Video features the first offshore oil production platform in Russia, Sakhalin Island.
Construction of the first in Russia gas production offshore platform, Sakhalin Island.
This video features the Sakhalin-2 Project in its full scale. Watch this video to see the world class technologies applied at the project's main facilities.
Video features construction of the onshore pipeline system for the Sakhalin-2 Project, Sakhalin Island: river crossings, seismic faults crossings, block valve stations, erosion control and reinstatement.
サハリン2と日露外交
公開日: 2012/03/15
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サハリン1プロジェクト ー 原油パイプライン完成までの軌跡 ー
PDF: 38p
http://www.enaa.or.jp/SEC/member/kaiin/salon/No311.Mr.Aoyama.pdf
平成20年10月15日
新日鉄エンジニアリング株式会社
青山伸昭
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http://www.tkfd.or.jp/research/project/news.php?id=1109
露ロスネフチ社と米エクソン社によるサハリンLNGプロジェクトが我が国のエネルギー戦略に与えるインプリケーション
更新日:13/02/28
東京財団研究員
畔蒜 泰助
2011年8月の北極海沖の石油・天然ガス開発での提携発表以来、戦略的提携関係にある露国営石油会社ロスネフチ社と米エクソン・モービル社(以下、エクソン)が、その戦略的提携関係を更に深めるべく、2013年2月13日、以下の追加の協力案件で合意したことを発表した。
・ロスネフチ社はエクソン社との北極海での石油・天然ガス開発協力案件リストに更に7つのライセンスを加える。
・ロスネフチ社はエクソン社がアラスカで運営するPoint Thomson天然ガス・コンデンセート開発プロジェクトの25%分を取得する権利を得る。
・ロスネフチ社とエクソン社はロシア極東地域での液化天然ガス(LNG)プロジェクトの可能性について共同で検討する。*1
この中で、3つ目の極東LNGプロジェクトは、我が国の対露エネルギー戦略、更にはエネルギー戦略全般に大きな影響を与える可能性がある。以下、同プロジェクト急浮上の背景と我が国のエネルギー戦略に与えるインプリケーションについて考察する。
ウラジオLNGプロジェクト 対 サハリンLNGプロジェクト
日露間では2009年以来、露天然ガス独占企業体ガスプロム社と伊藤忠商事や丸紅などとの間で、ウラジオストックでのLNGプラントの建設プロジェクトの可能性が検討され、これを資源エネルギー庁も積極的に支持してきた。実際、昨年9月8日、ウラジオストックでプーチン大統領と野田首相が首脳会談を行った際も、両首脳立ち会いの下でガスプロム社のアレクセイ・ミレル社長と資源エネルギー庁の高原一郎長官が「ウラジオストクLNGプロジェクトに関する覚書」に調印している。
*2
ロシアは既に、ガスプロム社が株式の過半数を有し、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事も出資するサハリン2プロジェクトをガス供給源とするLNGプラントから、日本の年間需要量の約10%にあたるLNGを対日輸出している。前述のウラジオLNGプロジェクトとは、ウラジオにも第二のLNGプラントを建設し、日本を筆頭とするアジア太平洋地域へのLNG輸出の拡大を狙うもの。エネ庁の発表によれば「ガスプロムは年末までに投資決定の準備を終了する予定」とのことだった。
そんな中、ロスネフチ社とエクソン社による極東LNGプロジェクトが急浮上したのだ。一部報道によれば、これはサハリンでのLNGプラント建設を検討するというもので、ウラジオLNGプロジェクトとは全く別のものである。
*3 この突然の展開の背景を理解するには、次の2点を押さえておく必要がある。
・ウラジオLNGプロジェクトのガス供給源の問題
・ロシア国内でのガスプロム社の影響力の低下
ウラジオLNGプロジェクトのガス供給源の問題
実は、昨年末の時点で、ウラジオLNGプロジェクトは、まだ天然ガスの供給源を確定出来ておらず、生産コストから見た採算性の判断が下せないでいた。そもそも可能性が検討されている天然ガスの供給源は3つあった。
まず、エクソン社がオペレーターを務め、ウラジオLNGプロジェクトの検討にも参画している伊藤忠商事や丸紅も出資するサハリン石油ガス開発(SODECO)も30%の権益を保有するサハリン1プロジェクトである。同プロジェクトは埋蔵量的にも生産準備という意味でも申し分ないが、肝心のエクソン社が価格面などから、ウラジオLNGプロジェクトへの天然ガス供給には消極的といわれた。
また、埋蔵量的には有望と目されているサハリン3プロジェクトは、プーチン大統領の指示の下、露ガスプロム社が急ピッチで開発作業を続けているが、その生産開始が大幅に遅れていた。
最後に、東シベリアのサハ共和国にチャヤンダ天然ガス田という巨大な天然ガス田がある。だが、ガス田そのものの性質から開発自体に相当コストが掛る上、ウラジオストックまで3,200kmものパイプラインを敷設する必要がある。よって、ロシア政府が余程の優遇措置でも取らない限り、チャヤンダの天然ガスをベースに同LNGプラントからのLNG価格を試算すると相当割高になり、日本国内での買い手を見つけることはかなり困難だというのが業界関係者の一致した見方だった。
ところが、昨年10月29日、露ガスプロム社のミレル社長が突如、プーチン大統領との会談の中で「チャヤンダ天然ガス田の開発並びに同天然ガス田とウラジオLNGプラントを繋ぐサハ−ハバロフスク−ウラジオストック(SKV)パイプライン建設に着手する。総投資額は7,700億ルーブル(=約3兆円)で、2017年までの完成を目指す」と報告した。
日本政府筋の情報によると、前述のウラジオ覚書調印時、ガスプロム社のミレル社長は「ウラジオLNGプロジェクトのガス供給源はサハリン1を考えている」と明言していたという。それでも、このタイミングでミレル社長がチャヤンダ開発方針をプーチン大統領に言及したということは、コスト的にも量的にも最有力とガスプロム社自身も考えているサハリン1からの天然ガス供給を巡り、オペレーターのエクソン社との交渉が思うように進んでいないことの裏返しだった可能性が高い。
ガスプロム社の影響力の低下
ガスプロム社といえば、エネルギー大国を標榜するプーチン・ロシアのチャンピオン企業との印象が強い。実際、2006年、ロシア政府はガスプロム社にロシア産天然ガスの独占輸出権を付与しているが、ここ数年来の北米発のシェールガス革命を背景に、同社は急速のその国内での影響力を低下させている。
ガスプロム社は天然ガス輸出の約9割を欧州市場に依存し、その形式も、パイプライン輸送を通じた欧州企業との長期契約ベースである。ところが、北米発のシェールガス革命の余波で、余剰となったカタール産のLNGが大量かつ安値で欧州のスポット市場に流れ込み、そこに欧州経済の急速な落ち込みも加わって、ガスプロム社は同市場で苦戦を強いられている。
それ故、天然ガス市場へのアジア太平洋地域への多角化が急務なのだが、その具体的な成果は前述のサハリン2プロジェクトのみで、これさえも、2003年にサハリンでのLNGプロジェクトの事業化を宣言して以来、これを推進していた英蘭ロイヤル・ダッチ・シェル社、三井物産、三菱商事の3社が出資するサハリン・エナジー社に対して、政治的圧力を掛けた結果、2006年12月、ガスプロム社がサハリン・エナジー社の株式50%+1株を取得した結果に過ぎない。その意味で、ガスプロム社にとって、ウラジオLNGプロジェクトはアジア太平洋地域での天然ガス市場の獲得の為に自ら主導する初めてのプロジェクトだったが、前述の通り、天然ガス供給源の確保が出来ないまま迷走を続けていた。
そんな中、ガスプロム以外の独立系の天然ガス会社はかねてより、ガスプロム社による天然ガス輸出独占体制の自由化を求めていた。その筆頭は露ノバテック社である。同社はプーチン大統領と古くからの友人関係にある共同代表者の一人、ゲナジー・ティムチェンコのロビイング力を背景に、ロシア北方のヤマル半島にある世界最大のガス田への権益の一部への参入を勝ち取り、アジア太平洋市場へのLNG輸出を念頭に、ヤマルLNGプロジェクトの実現を目指している。このノバテック社の要請に対して、昨年11月、露エネルギー省はガスプロム社による天然ガス輸出体制の廃止について検討を開始したと発表していた所だった。
*4
また、ここに来て、ノバテック社以上に、ガスプロム社の天然ガス分野の独占体制を脅かす存在が登場してきた。それが、プーチン大統領の側近中の側近であるイーゴリ・セチン前副首相(エネルギー産業担当)率いるロスネフチ社である。
セチン社長率いるロスネフチ社は2011年8月以降、米エクソン・モービル社と北極海沖での資源開発で戦略提携を構築している他、2012年10月には、英BP社とロシアの投資家グループが折半出資するロシア第三位の石油会社TNK−BP社を買収することで、BP社との戦略的パートナーシップ関係を構築。一躍、世界最大の石油会社に躍り出た。この時点で、専門家の間では、ロスネフチ社が天然ガス分野でもノバテック社以上にガスプロム社の独占体制を脅かす存在になる可能性が指摘されていた
*5が、まさにその通りの展開になりつつある。
かくしてガスプロム社は、ロシア国内外で急速にその影響力を失いつつある。その象徴が、前述したLNGの輸出独占体制の段階的自由化問題だ。冒頭のロスネフチ−エクソン・モービル合意が発表されたその日、プーチン大統領が委員長を務め、ロスネフチ社のセチン社長が書記を務める露エネルギー産業に関する大統領委員会の場で、プーチン大統領が初めて、LNG輸出の独占体制の段階的な自由化の可能性に初めて言及した。その動きを積極的に後押ししたのは、ロスネフチのセチン社長で、本来、同委員会のメンバーである筈のガスプロム社のミレル社長は、同日の会議を欠席していたという。
*6
我が国のエネルギー戦略に与えるインプリケーション
そんな中、急浮上してきたロスネフチ社とエクソン・モービル社によるサハリンLNGプロジェクトは、今後の日露エネルギー協力交渉は勿論、我が国のエネルギー戦略全般に影響を与える可能性がある。どういうことか?
まず、これまで日露エネルギー協力の中心議題だったガスプロム社主導のウラジオLNGプロジェクトに替わって、このサハリンLNGプロジェクトが一躍、本命に浮上する可能性が出て来た。最大のポイントは、ウラジオLNGプロジェクトにせよ、サハリンLNGプロジェクトにせよ、現時点で唯一の安定的かつリーズナブルな価格での天然ガス供給源になり得るサハリン1プロジェクトのオペレーターのエクソン・モービル社がこれに参画しているからだ。
このロスネフチ‐エクソン・モービル合意が発表された僅か6日後の2013年2月19日から2日間、セチン社長率いるロスネフチ社訪問団が、訪日し、ウラジオLNGプロジェクトへの参画を検討している伊藤忠商事、丸紅、石油資源開発(JAPEX)、国際石油開発帝石(INPEX)、そして日本連合によるサハリン1プロジェクトへの出資母体であるサハリン石油ガス開発(SODECO)の各社と会談している。サハリンLNGプロジェクトが議題になったのは間違いないだろう。
セチン社長としても、北米からの日本をはじめとするアジア太平洋諸国へのシェールガスの輸入が現実味を帯びてくる中で、このままガスプロム社の迷走を放置していては、他国にその市場を取られるとの危機感が高まっていたことが、今回の迅速な動きに繋がったと見る。
なお、サハリンLNGプロジェクトの浮上は、一部日本企業が日本政府の了解の下、水面下でその可能性を探ってきたもう一つの構想、即ち、サハリンから日本への海底パイプライン敷設による天然ガス輸入構想への影響も不可避であろう。
前述のガスプロム社ミレル社長によるチャヤンダ開発発言が飛び出た直後の2012年11月4日、東京ガスや石油資源開発、日鉄住金パイプライン&エンジニアリングの企業連合が、サハリンと首都圏を結ぶ約1,400kmのガスパイプライン建設の事業化調査を行っていることが朝日新聞報道で明らかになった。天然ガス供給源としては、やはりサハリン1を想定し、石狩−苫小牧の一部陸上以外は海岸沿いに鹿島まで海底に敷設する。コストは3,000〜4,000億円程度。サハリン1からの天然ガス供給を前提としたウラジオLNGプラント構想と比較しても、割安になる。また、サハリン1のオペレーターであるエクソン・モービル社には既に説明済みとあるとしていた。
*7
実は、筆者も2012年度 東京財団政策提言
『日本の資源エネルギー 政策再構築の優先課題』の中で以下の3つの提言を行っている。
(1)我が国としては、天然ガスの供給源並びに供給形式の多角化により、安定調達と調達コストの抑制を同時に目指すべき
(2)北米シェールガスとサハリン産天然ガスを組み合わした調達戦略を構築せよ
(3)サハリン産天然ガスの調達では、パイプライン敷設の可能性も再検討すべき
特に(3)は、日本の天然ガス輸入価格の引き下げ戦略のワイルド・カードになる可能性もあると考えていた。実際、上記朝日新聞報道でも、その事業コストはかなり低く抑えられるとの見積もりが提示されていた。
水面下でこのプロジェクトを推進するグループは、ガスプロム社主導のウラジオLNGプロジェクトが、天然ガス供給源の確保を巡って迷走を繰り広げる中、もし、サハリン1プロジェクトの天然ガスの命運を握るエクソン・モービル社を説得出来れば、サハリンから日本への海底パイプライン敷設構想が再浮上する可能性もあると踏んでいたのではないか。だが、今回、肝心のエクソン・モービル社がロスネフチ社と組んで、サハリンLNGという第三のプロジェクトの可能性を検討し始めたことで、一歩後退したといえよう。
何れにせよ、今後、我が国としては、ロスネフチ社とエクソン・モービル社によるサハリンLNGプロジェクトの事業化可能性調査(FS)の結果を待って、北米のシェールガスの対日輸入の価格やタイミングとの比較の中で、同プロジェクトへの参加の是非を判断することになろう。その結果次第では、サハリンから日本への海底パイプライン敷設構想がもう一度テーブルに乗る可能性も皆無ではない。よって、この選択肢は保持しつつ、引き続き、グローバルな視野で、戦略的な天然ガスの調達外交を継続していくべきであろう。
*1 Rosneft and ExxonMobil Expand Strategic Cooperation. ExxonMobil News Release.
http://news.exxonmobil.com/press-release/rosneft-and-exxonmobil-expand-strategic-cooperation
*2 2012年9月10日付「経済産業省プレスリリース」
http://www.meti.go.jp/press/2012/09/20120910003/20120910003.pdf
*3 Exxon, Rosneft mull LNG plant in Russian Far East. Dow Jones Newswires.
http://www.hydrocarbonprocessing.com/Article.aspx?ArticleId=3155110
*4 Новатек разрушает монополию Газпром на экспорт газа. Ведмости. 2012.11.21.
*5 Rosneft Replace Gazprom as Super-Champion. Moscow Times. 2012/10/26.
*6 Газпром проиграл в монополию. Коммерсантъ.2013/02/14. Газпром проиграл в монополию. Коммерсантъ.2013/02/14.
*7 「サハリン−茨城一四〇〇キロ、パイプライン構想」2012年11月4日付『朝日新聞』掲載記事。
http://www.asahi.com/business/intro/TKY201211030641.html