2013年9月24日火曜日

ガンダーセン・松村昭雄-事故収束についての最近の議論

ガンダーセン・松村昭雄-事故収束についての最近の議論

http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-2285.html

Sun.2013.08.04

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福島第一原発からの絶望的な汚染水の流出。
いよいよ原発災害の本当の脅威が姿を現してきました。私たちは、いままでが単なる序章に過ぎなかったことを悟ったのです。

今年5月31日。
バーモントのアーニー・ガンダーセン氏の自宅に招かれた元国連職員の松村昭雄氏は、アメリカの政治リーダー、そして、世界のオピニオン・リーダーに、どのように動いてもらうか、ガンダーセン氏と戦略的なミーティングを行いました。



この話は、5月上旬、松村氏がガンダーセン氏の家に行く前に教えていただいていたのですが、今まで、公開をためらっておりました。
理由は、この有意な人々に対する理由なき攻撃を誘発したくなかったからです。

しかし、その嵐は去っていきました。
松村氏のブログ『FINDING THE MISSING LINK』には7月20日に、この議論の様子を撮影した動画がアップロードされています。ここに、お二人の議論を全編をつなげてご紹介します。

ガンダーセン氏の研究サイト『Fairewinds Energy Education』にも同じ動画と英語版とドイツ語版がアップロードされています。

途中まで日本語に訳したところ、『星の金貨プロジェクト』というサイトに、この動画が5編に分けて日本語に翻訳されていることを知りました。
最初のほうだけ私の訳。後の大部分は『星の金貨プロジェクト』さんより転載させていただきます。翻訳者である管理人さんには深く感謝いたします。

素晴らしき40年と恐るべき1日
Forty Good Years and One Bad Day
アーニー・ガンダーセン氏の原発技術者としての来し方。そして、原発の危険性を体験的・技術的見地から社会に訴えるアクティビストとしての半生。

見えてきた日本の将来に、どう新たな取り組みを行っていくべきかについて松村氏と議論した内容がこの動画です。
そして、「これから何が起こるのか」についての日本人への警告…。

この幾分長い動画の中には、非常に多くの情報が入っています。

《このビデオの中味について:リード》
このビデオの中には、私(ガンダーセン)と国際的な外交官である松村昭雄氏とのミーティングの内容が収録されています。

松村氏は、国連開発計画の元特別アドバイザーであり、「人類のサバイバルのための精神的かつ立法権を有する指導者の世界フォーラム」の創設者であり事務局長でもあります。

また、1992年、リオ・デ・ジャネイロで開かれた地球サミットでは議長を務めました。

アーニーと昭雄は、福島第一原発が依然として危機的状況に置かれていることについて議論した結果、東京電力を事故収束作業から、はずすべきだとの結論に達しました。

アーニーは、原子力産業に関わってきた40年の歳月を回顧しながら、原子力発電所での事故が、どのようにして、「良き40年」が「最悪の一日」によって吹き飛ばされてしまったのか語っています。

フェアウィンズ 7月18日


40 good years and one bad day from Fairewinds Energy Education on Vimeo.
(ここからスタート)
ガンダーセン氏:
こんにちは。
Fairewinds Energy Education のアーニー・ガンダーセン(Arnie Gundersen)です。
今日は、原子力の世界での私の経歴について、少しばかり、みなさんにも知っていただきたいと思います。

私は、42年前に原子力工学の学士号を取得しました。
(母校である)レンセラー工科大学のクラスではトップの成績でした。

また、その翌年には、原子力工学の修士号を取得し、原子炉運転技術士のライセンスを持つことになったのです。

その頃は、原子力こそが世界を救うことができる、と本気で信じていたのです。

以来、エンジニアリングと原発のマネジメントに没頭しながら、安全管理の特許を取得し、(原子力産業の)上級副社長にもなることができました。

それからです。原子力の不正を告発する人間になったのは。

そうこうしているうちに、スリーマイル島原発事故が起こり、チェルノブイリ原発事故が起こってしまったのです。
それでも私は、原子力発電技術は安全なものであると信じていましたので、この二つの原発事故は原子炉を運転する側に原因があると考えていたのです。

さて、私が告発する立場の人間になったとき、核を規制する人々が地平線の彼方から白馬に乗ってやってきて、私を助けてくれるだろうと信じていたのですが、現実はそうではなく、彼らは代わりに私を狙い撃ちし始めたのです。

このことからアメリカにおいては、核の規制が正当に行われていないことを理解したのです。

とはいうものの、心の奥底では、まだ原子力技術は安全であると考えようとしていたのです。

さて、私の後の経歴についてですが、私は多くのNGO(非政府組織)とともに仕事をしてきました。
そこでは、核に関する多くの報告書を作成してきました。

それでもまだ、心の奥底では、皆が懸命に努力すれば、原子力技術は安全を確保できるようになるはずだ、と信じていたのです。

そうしているうちに福島第一原発事故が起こったのです。
技術者が頼りにしていた安全装置は、ことごとくトラブルに見舞われ作動しませんでした。

海水を汲み上げる冷却ポンプもダメ、ディーゼル発電機もダメ、オフサイトの電源もダメ。
原子炉の封じ込めは失敗し、とうとう爆発が起こってしまいました。

人々から放射能を遮蔽する試みは、すべて失敗に終ったのです。

その出来事が、私の残りの人生を決定付けてしまったのです。

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バーモントの自宅にて

私は、つくづく今、思っています。
「原子力は、私に素晴らしき40年の歳月と、最悪の1日をもたらした。
たった一日の悪い日が人々に起こらないようにしながら、人生を捧げてきたのに」と。

さて、Fairewinds Energy Educationは、かれこれ2年以上にわたって、こうしたビデオをお届けしてきました。
そして、私たちが技術的に高いレベルの分析を行ってきたと、世界中から評価をいただくようになりました。

私たちは、原発に関するニュースを単に提供するというよりは、実際に何が起こっているのかを分析し、他では決して入手できない事実や現状についてお伝えしてきました。

さて、7月は、私たちがFairewinds Energy Educationを立ち上げた月です。

Fairewinds Energy Educationには、妻のマギーの他に、スタッフがいます。
これからも妻とともに仕事を続け、本当に良いビデオを提供するために、優れた水準を維持していきたいと考えています。
そこで、みなさんに、私たちをサポートしていただき、二、三のことをお願いできればと考えております。

まず最初は、私たちのサイトについてのご感想を・ご意見をいただきたいのです。
私たちは、ツイッターやフェイスブックにアカウントを持っています。

Fairewinds.org (fairewinds) on Twitter

Fairewinds Energy Education - Facebook

世界中の人々と私たちの分析を共有する多くの方法の一つ。

Fairewinds Energy Educationのサイトには、ドイツ語版、フランス語版があります。もちろん、昨年は日本語版もありました。

もう一つは、Fairewinds Energy Educationの活動動資金へのご協力をお願いしたいということです。

私たちの活動は無償では継続することができません。
マギーと私はフェアウィンズの活動を無償で行っていますが、スタッフがいなければフェアウィンズの活動を継続することは不可能です。

そして若干の必要経費もあります。

私たちの活動にご賛同いただけるのであれば、ぜひ一度ご寄付についてもご検討いただけますよう、お願いしたいと思います。

それでは、松村昭雄氏と私との対談が、あなたのために役立つことを願っています。

放射線とともに生きる日々

松村昭雄氏 (以下、松村氏):
アーニー、まず、このような非常に有意義な場にお招きいただいたことを感謝します。

今回、私は初めてバーモントを訪問しましたが、まずはあなたと奥様のマギーさんが、福島が予断ならない状況にあることを、くりかえし警告されてこられたことについて、お礼を申し上げたいと思います。

私のブログをご覧になっている皆さんも、フェアウィンズの取り組みを非常に高く評価されています。

アーニー・ガンダーセン氏(以下、ガンーセン氏) :
ありがとうございます。

今回あなたをお招きしてお話が聞けるということは、非常に意義があることです。
もちろん、妻のマギーもこの日を心待ちにしていました。

世界が真実を知りたいと思っている以上、私たちも最善を尽くしていくつもりです。

松村氏 :
ところで私は、東京電力に、果たしてこの巨大事故の収束能力があるかどうか?という多くの質問を読者から受け取りました。

私には判断のしようがありません。

しかし、経営陣も東京電力独力では事故処理はできないと考えている、そのような内輪話を耳にしたことがあります。
といっても、私たちは素人であり、正しい判断ができるわけでもありません。

その上、福島第一原発の事故については、様々な立場の科学者がまるで違う発言を繰り返しています。

そこで私は国連が核物理学者、原子力工学の科学者、地質学者などからなる独立した調査チームを編成し、改めて検証を行うよう要請する書簡を、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長あて送りました。

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日本の鳩山元首相にも同様の意見を述べました。

現在信じ得るのはヘレン・カルディコット博士の発言、そしてアーニー、あなたの見解だけだと考えています。

そこで、あなたに最初の質問です。

私の提案内容は、福島の現状についてあらゆる側面から検証し、全ての問題を明らかにするため、独立した国際的な調査団を設立すべきであるというものですが、あなたはどうお考えになりますか?

ガンダーセン氏:
それは素晴らしいアイディアだと思います。

わたしはこう考えます。

真に独立専門家によって構成される調査チームを編成の上、福島に派遣し、これ以上日本の人々を放射線被曝させないための、論理的に正しい対策を策定し、急ぎ実行する必要がある。

国連には独立した機関としてIAEA、すなわち国際原子力機関がありますが、その憲章の第2項には、はっきりと「原子力政策を推進する」と書かれています。
私に言わせれば、これでは独立した機関とは言えません。


独立した調査チームは、これから

1. 放射線とともに生きていかなければならなくなった
2. そしてこの放射線を取り除く取り組みをしなければならなくなった

ことのことを、日本の人々に、まず信任される必要があります。

この状況を考えれば、原子力発電を推進しようとしているIAEAのような機関に調査を任せることは、馬鹿げている以上に危険でさえあります。

専門家による国際調査団が現地に入り、どうすれば事故収束・廃炉作業を前に進めることが出来るのかを、日本の国民の皆さんに明らかにし、その上で東京電力以外の手によってその作業を行う、そのことが大切です。

もう一つ大切なことは、本格的な事故収束・廃炉作業が始まり、東京電力とは別の技術企業体がその作業を行う場合には、その企業はおそらくは国際的な連合企業になると思われますが、独立調査団は現地に留まり、作業の進展の監督をする必要があるということです。

なぜなら、一方では原子力発電所を建設しているような企業が、的確な事故収束・廃炉作業を行うことを、日本の人々に信じさせることは難しいからです。

全ての行程を監督すること、それが専門家による独立した調査チームに課せられる使命なのです。

またこの調査チームは日本政府に対して、問題の解決に必要な費用を支出するよう圧力をかけられるようにすることも必要です。

現在日本政府はもうこれ以上、東京電力に国の予算を割きたくはないと考えていると思われます。

そうである以上、東京電力は、本来必要な金額を下回る予算で、あらゆる問題に対処していこうとしている、そう考えられます。

そこで必要になるのが、国際調査団が新たに契約した企業に対し正しい処理、必要な処理を行うよう指導し、その上で福島第一原発の事故収束・廃炉作業に必要な本当の費用を日本の人々に公開することです。

そうして初めて、現在福島第一原発が直面している2つの大きな課題をクリア出来ると考えています。

・福島第一原発の事故収束・廃炉作業には、もっと別のやり方がある
・将来の社会においては、原子力発電に代わるべき別の発電手段がある
・地震発生により、700基以上の汚染水タンクに倒壊の恐れ



ガンダーセン氏 :
このビデオの冒頭部分で、私たちは福島第一原発で今実際に起きている状況、その本当の状況を明らかにし、その解決のためのひとつの選択肢を提案しようとしています。

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様々な新聞記事、あるいはネット上で公開されている専門家やジャーナリストのブログなどを見れば、福島第一原発には公開されている以上の数限りない問題が存在していることに気づかざるを得ません。

海に流出している放射性物質、ワイヤーをかじるネズミたち…

しかしこの2年あまり、福島第一原発の問題に向かい合ってきたフェアウィンズとしては、さらに皆さんに伝えなければならない事実があるのです。

福島第一原発の事故収束・廃炉作業には、もっと別のやり方があるはずです。

将来の社会においては、原子力発電に代わるべき別の発電手段があるのです。

そこで、このビデオの後半部分においては、福島第一原発の真実の状況に加え、世界がどの方向に向かって進むべきかをお話しています。

どうか皆さん、このメッセージが一人でも多くの方に伝わるように、寄付、翻訳、そしてツイートなど皆さんができることをしてください。


そうやってフェアウィンズの取り組みをサポートしていただきたいのです。

フェアウィンズは、最悪の結果があなたのそばで、現実のものとならないようにするために、あなたにも手を貸していただきたいのです。
松村氏 :
アーニー、ありがとうございます。

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さて、次に政治指導者の問題について考えたいと思います。

昨年私は2度日本を訪問し、福島第一原発の問題は国家的危機であると表明しました。

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そして福島の問題は、単に技術的課題に留まるものでもないし、民間企業に任せきりにしてよい問題でもないと主張しました。

この問題の処理を誤れば、その災厄は日本国内に留まるものではなく、福島第一原発の危機は世界的に、さらに波及する重大な原子力災害なのです。

解決すべき問題の筆頭に挙げるべきものなのです。


ところでアーニー、あなたは事故発生以来、原子炉4号機の危険性について警告を繰り返されてきました。

使用済み核燃料プール内の膨大な量の汚染水、そして使用済み核燃料の問題です。

そして最近では、3号機についても重大な懸念を表明されていますね。

原子炉3号機のどの点が問題なのか、4号機の問題と比較しながら詳しく説明していただけますか?

ガンダーセン氏 :
ご説明しましょう。

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福島第一原発は現在不安定なままですが、ただし、大きな地震に見舞われない限りはまだ大丈夫です。

『大きな』地震とは、地震が頻発する国で大きなものと感じる程の地震、つまりはマグニチュード7.0以上の地震の事です。

現在、福島第一原発には3つの大きな問題があります。

最初のひとつ、それは発電所内の数百基のタンクに貯蔵されている放射能汚染水です。

東京電力は福島第一原発の敷地内において、どこにどれだけの放射性物質が存在しているか正確なところを明らかにしていませんが、汚染水のタンク内には膨大な量の放射性物質があることは疑いありません。

福島第一原発の発電所の外にいた人々が、大量の被ばくをさせられてしまったことは隠しようのない事実です。
それからしても、発電所内に莫大な量の放射性物質がある事は間違いないのです。

ここに※制動放射と呼ばれる現象があり、さらにはタンク内の放射性物質の放射性崩壊により、高い値のエックス線が福島第一原発の外部にも放出されています。

※制動放射について

制動放射=Bremsstrahlung(ブレームシュトラルンク)
ドイツ語で、英語でもこのまま用いられる。頭文字は大文字。

ひと言で言うと、「電子が原子核の電界により急激に加速または減速されるとき電磁波を放射すること」。

詳しくはこちら。制動放射の概念図は、こちら

これはどういうことでしょうか?

何百とある汚染水タンクは、きわめて高い値の放射性物質を含んでおり、しかもこのタンクは耐震構造を持つものはひとつもありません。

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汚染水の海洋放出 ガンを誘発するトリチウム汚染の恐怖

もし大地震が起きれば、その結果は目に見えています。

そう、大地震が発生すれば、700以上あるタンクから高濃度の汚染水がほとばしり出て、発電所の地面を走り、太平洋になだれ込むことになるのです。

貯蔵されている汚染水の量は、これまで太平洋に流れ出した汚染水の量を上回っています。

そうです、1番目の問題とは、地震発生により貯蔵タンク内の汚染水が太平洋に流れ込む危険性があるということなのです。

・マグニチュード7.0以上の地震が発生した場合、3号機原子炉建屋は倒壊の恐れがある
・福島第一原発の危機は、戦争と同じぐらいの国家的危機である


ガンダーセン : 第2はここ数年私が懸念し続けてきた問題です。
原子炉4号機の構造に関わる問題です。

現在4号機の使用済み核燃料プールには、最も多量の使用済み核燃料が存在します。
しかもまだ熱を持っているのです。

そのため、4号機使用済み核燃料プールの冷却機能が失われれば、大量の核燃料が火災を起こすことになり、莫大な国土を汚染してしまうことになります。

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4号機プールで起こる可能性のあるジルコニウム火災
時間の進行とともに核燃料の温度は下がり続け、その分、火災発生の危険性も減少していくことになります。

しかし4号機の核燃料はまだその段階には至っておらず、プールの水が失われてしまえば火災が発生する恐れは充分にあります。

そして、現在計画されている使用済み核燃料プールからの核燃料の取り出し作業、その前提条件となっているのは、プール内の核燃料が無傷のままであるという事です。

もし核燃料を変形させてしまうほどの地震が発生すれば、当然使用済み核燃料プールが損傷し、全てはご破算になってしまいます。

水が失われ燃料の冷却が出来なくなり、そうなれば燃料はたちまちに発火点となる温度まで上昇し、火災を発生させてしまう事でしょう。


そして第3の問題、それが原子炉3号機に関するものです。

3号機に残っている核燃料は4号機ほど多くはありません。
その点はマシだと言えるでしょう。

問題は3号機の場合、事故による損傷がひどいという点です。

仮にマグニチュード7.0以上の地震が発生した場合、4号機の原子炉建屋は、なんとか耐えても、3号機の方は倒壊の恐れがあるのです。

3号機の核燃プール内にある核燃料の量は、4号機のプール内の量より少なくても、3号機は構造上深刻な問題を抱えており、福島第一原発が抱える最大の危機のひとつとしてずっと気がかりでいます。

3号機が爆発した(正確には『爆轟』、あるいは『即発臨界』。詳しくはガンダーセン氏による解説をお読みください http://kobajun.chips.jp/?p=5311 )際、巨大な衝撃波が生みだされ、原子炉と原子炉建屋が最大の損傷を受けました。

この問題は計り知れないほど危険です。

日本はこの問題について、戦争と同じ対応をしなければなりません。
いざ戦争が始まった場合、国は敵の状況を無視し、予算の制約によって一方的に作戦を変更したりするでしょうか?
福島第一原発の危機は戦争と同じぐらいの国家的危機である、私はそう認識しています。

東京電力は福島第一原発の事故収束・廃炉作業について限られた『予算』を計上し、その予算内ですべての処理について『最善を尽くそう』としています。

そして日本政府にとっては、もはや福島第一原発の事故収束・廃炉作業に使うべき充分な予算がないという事実を認めることよりも、あらゆる責任を東京電力のみに負わせることの方がはるかに楽なことなのです。

世界の産業事故史上、最大となったこの福島第一原発の事故を解決するためには、必要なだけの資金を確保するための基金を設立する必要があります。

私はこの問題について、これ以上日本政府や東京電力に期待することはできませんが、日本の皆さんには福島第一原発の事故によって、日本人が潜在的にどれ程巨額の借金を負わされてしまったのか、きちんと考えていただきたいと思っています。

日本人が福島第一原発の事故によって背負った借金は50兆円から75兆円の間だと、私は考えています。

松村氏 :
福島第一原発で現在起きている環境問題、そして健康問題を解決するための最良の方法にはどんなものがあるでしょうか?

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ガンダーセン氏 :
福島第一原発の事故の根幹部分を形成するものとして、私は2つの問題があると考えています。

ひとつは地下水が破壊された3つの原子炉建屋に流れ込んでいる問題です。

ここで思い出していただきたいことがあるのですが、東北地方の太平洋岸は東日本大震災によって約90センチの地盤沈下を起こしました。

あなた自身がビルディングになったつもりで、ちょっと考えてみてください。

もしビルディングであるあなたが建っている地面が、突然90センチも沈み込んでしまったら建物の基礎の部分が壊れてしまいますね。

そしてもっと大切なことがあります。

建築物が90センチ沈み込むことにより、基礎部分にかかる水圧が高くなってしまうのです。

これが福島第一原発の原子炉建屋の地下部分に殺到している地下水の量が、一日に400トンにも達している理由のひとつなのです。

・アメリカで効果を実証済みの収束技術の導入、日本政府・東京電力がともに拒絶

・放射線の漏出個所の特定、その補修作業を行ううちに、致死量の放射線被ばくをしてしまう可能性がある

・世界中の知識と技術を結集する以外、解決の方法があるとは思えない

ガンダーセン氏 :
さらにもうひとつ問題があります。

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原子炉格納容器には構造上、いくつかの穴が開けられています。

配線類、そして注排水をするパイプを通すための穴が開いているのです。

これらの穴の周囲をふさぐための絶縁体は、次の3つの問題の発生を想定していません。

・高い放射線にさらされること
・高温状態に置かれること
・絶えず塩水をかけられること

福島第一原発では、この3つの悪条件すべてが揃い、配線も配管もずたずたになっています。

本来なら格納容器内にあるべき放射性物質がこうした経路を伝い、他の建物まで汚染する状況が続いていると考えられるのです。

もう一つは、手ではつかめない程の大きさに破砕された核燃料の存在です。

これら核燃料は、破壊された原子炉建屋の各フロアに散乱しており、これらが流れ込んでくる地下水や冷却水の中に入り込み、膨大な量の汚染水を生み出す原因になっています。

ふたつの選択肢があるように思えます。

これ以上汚染水を増やさないように、溶け落ちた核燃料への注水を止めるという選択肢もあります。
あるいは放射線の漏出を止めるという方法もあります。

いずれも現実的な選択とは言えませんが、方法がないわけではありません。

私は、福島第一原発の敷地をぐるりと取り囲む溝を掘り、そこにゼオライトと呼ばれる物質で満たすことを提案しました。
ゼオライトは火山岩の一種で、放射性物質を非常に効率よく吸着・固定する性質を持っています。

日本の科学者である中村興一博士は、問題となっている地下水面を下げるために、その溝の外側に井戸を掘ることを提案されました 。

そこで地下水面を下げることが出来れば、この地下水は未だ汚染されてはいないので、海洋中に放出することが可能になります。

そして、溝の中に敷き詰められたゼオライトが、これらの井戸の中に放射性物質が入り込むのを防ぐ働きをします。
こうすれば原子炉建屋の破壊された基礎部分に入り込む水量を、大幅に減少させることが可能になります。

では今度は、放射性物質が福島第一原発の敷地の外に漏れ出さないようにする方法について考えてみましょう。

つながれていた馬たちは解き放たれて、小屋の外にいます。つまり放射性物質は原子炉格納容器から漏れ出し、周辺の建物まで汚染してしまっている状態です。

しかし、これ以上もう漏れ出すことがないよう、まず原子炉格納容器の漏出個所をふさいでしまうことがどうしても必要です。
漏出個所を特定し、その穴を塞がなければなりません。

しかし、今やその対策も、原子炉建屋付近の放射線量が驚くほど高い値になってしまったために、非常に難しいものになってしまいました。

誰かにコーキング剤を持たせ、「これであちこち穴を塞いで来てくれ…」などとは間違っても言える状況ではありません。
漏出個所を特定し、その穴を塞ぐ作業を行ううちに、致死量の放射線被ばくをしてしまう可能性があるのです。

また、一刻も早く原子炉内から核燃料を取り出す必要がありますが、それも放射線量が高すぎて着手が不可能な状況です。

そうしたことから、一日当たり400トンずつ増え続けている汚染水の流入を食い止める最良の方法は、地下水面を下げ、これ以上建屋付近に地下水が入り込まないようにすることなのです。

フェアウィンズはこの技術を持つアメリカ国内の企業2社と詳細な打ち合わせを行った上で、この対策を福島第一原発において実施するよう日本側に働きかけました。

しかし日本側の回答は『ノー!』、どちらの社の提案も拒絶したのです。
私は拒絶された理由は、アメリカ側の提案内容に何かしらの問題があったからではないと確信しています。

事実を申し上げます。

ゼオライトを敷き詰めた溝を使う技術は、アメリカ国内のウェスト・バレー原子力発電所で実際に行われており、非常に、非常に高い効果が証明されているのです。

そして、アメリカにおいて効果の高さが証明されたこの技術は、日本政府、東京電力、その両方に拒絶されたのです。

どちらが『拒否』を強く主張したのか、そこまでは私も知りません。

松村氏 :
アーニー、問題の根幹にかかわる部分についてのご説明、ありがとうございました。

福島第一原発には未解決の数多くの問題が山積している、私もそのように確信しています。

福島第一原発は、人類がかつて経験したことのない、非常な難問を私たちに突きつけています。
この問題の解決のため、私たちは徹底した検証を行い、世界の叡智を結集することを何としても実現させる必要があります。
 
世界中の知識と技術を結集する以外、解決の方法があるとは思えません。
どうか日本を、そして世界を救ってください。

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アーニー・ガンダーセン、マギー・ガンダーセン、そしてカルディコット博士、みなさんに重ねてお礼を申し上げます。

マギー・ガンダーセン氏(ご夫人) :
みなさんこんにちは、マギー・ガンダーセンです。

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このビデオをご覧いただいたことに感謝申し上げます。
そして私たちが仕事を進める上で、ご助力いただいている点についてお礼を申し上げます。

フェアウィンズにはきわめて有能なチームがいて、常に最大限の努力を惜しまず、世界中の原子力問題、核問題について最新の情報を皆さんにお届けしています。

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Fairewinds Energy Educationの取材・海外版制作スタッフとweb担当スタッフ
私たちはこうした作業に、常に全力で取り組み、大手メディアなどからは決して得られない答えをご提供しています。

私たちの活動へのご理解とご協力をぜひお願いいたします。
ご寄付をお願いいたします。

これからも最先端の情報提供を続けるため、現金をお送りいただくか、ペイパルを利用しての寄付をお願いしたいのです。

ありがとうございました。

(終り)



(ここから管理人)
活動を共有する、ということ

ガンダーセン氏の動画の文字起こし、解説記事の翻訳(毎回ではないが)をやる人は、いちようにこう言います。
「まったくストレスを感じない」。

私個人にしても、日本の、あるいは海外の、いわゆる専門家と言われている人たち-核物理学者、放射線研究者-のうちで、まったく嫌な念を感じない人は、ガンダーセン氏とカルディコット博士、そしてカナダの核物理学者のゴードン・エドワーズ博士だけです。

ネット上とはいえ、悪念はしっかりキャッチしてしまうものなのです。そして、それは妥当であることが後で分かるのです。

しかし、2年以上見てきて、彼らには、まったくそれがありません。ネットから漂う嫌な臭い、俗人の垢といったものが見えないのです。

実は、私は、みなさんがご覧になっているサイトの管理人の多く、海外で活動している人たちの何人かと連絡を取っています。

もちろん、私は不精なので、最初は私からメールを差し上げたわけではないのです。
しかし、無精者ではあっても、彼らに突き動かされて何度かメールを交換させていただいている間に、そうした人たちが貯金をはたいて活動していることが分かってきました。

私は一年以上前から、彼らが活動を断念し、日本に対して専門的、かつ有益な情報が出てこなくなってしまうことを恐れています。

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思いつくまま、私のほうから活動費を捻出するアイデアなども提供するのですが、彼らは、あくまで寄付金にこだわるのです。
これはキリスト教文化と仏教文化の違いかもしれないと思い始めています。

私が今まで誤解していたこと。それは日本の「お布施」とは、また違うものであるということです。
「お布施」には、ねぎらいの意味が込められていますが、彼らの「寄付金」とは、「ともに、あろう、ともに行動しよう」という意味が込められているのです。

日本では、3.11後、何人かプロガーさんがネットで募金活動を行いました。
そのうちの何人かは詐欺師と言われても仕方のない人たちでした。

また、募金の一部を「手間賃」として着服し、それをブログで報告しないブロガーもいました。彼らは「浄財」という言葉を死語にしたいようです。

こうしたことが、日本人のネットでの募金・寄付金といったものに対するアレルギー反応を引き起こしてしまったのです。良くないことです。

私のところには、今まで多くの要望が来ています。

しかし、ただの一度もお受けしていません。
私が彼らにアドバイスするとすれば、「安易な方法は結局、後になってから失敗する。自分が知恵を絞り出せ!」です。

この記事を読んで、「お布施」ではなく、彼らとともに「活動を共有しよう」と考えた人は、寄付を考えてみてください。

もちろん彼らにとっては多いほうが助かることは間違いないことですが、決して金額の問題ではないのです。あくまでも、「活動を共有したいかどうか」ということなのです。ここを間違えないでください。ですから、数百円でも恥ずかしいことなどありません。

金持ちの100万円より、自給700円で働く勤労青年からの100円のほうが価値があるかもしれません。

ガンダーセン氏のサイト、松村昭雄氏のサイトの右側に、こうしたボタンがあります。

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