2014年12月25日木曜日

"Pendulum type" tide generation 「振り子式」潮流発電

エネルギーも「地産地消」の時代へ 「振り子式」潮流発電の魅力

http://dot.asahi.com/science/s-general/2014121900096.html?page=1

振り子式潮流発電(イメージ図)
振り子式潮流発電(イメージ図)

実験の様子
実験の様子

比江島准教授
 比江島准教授
 
 「潮流発電」という言葉を聞いたことがあるだろうか。海で生み出されるエネルギーを利用したもので、潮の満ち引きが源泉となっている。今年、環境省が2018年の実用化に向けて始動するなど、いま日本で注目されている海洋エネルギーのひとつだ。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、潮流エネルギー賦存量は原子力発電所20基分と試算している。

この潮流発電において、「振り子式」という独自の技術を開発したのは、岡山大学大学院 環境生命科学研究科の比江島慎二准教授。以前より、「瀬戸内海エネルギーハーベスト構想」と題した、海洋エネルギーの開発に取り組んできた。瀬戸内海には、日本三大急潮流と呼ばれる鳴門海峡、来島海峡、関門海峡のほか、明石海峡、尾道水道、大畠瀬戸など、潮の流れの速い場所が数多く存在する。比江島准教授は「世界有数の潮流エネルギーの宝庫」であるこの地で、里山ならぬ「里海エネルギー」を研究してきた人物である。

比江島准教授の振り子式潮流発電は、簡単にいえば、海に巨大な円柱型の振り子を設置し、水流によってメトロノームのように動かすことで発電するシステムだ。下部に回転軸を通した円柱は空洞になっているので、水流で倒されても元に戻ることができる。このため、潮流に動きがあれば、常に動き続けることができ、回転軸を回すことで発電する。なお、現在は、円柱を半円柱に変更することで、従来よりも大きなエネルギーをつくることに成功している。

瀬戸内海の潮流は、秒速およそ5メートル。高さ20メートルの振り子をこの条件で動かした場合、2000~8000キロワットの発電が可能だという。この値がどれくらいの世帯の消費電力量を意味するかというと、2000キロワットの場合は2400世帯、8000キロワットの場合は9600世帯。潮流が秒速5メートルを常に維持できるとは限らないので、少なく見積もって半分の電力量になると仮定し、そのうえで1カ月の1世帯あたりの平均消費電力を300キロワット時で計算した数字である。

比江島氏は、これを「Hydro-VENUS」(ハイドロヴィーナス)と命名した。海から生まれたミロのヴィーナスを思わせる美しい名前だが、Hydrokinetic(水力)Vortex(渦)Energy(エネルギー)Utilization System(活用システム)の頭文字などから名付けられたもので、こちらの「ヴィーナス」はエネルギーを海で生み出す。

このハイドロヴィーナスの優れている点について、比江島准教授はこう説明する。
 
「動力に燃料が不要で、天候に左右されないところ。実用化されれば、安定してエネルギーをつくり出すことができます」

再生可能エネルギーの代表格、太陽光と風力は天候に左右されるという弱点を持っている。たとえば、風力発電の場合、1週間先の風速を予測することは不可能だ。しかし、潮流ならば、1年先の流速さえほぼ正確に予測することができるという。時刻や寒暖の差による流速の変化や向きの違いはあるものの、それはすべて計算通りになる。

潮流発電にはほかに、プロペラ式のものがあるが、これは、海の生物を傷つける危険性がある。振り子式ではその恐れが少なく、それ以上に海洋生物が生きていく環境を改善することもできるという。「海中に振り子を設置すると、水中を撹拌することができます。これが何を意味するかというと、かき混ぜることによって、ヘドロを巻き上げたり、栄養塩を循環させたりする効果があります。つまり、海底にたまっている栄養分を上に上げることで、プランクトンが肥えて、魚が育つよい環境が生まれるのです」

瀬戸内海は、国内屈指の漁場。魚にやさしいシステムは、漁業関係者にとってもメリットがある。比江島准教授は将来、振り子式潮流発電を設置することが、漁業に不可欠なものとして全国に広まっていくことも期待している。

さらに、ハイドロヴィーナスには送電ロスが抑えられるというメリットもある。たとえば海流発電の場合、発電量を増やすためには発電装置を沖に設置しなければいけないが、海流発電に比べ、より陸地近くに置けるので、送電も楽に行えるのだ。

比江島准教授は、これからの再生可能エネルギーは、「ローカル電源であるべき」と話す。たとえば、大きな風車が山の上に立っている風景を見るが、これは人里離れたところで巨大な電力をつくり、都市まで運ぶことが前提になっているシステム。それよりも、発電量はそれほど多くなくとも、安定供給できるシステムをつくり、その土地に住む人間がそのエネルギーを消費する。つまり、エネルギーの分野においても、これからは“地産地消”が理想だと氏は考えているのである。

一時、三井造船や鹿島といった大企業との連携も模索していたが、現在は、独自に会社を設立する準備を進めている。社名はずばり「株式会社ハイドロヴィーナス」。鹿児島県長島町などで実用化に向けた話し合いがなされ、海外での実証実験の計画も持ち上がっているという。先述した栄養塩の撹拌効果など、漁業に役立つ技術となる可能性もさらに追及し、潮流発電に興味をもった企業だけでなく、漁業関係者ともパートナーシップを築きたいとの思いがある。また、まだ一般的にはなじみの薄い潮流発電の仕組みを知ってもらうために、河川などの流水環境に実験装置を設置。身近なところでのリアルな発電を見てもらうことで、ファンを増やしていきたいとも考えている。准教授が長年あたためてきた、人と自然が共存する海域での「里海エネルギー構想」が現実となる日もそう遠くはなさそうだ。

さらに、比江島准教授は、「やはり将来的には瀬戸内海にハイドロヴィーナスを設置したい」と話す。瀬戸内海の大小それぞれの島が電源をもち、自分の島のエネルギーは自分の島でまかなえるようになるというのが理想の姿だという。

岡山で誕生したハイドロヴィーナスは、瀬戸内海の島々に新しい可能性をもたらしてくれるだろうか。

●比江島慎二(ひえじま・しんじ)

岡山大学大学院 環境生命科学研究科 准教授。
1967年、山口県岩国市生まれ。地元の錦帯橋を見て育ち,その力学的な美しさに惹かれ構造物に興味をもつ。東京大学大学院工学系研究科 土木工学専攻博士課程で学び、工学博士に。振動学、耐風工学の研究を続け、最近は,特に潮流発電や風力発電など,水流や気流を利用した再生可能エネルギーの研究に取り組んでいる。
 
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Pendulum power: Innovative pendulum-dynamo for converting tidal energy into electrical power
 
Okayama University's Shinji Hiejima is looking for industrial partners to commercialize his experimentally proven and patented concept of the Hydro-VENUS system for converting tidal energy into electrical power.
 
Research on converting tidal energy into electricity energy has a long history with the European Marine Energy Centre, in Scotland being one of the major international hubs for testing ideas on extracting energy from the motion of seas and tidal currents. In Japan the search for energy resources is a high priority with research on exploiting the power of the seas surrounding the Japanese archipelago being actively pursued. Notably, a report published by New Energy and Industrial Technology Development Organization (NEDO) in 2010 states that the potential of tidal energy in Japan is equivalent to 20 nuclear power plants. Furthermore, the Seto Inland Sea—where Okayama University is located—has been assessed as being a site with especially high potential.
 
"I want to exploit the mechanical motion of a pendulum to generate electricity from tidal currents," says Shinji Hiejima, an associate professor at the Graduate School of Environmental and Life Science of Okayama University. Hiejima was born in Iwakuni City, Yamaguchi Prefecture, famous for its Kintaikyo Bridge.
 
"My fascination with the structure of bridges triggered my research on the interaction of strong winds with massive bridges such as the Seto Bridge that connects Okayama with Kagawa in Shikoku," says Hiejima. "In my early research I analyzed why large bridges oscillate when hit by strong winds such as typhoons. Now, I am focusing on harnessing tidal energy as a stable source of electricity. I am looking for partners to develop my ideas on the Hydrokinetic Vortex Energy Utilization System or Hydro-VENUS—a large underwater pendulum based system."
 
Hiejima points out that propeller type turbine systems being tested in Europe has three major drawbacks: High strength required for the materials used for making the rotor blades leads to increases in cost; waste in the ocean clogs up and damages rotors; and, fisherman consider the sharp edges of rotor blades to be harmful to marine life.
 
To resolve these limitations of propeller based tidal energy conversion, Hiejima began by analyzing the potential of power generated by flow induced vibrations of cylinders placed horizontally in water. This approach overcomes aforementioned shortcomings of propeller but the vortex induced vibrations—the cylinder moves translationally as waves moves across them—in these systems typically only yields a power efficiency of approximately 37% of so-clled VIVACE converter obtained in the experiments of a group in the USA.
"The translational motion of cylinders (such as used in VIVACE) limits the efficiency of tidal flow induced vibrations of cylinders," says Hiejima. "My concept for the Hydro-VENUS shown in Fig.1 does not vibrate translationally but rotationally, and initial tests yielded a power efficiency of 76% as shown in Fig.2." Early tests were carried out using 1.5 m cylinders as shown in Fig. 3. Hiejima is now developing 20 m cylinders from a wide range of materials with the goal of producing highly efficient structures.
 
"I have patented and demonstrated the potential for my version of a pendulum-dynamo," says Hiejima. "I am looking for industrial partners to commercialize it."

Further information
Patent: Japanese patent: PCT/JP2012/004000 (Dynamo)
Website: http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~hiejima/
Contact:hiejima@okayama-u.ac.jp
 
 
OKAYAMA UNIV.PDF Issues

Shinji Hiejima, associate professor, Graduate School of Environmental and Life Science, Okayama University.
 
Fig.1: Hydrokinetic Vortex Energy Utilization System or Hydro-VENUS. The arrow which indicates vibration direction.
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Fig.2: Power induced by Hydro-VENUS in terms of the dimensions of the open cylinder.
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Fig.3: Offshore towing experiments
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Fig.3: Offshore towing experiments
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Fig.3: Offshore towing experiments
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流体振動を利用した自然エネルギーの活用など
 
風,河川,潮流などの流れの中に置かれた物体が流れの力により振動することが知られています.このような振動は構造物に好ましくない疲労破壊などを引き起こしますが,逆に,このような振動を利用すれば,効率的に自然エネルギーを取り出すことができる可能性があります.自然の力を利用して効率的にエネルギーを取り出すため,振動を利用したこれまでにない全く新しい発電方式に取り組んでいます.その他に,風車から発生する騒音の伝搬を高精度に予測するためコンピュータシミュレーション手法,今後の普及が見込まれる洋上風力発電のため,低コストで簡便に洋上風況を観測するための手法などについて研究しています.
 
 
 
 
 

2014年6月25日
振り子式潮流発電(Hydro-VENUS)の研究が岡山大学e-Bulletinに掲載(http://www.okayama-u.ac.jp/user/kouhou/ebulletin/feature/vol7/feature_001.html)
 
2014年6月25日
振り子式潮流発電(Hydro-VENUS)の研究が岡山情報誌オセラに掲載
 
2013年4月19日
振り子を使った新型潮流発電(Hydro-VENUS)の研究がジャパンフォーサステナビリティのWebジャーナル「岡山大学、振り子振動による潮流・海流発電方式を開発」に掲載(http://www.japanfs.org/ja/pages/032748.html
 
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瀬戸内海エネルギーハーベスト構想 ~里海エネルギーの活用~
 
瀬戸内海の洋上風力の活用をめざしたこれまでの『瀬戸内海洋上ウィンドファーム構想』を改め,新たに瀬戸内海の潮流エネルギーの活用も加えた『瀬戸内海エネルギーハーベスト構想』 ~里海エネルギーの活用~ を立ち上げました.

里海エネルギーを活用した地域の独立と活性化

 洋上風力発電に適した瀬戸内海

DSC00027.JPG      
 

  瀬戸内海の島々 ヨーロッパを中心に洋上風力発電の導入が盛んです.陸上よりも強く安定した風が吹く海の上に多数の風車を設置するものです.日本でも洋上風力の導入計画が進みつつありますが,遠浅の海が広がるヨーロッパと異なり,風車を設置可能な水深の浅い海域が少ないのが難点です.
 ところが,世界有数の閉鎖性海域である瀬戸内海は平均水深が30mで,風車設置が可能な水深の浅い広大な海域が広がっています.また,700~3000もの島々から成る「多島海」であり,それらの島々に風車を設置すれば,洋上と同等の良好な風が期待できるとともに,洋上よりも低コストで風車を建設できるメリットがあります.さらにそれらの島々の多くには,発電した電力を流すための送電線が既に敷設されており,新たに敷設する必要がない点でもコスト的に有利です.また,歴史的に見て地震による津波の被害が少なく,波が穏やかで規則的な海陸風が吹くことも洋上風力には好条件です.
 

瀬戸内海のもう1つのお宝 ~ 潮流エネルギー

瀬戸内海の潮流.jpg   
 
 瀬戸内海の主な潮流 瀬戸内海には洋上風力以外にもう1つのお宝があります.それは潮流エネルギーです.瀬戸内海には,日本三大急潮流と呼ばれる鳴門海峡,来島海峡,関門海峡の他,明石海峡,尾道水道,大畠瀬戸などの多くの潮の流れの速い場所があります.これらの流れは最大で5メートル毎秒にもなり,このエネルギーは風速にすると50メートル毎秒の巨大台風に相当します.そのような巨大な台風は過去数回ぐらいしか日本に上陸したことがありませんが,瀬戸内海には毎日のようにこの巨大なエネルギーが流れているのです.水は空気に比べて質量が桁違いに大きいため,ゆっくりした流れでも大きなエネルギーをもたらします.しかも,風力や太陽光と異なり,潮流は気象に影響されないため,自然エネルギーにしては珍しく極めて安定したエネルギー源です.この安定電源と洋上風力を組み合わせれば,化石資源や原発に頼らない”エネルギー耕作型社会”を実現できるかもしれません.
 

洋上風力や潮流エネルギーを利用した地域活性化への期待

洋上ウィンドファーム構想.jpg   
 
 地域活性化への様々な活用 瀬戸内海エネルギーハーベスト構想のもう1つの大きな目標は,洋上風力や潮流エネルギーを利用した瀬戸内海地域の活性化です. 例えば,発電した電力を汚れた海の水質浄化や大規模養殖に利用したり,あるいは風車の土台周辺の海中に魚礁や藻場を構築して魚を集めたりするなど,水産業への活用が考えられます.また,発電した電力を用いて海水を電気分解し,次世代エネルギーとして注目される水素を製造するなど,新たな環境産業の育成にも活用できます.さらに,美しい風車の姿を瀬戸内海の多島美と組み合わせて観光産業に利用したり,電力を利用した海水淡水化により夏場の渇水に備えるなど,様々な既存産業の活性化や日々の人々の暮らしに役立てることが可能です.将来の道州制の導入を見据えて,瀬戸内海に眠る「里海エネルギー」の活用と地方の独立をめざしています.
 
クリーンコンビナート.jpg    
 
 クリーンコンビナートの実現 ところで,瀬戸内海沿岸には6つの大規模コンビナートが連なり,この地域の産業活動において大きなウェートを占めます.しかし,コンビナートの生産活動から排出される大量の二酸化炭素は地球温暖化の原因となり,全地球的な脅威になりつつあります.一方,2020年頃をピークに世界の原油は生産減少に転じると言われており,石油をはじめとする化石資源を工業原料やエネルギー源とするコンビナート産業は,世界的な資源の奪い合いによる原油の高騰などにより,近い将来,壊滅的な打撃を受けることは確実です.
われわれはコンビナート沖合に洋上風車や潮流発電装置を設置し,発電した電力で海水を電気分解して製造した水素をコンビナートのエネルギー源や工業原料として利用する「クリーンコンビナート」の構築を考えています.コンビナートから排出される二酸化炭素を大幅に削減し,化石資源に依存しないエネルギー地産地消型のコンビナートの実現をめざしています.また,洋上風力から水素を生産するということは,自然界に蓄えておくことができない風力エネルギーを水素エネルギーという形で備蓄可能にすることを意味しています.エネルギーの備蓄によって,気象条件で大きく変動するため不安定で扱いにくいと言われる風力エネルギーの最大の欠点を克服し,風力発電の普及に大いに貢献します.さらに,水素は次世代エネルギーとして燃料電池の燃料などに使われるため,コンビナート周辺地域へパイプライン網を伸ばすことによって,コンビナートを中心とした水素社会を構築することも期待されます.
 

瀬戸内海の洋上風力でどれくらい発電可能なのか?

中国地方の電力消費量の4倍もの発電が可能!?

瀬戸内海全体発電量.jpg   
 
 瀬戸内海全体の発電量分布 それでは瀬戸内海の洋上にはどれくらいの風力エネルギーが眠っているのでしょうか.NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公開している風況マップ(LAWEPS)を元に,70m高さの1500kW風車を520m間隔で瀬戸内海の洋上や島々に設置したと想定して発電量を試算してみました(右図).関門海峡から四国の佐田岬にかけての海域には風の通り道があり,多くの発電量が期待できます.また,鳴門・淡路島付近にも発電量の多い海域が見られます.これらの発電量を瀬戸内海全体で足し合わせると,なんと中国地方の総電力量の4倍もの発電が可能であることが明らかとなりました.中国地方だけでなく,四国や九州も賄えるような膨大なエネルギー量です.現在では7000kWに達する規模の風車なども開発されており,より大規模な風車を設置すれば,さらに多くのエネルギー量が期待できます.
 

風車設置が可能な水深の浅い海域に限定したときの発電量

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  水深の浅い海域での発電量分布 洋上風力にとって瀬戸内海の最大の利点は,水深の浅い広大な海域が広がっていることです.水深が30mを超えると風車の設置が困難になります.そこで,水深が30m以下の海域だけに絞って発電量を試算してみました(左図).水深が30m以下の海域面積は全海域の7割に達し,さらに水深の浅い20m以下の海域に限定しても全海域の5割にも達することが分かりました.このような風車設置が可能な水深の浅い海域だけに限っても,中国地方の総電力量の2倍以上の発電が可能なのです.
 

コスト採算性で有利な風速の強い海域に限定したときの発電量

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 高風速の海域での発電量 コスト採算性を考慮すれば,風車はなるべく風速の強い海域に設置するのが理想的です.コスト採算性に有利な平均風速として5m/s以上と6m/s以上の海域に限定して発電量を試算してみました(右図).平均風速5m/s以上の海域面積が全海域の7割に達するのに対して,6m/s以上の海域は3割に減少します.すなわち,瀬戸内海には5m/s台の風速の海域が多いため,この5m/s台の風力エネルギーを以下に有効に活用するかが重要になると考えられます.
 

総合的に見たとき,瀬戸内海で洋上発電に適した海域はどこなのか?

洋上発電適地の例.jpg
 
   瀬戸内海で洋上発電に適した海域 上記の水深,風速以外にも風車の設置に制約となる条件として,国立公園や航路などがあります.これらの制約条件を重ね合わせて絞り込むことで,洋上発電に適した海域を抽出することができます.制約条件の内容によって結果は変わってきますが,2つの例を左図に示します.上の図は水深30m以下,平均風速5m/s以上,航路を除外するという条件をすべて満たす海域の発電量分布を示したものです.多くの海域がこの条件を満たすことが分かります.さらに下の図は,制約条件を最も厳しく設定したケースで,水深20m以下,平均風速6m/s以上,国立公園や航路はすべて除外したときの結果です.ほとんど該当する海域が無くなり,わずかに限られた海域しか該当しないことが分かります.しかし,このわずかな海域だけに限定した場合でも,中国地方の総電力量の6割をまかなえることが明らかになりました.特に,関門海峡付近の周防灘と鳴門海峡付近が極めて有望であることが分かります.

関連文献

「瀬戸内海洋上ウィンドファーム構想実現に向けての風力発電賦存量の試算」
比江島慎二;日本風工学会論文集,Vol. 34, No. 1 (No. 118), pp. 1-9, 2009
「Offshore wind power potentials in the Seto Inland Sea」
Shinji HIEJIMA and Yuuichi HIYOSHI; J. Environmental Science for Sustainable Society, Vol. 3, pp.35-40, 2009
「瀬戸内海洋上の風力発電賦存量」
比江島慎二,中元健太,田中隆一郎,鈴木昌次,山本計至;第19回風工学シンポジウム論文集,pp. 115-120, 200
「瀬戸内海ウィンドファーム構想」
比江島慎二;風力エネルギー,Vol.69, pp.99-101,2004 
 
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強度①-1.2mps-a.png 
倒立式Hydro-VENUSの水槽実験 (クリックすると動画が開きます)
 
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浮体式Hydro-VENUSの海上曳航実験 (クリックすると動画が開きます)
 

 振り子を用いた潮流発電(Hydro-VENUS)

瀬戸内海などの速い潮流や河川などの水流中で円柱型の振り子を振動させ,流体エネルギーを取り出すHydro-VENUS(Hydrokinetic Vortex Energy Utilization System)の開発に取り組んでいます.プロペラ回転式の発電に比べて,構造がシンプルで低コストであるとともに,漂流物を巻き込んでプロペラが破損したり,鋭利なプロペラで魚を傷つける心配もありません.また,同種の方式である米ミシガン大学のVIVACE(ヴィバーチェ)に比べて2倍以上のエネルギー取得効率を実現しました. 関連文献 「倒立振り子の流力振動を用いた発電のための基礎的実験」  比江島慎二,岡圭人,林健一,井上浩男;土木学会論文集B3(海洋開発),Vol.69, No.1, pp.12-21, 2013 「倒立振り子を用いた流力振動発電のためのエネルギー取得性能の検討」  比江島慎二,岡圭人,林健一,井上浩男;第22回風工学シンポジウム論文集,pp.425-430, 2012 「流体励起振動を利用した潮流発電のための基礎的実験」  比江島慎二,岡圭人,林健一,井上浩男;フラッターの制御と利用に関する第1回シンポジウム,2011 特許 「発電機」 特許第5303686号

 

風による物体振動を利用した新しい風力発電

  風により吊橋などの構造物が振動し,ときには構造物を破壊するほどの大きな振動になることがあります.このような流体励起振動を利用して,風力エネルギーを取り出す新しい発電の開発に取り組んでいます.プロペラ式の発電に比べて,構造がシンプルで低コストの発電が実現できます.また,風切り音などの騒音を発生せず,鳥類等の生物を傷つけない自然に優しい発電方法です. 関連文献 「角柱回転振動によるウェイクギャロッピングのフィードバック制御」  比江島慎二,川東一幸;日本風工学会論文集,Vol.38, No.2 (No.135), pp.27-34, 2013 「フィードバック増幅を利用した空力振動発電の制御パラメータに関する実験的研究」  比江島慎二,中野正史郎;土木学会論文集A1(構造・地震工学),Vol.68, No.1, pp.88-97, 2012 「空力振動を利用した発電のための振動増幅法」  比江島慎二,樋吉佑一;日本風力エネルギー学会論文集,Vol.96, pp.135-141, 2010 「上流側円柱加振によるウェイクギャロッピングのフィードバック制御」  比江島慎二,中野正史郎;第21回風工学シンポジウム論文集,pp. 363-368, 2010 特許 「振動体制御装置および振動体制御方法」 特許第5475719号

新型風車.bmp
プロペラを用いない新しいタイプの風力発電の実験(クリックすると動画が開きます)
 

洋上発電のための低コスト風況観測手法

ヨーロッパを中心に洋上風力発電の導入が盛んです.その導入にあたっては,洋上の風況を事前に調査する必要があります.通常,陸上では観測塔を建てて風速計により観測しますが,洋上では観測塔などの建設に多大なコストがかかり,漁業区域では観測塔の設置さえ困難なケースがあります.われわれは観測塔と風速計の代わりに,ドップラーソーダをボートに搭載して洋上風況を観測する手法を研究しています.観測塔を設置する必要がないため,低コストで簡易な洋上風況観測が可能になります.ただし,波で動揺するボートの上でドップラーソーダを水平に保つ必要があり,そのための水平保持装置を開発しました.2軸の振り子からなるジンバル構造で,振り子の固有振動数を極限まで低下させることにより,波の動揺に対して免振効果を発揮します. 関連文献 「振り子型免振装置を用いたドップラーソーダ洋上風況観測」  比江島慎二,小銭進司;日本風力エネルギー学会論文集,Vol.97, pp. 108-115, 2011 「洋上風況観測のためのドップラーソーダ水平保持装置における動揺安定化」  比江島慎二,小銭進司;日本風工学会論文集,Vol. 35, No. 2 (No. 123), pp.47-56, 2010 「ミニドップラーソーダを用いた相関法による風況予測」  樋吉佑一,比江島慎二;第20回風工学シンポジウム論文集,pp. 145-150, 2008
 
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ボートに搭載したドップラーソーダ洋上風況観測装置 (クリックすると動画が開きます
 

コンピューターシミュレーションによる風車騒音伝搬の予測

 
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複雑地形上を伝搬する風車騒音のコンピュータシミュレーション (クリックすると動画が開きます)
 
風車のプロペラから発生する低周波音などが問題となっています.複雑な地形上を伝搬する音は地形条件によっては,より遠くまで届く可能性があります.また,風や気温差などの気象条件によっても,音の伝搬性状は大きく変化します.このような複雑地形上で気象条件の影響を受けながら複雑に伝搬する騒音を予測するには,コンピューターシミュレーションが適しています.風車周辺環境への音響伝搬性状を風車設置の事前に予測するための高精度シミュレーションツールを開発しています. 関連文献 「風車騒音伝搬の高精度予測のための差分シミュレーション(風の流れが風車騒音伝搬に与える影響)」  比江島慎二,吉木健吾;日本風力エネルギー学会論文集,Vol.102, pp.25-31, 2012 「風車騒音伝搬の高精度予測のための差分シミュレーション(地表面における局所勾配と吸音境界)」  吉木健吾,比江島慎二;日本風力エネルギー学会論文集,Vol.100, pp.1-6, 2012 「複雑地形や地形風の影響を考慮した屋外音響伝搬の数値解析」  比江島慎二,向井靖彦,吉木健吾;土木学会論文集G,Vol.66, No.1, pp.35-45, 2010 「屋外音響伝搬解析における地表面境界処理に関する検討」  比江島慎二,吉木健吾,向井靖彦;応用力学論文集,Vol.12, pp.205-213, 2009 「気象影響を高精度に考慮した屋外音響伝搬解析手法の構築」  比江島慎二,向井靖彦,渡邊恭;土木学会論文集A,Vol.65 , No.3 , pp.708-717, 2009
 
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 http://www.cc.okayama-u.ac.jp/~hiejima/press/press.html 

 (クリックすると動画が開きます) 
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TSCニュース5 2012年12月20日 
 
ボリューム-1.bmp
KSBスーパーJチャンネル 2011年8月30日

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OHKスーパーニュース 2011年6月10日
KSB.jpg

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Okayama University Professor to Commercialise Hydro-VENUS System

Okayama University Professor to Commercialise Hydro-VENUS System

Okayama University’s Shinji Hiejima is looking for industrial partners to commercialize his experimentally proven and patented concept of the Hydro-VENUS system for converting tidal energy into electrical power.

Research on converting tidal energy into electricity energy has a long history with the European Marine Energy Centre, in Scotland being one of the major international hubs for testing ideas on extracting energy from the motion of seas and tidal currents. In Japan the search for energy resources is a high priority with research on exploiting the power of the seas surrounding the Japanese archipelago being actively pursued. Notably, a report published by New Energy and Industrial Technology Development Organization (NEDO) in 2010 states that the potential of tidal energy in Japan is equivalent to 20 nuclear power plants. Furthermore, the Seto Inland Sea—where Okayama University is located—has been assessed as being a site with especially high potential.

“I want to exploit the mechanical motion of a pendulum to generate electricity from tidal currents,” says Shinji Hiejima, an associate professor at the Graduate School of Environmental and Life Science of Okayama University. Hiejima was born in Iwakuni City, Yamaguchi Prefecture, famous for its Kintaikyo Bridge. 

 “My fascination with the structure of bridges triggered my research on the interaction of strong winds with massive bridges such as the Seto Bridge that connects Okayama with Kagawa in Shikoku,” says Hiejima. “In my early research I analyzed why large bridges oscillate when hit by strong winds such as typhoons. Now, I am focusing on harnessing tidal energy as a stable source of electricity. I am looking for partners to develop my ideas on the Hydrokinetic Vortex Energy Utilization System or Hydro-VENUS—a large underwater pendulum based system.”

 Hiejima points out that propeller type turbine systems being tested in Europe has three major drawbacks: High strength required for the materials used for making the rotor blades leads to increases in cost; waste in the ocean clogs up and damages rotors; and, fisherman consider the sharp edges of rotor blades to be harmful to marine life. 

 To resolve these limitations of propeller based tidal energy conversion, Hiejima began by analyzing the potential of power generated by flow induced vibrations of cylinders placed horizontally in water. This approach overcomes aforementioned shortcomings of propeller but the vortex induced vibrations—the cylinder moves translationally as waves moves across them—in these systems typically only yields a power efficiency of approximately 37% of so-clled VIVACE converter obtained in the experiments of a group in the USA. 

 “The translational motion of cylinders (such as used in VIVACE) limits the efficiency of tidal flow induced vibrations of cylinders,” says Hiejima. Early tests were carried out using 1.5 m cylinders. Hiejima is now developing 20 m cylinders from a wide range of materials with the goal of producing highly efficient structures. 

 “I have patented and demonstrated the potential for my version of a pendulum-dynamo,” says Hiejima. “I am looking for industrial partners to commercialize it.” 
  
Press Release, June 25, 2014; Image: okayama-u


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