2013年10月2日水曜日

放射性物質はどのくらい放出された?Global data on Fukushima challenge Japanese estimates.

Nature News

http://www.natureasia.com/ja-jp/nature/specials/contents/earthquake/id/nature-news-102711

放射性物質はどのくらい放出された?

Nature 478, 435-436 (号) | doi:10.1038/478435a

ノルウェーの研究チームにより、新たに福島第一原発事故で大気中に放出された放射性物質の総量が計算され、政府が6月に発表した推定放出量よりもずっと多いという報告があった。

Geoff Brumfiel

世界各地で観測された放射能データを組み合わせて大気中の放射性物質の量とその流れを推定した結果、福島第一原子力発電所の事故では、政府の推定よりもはるかに大量の放射性物質が放出されていたという研究が、Atmospheric Chemistry and Physics に発表された1。さらに、日本政府の主張とは裏腹に、4号機の使用済み核燃料プールから大量のセシウム137(半減期が長く、長期にわたって環境を汚染する物質)が放出されていたとも報告しており、もっと迅速に対応していれば、これほど大量の放射性物質が放出されずにすんだかもしれないと述べている。論文はオンライン掲載され、現在、公開査読を受けている。

研究チームを率いたのは、ノルウェー大気研究所(シェラー)の大気科学者 Andreas Stohlだ。Stohlは、自分たちの分析は、これまで行われてきた福島第一原発から放出された放射性物質の量についての調査研究の中で、最も包括的なものであると自負している。スウェーデン防衛研究所(ストックホルム)の大気モデル作成の専門家 Lars-Erik De Geerは、今回の研究には関与していないが、「非常に価値のある成果です」と評価している。
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原発事故による放射性物質の放出過程の再現は、日本国内をはじめ世界各地にある数十か所の放射性核種モニタリングステーションで観測されたデータに基づいて行われた。その多くは、包括的核実験禁止条約機構(オーストリア:ウィーン)が核実験の監視のために運用している世界規模での観測ネットワークに属する。このデータに、カナダ、日本、ヨーロッパの独立観測ステーションのデータも付け加え、これらをヨーロッパと米国が保管している広域気象データと組み合わせた。
ただし、Stohl は、自分たちが作成したモデルは完全にはほど遠いものだとして注意を促している。原発事故発生直後の測定データが非常に少ないうえ、一部のモニタリングポストは放射能汚染がひどく、信頼できるデータが得られなかったからである。より重要なのは、原子炉から何が放出されたのかを知るためには、原子炉内で何が起きたのかを厳密に知らなければならないのだが、いまだ明らかになっておらず、永久に謎のままかもしれないという事実である。「チェルノブイリ事故から25年後もたった今でも、その推定値は不確かな部分が非常に多いのです」と Stohl は言う。
それでも、今回の研究は、福島第一原発事故を全般的に調査したものであり、De Geer は、「Stohl らは真に地球規模の視点から、現在入手できるかぎりのデータを利用して推定しています」と話す。

政府の発表

3月11日の地震後に原発で起こった出来事については、すでに日本の研究者たちが詳細な経緯を推定している。福島第一原発電の6機の原子炉が激しい揺れに見舞われた50分後、巨大津波が襲来し、緊急時に原子炉を冷却するための非常用ディーゼル発電機が破壊された。それから数日の間に、地震発生時に稼働していた3機の原子炉が過熱して水素ガスを発生し、次々に水素爆発を起こした。定期点検のために停止していた4号機では、核燃料は使用済み核燃料プールに貯蔵されていたが、3月14日にこのプールが過熱し、おそらく数日にわたり建屋内で火災が発生した。
一方で、原発から放出された放射性物質の量の解明は、事故の経過の再現に比べてはるかに難しい。政府が6月に発表した『原子力安全に関するIAEA閣僚会議に対する日本国政府の報告書 ―東京電力福島原子力発電所の事故について―』では、今回の事故により放出されたセシウム137は1.5×1016ベクレル(Bq)、キセノン133は1.1×1019Bqと推定している2。セシウム137は半減期30年の放射性核種で、原発事故による長期的汚染のほとんどの原因となっている。一方、キセノン133はウラン235の崩壊によって放出される半減期約5日の放射性核種であり、原発事故や核実験の際、初期に観測される。

ところが、Stohl らが原発事故の再現結果に基づいて推定した放出キセノン133の量は1.7×1019Bq、セシウム137の量は3.5×1016 Bqで、政府の見積もりよりキセノンが約1.5倍、セシウムが約2倍となった。

キセノン133の放出量は、チェルノブイリの総放出量1.4×1019Bqよりも多いことになる。だが、De Geer によれば、チェルノブイリでは爆発した原子炉が1機であったのに対して、福島の事故では3機も水素爆発したことで説明できるという。また、キセノン133は生体や環境に吸収されないため、健康に深刻な影響を及ぼすおそれはない。 問題なのは、数十年にわたり環境に残存するセシウム137だ。Stohl らのモデルの値は、チェルノブイリ事故での放出量の約1/2に相当する。De Geer は、このような高い値が出たことを懸念している。今後、セシウム137が人々の健康に及ぼす影響を明らかにするためには、現在行われている地表での測定を進めていくしかない。
Stohl は、自分たちの推定値が政府の発表と食い違いっているのは、今回の調査ではより多くのデータを使用したことが原因の1つであるという。政府の推定の基礎となったデータは、主として日本国内のモニタリングポストによるものであり3、風に乗って太平洋を越え、北米やヨーロッパに到達した膨大な量の放射性物質は考慮されていないのだ。神戸大学の放射線物理学者で、福島周辺の土壌汚染を測定している山内知也(やまうちともや)は、「事故の本当の規模と特徴を明らかにするためには、太平洋上に出ていった放射性物質も検討する必要があります」と言う。

Stohl は、政府の依頼を受けて公式な推定値を出した研究チームを非難しているのではない。むしろ、「できるだけ早く結果を出す必要があったのでしょう」と慮っている。群馬大学の火山学者で、自らも原発事故のモデルを作成した早川由紀夫(はやかわゆきお)は、「確かにこの数値だけを見れば、両者は大きく違うでしょう。けれども、どちらのモデルにもまだまだ不確実な要素があり、実際には2つの推定は非常に近いのかもしれませんね」と言う。
原発事故の経過
原発事故の経過 | 拡大する
さらに、Stohl らは、4号機の使用済み核燃料プールに貯蔵されていた核燃料が、莫大な量のセシウム137を放出していた可能性を指摘している。政府はこれまで、プールからは放射性物質はほとんど漏れ出していないと主張してきた。しかし、研究チームのモデルでは、プールへの放水をきっかけに原発からのセシウム137の放出が激減したことが、はっきり示されている(図「原発事故の経過」参照)。つまり、もっと早い段階から4号機プールへの放水を行っていれば、放射性物質の放出をもっと抑制できたかもしれないのだ。

しかし、政府は、使用済み核燃料プール自体に大きな損傷はなく、使用済み核燃料が重大な汚染源になったとは考えられないと主張している。政府による公式推定値の算出にかかわった日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)の茅野政道(ちのまさみち)は、「4号機から放出された放射性物質は多くはなかったと思います」と言う。だが De Geer は、核燃料プールの関与を含めた今回の新しい分析は、「説得力があるように見えます」と語る。

さらに今回の分析は、もう1つ新たなデータを提示している。地震の直後、津波が福島第一原発に襲いかかる前から、キセノン133が漏れ始めていたというのだ。つまり、原発は、津波が襲来する前から、地震によって損傷していたことになる。政府の報告書でも、福島第一原発電を襲った揺れの大きさが、原発設計時に想定されていた揺れを上回っていたことを認めている。反原発の活動家は、以前から、政府が原発を認可する際に地質学的な危険を十分に考慮していないと主張しており(Nature 448, 392-393; 2007)、今回のキセノンの大量放出は、原発の安全性についての評価方法の再考を促すことになるかもしれないと、山内は言う。
放射性物質の拡散
放射性物質の拡散 | 拡大する
この事故で、首都圏はどうだったのか。実は、原発事故により甚大な被害を受けるおそれがあった。事故直後の数日間は、風は海に向かって吹いていたが、3月14日の午後、風向きが変わって陸に向かって吹き始め、セシウム137が東北南部から中部地方にまで広がっていった(図「放射性物質の拡散」参照)。実際、15日夜から16日未明にかけて雨が降った栃木県と群馬県の山間部では、のちに土壌から比較的高濃度の放射性物質が検出された。一方、首都圏では、そうした高濃度の放射性物質が上空を通過したときに、たまたま雨が降らなかったことが幸いした。「この時期に雨が降っていたら、東京も今よりずっと深刻な事態になっていたかもしれません」と Stohl は言う。(編集部註:ただし、(独)国立環境研究所の空間線量測定とシミュレーションによれば、21日から22日にかけても放射性物質が南関東に流れ込んだことが示されている。このときは、雨が降っていたため、南関東でも一部の地域で比較的高い線量が観測されていると思われる。)
 
(翻訳:三枝小夜子)
 
 
 
参考文献
1.  Stohl, A. et al. Atmos. Chem. Phys. Discuss. 11, 28319-28394 (2011).
2.  Report of Japanese Government to the IAEA Ministerial Conference on Nuclear Safety, "The Accident at TEPCO's Fukushima Nuclear Power Stations"
3.  Chino, M. et al. J. Nucl. Sci. Technol. 48, 1129-1134 (2011).

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http://www.nature.com/news/2011/111025/full/478435a.html

Published online 25 October 2011 | Nature 478, 435-436 (2011) | doi:10.1038/478435a

News

Fallout forensics hike radiation toll

Global data on Fukushima challenge Japanese estimates.

The Fukushima accident led to mass evacuations from nearby towns such as Minamisoma.The Fukushima accident led to mass evacuations from nearby towns such as Minamisoma.AP Photo/S. Ponomarev

The disaster at the Fukushima Daiichi nuclear plant in March released far more radiation than the Japanese government has claimed. So concludes a study1 that combines radioactivity data from across the globe to estimate the scale and fate of emissions from the shattered plant.
The study also suggests that, contrary to government claims, pools used to store spent nuclear fuel played a significant part in the release of the long-lived environmental contaminant caesium-137, which could have been prevented by prompt action. The analysis has been posted online for open peer review by the journal Atmospheric Chemistry and Physics.
Andreas Stohl, an atmospheric scientist with the Norwegian Institute for Air Research in Kjeller, who led the research, believes that the analysis is the most comprehensive effort yet to understand how much radiation was released from Fukushima Daiichi. "It's a very valuable contribution," says Lars-Erik De Geer, an atmospheric modeller with the Swedish Defense Research Agency in Stockholm, who was not involved with the study.

The reconstruction relies on data from dozens of radiation monitoring stations in Japan and around the world. Many are part of a global network to watch for tests of nuclear weapons that is run by the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization in Vienna. The scientists added data from independent stations in Canada, Japan and Europe, and then combined those with large European and American caches of global meteorological data.

Stohl cautions that the resulting model is far from perfect. Measurements were scarce in the immediate aftermath of the Fukushima accident, and some monitoring posts were too contaminated by radioactivity to provide reliable data. More importantly, exactly what happened inside the reactors — a crucial part of understanding what they emitted — remains a mystery that may never be solved. "If you look at the estimates for Chernobyl, you still have a large uncertainty 25 years later," says Stohl.

Nevertheless, the study provides a sweeping view of the accident. "They really took a global view and used all the data available," says De Geer.

Challenging numbers

Japanese investigators had already developed a detailed timeline of events following the 11 March earthquake that precipitated the disaster. Hours after the quake rocked the six reactors at Fukushima Daiichi, the tsunami arrived, knocking out crucial diesel back-up generators designed to cool the reactors in an emergency. Within days, the three reactors operating at the time of the accident overheated and released hydrogen gas, leading to massive explosions. Radioactive fuel recently removed from a fourth reactor was being held in a storage pool at the time of the quake, and on 14 March the pool overheated, possibly sparking fires in the building over the next few days.



But accounting for the radiation that came from the plants has proved much harder than reconstructing this chain of events. The latest report from the Japanese government, published in June, says that the plant released 1.5 × 1016 bequerels of caesium-137, an isotope with a 30-year half-life that is responsible for most of the long-term contamination from the plant2. A far larger amount of xenon-133, 1.1 × 1019 Bq, was released, according to official government estimates.
The new study challenges those numbers. On the basis of its reconstructions, the team claims that the accident released around 1.7 × 1019 Bq of xenon-133, greater than the estimated total radioactive release of 1.4 × 1019 Bq from Chernobyl. The fact that three reactors exploded in the Fukushima accident accounts for the huge xenon tally, says De Geer.

Xenon-133 does not pose serious health risks because it is not absorbed by the body or the environment. Caesium-137 fallout, however, is a much greater concern because it will linger in the environment for decades. The new model shows that Fukushima released 3.5 × 1016 Bq caesium-137, roughly twice the official government figure, and half the release from Chernobyl. The higher number is obviously worrying, says De Geer, although ongoing ground surveys are the only way to truly establish the public-health risk.

Stohl believes that the discrepancy between the team's results and those of the Japanese government can be partly explained by the larger data set used. Japanese estimates rely primarily on data from monitoring posts inside Japan3, which never recorded the large quantities of radioactivity that blew out over the Pacific Ocean, and eventually reached North America and Europe. "Taking account of the radiation that has drifted out to the Pacific is essential for getting a real picture of the size and character of the accident," says Tomoya Yamauchi, a radiation physicist at Kobe University who has been measuring radioisotope contamination in soil around Fukushima.



Stohl adds that he is sympathetic to the Japanese teams responsible for the official estimate. "They wanted to get something out quickly," he says. The differences between the two studies may seem large, notes Yukio Hayakawa, a volcanologist at Gunma University who has also modelled the accident, but uncertainties in the models mean that the estimates are actually quite similar.
The new analysis also claims that the spent fuel being stored in the unit 4 pool emitted copious quantities of caesium-137. Japanese officials have maintained that virtually no radioactivity leaked from the pool. Yet Stohl's model clearly shows that dousing the pool with water caused the plant's caesium-137 emissions to drop markedly (see 'Radiation crisis'). The finding implies that much of the fallout could have been prevented by flooding the pool earlier.
The Japanese authorities continue to maintain that the spent fuel was not a significant source of contamination, because the pool itself did not seem to suffer major damage. "I think the release from unit 4 is not important," says Masamichi Chino, a scientist with the Japanese Atomic Energy Authority in Ibaraki, who helped to develop the Japanese official estimate. But De Geer says the new analysis implicating the fuel pool "looks convincing".
The latest analysis also presents evidence that xenon-133 began to vent from Fukushima Daiichi immediately after the quake, and before the tsunami swamped the area. This implies that even without the devastating flood, the earthquake alone was sufficient to cause damage at the plant.

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The Japanese government's report has already acknowledged that the shaking at Fukushima Daiichi exceeded the plant's design specifications. Anti-nuclear activists have long been concerned that the government has failed to adequately address geological hazards when licensing nuclear plants (see Nature 448, 392–393; 2007), and the whiff of xenon could prompt a major rethink of reactor safety assessments, says Yamauchi.
The model also shows that the accident could easily have had a much more devastating impact on the people of Tokyo. In the first days after the accident the wind was blowing out to sea, but on the afternoon of 14 March it turned back towards shore, bringing clouds of radioactive caesium-137 over a huge swathe of the country (see 'Radioisotope reconstruction'). Where precipitation fell, along the country's central mountain ranges and to the northwest of the plant, higher levels of radioactivity were later recorded in the soil; thankfully, the capital and other densely populated areas had dry weather. "There was a period when quite a high concentration went over Tokyo, but it didn't rain," says Stohl. "It could have been much worse." 
Additional reporting by David Cyranoski and Rina Nozawa.

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