http://dot.asahi.com/science/s-general/2014121900096.html?page=1
振り子式潮流発電(イメージ図)
比江島准教授
「潮流発電」という言葉を聞いたことがあるだろうか。海で生み出されるエネルギーを利用したもので、潮の満ち引きが源泉となっている。今年、環境省が2018年の実用化に向けて始動するなど、いま日本で注目されている海洋エネルギーのひとつだ。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、潮流エネルギー賦存量は原子力発電所20基分と試算している。
この潮流発電において、「振り子式」という独自の技術を開発したのは、岡山大学大学院 環境生命科学研究科の比江島慎二准教授。以前より、「瀬戸内海エネルギーハーベスト構想」と題した、海洋エネルギーの開発に取り組んできた。瀬戸内海には、日本三大急潮流と呼ばれる鳴門海峡、来島海峡、関門海峡のほか、明石海峡、尾道水道、大畠瀬戸など、潮の流れの速い場所が数多く存在する。比江島准教授は「世界有数の潮流エネルギーの宝庫」であるこの地で、里山ならぬ「里海エネルギー」を研究してきた人物である。
比江島准教授の振り子式潮流発電は、簡単にいえば、海に巨大な円柱型の振り子を設置し、水流によってメトロノームのように動かすことで発電するシステムだ。下部に回転軸を通した円柱は空洞になっているので、水流で倒されても元に戻ることができる。このため、潮流に動きがあれば、常に動き続けることができ、回転軸を回すことで発電する。なお、現在は、円柱を半円柱に変更することで、従来よりも大きなエネルギーをつくることに成功している。
瀬戸内海の潮流は、秒速およそ5メートル。高さ20メートルの振り子をこの条件で動かした場合、2000~8000キロワットの発電が可能だという。この値がどれくらいの世帯の消費電力量を意味するかというと、2000キロワットの場合は2400世帯、8000キロワットの場合は9600世帯。潮流が秒速5メートルを常に維持できるとは限らないので、少なく見積もって半分の電力量になると仮定し、そのうえで1カ月の1世帯あたりの平均消費電力を300キロワット時で計算した数字である。
比江島氏は、これを「Hydro-VENUS」(ハイドロヴィーナス)と命名した。海から生まれたミロのヴィーナスを思わせる美しい名前だが、Hydrokinetic(水力)Vortex(渦)Energy(エネルギー)Utilization System(活用システム)の頭文字などから名付けられたもので、こちらの「ヴィーナス」はエネルギーを海で生み出す。
このハイドロヴィーナスの優れている点について、比江島准教授はこう説明する。
この潮流発電において、「振り子式」という独自の技術を開発したのは、岡山大学大学院 環境生命科学研究科の比江島慎二准教授。以前より、「瀬戸内海エネルギーハーベスト構想」と題した、海洋エネルギーの開発に取り組んできた。瀬戸内海には、日本三大急潮流と呼ばれる鳴門海峡、来島海峡、関門海峡のほか、明石海峡、尾道水道、大畠瀬戸など、潮の流れの速い場所が数多く存在する。比江島准教授は「世界有数の潮流エネルギーの宝庫」であるこの地で、里山ならぬ「里海エネルギー」を研究してきた人物である。
比江島准教授の振り子式潮流発電は、簡単にいえば、海に巨大な円柱型の振り子を設置し、水流によってメトロノームのように動かすことで発電するシステムだ。下部に回転軸を通した円柱は空洞になっているので、水流で倒されても元に戻ることができる。このため、潮流に動きがあれば、常に動き続けることができ、回転軸を回すことで発電する。なお、現在は、円柱を半円柱に変更することで、従来よりも大きなエネルギーをつくることに成功している。
瀬戸内海の潮流は、秒速およそ5メートル。高さ20メートルの振り子をこの条件で動かした場合、2000~8000キロワットの発電が可能だという。この値がどれくらいの世帯の消費電力量を意味するかというと、2000キロワットの場合は2400世帯、8000キロワットの場合は9600世帯。潮流が秒速5メートルを常に維持できるとは限らないので、少なく見積もって半分の電力量になると仮定し、そのうえで1カ月の1世帯あたりの平均消費電力を300キロワット時で計算した数字である。
比江島氏は、これを「Hydro-VENUS」(ハイドロヴィーナス)と命名した。海から生まれたミロのヴィーナスを思わせる美しい名前だが、Hydrokinetic(水力)Vortex(渦)Energy(エネルギー)Utilization System(活用システム)の頭文字などから名付けられたもので、こちらの「ヴィーナス」はエネルギーを海で生み出す。
このハイドロヴィーナスの優れている点について、比江島准教授はこう説明する。
「動力に燃料が不要で、天候に左右されないところ。実用化されれば、安定してエネルギーをつくり出すことができます」
再生可能エネルギーの代表格、太陽光と風力は天候に左右されるという弱点を持っている。たとえば、風力発電の場合、1週間先の風速を予測することは不可能だ。しかし、潮流ならば、1年先の流速さえほぼ正確に予測することができるという。時刻や寒暖の差による流速の変化や向きの違いはあるものの、それはすべて計算通りになる。
潮流発電にはほかに、プロペラ式のものがあるが、これは、海の生物を傷つける危険性がある。振り子式ではその恐れが少なく、それ以上に海洋生物が生きていく環境を改善することもできるという。「海中に振り子を設置すると、水中を撹拌することができます。これが何を意味するかというと、かき混ぜることによって、ヘドロを巻き上げたり、栄養塩を循環させたりする効果があります。つまり、海底にたまっている栄養分を上に上げることで、プランクトンが肥えて、魚が育つよい環境が生まれるのです」
瀬戸内海は、国内屈指の漁場。魚にやさしいシステムは、漁業関係者にとってもメリットがある。比江島准教授は将来、振り子式潮流発電を設置することが、漁業に不可欠なものとして全国に広まっていくことも期待している。
さらに、ハイドロヴィーナスには送電ロスが抑えられるというメリットもある。たとえば海流発電の場合、発電量を増やすためには発電装置を沖に設置しなければいけないが、海流発電に比べ、より陸地近くに置けるので、送電も楽に行えるのだ。
比江島准教授は、これからの再生可能エネルギーは、「ローカル電源であるべき」と話す。たとえば、大きな風車が山の上に立っている風景を見るが、これは人里離れたところで巨大な電力をつくり、都市まで運ぶことが前提になっているシステム。それよりも、発電量はそれほど多くなくとも、安定供給できるシステムをつくり、その土地に住む人間がそのエネルギーを消費する。つまり、エネルギーの分野においても、これからは“地産地消”が理想だと氏は考えているのである。
一時、三井造船や鹿島といった大企業との連携も模索していたが、現在は、独自に会社を設立する準備を進めている。社名はずばり「株式会社ハイドロヴィーナス」。鹿児島県長島町などで実用化に向けた話し合いがなされ、海外での実証実験の計画も持ち上がっているという。先述した栄養塩の撹拌効果など、漁業に役立つ技術となる可能性もさらに追及し、潮流発電に興味をもった企業だけでなく、漁業関係者ともパートナーシップを築きたいとの思いがある。また、まだ一般的にはなじみの薄い潮流発電の仕組みを知ってもらうために、河川などの流水環境に実験装置を設置。身近なところでのリアルな発電を見てもらうことで、ファンを増やしていきたいとも考えている。准教授が長年あたためてきた、人と自然が共存する海域での「里海エネルギー構想」が現実となる日もそう遠くはなさそうだ。
さらに、比江島准教授は、「やはり将来的には瀬戸内海にハイドロヴィーナスを設置したい」と話す。瀬戸内海の大小それぞれの島が電源をもち、自分の島のエネルギーは自分の島でまかなえるようになるというのが理想の姿だという。
岡山で誕生したハイドロヴィーナスは、瀬戸内海の島々に新しい可能性をもたらしてくれるだろうか。
●比江島慎二(ひえじま・しんじ)
再生可能エネルギーの代表格、太陽光と風力は天候に左右されるという弱点を持っている。たとえば、風力発電の場合、1週間先の風速を予測することは不可能だ。しかし、潮流ならば、1年先の流速さえほぼ正確に予測することができるという。時刻や寒暖の差による流速の変化や向きの違いはあるものの、それはすべて計算通りになる。
潮流発電にはほかに、プロペラ式のものがあるが、これは、海の生物を傷つける危険性がある。振り子式ではその恐れが少なく、それ以上に海洋生物が生きていく環境を改善することもできるという。「海中に振り子を設置すると、水中を撹拌することができます。これが何を意味するかというと、かき混ぜることによって、ヘドロを巻き上げたり、栄養塩を循環させたりする効果があります。つまり、海底にたまっている栄養分を上に上げることで、プランクトンが肥えて、魚が育つよい環境が生まれるのです」
瀬戸内海は、国内屈指の漁場。魚にやさしいシステムは、漁業関係者にとってもメリットがある。比江島准教授は将来、振り子式潮流発電を設置することが、漁業に不可欠なものとして全国に広まっていくことも期待している。
さらに、ハイドロヴィーナスには送電ロスが抑えられるというメリットもある。たとえば海流発電の場合、発電量を増やすためには発電装置を沖に設置しなければいけないが、海流発電に比べ、より陸地近くに置けるので、送電も楽に行えるのだ。
比江島准教授は、これからの再生可能エネルギーは、「ローカル電源であるべき」と話す。たとえば、大きな風車が山の上に立っている風景を見るが、これは人里離れたところで巨大な電力をつくり、都市まで運ぶことが前提になっているシステム。それよりも、発電量はそれほど多くなくとも、安定供給できるシステムをつくり、その土地に住む人間がそのエネルギーを消費する。つまり、エネルギーの分野においても、これからは“地産地消”が理想だと氏は考えているのである。
一時、三井造船や鹿島といった大企業との連携も模索していたが、現在は、独自に会社を設立する準備を進めている。社名はずばり「株式会社ハイドロヴィーナス」。鹿児島県長島町などで実用化に向けた話し合いがなされ、海外での実証実験の計画も持ち上がっているという。先述した栄養塩の撹拌効果など、漁業に役立つ技術となる可能性もさらに追及し、潮流発電に興味をもった企業だけでなく、漁業関係者ともパートナーシップを築きたいとの思いがある。また、まだ一般的にはなじみの薄い潮流発電の仕組みを知ってもらうために、河川などの流水環境に実験装置を設置。身近なところでのリアルな発電を見てもらうことで、ファンを増やしていきたいとも考えている。准教授が長年あたためてきた、人と自然が共存する海域での「里海エネルギー構想」が現実となる日もそう遠くはなさそうだ。
さらに、比江島准教授は、「やはり将来的には瀬戸内海にハイドロヴィーナスを設置したい」と話す。瀬戸内海の大小それぞれの島が電源をもち、自分の島のエネルギーは自分の島でまかなえるようになるというのが理想の姿だという。
岡山で誕生したハイドロヴィーナスは、瀬戸内海の島々に新しい可能性をもたらしてくれるだろうか。
●比江島慎二(ひえじま・しんじ)
岡山大学大学院 環境生命科学研究科 准教授。
1967年、山口県岩国市生まれ。地元の錦帯橋を見て育ち,その力学的な美しさに惹かれ構造物に興味をもつ。東京大学大学院工学系研究科 土木工学専攻博士課程で学び、工学博士に。振動学、耐風工学の研究を続け、最近は,特に潮流発電や風力発電など,水流や気流を利用した再生可能エネルギーの研究に取り組んでいる。
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Pendulum power: Innovative pendulum-dynamo for converting tidal energy into electrical power
Okayama University's Shinji Hiejima is looking for industrial partners to commercialize his experimentally proven and patented concept of the Hydro-VENUS system for converting tidal energy into electrical power.
Research on converting tidal energy into electricity energy has a long history with the European Marine Energy Centre, in Scotland being one of the major international hubs for testing ideas on extracting energy from the motion of seas and tidal currents. In Japan the search for energy resources is a high priority with research on exploiting the power of the seas surrounding the Japanese archipelago being actively pursued. Notably, a report published by New Energy and Industrial Technology Development Organization (NEDO) in 2010 states that the potential of tidal energy in Japan is equivalent to 20 nuclear power plants. Furthermore, the Seto Inland Sea—where Okayama University is located—has been assessed as being a site with especially high potential.
"I want to exploit the mechanical motion of a pendulum to generate electricity from tidal currents," says Shinji Hiejima, an associate professor at the Graduate School of Environmental and Life Science of Okayama University. Hiejima was born in Iwakuni City, Yamaguchi Prefecture, famous for its Kintaikyo Bridge.
"My fascination with the structure of bridges triggered my research on the interaction of strong winds with massive bridges such as the Seto Bridge that connects Okayama with Kagawa in Shikoku," says Hiejima. "In my early research I analyzed why large bridges oscillate when hit by strong winds such as typhoons. Now, I am focusing on harnessing tidal energy as a stable source of electricity. I am looking for partners to develop my ideas on the Hydrokinetic Vortex Energy Utilization System or Hydro-VENUS—a large underwater pendulum based system."
Hiejima points out that propeller type turbine systems being tested in Europe has three major drawbacks: High strength required for the materials used for making the rotor blades leads to increases in cost; waste in the ocean clogs up and damages rotors; and, fisherman consider the sharp edges of rotor blades to be harmful to marine life.
To resolve these limitations of propeller based tidal energy conversion, Hiejima began by analyzing the potential of power generated by flow induced vibrations of cylinders placed horizontally in water. This approach overcomes aforementioned shortcomings of propeller but the vortex induced vibrations—the cylinder moves translationally as waves moves across them—in these systems typically only yields a power efficiency of approximately 37% of so-clled VIVACE converter obtained in the experiments of a group in the USA.
"The translational motion of cylinders (such as used in VIVACE) limits the efficiency of tidal flow induced vibrations of cylinders," says Hiejima. "My concept for the Hydro-VENUS shown in Fig.1 does not vibrate translationally but rotationally, and initial tests yielded a power efficiency of 76% as shown in Fig.2." Early tests were carried out using 1.5 m cylinders as shown in Fig. 3. Hiejima is now developing 20 m cylinders from a wide range of materials with the goal of producing highly efficient structures.
"I have patented and demonstrated the potential for my version of a pendulum-dynamo," says Hiejima. "I am looking for industrial partners to commercialize it."
Further information
Patent: Japanese patent: PCT/JP2012/004000 (Dynamo)
Website: http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~hiejima/
Contact:hiejima@okayama-u.ac.jp
Website: http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~hiejima/
Contact:hiejima@okayama-u.ac.jp
流体振動を利用した自然エネルギーの活用など
里海エネルギーを活用した地域の独立と活性化洋上風力発電に適した瀬戸内海瀬戸内海のもう1つのお宝 ~ 潮流エネルギー風による物体振動を利用した新しい風力発電 |
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