専門学校などで研究が行われている[27]。2012年9月ソーラーフロンティア社がIBMコーポレーション、東京応化工業、DelSolar社との共同研究において11.1%のエネルギー変換効率を達成した[28]
CdTe-CdS系太陽電池
CdTe薄膜を用いた太陽電池で、2枚のガラスに太陽電池を挟み込んだ形態のモジュールが代表的である。毒物であるカドミウムを用いるが、少量でしかも安定した化合物がモジュールに閉じこめられているため、実は環境負荷の低い太陽電池として知られる[29]。日本では販売されていないが、性能が良くかつ安価であるため、米国や欧州で実用化されている[30]
その他
InP系太陽電池、SiGe系太陽電池、Ge太陽電池、ZnO/CuAlO2太陽電池(透明太陽電池)などがある。

有機系

上記のシリコンや無機化合物材料を用いた太陽電池に対し、光吸収層(光電変換層)に有機化合物を用いた太陽電池も開発されている。製法が簡便で生産コストが低くでき、着色性や柔軟性などを持たせられるなどの特長を有する。変換効率や寿命に課題があるが、実用化されれば将来の市場で大きなインパクトが期待されるため、開発が競われている。
色素増感太陽電池
有機色素を用いて光起電力を得る太陽電池。代表的なものはグレッツエル型(または湿式太陽電池)と呼ばれる型式のもので、2枚の透明電極の間に微量のルテニウム錯体などの色素を吸着させた二酸化チタン層と電解質を挟み込んだ単純な構造を有している。製造が簡単で材料も安価なことから大幅な低コスト化が見込まれ、最終的には現在主流の多結晶シリコン太陽電池の1~数割程度のコストで製造できると言われている。また軽量、着色も可能、などの特長を持つ。現在の課題は効率と寿命であり、技術的改良が進められている。電解液の蒸発を如何に防ぐかが重要であり、固体化などの技術開発が進められている。2012年9月の時点で、東大のチームが12.5%のエネルギー変換効率を達成している[31]

有機薄膜太陽電池

導電性ポリマーやフラーレンなどを組み合わせた有機薄膜半導体を用いる太陽電池。次世代照明/TVの有機ELの逆反応として研究が進展した。直近で実現しそうな技術のうち、最も安価大量に太陽発電可能な方式である。ロールツーロールで高速輪転機印刷が可能になるために、コストが1/10に下がりうる事と、軽量ロールのために治水ダム上流の山林伐採地での施工費が格段に安価になり、太陽発電コストを(固定価格買取制度による、電気料金引上げを伴う強引な量産ではなく)、技術革新で大きく押し下げる効果が期待されている。上記の色素増感太陽電池よりもさらに構造や製法が簡便になると言われており、電解液を用いないために(色素増感と比べると)柔軟性や寿命向上の上でも有利なのが特長である。21世紀に入ってから盛んに開発が行われるようになっている。課題は変換効率と寿命であり、現在の記録は2012年5月に三菱化学が開発した11.0%・10年が世界記録である[32]

量子ドット型

使用する材料がまだ特定されていない太陽電池として、量子効果を用いた太陽電池が検討されている。第三世代型太陽電池とも呼ばれる。例えばp-i-n構造を有する太陽電池のi層中に大きさが数nm~数10nm程度の量子ドット構造を規則的に並べた構造などが提案されている[33]。この量子ドットの間隔を調整することで、基の半導体(シリコンやGaAsなど)の禁制帯中に複数のミニバンドを形成できる。これにより、単接合の太陽電池であっても、異なる波長の光をそれぞれ効率よく電力に変換することが可能になり、変換効率の理論限界は60%以上に拡大する[34]。現在の一般的な半導体プロセスよりもさらに微細な加工プロセスの開発が必要である。2012年6月、東北大学がシリコンを使用した量子ドット型太陽電池で12.6%の変換効率を達成している[35]。   

多接合型太陽電池


多接合型(スタック型積層型タンデム型などとも呼ばれる)太陽電池とは、利用波長の異なる太陽電池を複数積み重ねた太陽電池である。

特徴

    太陽光のエネルギーをより無駄なく利用することで変換効率の向上が図れる。  
    ●材料の組み合わせによっては、温度特性や必要な資源量を削減するなどの効果も得られる。

原理


 
多接合型太陽電池の概念図:各波長の光子のエネルギーを効率良く利用する
 
  • 太陽光スペクトルは紫外線から赤外線まで幅広く分布するが、短波長(紫外、紫、青)の光になるほど光子は大きなエネルギーを持ち、より大きな禁制帯幅を超えてキャリアを励起できる。この短波長側の光に対応した禁制帯幅を持つ単接合太陽電池を用いれば、より大きな電圧を得ることが出来、短波長域の光のエネルギーをより効率良く利用できる。しかし禁制帯幅を拡げすぎれば、より長波長の光は素通りして利用されず、出力電流が減少する。
  • 即ちpn接合が1つだけの単接合太陽電池においては、禁制帯幅より大きなエネルギーの光子のエネルギーの一部が無駄になり、禁制帯幅より小さなエネルギーの光子のエネルギーは利用できない。このような兼ね合いから、単接合の太陽電池では禁制帯幅 1.3~1.4 eV付近が最も高い変換効率が得られる。単接合の場合、変換効率の限界は約30%とされる。2005年現在の記録はAM1.5G,1sunにおいて25.1%、AM1.5、255suns(集光セル)において27.6%である。
  • ここで、禁制帯幅の異なる複数のpn接合素子を積層し、光の入射側の素子から順に短波長の光を利用して発電し、より長波長の光はより下層の素子で利用する。こうすれば各波長域の光子のエネルギーをより無駄なく取り出すことが出来(より高い電圧が得られる)、かつより長波長まで含めたより多くの光子を利用できる(より多くの電流が得られる)。変換効率は最終的に取り出せる電力(電圧×電流)で決まるため、単接合の場合に比べてより高い効率が得られる。
  • 理論的には無限に接合を増やせば約86%の変換効率になると計算されるが、実際には上層の素子を通過する際の光の損失や素子間の電流の整合の問題で、それより低くなる。2012年現在の記録は3接合セルで得られている(下記)。4接合、5接合のセルも研究されている。

温度の影響

太陽電池モジュールは条件によっては日光によって温度が60~80℃にも達することがあるが、太陽電池では温度が上昇することで出力が低下する現象が見られることがある。これは高温において禁制帯幅(シリコンでは1.2eV)が減少することで出力電圧が低下するためである。エネルギーギャップの大きいアモルファスシリコンや一部化合物系の太陽電池では電圧低下の影響が少ないため、モジュールが高温になる地域では有利になる。一方、高温になると光吸収係数が大きくなることで電流が増加する効果も発生するが、結晶シリコンでは通常この効果は小さい。
    ●温度係数は結晶シリコンにおいては通常-0.45%/℃前後であり、これは70℃において基準温度(25℃)に対して約2割の出力低下になる。   ●アモルファスシリコンにおいては禁制帯幅が1.75eVと大きいため、温度による効率低下は少ない。アモルファスシリコンを結晶シリコン等と積層することで、変換効率を単結晶シリコン並の20%前後にしつつ、温度係数を-0.2~-0.3%/℃程度(70℃においても1割程度の出力低下)に抑えることが出来、内外の企業によって実用化されている。   ●GaAs(禁制帯幅1.4eV)では温度係数は-0.2~-0.3%/℃である。   ●CIS系など一部の太陽電池では、ある程度温度が上がることで光や放射線による劣化がアニーリング効果によって回復する性質がある。   ●人工衛星用など宇宙用の太陽電池モジュールでは、使用時の温度が-100℃~+120℃程度の範囲で軌道周回に伴って頻繁に変化するのに対応して、熱サイクルによる疲労などに配慮した製品が用いられる。

アモルファスシリコンの光劣化

アモルファスシリコンは強いの照射によってシリコンダングリングボンドが増加し、導電率が劣化する性質を持つ。これはステブラー・ロンスキー(Staebler-Wronski)効果と呼ばれ、欠陥密度の増加によって素子内でのキャリアの移動を阻害し、太陽電池の性能の劣化を招く。これに対しては、下記のような対策が取られる。
 
    ●アモルファスシリコンの製膜工程を改良し、関連する不純物(水素、窒素など)の含有量を最適化する  
    ●光閉じ込めを利用して膜厚を薄くする。これによって空乏層内の電場が大きくなり、キャリアの移動が阻害されにくくなる。  
    ●多接合化して光の利用効率を高めると共に、個々の空乏層を薄くする   紫外線が特に問題になる場合は、モジュールの保護層(ガラスやEVA樹脂)で遮断する。
こうした対策技術の開発により、現在は屋外用にも長寿命のものが実用化されている。
なお、光照射によって増加した欠陥密度は、光照射が続くと飽和する。また、熱が加わることで時間と共に減少する[38]。一般に屋外用の製品においては、使用開始時に性能が数% - 10数%程度低下する現象(初期劣化)が見られるが、その後は安定する。またカタログ性能値には初期劣化後の値が用いられる。


薄膜太陽電池
 
 

従来の太陽電池が単結晶、多結晶、あるいはシリコンや化合物系半導体を問わずインゴットからワイヤソー等で切り出していたため、材料の無駄が少なくなかった。そのため、毛細管現象を利用して坩堝から帯状のシリコンを引き上げたりアモルファス半導体やCIS系半導体等の薄膜太陽電池の開発が行われてきた。近年では基板上に結晶を成長させて剥がす方法も実用化の域に達しつつある。従来は変換効率において従来の製法による物と比較して劣るものが少なくなかったが、近年はプロセスの改良により改善されつつある。

最終更新 2014年11月15日

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ソーラーパネル
 
 
ソーラーパネル(solar panel)とは、太陽光発電を行うためのパネルのこと。太陽電池パネル(photovoltaic panel)、太陽電池モジュール(photovoltaic module)とも。
 
概説
ソーラーパネルは一般に、ひとつひとつは小さな太陽電池を複数集めて、何らかの枠・構造体に入れてパネル状にしたものである。枠はアルミが用いられることが多い。
ひとつひとつの太陽電池の起電力は小さいが、それを複数直列に組むことで電圧を上げ、使いやすくしている。一般に、鉛蓄電池(12V)と組み合わせることも想定されたソーラーパネルは、蓄電池を充電するために、ソーラーパネル側の起電力は(蓄電池の12Vよりも高く)17~20V程度になるように設計されている。また電流量を増やすために、上述の直列のユニットが複数、並列に組んであることもある。
ソーラーパネルは、1枚単体でバッテリーなどと接続して使用することも可能である。[注 1]
1枚のソーラーパネルが発電できる電力は、そのサイズや結晶のタイプによる発電効率などによってそれぞれ異なっていて一概には言いにくいが、おおむね、一辺が数十センチメートル程度ならば、10ワット~100ワット程度である。一辺が数センチ程度の小さなソーラーパネルの場合は、1W以下~せいぜい数ワット程度である。
住宅で用いられる太陽光発電システム(住宅の屋根の上などに設置するもの)では、複数のソーラーパネルが用いられていて、充電・放電をコントロールするコントローラーと組み合わされている。ソーラーパネルで発電された電力は家庭内で消費され、また売電という形で、間接的に電力網ともつながっている場合があり、その場合は電力網へと供給される。
太陽光発電所では、非常に多数ソーラーパネルが用いられており、大電力を供給する。
複数のソーラーパネルを組み合わせたものは、「ソーラーアレイ」「太陽電
 
ソーラーパネルは太陽からの光エネルギー(光子)を使い、光起電力効果を応用して電気を発生させる。モジュールの構造を保持するのは上層の場合(表板構造)や下層の場合(基板構造)がある。よく使われるのはウェハーベースの結晶シリコンを使った太陽電池とテルル化カドミウムまたはシリコンを使った薄膜型の太陽電池である。結晶シリコンは半導体製造の原料でもある。
太陽電池を実用的なものとするには、まず複数の太陽電池を電気的に相互接続し、システムの他の部分と接続しなければならない。また、製造・輸送・設置・利用の各段階で壊れないよう保護する必要がある。特に、(ひょう)や積雪の重みが問題となる。特にウェハーベースの太陽電池は脆いので注意が必要である。湿気が内部に入り込むと金属の配線や接続部分が腐食する危険性があり、薄膜型の太陽電池や透明導電性薄膜層も湿気に弱いため、注意しないと性能低下や寿命短縮に繋がる。
 
ソーラーパネルは硬いものがほとんどだが、薄膜型の太陽電池を使ったものは柔軟性のあるものもある。
 
必要な電圧を確保するため、直列に太陽電池を接続し、電流を確保するためにそれらをさらに並列に接続する。
 
一部または全部が影に入ったり、夜になると電流の逆流が起きることがある。それを防ぐため、別途ダイオードを使うこともある[1]。単結晶シリコンの太陽電池のpn接合は光が当たっていないときに逆電流を生じさせる特性があるが、これは不要である。逆電流は単に電力を無駄に消費するだけでなく、太陽電池が熱を持つという問題もある。太陽電池は高温になるほど効率が低下するため[2] 、ソーラーパネルはなるべく熱を持たないのが望ましい。冷却を考慮した設計のソーラーパネルはほとんどないが、設置する際に背面から放熱できるようにするなどの工夫をすることが望ましい。
最近のソーラーパネルには、レンズまたは鏡を使って太陽光をより小さな太陽電池に集める集光装置を採用したデザインのものもある。単位面積当たりの単価が高い太陽電池(ヒ化ガリウムを使ったものなど)を使って比較的安価なソーラーパネルを作ることができる[3]
 
ソーラーパネルの構成によっては様々な波長の光で発電できるが、一般に太陽光のあらゆる波長をカバーすることはできない(特に紫外線赤外線、間接光など)。つまり太陽光エネルギーの大部分を捨てていることになる。ソーラーパネルは適切な単色光を照射したとき最も効率がよい。そこで、太陽光を複数の波長に分け、それぞれのビームをその波長が得意な太陽電池に当てるという仕組みのソーラーパネルが提案されている[4]。また、赤外線を中心として発電できる太陽電池を使ったTPV(熱起電力)発電も提案されている[5]
ソーラーパネルの効率を表す太陽光変換効率は、市販されているもので5%から18%となっており、一般にパネルを構成する太陽電池単独の効率より低い。
 
薄膜モジュール
 
詳細は「太陽電池」を参照
 
薄膜型太陽電池を採用したモジュール。低コストで高効率である。
 
 
ガラス基板薄膜モジュール
硬い薄膜モジュールで、太陽電池とモジュールが同じ生産ラインで製造される。太陽電池をガラスの基板または表板上に形成し、配線もその場で行う。基板や表板は多層構造になっている。太陽電池としては、CdTe、アモルファスシリコン (a-Si)、a-Siとuc-Si(単結晶シリコン)の多接合型、CIS系などがよく使われている。アモルファスシリコンの太陽光変換効率は6%から12%である。
 
フレキシブル基板薄膜モジュール
柔らかい薄膜モジュールで、こちらも太陽電池とモジュールが同じ生産ラインで製造される。主にポリエチレンテレフタラート (PET) の基板上に太陽電池を形成する。他にも、ポリエステルポリイミドのフィルムが使われる。これらは絶縁体なので配線もガラスと同様容易である。基板に電気伝導体を使う場合は、別の技法を必要とする。主にアモルファスシリコンを使った薄膜型の太陽電池を無色透明のフッ素樹脂上に形成してそちらを表面とし、裏面を別の樹脂フィルムで補強する。
IntertechPiraによると、フレキシブル基板を含む薄膜型太陽電池市場は2019年まで年率35%で成長すると予測されている[6]
 
最終更新 2014年10月13日
 
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https://unit.aist.go.jp/rcpvt/ci/about_pv/types/TF-Si.html

産総研ホーム

太陽光発電工学研究センター

薄膜シリコン太陽電池

省資源で量産向き

薄膜シリコン太陽電池は、厚みが1μm程度、もしくはそれ以下の極薄のシリコン膜を用いる太陽電池です。面積あたりの発電量を決める変換効率では劣るのですが、液晶ディスプレイのように量産性が高く、コストダウンの余地が大きい太陽電池です。
薄膜シリコン太陽電池は、大きなガラス(や樹脂)の基板に、ごく薄い太陽電池を製膜することで製造します。そのシリコン層は一般的な結晶シリコン太陽電池の100分の1前後の厚みしかなく、とても省資源です(図1)。製造工程も大きく異なり、大面積のものを連続的に量産することができます(図2)。そのかわり変換効率は低め(7~10%程度)ですが、設置面積よりもコストを重視する地域などに向けて大量生産されています。
薄膜シリコン太陽電池には、下記の2種類のシリコン膜が用いられます。どちらも同じシリコンですが、膜の中の原子の並び方を変えることで、光学的・電気的な特性が違います。


図1アモルファスシリコン太陽電池の基本構造
 
 
図2 薄膜シリコンの成膜行程
 


アモルファスシリコン
シリコン原子がランダムに結合した状態で、非晶質シリコンとも呼ばれます。結晶シリコンに比べると、薄い膜でも光を吸収できる(吸収係数が高い)、青や緑などの比較的波長の短い光だけを利用する(禁制帯幅が大きい)などの特徴があります。アモルファスシリコン太陽電池は基本的に赤い光や赤外線が利用できませんが、シリコンを1μm以下の厚みに薄くできるほか、温度特性も良くなるなどの利点があります。

微結晶シリコン
多結晶シリコンの結晶の粒をうんと小さくして、50~100nm程度にしたものです。結晶のサイズを小さくするほど、性質がアモルファスシリコンに近くなります。シリコンの厚みはアモルファスシリコンより少し厚く、2~3μm程度です。アモルファスシリコンと組み合わせて、多接合(タンデム)太陽電池を造るのにも用いられます(図3)。
アモルファスシリコン太陽電池は室内などの極端に光が弱い環境での効率が高い性質があり、電卓や腕時計などに用いられてきました。昔は長期安定性に課題があり、屋外用に用いられることはまれでしたが、今では実用的な耐久性を持つようになり、屋外用にも市販されるようになっています(図4)。また効率についても、上記の微結晶シリコンを併用したり、SiC,SiGeなどの化合物を用いて多接合化することで、変換効率を10%前後まで向上させた製品が市販されはじめています。これらはまだ性能向上の余地があり、現在は15%前後を目標に開発が進められています。
一方、薄膜であることを活かして、フレキシブルな製品も製造・販売されています(図5)。このような製品は持ち運びが簡単なだけでなく、軽量であることを活かしてスレート屋根など比較的強度の低い建造物にも設置しやすい利点があり、今後の市場拡大が期待されています。

 
図3微結晶/アモルファスシリコン多接合太陽電池の基本構造例


図4 アモルファスシリコン太陽電池モジュール(屋外用)
 
 
 
図5 フレキシブル薄膜シリコン太陽電池モジュール例 (提供:富士電機アドバンストテクノロジー社)
 
(最終更新:2008年11月7日)
 

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https://unit.aist.go.jp/rcpvt/ci/about_pv/types/CIGS.html

CIGS系太陽電池

薄くて性能も良い、新顔の太陽電池

CIGS系太陽電池は、最近実用化がはじまったばかりの、新顔の太陽電池です。薄膜シリコン同様に薄膜太陽電池の長所を備えながら、より高い変換効率が期待できる太陽電池です。種類が幾つかあり、まとめてCIS系、CIGS系、カルコパイライト系(*1)などと呼ばれます。
CIGS(”シーアイジーエス”)とは聞き慣れない名前ですが、これはCu,In,Ga,Se(銅、インジウム、ガリウム、セレン)の4つの元素の頭文字をとったものです。CIGS太陽電池はシリコンの代わりに、この4つに代表される元素を混ぜ合わせて使います。これらの元素を混ぜ合わせた化合物は、シリコン同様の半導体になります。しかも結晶シリコンに比べて光を吸収しやすく、太陽電池そのものの厚みは2~4μm程度で済みます(図1)。

この太陽電池の特徴として、用いる材料や製造法の選択肢が豊富なことが挙げられます(図2)。

これらを使い分けることで、1つの材料系で低価格品から高性能品まで対応できます。またフレキシブルにもできることから、用途に合わせて様々な性能や形態の製品を製造できると見込まれています(図3)。

こうした特徴から、一般的な平板状の製品だけでなく、電気自動車や建造物などへの組み込み用途向けとしても期待されています。こうした組み込み市場は現在はまだ比較的小さいのですが、今後大きく拡大することが予想されています。またこの太陽電池の特徴として宇宙空間における放射線に強いという性質もあり、人工衛星や探査機などへの応用も期待され、開発が進められています(*2)。
CIGS太陽電池は現在のところ効率8~12%程度の性能のものが市販されていますが、研究レベルでは既に多結晶シリコンと同等の性能が確認されていて(*3)、量産品でも多結晶シリコン並に性能が向上することが期待されています。また薄膜太陽電池ですので、量産規模の拡大によるコストダウンの余地も大きいと期待されています。

 
図1CIGS系太陽電池の基本構造
 
 
図2 CIGSの製膜方法
 
 


 
 




(*1)…Chalcopyrite(黄銅鉱)と同様の結晶構造を持つことに由来します。黄銅鉱(CuFeS2)を使うわけではありません。
(*2)…日本においては、実証衛星「つばさ」(MDS-1)において非常に優秀な特性が確認されています。小型衛星XI-V(サイ・ファイブ)において世界で初めて衛星の電源に用いられたほか、SOHLA-1(まいど1号)にも試験用のセルが搭載される予定です。
(*3)…研究室レベルでは、これまでに約20%の変換効率が確認されています。(各種セルやモジュールの変換効率の公式世界記録については、たとえばM.A.Green et al., "Solar Cell Efficiency Tables". Progress in Photovoltaics:Research and Applications (不定期掲載)で確認できます。)

(最終更新:2008年10月30日) 
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ケイ素
 
 
ケイ素(ケイそ、珪素、硅素、: silicon: silicium)は、原子番号14の元素である。元素記号Si。「珪素」「硅素」「シリコン」とも表記・呼称される。地球の主要な構成元素のひとつ。半導体部品は非常に重要な用途である。
常温・常圧で安定な結晶構造は、ダイヤモンド構造比重は2.33、融点1410 °C (1420 °C)、沸点は2600 °C(他に2355 °C、3280 °Cという実験値あり)。ダイヤモンド構造のケイ素は、1.12 eVバンドギャップ(実験値)をもつ半導体である。これは非金属であるが、圧力静水圧)を加えるとβスズ構造に構造相転移する。このβスズ構造のケイ素は金属である。周期表においてすぐ上の元素は炭素だが、その常温常圧での安定相であるグラファイト構造は、ケイ素においては安定な構造として存在できない。
 

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https://unit.aist.go.jp/rcpvt/ci/about_pv/types/Organic.html

軽い、柔らかい、カラフルで低コスト

有機系太陽電池

現在使われている太陽電池は、原料としてシリコンなどの無機物を利用しています。そのため、製造行程のどこかである程度高い温度にしてやる必要が生じたり、真空装置を使う必要が生じたりします。これが常温・常圧で製造できれば、その分コストダウンが可能になります。それを可能にするのが、現在開発中の有機物を用いた太陽電池です。
有機物を用いた太陽電池には、下記のようなものがあります。
 
色素増感太陽電池
光を吸収する色素と、イオンが移動する電解質の層を持つ、変わり種の太陽電池です(図1)。製造が比較的簡単で、無機物で構成された太陽電池よりも安価に量産できると期待されています。また色素を変えることによって、様々な色の太陽電池を作れるのも特徴です。 現在のところ、研究レベルでの変換効率は約10%です(*1)。既に屋外でのモジュールの暴露試験も始まるなど(*2)、激しい開発競争が行われています。
 
有機薄膜太陽電池(有機半導体太陽電池)
普通の太陽電池はp型とn型の二層に分かれていますが、この太陽電池は違います。n型とp型の両方の半導体を混ぜ合わせて塗り、電極をつければ電池になります。無機半導体からすれば常識外れのこの太陽電池、有機物を用いた半導体から出来ています。図2の「花」の部分がこの構造の太陽電池です。もちろん、通常通りにp型とn型の2層構造のものも製造できます。
近年開発が始まったばかりですが、製造が簡単な上、様々な色や形が実現でき、半透明のものやフレキシブルなものも造ることができます。変換効率はまだ3~5%程度(*1)ですが、室内のインテリアやおもちゃなどから実用化が始まる見込みです。将来は、屋根や壁に「塗る」だけで使えるようになるかも知れない太陽電池です。
いずれも現在のところ、変換効率と耐久性が課題になっています。しかし耐久性をあまり必要としない用途から実用化が始まり、性能の向上につれて市場で大きな競争力を持つようになると考えられています。
 
詳しくは、有機新材料チームのページをご覧ください。
 
 
 

(*1)…各種セルやモジュールの変換効率の公式世界記録については、たとえば M.A.Green et al., "Solar Cell Efficiency Tables". Progress in Photovoltaics:Research and Applications (不定期掲載)で確認できます。
(*2)…各機関・企業の発表による。
(最終更新:2008年11月10日)

色素増感太陽電池
↑図1色素増感太陽電池(クリックで拡大します)

有機薄膜太陽電池
↑図2 有機薄膜太陽電池(クリックで拡大します)
 
 

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シリカ
 
 
シリカ: silica[1])は、二酸化ケイ素(SiO2)、もしくは二酸化ケイ素によって構成される物質の総称。シリカという呼び名のほかに無水ケイ酸ケイ酸酸化シリコンと呼ばれることもある。
純粋なシリカは無色透明であるが、自然界には不純物を含む有色のものも存在する。自然界では長石類に次いで産出量が多い。鉱物として存在するほか生体内にも微量ながら含まれる。
 
産業分野での利用
 
工業分野での利用
 
 工業生産されるシリカでも特に代表的なものはケイ酸をゲル化したシリカゲル(SiO2純度99.5%以上)であり、乾燥剤として食品や半導体精密機器の保存から、消臭剤農業肥料建築調湿剤などに使われる。電子材料基板シリコンウェハーなどの研磨剤などに使用されるコロダイルシリカや、耐熱器具、実験器具光ファイバーの原料として用いられる珪砂、珪石などを溶融した後冷却し、ガラス化させた石英ガラス(クオーツ)の他、エナメルシリカセメント陶磁器炭素に代わるタイヤの原料、液体クロマトグラフィー担体、電球CRTディスプレイの表面などの表面処理剤、新聞紙の印刷インクの浸透防止など様々な分野において利用されている。
 
化粧品・医薬品への添加
微粒二酸化ケイ素としてのシリカは一般的な粉体と比べた場合、吸水性が低い。これを利用して、アイシャドーファウンデーションといった化粧品において湿気による固形化を防ぐ役割として使用されるほか、安定化などの目的でクリーム乳液に使用される。また硬度が高いことを利用し、歯磨き粉に研磨成分として用いられることもある。さらに医薬品においては、打錠用粉末の流動性を高めたり、錠剤の強度を高めるためのコーティング剤、軟膏・乳液の安定化のために使用されることもある。
 
食品添加物としての利用
シリカは、二酸化ケイ素ならびに微粒二酸化ケイ素の状態で、現在日本国における食品添加物として厚生労働省よりの使用が認められている。
シリカはその吸着性を利用してビール清酒みりんといった醸造物食用油醤油ソースなどのろ過工程に使われるほか、砂糖缶詰などの製造工程にも用いられている。微粒二酸化ケイ素は吸湿・乾燥材としても使用される。とくにふりかけなどの粉形食品には湿気って“ダマ”になるのを防ぐ目的で添加されることがあるが、厚生労働省の告示の中で「母乳代替食品及び離乳食に使用してはならない」と使用基準が示されている[5]
食品添加物として利用される非結晶性のシリカは、「無水ケイ酸」とも呼ばれ不溶性で、体内で消化吸収されず排出されるため身体に害はない。
 
ろ過助剤
シリカの持つ多孔質や吸着能力などを利用して、ろ過用の食品添加物として使用されている。ビールをはじめとした酒類の混濁防止や調味液などのオリ下げ、ビールの泡持ち改善として使用される。こうしたろ過助剤としてのシリカは不溶性であるためろ過過程で除去される。
 
必須ミネラルとしてのシリカ
生体中の皮膚、髪、骨などに含まれる必須ミネラルとしてのシリカ(ケイ酸化合物)は、水溶性のものであり、鉱物由来の不溶性シリカとは異なる。人体には約1.8gの微量のケイ素が存在し、こうしたシリカはケイ酸などの水溶性シリカの形で食物から吸収される。
 
主な生産地
中国山東省(徳信物産)、河北省、安徽省など。
 
最終更新 2014年9月11日
 
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石英
 
 
石英(せきえい、: Quarz: quartzクォーツクオーツ)は、二酸化ケイ素 (SiO2) が結晶してできた鉱物。六角柱状のきれいな自形結晶をなすことが多い。中でも特に無色透明なものを水晶(すいしょう、: Bergkristall: rock crystal、ロッククリスタル)と呼び、古くは玻璃(はり)と呼ばれて珍重された。
石英を成分とする珪砂(けいしゃ・けいさ、: Quarzsand: quartz sand)と呼ばれ、石英を主体とした珪化物からなる鉱石珪石と呼ばれる。
 
性質・特徴
石英は二酸化ケイ素結晶の多形の一つで、1気圧、573℃で三方晶系低温型石英から六方晶系高温型石英転移する。高温型石英は六角柱面を持たない。さらに高温では、鱗珪石クリストバライトに、また超高圧下でコーサイトスティショバイト相転移する。常温下における高温型石英の外観は仮晶による。
水晶(低温型石英)は、代表的な圧電体であり、圧力が加わると電気が発生する。このために初期のレコードプレーヤーピックアップに使われた。今日、水晶の圧電性は、水晶発振器として最も活用されており、時計が単に「クォーツ」(水晶の英名)としばしば呼ばれるのは、水晶発振器を利用した時計が最も多いからである。この原理を利用して、水晶微量天秤 (QCM) と呼ばれる微量質量を正確に測定するための装置の研究が行われている。
 
最終更新 2014年10月18日
 
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Top 10 World's Largest Solar PV Power Plants
 
The table below shows the Top 10 of the world's largest solar PV plants. All data was taken from the companies' respective websites, official statements and news releases.
To download the Top 30 , please leave us your basic contact details here .
 
 
 
 


 
Country Name Capacity (MW) Owner Module type Grid connection
1. Perovo 100 Activ Solarc-Si2011
2. Sarnia 92* EnbridgeCdTe2010
3. Montalto di Castro 84 Sunpowerc-Si2011
4. Finsterwalde I, II & III 83 Q-Cellsc-Si2010
5. Ohotnikovo 80 Activ Solarc-Si2011
6. Senftenberg II&III 78 Juwi Solarc-Si2011
7. Lieberose 71 Juwi SolarCdTe2009-11
8. Rovigo 70 First Reservec-Si2010
9. Olmedilla de Alarcón 60 Nobesol Levantec-Si2008
10. Boulder City (Copper Mountain) 55* Sempra GenerationCdTe2010
       



* reported capacities from North American plants were converted from AC to DC for the purpose of honest comparison
 
 
Note: This table was first published on January 3, 2012 (Companies that feel they should be included in this list are invited to contact us and provide the public information source)
 
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ドイツ、原発20基分を太陽光で発電:世界記録を更新!/アクチュアリテ・オンヴィロンモン(5月28日)
 
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日本の太陽光発電所
 
 
日本の太陽光発電所(にほんのたいようこうはつでんしょ)では、日本太陽光発電所英語版の歴史、現状、予定について説明する。大規模な発電所はソーラーファーム(solar farm)やソーラーパーク(solar park)と呼ばれる。出力が1MW(メガワット) (1000kW)以上の施設は一般的にメガソーラーと称されている。2010年以降、他の火力発電所原子力発電所に比べメンテナンスが容易、建物屋上にも設置できるなどの利点から電力会社以外の一般企業・自治体が、売電用または自家発電用に太陽光発電設備を建設する事例が増加している。
 
最終更新 2013年8月26日 (月) 05:26
 
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Solar power in Japan
 
 
Solar power in Japan has been expanding since the late 1990s. The country is a leading manufacturer of solar panels and is in the top 5 ranking for countries with the most solar PV installed. In 2009 Japan had the third largest solar capacity in the world (behind Germany and Spain), with most of it grid connected.[1][2] The insolation is good at about 4.3 to 4.8 kWh/(m²·day). Japan is the world's fourth largest energy consumer, making solar power an important national project.[3] By the end of 2012, Japan had installed 7,000 MW of photovoltaics, enough to generate 0.77% of Japan's electricity. Due to the new FIT, Japan is expected to install 5,300 MW in 2013.[4]
 
Total installed solar power (MWp)[19][20][21][22]
1992
19.0
1993
24.3
1994
31.2
1995
43.4
1996
59.6
1997
91.3
1998
133
1999
209
2000
330
2001
453
2002
637
2003
860
2004
1,132
2005
1,422
2006
1,709
2007
1,919
2008
2,144
2009
2,627
2010
3,618
2011
4,914
2012
7,000
This page was last modified on 28 August 2013 at 02:22.
 
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i e a - p v p s a n n u a l r e p o r t 2 0 1 2
 
 
PDF 62p~66p
 
JAPAN
PV TECHNOLOGY STATUS AND PROSPECTS
HIROYUKI YAMADA, NEW ENERGY AND INDUSTRIAL TECHNOLOGY DEVELOPMENT ORGANIZATION (NEDO)
OSAMU IKKI, RTS CORPORATION
  

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  DESERTEC Award 2014  



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Dii Conference: Rehab Abd Almohsen, Dii Journalist Fellow (English)



2012/11/22 に公開


Dii announced a fellowship which enabled five young journalists from North Africa and the Middle East to visit the 3rd Dii Desert Energy Conference which took place from 7th - 9th of November 2012 in Berlin. Rania is one of the winners of this fellowship. In this interview, she shares her views on how Egypt could benefit from Desertec.

Visit the Dii website to learn more about the journalist fellowship: http://www.dii-eumena.com/annual-conf...


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The Global Commerce Forum: Energy Africa



2011/12/22 にアップロード


Fossil-fuel energy has fostered industrialization, economic growth and prosperity in the developed world. In fact, developed nations exist largely because fossil fuels have allowed for affordable and reliable energy. But today, environmental concerns are driving developed nations to invest large sums of money to change their energy sources and infrastructure to support a clean environment. The question is, "Should emerging and developing nations develop their energy infrastructure from these same traditional energy sources, or are there now other, better options available to them?"

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