2013年9月11日水曜日

The Health Effects of Exposure to Low Doses of Ionizing Radiation

欧州放射線リスク委員会(European Committee on Radiation Risk-ECRR)

2010年勧告(日本語) 欧州放射線リスク委員会(European Committee on Radiation Risk-ECRR)
2010年勧告(ECRR2010翻訳委員会)

“There is no safe dose of radiation(放射線に安全な線量はない).”

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/fukushima/ECRR2010.html#0

【参考資料】ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ
 (2011.5.14)※訂正2011.11.15
<参考資料>欧州放射線リスク委員会(European Committee on Radiation Risk-ECRR)2010年勧告(ECRR2010翻訳委員会)“There is no safe dose of radiation(放射線に安全な線量はない).”
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  <お詫びと訂正> 
 ECRR2010年勧告第3章の日本語訳本文に訂正があります。
訂正箇所は、第3章「科学的原理について」第3.1節の文中です。最初に該当箇所を引用します。

放射線リスクモデルを作り上げるためには、歴史的に形づくられてきている科学的な方法論の基礎を検討することが、教育的にも有効であると本委員会は考える。

科学あるいは演繹的方法の古典的解釈は(元はオッカムのウイリアム(William of Occam)による:訳注1)、現在ではミルの規範(Mill’s Canons)と呼ばれている。それらのもののうちで最も重要とされる2つは次のものである:

 一致の規範(Canon of Agreement)。これは、あるひとつの現象に先行する諸条件の中に常に共通するものがあるとすれば、それはその現象の原因、あるいは原因に関係するものであると考えてよい、としている。
 相違の規範(Canon of Difference)。これは、あるひとつの効果が生じる諸条件とそれが生じない諸条件の中に何かの違いがあるとすれば、そのような違いはその効果の原因、あるいは原因に関係しているものであるはずである、としている。
 これらに加えて、その方法論は、科学的知識は独立した法則の発見によって加算的に増大するという、蓄積の原理(Principle of Accumulation)、および、その法則が真実であることの信頼性の程度は、その法則に合致する実例の数に比例するという、実例確認の原理(Principle of Instance Confirmation)に信頼をおくものである。
 最後に、その演繹的理由づけの方法に、我々はメカニズムの妥当性(plausibility of mechanism)という議論をつけ加えるべきであろう。』


上記の文章で、
 『科学あるいは演繹的方法の古典的解釈は(元はオッカムのウイリアム(William ofOccam)による:訳注1)、現在ではミルの規範(Mill’s Canons)と呼ばれている。』 
とあるのは
 『科学あるいは帰納法的方法の古典的解釈は(元はオッカムのウイリアム(William ofOccam)による:訳注1)、現在ではミルの規範(Mill’s Canons)と呼ばれている。』
と訂正。また、
 『最後に、その演繹的理由づけの方法に、我々はメカニズムの妥当性(plausibility of mechanism)という議論をつけ加えるべきであろう。』
とあるところは、
 『最後に、その帰納法的理由づけの方法に、我々はメカニズムの妥当性(plausibility of mechanism)という議論をつけ加えるべきであろう。』
と訂正します。

 該当箇所をECRR2010年勧告の英語原文から
http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ECRR_2010_recommendations_of_
the_european_committee_on_radiation_risk.pdf
引用しておきます。

The Committee believes that it is instructive to examine the scientific basis of the method which has been historically developed to create the radiation risk models.
The classical exposition of the scientific, or inductive method (originally due to William of Occam) is what is now called Mill’s Canons, the two most important of which are:

•The Canon of Agreement, which states that whatever there is in common between the antecedent conditions of a phenomenon can be supposed to be the cause, or related to the cause, of the phenomenon.

•The Canon of Difference, which states that the difference in the conditions under which an effect occurs and those under which it does not must be the cause or related to the cause of that effect.

•In addition, the method relies upon the Principle of Accumulation, which states that scientific knowledge grows additively by the discovery of independent laws, and the Principle of Instance Confirmation, that the degree of belief in the truth of a law is proportional to the number of favourable instances of the law.

Finally, to the methods of inductive reasoning we should add considerations of plausibility of mechanism.』

上記文章で、『The classical exposition of the scientific, or inductive method (originally due to William of Occam)』とあり、この「inductive method」を「演繹的方法」と訳出しており、正しくは「帰納的方法」でなくてはなりませんでした。(“inductive”帰納法的に対して演繹法的は“deductive”)

同様に上記引用文の最終パラグラフ、『Finally, to the methods of inductive reasoning we should add considerations of plausibility of mechanism.』では『the methods of inductive reasoning』は、『最後に、そうした一連の帰納法的推論の方法論に、「もっともらしさのメカニズム」に対する考慮を付け加えなければならないだろう。』(哲野訳)とすべきでありましたが、誤って「演繹法的」と訳出したものです。

この箇所は、ECRRとICRPの科学的推論の立て方の対蹠的立て方の違いに論究しようとするちょうど導入部にあたるところであり、いずれも致命的な誤訳をそのまま掲載し、訂正すると共にお詫びを申し上げます。

ただこの誤訳のために、ECRR2010年勧告「第3章」原文全体と日本語訳の価値が大きく損なわれた、ということはできません。

この章におけるECRRの、ICRP批判のポイントの一つは、低線量被曝の人体への影響は、現実に生起してきた事実から判定し、仮説を立て、それを検証していくべきなのであって(帰納法的アプローチ)、決して最初に原理・原則を立て、その原理原則から、現実に生起している事実を解釈・判定す(演繹法的アプローチ)べきではない、ICRPのアプローチは科学的方法論ではない、とするところにあります。この批判は全く正しく、ICRPのアプローチは医学的・科学的というよりもむしろ政治・経済的アプローチだというべきでしょう。

私個人の見解を申せば、このECRRの批判もまだ生ぬるいくらいであります。実際のところ、ICRPのアプローチは、「演繹的」というのも褒めすぎの似非科学と考えています。

「帰納法的」といい、「演繹法的」といい、いずれも科学的推論の方法論に過ぎません。そこで得られた仮説は決してまだ科学的真実ではありません。ECRRの科学者はそのことをよく理解し、その仮説を裏付けるべく研究を行っています。

しかしICRPの学者はそうではありません。たとえば、ICRPの主張「線形しきい値なし理論」はまだ科学的真実ではなく、仮説の段階に止まっています。しかし、ICRPの学者たちは、この仮説を検証しようとしないばかりか、それをあたかも「科学的法則」のように扱い、この「法則化された仮説」の上に彼らの理論と精緻極まるモデルリスクを構築しております。

まことにECRRがこの章で、『最後に、そうした一連の帰納法的推論の方法論に、「もっともらしさのメカニズム」に対する考慮を付け加えなければならないだろう。』と皮肉たっぷりにからっている通りであります。

私から見れば、ICRPの体系は、演繹法・帰納法という以前に、「先決問題解決の要求」すら満たしていない、「詭弁の体系」という他はありません。

 (なおスコラ哲学者であったオッカムのウイリアムのアプローチが、今日から見て帰納法的だったかどうかと言う点については、様々な議論があるだろうと思われます。私もこれは視点が違っているのではないかと思います。ウイリアムは、マルクス主義哲学でいう「観念論」から「唯物論」(物質主義とか「唯心論」に対置する唯物論ではありません)にその認識論の軸足を移しつつあった過渡期の哲学者という理解をしております。)


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フクシマ危機の防護指針

  欧州放射線リスク委員会の2010年勧告(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/
ECRR_2010_recommendations_of_the_european_committee_on_radiation_risk.pdf
>)
が「美浜の会」(美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会)のECRR2010翻訳委員会の努力で全文日本語訳が発表された。(<http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_dl.htm>)

前回2003年勧告に比べると異例とも言える翻訳のスピードだが、これはもちろん現在進行中の福島原発事故(フクシマ危機)による、放射線影響、特に日本の将来を担う子供たちを放射線影響から護るために、この2010年勧告がその力強い指針となっているからに他ならない。ECRR2010翻訳委員会の努力に敬意を表すともに一人の日本市民として心から感謝したい。

2003年勧告では、

 『本委員会は、放射線への低線量被曝がもたらす健康影響を最初に明らかにした科学者である、アリス・メアリー・スチュワートの思い出にこの書を捧げる。
スチュワート教授は、欧州放射線リスク委員会の初代委員長に就任されることに同意されていたが、彼女がこの最初の報告書の完成を生きて見ることはかなわなかった。』

という献呈辞が記述されていたが、2010年勧告では、このアリス・スチュアートに加えて、

 『本委員会はこの版をエドワード・ピィ・ラドフォード教授(Prof. Edward P Radford)の思い出に捧げる。』

とエドワード・ラドフォードにも触れている。

 『Prof. Edward P Radford、物理学者/疫学者
“There is no safe dose of radiation(放射線に安全な線量はない).”

ラドフォードは全米科学アカデミーのBEIR III(電離放射線の生物学影響 III)委員会の議長に就いていた。彼による1979年のBEIRレポートは、当時から現在に続くリスクモデルの不備な点に注意を喚起した。それは取り下げられ押さえつけらたが、彼は辞職し異議を唱える報告書を公表した。彼の経歴は破壊された。』

この記事の表題に使った「“There is no safe dose of radiation.”(放射線に安全な線量はない)」はエド・ラドフォードの言葉である。

 『2009年にECRRは、合衆国に住む彼の未亡人であるジェニファーとラドフォードの家族によって寄贈された、彼のエドワード・ラドフォード記念賞(Ed Radford Memorial Prize)をユーリ・アイ・バンダシェフスキイ教授(Prof. Yuri I  Bandashevsky )に贈った。

Prof. Yuri I Bandashevsky 物理学者/疫学者
バンダシェフスキイは、彼の研究と自身の英語による発表を通じて、ベラルーシーの子供たちの健康にチェルノブイリからの放射能の内部被ばくが与えている影響に注意を喚起し、逮捕と収監という報いを受けた。』

と2010年勧告は書いている。バンダシェフスキイの逮捕は、日本流に言えば「流言蜚語の科」ということだろう。警察や軍隊という暴力装置を含めて圧倒的な国家権力の中枢を握る「原発推進派」の産業界は、議会・学界・言論界・司法界などを味方につけている。学者一人をひねり潰すことなどわけはない。赤子の手をねじるより簡単なことだ。しかし学者一人をひねり潰すことはできても、その学説や研究までは潰せない。精々出来て闇に葬る程度だ。学説や研究が真摯で有効である限りそれは永遠に生き残る。

この2010年勧告を作成するために、学者たちは2009年にギリシャのレスボス島に集まり討議を行った。この討議に参加した、あるいは寄与した各国の科学者たちの名簿も記録されている。その中に名古屋大学名誉教授の沢田昭二の名前も見いだせる。唯一の日本人だ。沢田は、残留放射能と内部被曝が実質的争点となった「被爆者集団訴訟」で、原告側(日本国に被爆者認定を求める側)の証人として「広島原爆」における「内部被曝」や「残留放射能の影響」に関する医学的データを提出し、また「広島原爆」のヒバクシャの一人として証言を行い、「集団訴訟27連勝」に導いた立役者の一人でもある。


自信と確信を示すECRR

  2010年勧告と2003年勧告との大きな違いは以下の通りである。

1.「緒言」(Preface)の新設
2003年勧告を発表して以来、各国から大きな反響を受け、多くの支持や支援が寄せられた事に対する欧州放射線リスク委員会の自信と確信に満ちた意気軒昂たる宣言文となっている。

 『この新しい改訂版によって、政治家や科学者が彼らの電離放射線の健康影響についての理解を変えようとする圧力は今では無視することが不可能なほど大きくなってきているのは明らかである。』
とこの緒言を結んでいる。

2.第1章「欧州放射線リスク委員会」
2003年度版(以下03版)では「第1章 欧州放射線リスク委員会設立の背景」に相当する章。基本的には大きくは変わらないが、欧州放射線リスク委員会設立の背景がやや詳しく記述され、わかりやすくなっている。それでも欧州議会や欧州原子力共同体、あるいはヨーロッパにおける「緑のグループ」の政治的影響力の伸張などについて基本的素養を欠いている日本人読者には別途解説記事が必要かも知れない。

また2003年以降の欧州放射線リスク委員会(ECRR)の諸活動、諸展開にも当然のことながら言及し、ヨーロッパ主要政府の放射線規制当局にもその影響力を拡げつつあることを十分にうかがわせる内容になっている。また2003年以降の内部被曝に関する新たな研究成果や発見もごく簡単に触れている。(詳しくは本文中)

 『グリーングループ(緑のグループ)は基本的安全基準指針96/29に著しい影響を与えることはできないが、彼らは第6.2条を次のように修正することができるだろう:“加盟諸国は新しい重大な証拠が現れた場合には、全てのクラスにおける被ばくを含む実行の正当化を見直さなければならない。“

疫学的な基礎においても理論的な基礎においても、これこそが今や真実なのである。』
とヨーロッパで急速に影響力を拡大しているECRRに自信を示している。

3.第2章「本報告の基礎と扱う範囲について」
03年版では「第2章 本報告の基礎と扱う範囲」に相当する。構成や内容はほぼ変わらないが、当然のことながら03年以降の研究成果や報告を幅広く含んだ内容が提示されることを示唆した記述となっている。


「人道に対する普遍的な犯罪と見なすべきである。」

 4.第3章「科学的原理について」
ICRPモデルに対決させる自身のECRRモデルを03年版では「急進派モデルであり、反核運動やそれに協調する科学者によって信奉されている。」としていた部分を「憂慮する独立系の誰もが参加できるパブリックドメインにある組織やそれらと結びついている科学者によって支持されているモデル」と定義し直している部分が注目される。03年以降の広範な支持の拡がりを背景に、ECRRの自信が感じられる。なお、03年以降の展開については当然追加されている。それに伴い第2節「科学と政策のインターフェースとバイアス:CERRIE」、第3節「ICRP2007年報告の科学的基礎」、第4節「ピア・レビュー査読と研究資金及び科学的合意」が新設されている。

5.第4章「放射線リスクと倫理原理」
ICRPのよって立つ哲学的・倫理的基盤を鋭く批判し、それに自らの「個としての人間尊厳の哲学」を対置させた章。内容的には大きくは変わっていないが、第4節の5「放射線感受性におけるレベルの違いを考慮にいれること」では「日本の原爆被爆者寿命調査(LSS)に基づいた放射線防護の基準は、異なった人種グループに適用できない。その集団において変化している放射線感受性をひとたび考慮に入れるならば、最も影響を受けやすい市民の健康リスクに基づいてリスクモデルを開発する以外に、道徳的に受け入れることのできる代替案について考えることは困難である。その問題は、第9章で再び検討されるだろう。」と新たに述べ、日本における最近の「内部被曝問題」に関する新たな進展を取り入れていることを窺わせている。

そして、
 『・・・子供達が放射能放出の結果として白血病で必然的に死んでいくのに、因果関係は否定されるだろうし、いかなる場合も彼らの人数は「絶対少数」である、したがって考慮する価値はない、という政策において暗黙理に示されている結論によって明らかになっている。そのような正当化が道徳的に破産していることは直感的にも明らかである。もしも我々が、我々の価値観を、経済成長駆動世界体制(economic growth-driven world system)中に存在するそれを乗りこえて広げるならば、民生原子力は、あまりに安すぎて計測できないどころか、実際のところ、あまりに費用がかかりすぎて容認できないということが明らかになるだろう。』

という03年版にも見られた文言に続いて、10年版では、
 『軍事関連の活動(核兵器実験、ウラン兵器)に由来する中間的および非常に長寿命の放射性核種が環境中に組織的に増大している問題は、決して正当化されておらず、したがって功利主義を含むあらゆる倫理体系の枠組みの外部でしか扱われることができないだろう。国境線を超えた、無差別的な汚染の性質ゆえに、放射能汚染は、第二次世界大戦後のニュルンベルク裁判で議論されたタイプの人道に対する普遍的な犯罪と見なすべきである。』

という文言を追加し、兵器と言わず原発と言わず核の汚染(放射能汚染)はすでに「人道に対する犯罪」とまで踏み込んで激しく糾弾し、この章を結んでいる。


「WHO はIAEA に追随する、健康は原子力に従属する」

  6.第5章「リスク評価のブラックボックス 国際放射線防護委員会」 
03年版同様、国際放射線防護委員会(ICRP)の科学的独善性、傲慢さを批判した章。構成に大きな変化はないが、03年以降収集した新たなデータが参照事実としてそこここにちりばめられている。たとえば―。

 『・・・ここで重要なポイントは、各国政府が科学的合意の議論について依存している全ての機関が完全に内部でつながっており、ひとつのリスクモデル:ICRP のリスクモデルに頼り切っていることである。ICRPはそこからの証拠に依存しているそれらの機関から独立しておらず、それらの機関はICRPから独立していない。その体系は内部無撞着であり危険な科学の回勅文書に支えられる要塞都市である。

放射線被ばくと健康について関わると合理的には期待される他の国連機関、世界保健機関(WHO)はどうか?WHO は1959 年にIAEA との間で放射線の健康影響に関する研究をIAEA に任せるというIAEA との合意を強要された。この合意は今でも有効であり、WHO だけでなくFAO(国連食糧農業機関)にも及んでいる。2001 年にキエフで開催されたチェルノブイリ事故の健康影響に関する会議で、WHO 議長のエイチ・ナカジマ教授(Prof H Nakajima)は公のインタビューのなかで次のように述べた;「放射線影響の研究ではWHO はIAEA に追随する、健康は原子力に従属する」。IAEA の権限は原子力の平和利用の展開である、しかし現在では、むしろアメリカ合衆国と他の核保有国以外に核兵器が広がることを制限することを目的とした国際的な警察官である。』

 (しかし、そのIAEAも核兵器保有国以外への核兵器拡散を制限する国際的な警察官であることに専念できなくなった。それを強行しようとすると核兵器不拡散体制の要である核兵器不拡散条約そのものが空中分解の恐れが出てきたからである。それを2010年再検討会議最終文書は如実に示している。こうして非核兵器保有国の結束に、アメリカ・フランスをはじめとする核兵器保有国とそれを支持する西側諸国は核兵器廃絶の日程決定を迫られ、最後の瞬間に、「中東非核兵器地帯創設」を約束することによって危機を脱したのである。しかしそれは同時に「スローガンとしての核兵器廃絶」から「政治課題としての核兵器廃絶」へ転化した瞬間でもあった。2010再検討会議における、IAEA事務局長・天野之弥、国連事務総長・潘基文の無能・無力ぶりを見よ。彼らは成り行きに任せるほかはなかったのである。)

7.第6章「電離放射線:ICRP 線量体系における単位と定義、およびECRR によるその拡張」

第1節から第10節までは、それぞれ新たな知見が加えられているが構成は変わらない。が、10年版では新たに11節として「2次的光電子効果(Secondary Photoelectron Effect)」が追加されている。

 『大きなZ を持つ元素で構成された物質による光子放射線の膨大な吸収は、その物質近傍の生体組織に対して線量の増強を引き起こす。そのため、放射線防御における問題は、大きなZ を持つ元素が生体組織に取り込まれるときに発生する。この問題は1947年に骨のX 線に対する関係として初めて述べられ(Speirs 1949)、人工器官に対する関係としてかつて研究されてきた。さらに最近では、大きなZ をもつ物質を、光子を用いた腫瘍の放射線治療に効果的に利用することに興味が移ってきている。金のナノ粒子は放射線治療の効果を上げるのにうまく用いられ(また特許がとられ)ている。

(Hainfeld et al 2004)このような知見にもかかわらず、大きなZ を持つ汚染物質による光子放射線の増強効果は放射線防御では語られてこなかった』

大きなZ、すなわち大きな原子番号を持つ物質か体内に入った時、細胞にとって極めて有害な光子放射線を照射する。これが2次的光電子効果である。昔から知られていたにもかかわらず、ICRPは、自らの仮説に合致しないとしてこれを無視してきた。放射線内部被曝のリスク要因として「2次的光電子効果」に着目したのがこの11節である。


歴史的・政治的いきさつを含めての全面的なICRP批判

 8.第7章「低線量における健康影響の確立:リスク」
放射線の健康一般に対する影響を論じた章であり、「放射線影響=ガンリスク」とICRPによって刷り込まれた頭には極めて新鮮に響く章であり、また「広島原爆」の後発生した様々な奇怪な病気に関する経験的知見ともよく合致する内容になっている。構成・内容は03年版と大きくは変わらない。が、ところどころ差し込まれた言葉が、03年版より理解を促進する要素となっている。例えば―。 

 『(放射線被曝による様々な疾病が原因の)生活の質の損失はガン以外の死因をも含むので、放射線によるガンだけに焦点を当ててしまうと、死因を見誤り疫学的に間違った結果を与えるかもしれない。もしあなたが(放射線被曝による)心臓発作ですでに死んでしまっているとしたら、もはやガンで死ぬことはできないのだから。』

また10節「胎児における被曝影響とその他の影響」は節だけが設けられていて記述が行われていなかったが、10年版では「アリス・スチュワートのオックスフォード調査データは10 mSv のX 線線量を胎内で受けた子供たちのガンが40%増加した事を示した。」など記述が行われている。

9.第8章「低線量における健康影響の確立:疫学」
03年以降の新たな知見、特にチェルノブイリ事故による放射能影響に関する新たな知見が追加されている。全体構成に大きな変化はない。

10.第9章「低線量被ばく時の健康影響の検証:メカニズムとモデル」
第4節にこれも新たな知見である「ファントム放射能:二次光電効果 SPE」に関する記述が追加されており、そのため03年版に比べるとその後の節がひとつづつ繰り下がっている。5節「 集団内部と個体の感受性」は節立てはかわらないが、内容は大きく「集団」や「個体」における感受性の差が大きいという結論にまで踏み込んでおりさらに充実した内容になっている。ここには最近の「チェルノブイリ研究」の成果、最近の動物実験の成果が大きく取り入れられているほか、日本の肥田舜太郎の研究も取り入れられている。

11.第10章「被ばくに伴うガンのリスク、第1部:初期の証拠」
03年版では1節は「扱う範囲」という短い節だったが、10年版では「ECRR リスクモデルの基礎」という名称に変更されており、

 『ECRR2003 の出版の後、フランスのIRSN(フランス放射線防護原子力安全研究所)や他の機関はECRR のモデルをその科学的な基礎を説明することに失敗しているとして批判した。

本委員会の新しいリスクモデルの基礎として使用している証拠は、第一にヒトの疫学調査であり、次にヒト、動物、細胞についての数多くの研究であり、最後に、細胞レベルの放射線と分子との間の相互作用の性質に関する、物理化学及び生物学の知識である。それは、第一義的に物理学的基礎に基づくものではなく(そしてこの点が本質的にICRP と異なる点である)、その代わり帰納法的に疫学的証拠から始まり、それからこれらを放射線と生体組織の間の、稀釈した溶液中の生物現象としての分子レベルの相互作用として説明している。』

というように主としてIRSNとの論争を通じて、積極的にECRRモデルを確立する方向性を鮮明にしている。この節の内容は、歴史的・政治的いきさつを含めての全面的なICRP批判となっている。また2003年以降の諸研究を取り入れて説得力を増した内容になっている。


新たに「ウラン 劣化ウラン兵器」の章

 12.第11章「 被ばくにともなうガンのリスク、第2部:最近の証拠」―準備中

13.第12章「第12章 ウラン 劣化ウラン兵器」
03年版の章立てではなかった全く新しい章である。03年版では第11章7節で「劣化ウラン」の項目を設けており、「微粒子がもたらす被曝線量(particle doses)の影響が、劣化ウランに対する最近の異常な応答の原因であろう。劣化ウラン兵器は、極めて大量のミクロンサイズで長寿命の放射性微粒子を大気中にもたらす。イラクの諸地域におけるガンや出生児欠損(birth defects)の増加、さらにごく最近のサラエボ市民やコソボとボスニアの平和維持軍の間でのガンの増加はこれの結果であろう。本委員会はこの問題についてまた別の機会に報告を行う予定である。」と述べていたが、この予告通りの報告が実現したのが10年版第12章だということができる。

 『ウランは放射線リスクに対する物理学ベースのアプローチがもたらすECRR2003が注意を喚起してきた問題についてのひとつの完璧な例であると結論する必要がある。

ICRPにしたがって吸収線量の見地から線量が計算される時、環境中に通常見つかるウランの量は、自然のバックグランド放射線と比較すると非常に低い線量を与える、そして原爆の被ばく集団のガンに関連するレベルと比較してもかなり低い。しかしこのアプローチでは誤りが膨大なものになるのは明らかであり、というのはそれは次の学問を避けている、より正確には、化学についても、生物学についても、生理学についても、薬理学についても何も知らないからである。

このような科学は、ある深く哲学的で情緒的であると感じられる流儀において(何れにしても物理学者によって)、歴史的に物理学や数学よりも重要性が低いと見なされてきた。これは合理的な分析における欠陥である:それはそのデータと同じくらい優れているだけであり、そうだとしても、問題を解くためには、解が主張することのできるレベルを下げなければならず、その答えはしばしば間違っている。』
(同5節「結論」より)

14.第13章「被ばくのリスク:ガン以外のリスク」
03年版では第12章として扱われていた。私が2003年度版を通読して、第4章のECRRの哲学的基盤とともに、この報告は真実だ、と直観したのもこの章があったからである。放射線の人体への影響とは、必死で生きようとするものに対する、その「生きる力」「生命力」そのものへの攻撃能である。「生命」そのものへの破壊効果である。従ってそのエンド・ポイントが「ガン」だけであるはずがない。ECRRはその放射線の本質をよく見抜いている。従って「被ばくのリスク:ガン以外のリスク」という章が設けられたのである。ヒロシマ・ナガサキでの経験的知見ともよく一致する。それら証言や手記がもし彼らが読める状態になっていたらもっと大きな示唆を与えるに違いない。

 その意味でも広島・長崎の被爆者の証言や手記ももっと精査されなければならない。感想とも推測とも当てずっぽうや又聞きともつかぬ粗雑な“証言”や手記が余りにも多い。南京大虐殺生存者の証言や手記と比較してみるとその第一次資料としての価値の違いは余りにも明らかだ。話が横道にそれかけている・・・。)

15.第14章「応用の例」
03年版では「ICRPモデルは、内部アルファ線被曝の場合だけは区別するが、外部被曝であっても内部被曝であっても、同位体がもたらす全エネルギーの平均値に基づいて健康影響を予測しようとする。他方において、ECRRモデルは、内部被曝と外部被曝との区別を決定的に重要な基礎としている。」と書き始めていたのが、10年版では「ECRRモデルは内部被ばくと外部被ばくとを峻別する。」とのみ書き始めている。ECRRが次第にICRPモデルを批判の対象としては問題にならない、と見始めていることを示している。

この章の構成は大きくは変わっていないが、なによりチェルノブイリ事故による放射線の影響に関する03年以降の最新研究や報告がふんだんに盛り込まれている。 


日本からは沢田昭二

 16.第15章「リスク評価方法のまとめ、原理と勧告」
2節からなる短い章だが、「原理と勧告」では、「公衆の構成員に対する年間の最大許容線量はECRR モデルを使った計算で0.1mSv よりも低く維持されるべきであると勧告する。」は03年版とかわらないが、「本委員会は原子力労働者に対する被曝限度は、年間2 mSvにすべきであると勧告する。原子力産業労働者は彼らと彼らの子孫に対する損害について完全に知っていなければならない。」と03年版勧告の「原子力労働者に対する被曝限度5mSv」からさらに引き下げ、また原子力労働者には、子孫に対する影響まで含め十分にその影響を知らされてなければならない、としている。また、勧告の最後には「12.本委員会は世界中の全ての政府に対して現行のICRPに基づくリスクモデルを緊急の課題として破棄し、ECRR2010リスクモデルに置き換えることを呼びかける。」という文言を追加している。

17.第16章「欧州放射線リスク委員会のメンバーとその研究や助言が本報告書に貢献した諸個人」
 『ECRR とその分析モデルへの新しいメンバーや支持者は旧ソビエト連邦出身の科学者である。これらの諸個人が内部放射性核種の低線量被ばくの影響について最初に取り組み研究したという位置にあり続けたからであり、驚くべきことではない。』

リストから日本人をさがしていくと、沢田昭二一人であるのはいかにも淋しい。日本は「唯一の被爆国」であり、放射線影響研究のトップランナーではなかったか?

18.勧告の概要
03年度版では「実行すべき結論」と訳されていたが、恐らく10年度訳「勧告の概要」(Executive Summary)の方が原意に近いだろう。03年と比較すると以下の2項目が追加されている。

 『 13.本委員会はその2003年モデルの公表からそのモデルによる予測を支持する疫学的研究があったことを指摘する、すなわちオキアノフによるベラルーシにおけるチェルノブイリ原発事故の効果であり(Okeanov 2004)、トンデルらによって報告されたスウェーデンにおけるチェルノブイリ原発事故の影響である(Tondel et al 2004)。
 14. 本委員会は以下を勧告する。公衆の構成員の被曝限度を0.1 mSv 以下に引き下げること。原子力産業の労働者の被曝限度を2 mSv に引き下げること。これは原子力発電所や再処理工場の運転の規模を著しく縮小させるものであるが、現在では、あらゆる評価において人類の健康が蝕まれていることが判明しており、原子力エネルギーは犠牲が大きすぎるエネルギー生産の手段であるという本委員会の見解を反映したものである。全ての人間の権利が考慮されるような新しい取り組みが正当であると認められねばならない。放射線被曝線量は、最も優れた利用可能な技術を用いて合理的に達成できるレベルに低く保たれなければならない。最後に、放射能放出が与える環境への影響は、全ての生命システムへの直接・間接的影響も含め、全ての環境との関連性を考慮にいれて評価されるべきである。』

19.付録A 放射線学上重要な主要な同位体についての線量係数
「摂取及び吸入による、低線量被曝に対する線量係数」の一覧表。同位体別に、乳幼児(0-1才)、子供(1-14才)、大人の3段階で表示してある。胎児は乳幼児の係数をさらに10倍した係数を使用と明記してある。

20.欧州放射線リスク委員会
(European Committee on Radiation Risk-ECRR)
レスボス宣言(The Lesvos Declaration)- 2009年5月6日


前述のごとく、2010年勧告を作成するため、委員会は2009年にギリシャのレスボス島に集まった。その時にECRRが出した宣言である。

 『ICRP のリスク係数は時代遅れであり、そのような係数の使用は放射線リスクの著しい過小評価を招くと主張する。』
 『身体内に取り入れられた放射性核種の健康影響についての研究の即刻の開始を要求する。特に、日本の原爆被ばく生存者やチェルノブイリやその他の被害を受けている地域を含む、数多くの歴史的な被ばくした集団に対する疫学研究を再訪問することを要求する。被ばくした公衆における体内に取り込まれた放射性物質の独立したモニタリングの実施を要求する。』
 放射線被ばくを引き起こしている全ての責任者とともに、責任ある政府当局が、放射線防護の基準を定めリスクを管理するに際して現在のICRP モデルにこれ以上頼らないことを求める』(福島原発事故を想起せよ)
特に心血管や免疫、中枢神経、生殖系といった、放射線被ばくによるガン以外の疾患の発生率は有意に増加しているが未だ定量化されていないと主張する。』
被ばくした放射線のレベルを知るということ、またその被ばくがもたらす潜在的重要性についても正確に知らされるということは、個々の人々の人権であると考える。』

21.参照文献
英語原文では第16章の後に記載されているが便宜上最後に置いた。

以下ダウンロード・コーナー参照の事。 



欧州放射線リスク委員会 2010年勧告 (英語原文) 

<※お詫びと訂正>ECRR2010年勧告第3章の日本語訳本文に訂正があります。
欧州放射線リスク委員会 2010年勧告 (日本語全訳)内容とダウンロードファイル
表紙 ・ECRR執行役員・奥付け・寄与者一覧 
目次 ・献呈辞
緒言 
  第1章 欧州放射線リスク委員会
 第2章 本報告の基礎と扱う範囲について
 第3章 科学的原理について
 第4章 放射線リスクと倫理原理
 第5章 リスク評価のブラックボックス 国際放射線防護委員会
  第6章 電離放射線:ICRP 線量体系における単位と定義、およびECRR によるその拡張
第7章 低線量における健康影響の確立:リスク
 第8章 低線量における健康影響の確立:疫学
 第9章 低線量被ばく時の健康影響の検証:メカニズムとモデル
第10章 被ばくに伴うガンのリスク、第1部:初期の証拠
第11章 被ばくにともなうガンのリスク、第2部:最近の証拠
第12章 ウラン 劣化ウラン兵器
第13章 被ばくのリスク:ガン以外のリスク
第14章 応用の例
第15章リスク評価方法のまとめ、原理と勧告
第16章欧州放射線リスク委員会のメンバーとその研究や助言が本報告書に貢献した諸個人
勧告の概要 
 付録A 放射線学上重要な主要な同位体についての線量係数欧州放射線リスク委員会(ECRR)レスボス宣言- 2009年5月6日  

参照文献
上記英語原文(PDF)の199Pから238Pまで。研究者名の「姓」別アルファベット順に配列されている。(共同研究の場合は筆頭研究者名の姓別)ICRP派から独立派まで、またABCC(原爆障害調査委員会)時代の論文、研究報告まで参照文献として網羅されている。なかなか壮観である。

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http://www.inaco.co.jp/isaac/kanren/11_ECRR_yamauchi.html

欧州放射線リスク委員会 ECRR
欧州放射線リスク委員会 2003年勧告 改訂版(日本語)
リガ提案「放射線リスク:新たな時代の幕開け」2009年8月14日(英語)
2010年勧告 電離放射線 低線量被曝による健康への影響」(英語)
2010年勧告(日本語)
欧州放射線リスク委員会(European Committee on Radiation Risk-ECRR)
2010年勧告(ECRR2010翻訳委員会)
“There is no safe dose of radiation(放射線に安全な線量はない).”

ウラニウムと健康 2010年 ブラッセル(英語)
ECRRリスクモデルとフクシマからの放射能 2011年3月19日」(英語)
ECRR レスボス宣言 2009年5月6日(沢田昭二氏による日本語訳)
アリス・M・スチュアート(Alice Mary Stewart)について
<参考資料>ECRR 2006 チェルノブイリ:20年とその後
関連資料
SECRET FALLOUT
「赤ん坊をおそう放射能」E.J.スターングラス著/反原発科学者連合訳
(出版:新泉社1982年6月1日第1刷)の英語原文。

※英語原文紹介 
哲野イサク参考資料 
<参考資料>ECRR勧告:欧州放射線リスク委員会
第3章「科学的諸原理」
地球上の私たちは皆ヒバクシャという基本認識
第4章「放射線リスクと倫理原理」
放射能汚染は普遍的な人道犯罪-(上)
第4章「放射線リスクと倫理原理」
放射能汚染は普遍的な人道犯罪-(下)
第5章「リスク評価のブラックボックス
国際放射線防護委員会」核兵器・原発とともに表舞台に登場したICRP その①
第5章「リスク評価のブラックボックス
国際放射線防護委員会」核兵器・原発とともに表舞台に登場したICRP その②
第5章「リスク評価のブラックボックス
国際放射線防護委員会」核兵器・原発とともに表舞台に登場したICRP その③
第6章「ICRP線量体系における単位と定義およびECRRによる拡張」 その①
全般的な老化を促進するのが電離放射線の人体への基盤的影響
第6章「ICRP線量体系における単位と定義およびECRRによる拡張」 その②
低線量内部被曝における損害荷重係数「N」とは
第6章「ICRP線量体系における単位と定義およびECRRによる拡張」 その③
電離放射線の個々の標的は細胞である
第7章低線量における健康影響の確立
ガンに集中するICRPと幅広い健康損傷に注目するECRR-リスク観の違い
第8章 低線量における健康影響の確立:疫学
誤謬だらけの「ICRP疫学体系」
第9章「低線量被曝時の健康影響の検証:メカニズムとモデル」
その① 電離放射線は何故危険か-そのメカニズム、「ゲノム不安定性」と「バイスタンダー効果
第9章「低線量被曝時の健康影響の検証:メカニズムとモデル」
その② そのモデル:2ヒット・キネティクス、ペトカウ応答、二相応答(ブルラコバ応答)、
      細胞集団感受性の差異、集団内部と個体の感受性
第9章「低線量被曝時の健康影響の検証:メカニズムとモデル」
その③ そのモデル:ホルミシス応答、放射線作用の生物学的効率に影響する因子、
     セカンド・イベント理論、免疫監視機構、細胞分裂増殖場、
     生化学的及び生物物理学的効果、元素転換、
     胎盤中の微粒子とゲノム信号輸送によ胎児への被曝線量の増加
 
第10章「被曝に伴うがんのリスク 第1部:初期の証拠
その① 地球規模で拡散した大気圏核実験時代の放射性降下物(死の灰)
第10章「被曝に伴うがんのリスク 第1部:初期の証拠
その② ABCC=放影研の原爆生存者寿命調査の致命的欠陥
<参考資料> ECRR市民研究会-広島:ECRR2010年勧告
第3章 「科学的諸原理」と第4章「放射線リスクと倫理原理」
<付録> 飯舘村における山下俊一批判


神戸大学大学院海事科学研究科 山内知也 
福島原発事故:「福島原発で起こっていること」
<参考資料>文科省への申し入れ書 2011年4月21日
『実際の被害が福島の子どもたちの間に生じます』
<参考資料>文科省への申し入れ書(2) 2011年5月5日
『福島の子供を慢性被曝から護れ』
<参考資料>文科省への申し入れ書(3) 2011年5月7日
『福島の子供たちの被曝はそもそも憲法違反である』
<参考資料>文科省への申し入れ書(4) 2011年5月11日
『国際機関は内部の慢性被曝に目をつぶっています。』
「ECRR 2003年報告における新しい低線量被曝評価の考え方」ECRR2003翻訳委員会
このスライドは「原子力安全問題ゼミ 第99回 研究発表」からの転載
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No99/yamauchi041215.pdf
「ECRR欧州放射線リスク委員会 2003年勧告 実行すべき結論」ECRR2003翻訳委員会訳
このスライドは「原子力安全問題ゼミ 第99回 研究発表」からの転載
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No99/yamauchi041215b.pdf


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The Health Effects of Exposure to Low Doses of Ionizing Radiation

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/pdf/ECRR_2010_recommendations_of_the_european_committee_on_radiation_risk.pdf

PDF 258P

以下抜粋:

ECRR
2010 Recommendations
of the European Committee
on Radiation Risk

Regulators’ Edition: Brussels 2010

2010 Recommendations of the ECRR
The Health Effects of Exposure to Low Doses of Ionizing Radiation
Regulators' Edition
Edited by Chris Busby
with
Rosalie Bertell, Inge Schmitz-Feuerhake,
Molly Scott Cato and Alexey Yablokov
Published on behalf of the European Committee on Radiation Risk
Comité Européen sur le Risque de l’Irradiation
Green Audit 2010

European Committee on Radiation Risk
Comité Européen sur le Risque de l’Irradiation
Secretary: Grattan Healy
Scientific Secretary: C.C.Busby
Website: www.euradcom.org
2010 Recommendations of the ECRR
The Health Effects of Exposure to Low Doses of Ionising Radiation
Edited by:
Chris Busby, with Rosalie Bertell, Inge Schmitz Feuerhake Molly Scott Cato and Alexey Yablokov

Published for the ECRR by:
Green Audit Press, Castle Cottage, Aberystwyth, SY23 1DZ, United Kingdom
Copyright 2010: The European Committee on Radiation Risk
The European Committee on Radiation Risk encourages the publication of translations of this report. Permission for such translations and their publication will normally be given free of charge. No part of this publication may be reproduced, stored in a retrieval system, or transmitted in any form, or by any means, electronic, electrostatic, magnetic tape, mechanical, photocopying, recording or otherwise or republished in any form, without permission in writing from the copyright owner.
The ECRR acknowledges support from:
The International Foundation for Research on Radiation Risk,
Stockholm, Sweden ( www.ifrrr.org)

ISBN: 978-1-897761-16-8
A catalogue for this book is available from the British Library
Printed in Wales by Cambrian Printers
(Cover picture: XY projection of secondary photoelectron tracks induced in a 20nm diameter Uranium nanoparticle by 1000 natural background radiation photons of energy 100keV;in a water particle of the same size this exposure would produce 0.04 tracks in the same XY plane. FLUKA Monte Carlo code. Elsaessar et al. 2009)

The ECRR acknowledges the assistance of the following individuals, including contributors to its 2009 Lesvos Greece International conference where the development of its 2010 recommendations was discussed:
Prof. Elena Burlakova, Russian Federation
Dr Sebastian Pflugbeil, Germany
Prof. Shoji Sawada, Japan
Dr Cecilia Busby, UK
Prof. Mikhail Malko, Belarus
Prof. Angelina Nyagu, Ukraine
Prof. Alexey Nesterenko, Belarus
Dr Alfred Koerblein, Germany
Prof. Roza Goncharova, Belarus
Dr VT Padmanabhan, India
Dr Joe Mangano, USA
Prof. Carmel Mothershill, Ireland/Canada
Prof. Daniil Gluzman, Ukraine
Prof. Hagen Scherb, Germany
Prof. Yuri Bandashevsky, Belarus
Dr Alecsandra Fucic, Croatia
Prof. Michel Fernex, France/Switzerland
Prof. Inge Schmitz Feuerhake, Germany
Prof. Alexey V Yablokov, Russian Federation
Prof. Vyvyan Howard, UK
Mr Andreas Elsaesser, UK
Prof. Chris Busby, UK
Mm Mireille de Messieres, UK/France
Mr Grattan Healy, Ireland
The agenda Committee of the ECRR comprises:
Prof. Inge Schmizt Feuerhake (Chair), Prof. Alexey V Yablokov, Dr Sebastian Pfugbeil, Prof. Chris Busby (Scientific Secretary) Mr Grattan Healy (Secretary)
Contact: scisec@euradcom.org

Contents
Preface
1. The ECRR. 1
2. Basis and scope of this report 6
3. Scientific principles 9
4. Radiation risk and ethical principles 19
5. The risk assessment black box: ICRP 36
6. Units and definitions: extension of the ICRP system 44
7. Establishing the health effects at low dose: risk 63
8. Establishing the health effects at low dose: epidemiology 75
9. Establishing the health effects at low dose: mechanisms 84
10. Risks of cancer following exposure. Part I: early evidence 107
11. Risks of cancer following exposure. Part II: recent evidence 121
12. Uranium 144
13. Non-cancer risks 163
14. Examples of application 173
15. Summary of risk assessment, principles and recommendations 180
16. List of ECRR members and other contributors to this report 183
All References 189
Executive Summary 239
Annex A: Dose coefficients 244
Appendix:The Lesvos Declaration 246

ECRR 2003 was dedicated to Prof. Alice M Stewart, the first scientist to demonstrate the exquisite sensitivity of the human organism to ionizing radiation. The Committee dedicates this present volume to the memory of:
Prof. Edward P Radford,
Physician and Epidemiologist
“There is no safe dose of radiation”
Radford was appointed Chair of the BEIR III committeeof the US National Academy of Sciences. His BEIR report in 1979 drew attention to the inadequacies of the then-current radiation risk model. It was withdrawn and suppressed but he resigned and published a dissenting report. His career was destroyed.
In 2009 the ECRR awarded the Ed Radford Memorial Prize, donated by his widow Jennifer and the Radford family in the USA to
Prof. Yuri I Bandashevsky
Physician and Epidemiologist
Bandashevsky drew attention, through his scientific research and self publications in English, to the effects of internal radioactivity from Chernobyl on the health of the children of Belarus and was rewarded by arrest and imprisonment.
The presentation in 2003 of the new radiation exposure model of the European Committee on Radiation Risk caused something of a revolution in the focus of scientists and politicians on the adequacy of previous scientific theories of the effects of radiation on living systems. This was long overdue, of course, since evidence has been available for more than 40 years that it was unsafe to use studies of external acute radiation to inform about risk from internal chronic exposures to evolutionarily novel radionuclides. Such a scientific paradigm shift is not easy: the course and direction of the nuclear, military, economic and political machine dedicated to the development of nuclear energy and its military applications is monolithic and has massive inertia. It was therefore surprising and encouraging that ECRR2003 received such attention, and effectively brought about a new and intense interest in the flaw in the then-current philosophy of radiation risk: the physics-based concept of absorbed dose. The support and encouragement for the new model, and its success in many court cases (where it was invariably set against the ICRP model) was perhaps assisted by the increasing evidence from Chernobyl fallout exposures and from examination of Depleted Uranium effects which were emerging at the time of ECRR2003. The success of the ECRR model is that it gives the correct answer to the question about the numbers of cancers or other illnesses that follow an exposure to internal fission products. This is immediately clear to anyone: to juries and judges as well as ordinary members of the public. It received powerful support from reports of increases in cancer in Belarus after Chernobyl and also from the epidemiological studies of Martin Tondel of cancer in northern Sweden published in 2004: Tondel’s findings of a statistically significant 11% increase in cancer per 100kBq/m2 of Cs-137 contamination from Chernobyl are almost exactly predicted by the ECRR2003 model.
There have also been developments in laboratory science that can be explained in the new model but are quite impossible to explain in the old ICRP model. One of these is the understanding that elements of high atomic number, like Uranium (but also non-radioactive elements like Platinum, Gold etc.) have the ability to alter the absorption characteristics of tissues in which they are embedded. Uranium is the central element around which the nuclear fuel cycle revolves, and huge quantities of the substance have been contaminating the biosphere since early in the last century. It is therefore necessary to update the ECRR risk model and include consideration of these ‘phantom radiation effects’. The widespread dispersion of Uranium from weapons usage has made it necessary to add a chapter on Uranium weapons. Since its founding in Brussels in 1998, the ECRR has been joined by many eminent radiation scientists from many countries. It will be clear from this new revised edition that the pressure on politicians and scientists to change their understanding of the health effects of ionizing radiation is now too great to ignore.



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2011.07.17 クリス・バズビー氏(ECRR事務局長)講演会(早稲田奉



アップロード日: 2011/07/19

7月17日夕刻、東京・早稲田のスコットホール講堂で、ECRR(欧州放射線リスク委­員会)議長であるクリス・バズビー氏の講演が行われました。

内部被曝と低線量被曝を過小評価したICRP(国際放射線防護委員会)基準があり、日­本政府も原発推進の御用学者達もこの基準に準じていますが、ICRP基準では健康被害­の想定が300倍から500倍ほども甘い、とバズビー氏は指摘しています。また、IC­RPは甲状腺がん以外目立った病気はないとしていますが、甲状腺がん以外でも多様な慢­性的な病気が多発していることも指摘しています。

東京や福島で走行している自動車のエアフィルターから数多くの種類の放射性物質が検出­されており、フィルターに付着したのと同等の核種・量の放射性物質を私達は毎日吸って­生きている、そしてそれらの核種が私達の体内に入って細胞を攻撃し続けると、具体例を­挙げて警告しました。γ線のみしか捕捉しないガイガーカウンターでの放射線量測定は目­安でしかなく、線量が低いからと言って安心してはならないとも指摘しています。

原発のある福島はもとより、東京など関東圏でも今後数年以内に大変なことが起こってく­るはずです。また、関東以西の地域での汚染状況はまだ殆ど明らかになっていませんが、­関東よりは汚染レベルは低いとしても、無縁だとは到底言えないでしょう。汚染された食­料品・飲料品が持ち込まれて内部被曝したり、ガレキ、焼却灰、土などが持ち込まれれば­、たちまち一帯の汚染度は高くなってしまいます。

バズビー氏の講演、必見です。

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核利益共同体に魂を売り渡した日本の食品安全委員会

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/fukushima/01.html

核利益共同体に魂を売り渡した日本の食品安全委員会

【参照資料】フクシマ放射能危機と汚染食品2012.6.9

<参考資料>食品安全委員会 
食品安全評価ワーキンググループ 第1回会合 議事録解説

 
核利益共同体に魂を売り渡した
日本の食品安全委員会

その① 違法状態を解消しようとする厚労省


事態は完全に政治問題

2011年3月11日、東京電力福島第一原発事故で「フクシマ大惨事」がはじまった。「フクシマ大惨事」と書き、「福島大惨事」と表記しないのには立派な理由がある。今私たちが直面している大惨事(それはまだほんの序章にすぎない)は決して「福島」だけに限定した話ではない、ということだ。確かに惨事の地元「福島」は、苛酷な状況にある。しかし問題は「福島」にとどまっていない。それは日本全国を、あるいはチェルノブイリ大惨事のケースを参照すれば、東アジア全体を覆う大惨事になる可能性がある。少なくとも日本全体を覆う大惨事となる可能性が、今のままで進行すれば、ある。「今のままで進行すれば」と書いたのは、主として日本政府の対応が、核(原子力)利益共同体の利益になる方向で事態の収束(そのような収束はあり得ないのだ)を計ろうとしているところにある。

今や事態は完全に「政治問題」になった。

日本政府の態様は、1986年のチェルノブイリ原発事故で核利益共同体と政権の威信と統治力の維持に汲々とした、旧ソ連政府の姿とダブって見える。いや事故直後数十万人規模での集団避難を実施した旧ソ連政府の方がまだましかもしれない。日本政府の姿は、むしろ避難を拒み汚染された土地へ民衆の帰還を促すベラルーシのアレクサンドル・ルカシシェンコ独裁政権の方に近いかもしれない。少なくとも旧ソ連政府は放射能に汚染された土地に大衆の帰還を促すなどという政策はとらなかった。

フクシマ大惨事は様々な形で私たちの生活を根底から破壊しようとしているが、中でもとりわけ重大な危険をもたらしそうな要因は、「フクシマ放射能危機」だろう。フクシマ放射能危機は、広汎な内部被曝による私たち市民社会全体のさまざまな健康損傷、従って「生活の質」の基盤が根底から脅かされる、という形で現れる。その、内部被曝の、ほとんどが、放射能汚染食品摂取によってもたらされることが、チェルノブイリ大惨事の経験から判明している。

当初から認識された汚染食品問題

福島原発事故の後、政府も手を拱いていたわけではなかった。特に放射能汚染食品が危機の起爆剤になるだろうことは当初から認識されていた。

2011年3月17日、事故から1週間後、日本の厚生労働省は『放射能汚染された食品の取り扱いについて』と題する通知を「全国各都道府県知事」、「各保健所設置市長」、「各特別区長」あてに出した。この通知は『・・・食品衛生法の観点から、当分の間、別添の原子力安全委員会により示された指標値を暫定規制値とし、これを上回る食品については、食品衛生法第6条第2号に当たるものとして食用に供されることがないよう販売その他について十分処置されたい。』としそれぞれの食品群の汚染上限値を通知した。

これがいわゆる「暫定規制値」である。暫定規制値は次のようなものだった。



注)100 Bq/kg を超えるものは、乳児用調製粉乳及び直接飲用に供する乳に使用しないよう指導すること。

一読しておわかりのように、きわめて高い許容限度値(上限値)である。この時の考え方の枠組みは、年間5mSvの実効線量を食品摂取のみで吸収することが前提になっている。

(なお、Svは実効線量の単位である。ICRPは生体が放射線を吸収した時の線量を吸収線量と呼んでいる。これに対して無機質の物体が吸収した時の単位がGy=グレイである。ところが、放射線の線種-X線、ガンマ線、ベータ線、アルファ線など-によって電離エネルギーが異なることから、それぞれの線種に荷重係数を設けている。こうして荷重係数を掛けて出てきた線量を等価線量、または線量当量と呼んでいる。次に等価線量は、吸収する臓器や器官によって生体に対する損傷の度合いが違う、と考えて臓器による損傷係数を設けている。これが臓器荷重係数である。先の等価線量にこの臓器荷重係数を掛けて出てくるのが実効線量である。この考え方を踏襲して、吸収線量から実効線量に至る過程でかけられる係数=まとめてリスク係数と呼んでおくが、リスク係数を調整変更すれば、それぞれのリスク体系における実効線量が出てくることになる。こうした「ICRP・Sv」に対して、欧州放射線リスク委員会=ECRRは全く独自のリスク体系から実効線量を導き出している。これらを区別するために時々「ICRP・Sv」、「ECRR・Sv」という言い方をする時がある。またこれらとは別にドイツでは、「ドイツ放射線防護令」が定められ、独自のリスク体系から独自の実効線量を定めている。この記事で使用する「Sv」は特に断らない限り、「ICRP・Sv」である。「ICRP・Sv」自体は電離放射線のリスクを過小評価の3乗くらいしたインチキなしろものではあるが、その説明は別な機会に譲る。)

「暫定規制値」の問題点

この3月17日の「暫定規制値」は、大きな問題点を2つもっていた。一つはもちろん「年間被曝を食品摂取だけで許容する。しかもその上限値は5mSv」という考え方だ。「公衆の被曝線量自体が年間1mSV」なのに、食品摂取だけで5mSvとはどういうわけか?明らかに、これは緊急時の対応である。しかし日本の「食品衛生法」は「平時」「緊急時」の区別をつけていない。「平時」「緊急時」の区別をつけるのは、あくまで一般大衆に被曝を受忍させたい「ICRP的世界」だけで通用する話だ。(大体人間の体が、「緊急時」と「平時」で放射線に対する抵抗力が変わるわけがない。神様もそのように「核利益共同体」のご都合に合わせて体を作ってくれていない)
このまますすめば、食品衛生法違反である。(当時の状況がすでに食品衛生法違反だった)

もうひとつの問題が、手続きの問題である。日本の食品衛生管理(食品衛生法)の考え方では、食品の安全に対する評価(リスク評価)に基づいて安全行政(リスク管理)がおこなわれることになっている。そのリスク評価を担う行政機関が内閣府に属する食品安全委員会である。厚生労働省や農林水産省は、食品安全委員会のリスク評価に基づいてそのリスク管理(たとえば放射能汚染食品の規制)をおこなわなければならない。それが日本の法律が定めた手続きというものだ。ところが、3月17日の「暫定規制値」は、こうした手続きを全くすっ飛ばしている。言ってみれば、厚労省が「リスク評価」と「リスク管理」の両方をやってまっているのだ。これは厳密には違法状態である。

ICRP・IAEAに偏った評価

この「暫定規制値」が発表された昨年の3月の時点でこのことに気がついているものは少なかった。福島原発の直接の放射能危機のためにそれどこではなかったのである。(お恥ずかしながら私自身もこのことに気がついていなかった。このことに気がつくのは、内部被曝の問題から日本の食品放射能汚染問題とその行政のありかたを調べていってからである。すなわち今年になってからである。)

しかし当時でも数少ないながらこのことに気がついている人たちがいた。それは他ならぬこの問題の専門家、厚労省の官僚たちであった。厚労省の官僚たちは、事態の違法性を少しでも緩和しようと、3月29日になって食品安全委員会に『「放射性物質に関する緊急とりまとめ」の通知について』と題する答申とも意見書とも、「評価書」ともつかぬ一種不思議な文書を出させた。この文書は、「暫定規制値」の内容評価について、「食品安全委員会 委員長 小泉直子」名で当時の厚労相・細川律夫あてになっている。中で『食品安全基本法の第23条第2項の規定により通知します。』という体裁をとっている。

食品安全基本法というのは、『第23条 (食品安全)委員会は、次に掲げる事務をつかさどる。』というもので、その第2項は、『次条(第24条)の規定により、又は自ら食品健康影響評価を行うこと』と定めている。つまり食品安全委員会は「自ら食品健康影響評価」をおこなった、という体裁をとった。それではなぜ「通知」という言葉を使ったのか?それは、食品安全委員会の審議を経ず、あくまで委員長・小泉直子の意見という体裁をとったからだ。本文でも「正式な評価書」とは述べていない。あくまで「放射性物質に関する緊急とりまとめ」という曖昧な表現をせざるを得なかった。違法状態は解消されていないのである。(何しろ一週間ででっち上げたしろものである。それにしては良くできている)

この「緊急とりまとめ」では、『本件に関連する知見を有する専門家を幅広く参考人として食品安全委員会会合に招聘し、他の案件に優先して集中的に議論を行い、その結果を緊急的にとりまとめることとした。』(p6)としたものの、その実情は『食品安全委員会としては、今回の緊急とりまとめに当たり、国民の健康保護が最も重要であるという基本的認識の下、国際放射線防護委員会(ICRP)から出されている情報を中心に、世界保健機関(WHO)等から出されている情報等も含め、可能な限り科学的知見に関する情報を収集・分析して検討を行った。

なお、ICRP は1954 年に「すべてのタイプの電離放射線に対する被ばくを可能な限り低いレベルに低減するために、あらゆる努力をすべきである」と提言し、1997 年に「経済的及び社会的な考慮を行った上で合理的に達成可能な限り低く維持する」との勧告を行っている。』(同p6)と述べているように、ICRP放射線防護行政を100%受け入れる内容になっている。とても「幅広く」などといえたしろものではない。

しかも、食品安全行政に、「平時」と「緊急時」の区別が存在するのか、という根本問題に何一つ答えていない。

正式な評価書作成の必要

この「緊急とりまとめ」の「8.今後の課題」の中で『今回は、緊急的なとりまとめを行ったものであり、今後、諮問を受けた内容範囲について継続して食品健康影響評価を行う必要がある。・・・また、内部被ばくを考慮すると、放射性セシウムの食品健康影響評価に関しては、直接評価要請はなされていないが、ストロンチウムについても曝露状況等も把握した上で改めて検討する必要があると考えられる。』(同p25)と自ら述べているように、違法状態を解消し、厚労省の役人から資料を提供されて急きょでっちあげた「緊急とりまとめ」ではなく、「食品安全委員会独自の議論に基づく正式な評価書作成」の必要性ありと認めている。そこには、永年独自の食品安全評価を行い、いささかなりとも、国民の食品安全の維持向上に寄与してきたという食品安全委員会の矜恃が感じられないでもない。

こうして、食品安全委員会の中に、「放射性物質の食品健康評価に関するワーキンググループ(WG)」が立ち上げられ、4月21日に第1回目の会合が開かれるのである。

この記事は、第1回WG会合の議事録を検討しながら、「フクシマ放射能危機」に今政府がどう対応しようとしているか、その内容は私たちの生活に、とくに「生活の質」にどう関わってくるだろかを考え、市民の立場でその対応策を検討してみようというものだ。

ずいぶん前置きが長くなって申し訳ないが、この議事録検討の前に以上のような背景情報を知っておいてもらいたかったのである。

専門参考人は「核利益共同体」がズラリ

第1回会合は、東京・赤坂にある食品安全委員会の中会議室で開催される。この日の出席者は、以下のとおりであった。

 【専門委員】圓藤 吟史大阪市立大学大学院 医学研究科・教授
 遠山 千春東京大学大学院 医学系研究科・教授
 花岡 研一水産大学校 水産学研究科(食品科学科兼任)・教授
 山添 康東北大学大学院 薬学研究科・教授
 吉田 緑国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・理部第二室長
 吉永 淳東京大学 新領域創成科学研究科・准教授
 鰐渕 英機大阪市立大学大学院 医学研究科・教授

他に専門委員としては、川村孝(京都大学環境安全保健機構健康管理部門長・教授)、佐藤洋( 国立環境研究所・理事)、津金昌一郎(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部長)、手島玲子(国立医薬品食品衛生研究所 代謝生化学部長)、林真(食品農医薬品安全性評価センター長)、村田勝敬(秋田大学大学院 医学系研究科・教授)がいる。つまり13名の専門委員のうち、7名が出席で6名が欠席というわけだ。皆忙しい人たちばかりだということは理解できるにしても、WG主役の専門委員の熱のなさも反映している。

食品安全委員会の常勤委員は委員長の小泉直子(公衆衛生学。兵庫医科大学教授)、熊谷進(微生物学。国立予防衛生研究所出身。東京大学名誉教授)、長尾拓(有機化学。国立医薬品食品衛生研究所出身)、廣瀬雅雄(毒性学。国立医薬品食品衛生研究所出身)の4名。

野村一正(時事通信出身で「農林経済」編集長を経て農林中金総合研究所顧問)、畑江敬子(家政学。昭和学院短期大学学長)、村田容常(サッポロビール出身。お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。生産流通システムの専門家ということらしい)の3名が非常勤委員。この日は7名全員が出席している。

どうも学界のヒエラルキーでは、専門委員の方が食品安全委員会の委員より格上、という印象が否めない。(なお小泉ら食品安全委員会委員は9回のWGを通してほとんど全員が出席している。)

専門委員や食品安全委員の中で放射線に関する専門家と呼べるのは、遠山千春、津金昌一郎ぐらいであろうか。あとは化学や公衆衛生学、あるいは食品衛生の専門家であり、中にはなぜこの人が専門委員になったのかな、厚労省の「イエスマン」だからかな、と言う人もいる。

それに対して、専門参考人の顔ぶれは結構ドスが効いている。以下がこの日出席した参考人である。

佐々木康人 日本アイソトープ協会 常務理事
祖父江友孝 国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報・統計部長
寺尾允男  元食品安全委員会 委員長代理
中川恵一  東京大学医学部附属病院放射線科 准教授
松原純子  元原子力安全委員会 委員長代理

佐々木康人は放射線医学総合研究所長・理事長を経て日本アイソトープ協会の常務理事と言うことであるが、何より日本におけるICRP(国際放射線防護委員会)の大物である。ICRPの主委員会の委員をつとめたこともある。日本の放射線医科学の権威中の権威。祖父江友孝は環境医学が専門。国立がんセンターに長く勤務した後、2012年からは大阪大学大学院で医学系教授に納まっている。もちろんICRP学派の1人。中川恵一は専門は放射線医学。ICRP学派の次世代を担う人材と目されている。松原純子は元原子力安全委員会の委員長代理。専門は何か私にはわからないが、永年「原発は必要、安全」、「低線量被曝は害がない」などのキャンペーンの先頭に立ってきた。しかし2011年3月30日の「原子力専門家の緊急提言」(<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/hiroshima_nagasaki/fukushima/20110401.html>)に名前を連ねたりもしている。

こうした専門参考人の顔ぶれや事務局が提出した資料をみると、このWGが全くICRPのイデオロギーで固められようとしていることが推察できる。

事務方の経歴も調べておきたいところだが、できなかった。

「厚労省が数値をお決めになったわけです」

会合は事務方の前田評価調整官の司会で開始され、まず食品安全委員会の小泉直子のあいさつではじめる。小泉は『科学的知見に基づき、中立公正かつ客観的なリスク評価を行う』(議事録p2)ことを依頼する。ここで小泉は4つのキーワードを使っている。ずなわち、「科学的」、「中立」、「公正」そして「客観的」である。9回の会合を終えてできあがった「リスク評価書」は、ICRPの学説をその基礎とする限り決して「科学的」とは言えず、ICRPの学説を下敷きとする限り、その結論は「産業界」や「核産業・核利益共同体」の利益を最優先させざるを得ず、その意味で決して「中立」でも「公正」でも「客観的」でもあり得ないことは記憶しておかなければならない。

また3月29日に公表した食品安全委員会『「放射性物質に関する緊急とりまとめ」については『・・・国民の皆様に科学に基づいた冷静な対応をお願いしておりますが、厚生労働省の行っている管理措置のもとになった数値はかなり安全性を見込んだものであることを科学的に明らかにすることができたと考えております。』と「暫定規制値」を「科学に基づいたしかもかなり安全性に基づいた」規制値であるとし、食品安全委員会の立場と低レベル電離放射線への評価を明確にしている。

2011年3月17日の暫定規制値が科学に基づいたものであるかは、後で論ずる機会があろうと思う。先を急ごう。

小泉のあいさつに続いて前田評価調整官は、配付資料の確認をおこなう。配布資料の中に資料1「食品影響評価について」と題する文書がある。この文書は、3月17日の後、3月20日になって厚労大臣名で放射能に関する食品健康影響評価の依頼書である。この時には魚を除く「暫定規制値」がすでに発表されていた。(魚について野菜と同等とする、という暫定規制値が示されたのは、4月6日)いわば、依頼の前に「暫定規制値」が発表されていた。(この点について厚労省は、すでに原子力安全委員会から示されていた「飲食物摂取制限に関する指標」を使った、と弁解している。が、これは弁解にもならない。原子力安全委員会は食品安全基本法とはなんの関係もないのだから)

この点をやんわり衝いたのは、専門委員の遠山千春である。

『遠山専門委員:・・・暫定規制値を決めたり、あるいは・・・厚生労働省の方で飲料水その他に関して数値を決められましたわけですよね。そのときには、これらの数値についての妥当性ついて、諮問を受けていませんよね。つまり厚生労働省のほうでそれらの数値をお決めになったわけです。』(p7)

これは遠山の指摘が正しいのであって、厳密に言えば、厚労省は越権行為を犯していることになっている。

これに対して食品安全委員会事務局の評価調整官前田は、『ICRPですとか、IAEAですとかWHOですとか、そういう国際機関の評価などをもとに緊急とりまとめをさせていただいた』と余計なこと言っている。公式の説明は、原子力委員会の「飲食物摂取に関する指標」を使ったのではなかったか?結局「原子力委員会云々」は体裁で、ICRPやIAEAなどの国際核推進機関の資料を使って厚労省が独自に決めたことをここでバラしている。WHOの資料を使った、といっているが、WHOは1959年にIAEAと協定を結んで、「放射線問題についてはWHOは独自のリスク評価も管理も行わない」ことになっている。第4代WHO事務局長・中嶋宏の表現を借りれば、「WHOはIAEAに従属す」である。WHOの資料とはとりもなおさずIAEAのリスク評価に他ならない。

前田は続けて

『そしてまた、野菜とか牛乳とかについても、より精密な基準値をつくるために、・・・もう魚だけではなく、野菜も牛乳もそれらもみんな含めた形での(厚労相からの)諮問というふうに考えているものでございます。』(p7)

とゼロからの諮問であることを明らかにしている。

座長は事前に山添できまり

続いて議事は座長の選出に入る。前田は「どなたかご推薦があれば、よろしくお願いします。」と述べ、これに呼応するかのように国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター・理部第二室長の吉田緑が、東北大学大学院薬学研究科・教授の山添康を座長に推薦する。前田は「ほかにご推薦はございますでしょうか。」と促すが、大阪市立大学大学院 医学研究科・教授の鰐渕英機が、『私も経験豊富な山添先生でいいかと思いますので、ご推薦申し上げます。』と応じる。

ここまで読んで、「ハハーン、座長は山添で根回しが済んでいるのだな」と見当がつく仕組みになっている。山添ではいけない、と野暮なことを言う人間はいない。これですんなり座長は山添に決まる。

山添の専門は「放射線」や「放射能」ではない。専門は薬学である。中でも「薬物動態学」が専門で体の中に入った薬物が体の中でどのような動きをするのかを研究することが目的らしい。またそうした立場から、環境や発がんの仕組みなども研究テーマに入っている。また所属学会は、日本薬学会・日本癌学会・日本環境変異原学会である。日本環境異変原学会では2010年-2011年度の学会長も務めている。その時の会長あいさつの中で次のように述べている。(日付は2011年5月だから、このWGの座長に選出された後のことである。<http://www.j-ems.org/about/message.html>)

『・・・放射線の影響を評価するデータは十分でなく、しかも放射線の人体影響については、低線量域暴露による影響が明確でないため、評価にたどり着くためには閾値と補外の妥当性の議論を避けて通れないのが現状です。このためICRPなどが示している20 mSvなどの値は、ALARAの原則に基づいた安全側にたった管理基準であり、具体的な研究結果から導かれたリスク評価の結果として得られたものではありません。したがって社会状況や作業環境によって管理基準が一時的に変更されることがあり、一方で恣意的とされ不信感を生じることになります。』

より悪質に進化したALARAの原則

ALARA(アラーラまたはアララ)は、国際放射線防護委員会の放射線防護の一大原則であり、”as low as reasonably achievable”(放射線被曝は合理的に達成できる限り低く)の頭文字をとったものだ。1977年のICRP勧告で打ち出された。

それまではどのような原則をとっていたかというと、1965年勧告で打ち出された”as low as readily achievable”である。これも頭文字は「ALARA」なのだが、意味合いは相当違う。1977年の「ALARA」では、「合理的に」達成できる限り低くという意味で、この「合理的に」にはもちろん「経済合理性」である。「原発は普段に放射能を出すが、この放射能で人体に損傷を受ける社会的な損失と、原発を稼働させることで社会全体が受ける利益と比較考量した場合、社会的な利益が大きい範囲で、つまり経済合理性がある範囲で、放射線被曝はできるだけ低く」という考え方だ。1965年の「ALARA」がもつ曖昧性を剥ぎ取り、はっきり「経済合理性」の重要さを打ち出した原則だ。

1965年の「ALARA」の前は、1958年の勧告で打ち出した“as low as practicable”(「ALAP」)の原則だった。この原則では、「経済合理性」は全く背後に隠れて、実際に実行可能な限り低く、を打ち出している。それでは、原発をすべて廃止せよといっているのかというとそうではなく、原発操業では放射能排出は避けられない、だから放射能排出をするな、というのは実際的でない。原発は放射能排出をすることを現実として認めて、その範囲で被曝を少なくしなさい、という意味だ。

1958年勧告で打ち出した「ALAP」の原則の前は、1950年ICRPが事実上スタートした年に打ち出した、“to the lowest possible level”(可能な限り低く)という原則である。この原則にしても、放射能を排出する原発自体を否定したものでなく、放出を認めた上で被曝を可能な限り低くしなさい、という意味である。

意味合いとしては、普段の放射能排出という宿命から逃れられない原発の存在を認めた上で、被曝を最小化する、という考え方だが、現在の「ALARA」に発展していく過程は、同時に「原発から受ける社会的利益」と「原発から放出される放射能で受ける個人的不利益」と比べて、社会的利益が大きくなるように(経済合理性)とする考え方がより露骨に表現されていく過程でもある。(以上は中川保雄「放射線被曝の歴史」 発行:株式会社技術と人間 1991年9月20日 初版第1刷の「ALARA原則の変遷」を参照した。またこの原則の変遷は、<http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/zatsukan/028/028.html>に表としてまとめてある)

また先の山添のあいさつの中で述べられている、「このためICRPなどが示している20 mSvなどの値は、ALARAの原則に基づいた安全側にたった管理基準であり」は、2007年のICRP勧告でさらに拡大延長したALARAである。言い換えればより悪質に進化したものである。

こうした見ると座長の山添は、単に厚生労働省にとって使いやすい学者というだけでなく、ICRP学説を外周から補強する立場の学者だということができよう。

(以下その②へ)




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http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/fukushima/foods/20110421_sfc1_gijiroku.pdf

放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ( 第1 回) 議事録

1.日時 平成23年4月21日(木) 16:00~18:19
2.場所 食品安全委員会中会議室
3.議事
(1)座長の選出について
(2)放射性物質の食品健康影響評価について
(3)その他
4.出席者
(専門委員)
圓藤専門委員、遠山専門委員、花岡専門委員、山添専門委員、吉田専門委員
吉永専門委員、鰐渕専門委員
(食品安全委員会委員)
小泉委員長、熊谷委員、長尾委員、野村委員、畑江委員、廣瀬委員、村田委員
(専門参考人)
佐々木専門参考人、祖父江専門参考人、寺尾専門参考人
中川専門参考人、松原専門参考
(事務局)
栗本事務局長、中島事務局次長、西村総務課長、坂本評価課長、前田評価調整官
林評価課課長補佐、右京評価専門官、本郷情報・緊急時対応課長、原嶋勧告広報課長
新本リスクコミュニケーション官
5.配布資料
資料1 食品健康影響評価について
資料2 放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループの設置につい
て(平成23年4月14日食品安全委員会決定)
資料3 食品と放射能
資料4 リスクとリスク分析の考え方
資料5 「放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ」における
主な検討課題(案)
資料6-1、6-2 海外政府機関等の公表資料等
資料7 ICRP(30Part4、78(和文)、40、41、60、63、75、82、84、103(英
語原文))
資料8 専門委員・専門参考人提供論文
参 考 放射性物質に関する緊急取りまとめ

6.議事内容
●前田評価調整官 それでは定刻になりましたので、ただ今から第1 回放射性物質の食
品健康影響評価に関するワーキンググループを開催いたします。
本日は御多忙中にかかわらず御出席いただき、ありがとうございます。
本日は7 名の専門委員、5 名の専門参考人の先生方にお集まりいただきました。また、
食品安全委員会からも委員に出席いただいてございます。
本日は第1 回目のワーキンググループでございますので、座長が選出されるまでの間、
事務局で議事を進行させていただきます。
本ワーキンググループは、4 月14 日の食品安全委員会におきまして設置することが決
定され、本日は最初の会合に当たりますので、まず初めに、小泉食品安全委員会委員長よ
り御挨拶申し上げます。
●小泉委員長 本日はお忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。放射性
物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループの開催に当たりまして一言御挨拶申
し上げます。
専門委員の方々におかれましては、日ごろからそれぞれの専門調査会における調査審議
に御協力、御尽力いただき、また専門参考人の方々におかれましては本ワーキンググルー
プに御参加いただき、まことにありがとうございます。
食品安全委員会は国民の健康の保護が最も重要であるという基本認識のもと、科学的知
見に基づき、中立公正かつ客観的なリスク評価を行うことが使命でございまして、専門委
員及び専門参考人の皆様の御協力によって評価を進めていくことができていると考えてお
ります。
放射性物質の食品健康影響評価に関しましては、福島第一原子力発電所の事故により放
射性物質が食品から検出されたことを受けまして、3 月20 日に厚生労働省から食品安全
委員会に対し、食品衛生法に基づき放射性物質について指標値を定めることに係る諮問が
ありました。放射性物質を含む食品について国民の不安が高まりつつある異例の状況にあ
りまして、その時点で入手できた文献やデータ等を精査し、専門の方々の御審議を踏まえ
まして、緊急取りまとめを25 日にまとめ、同日、厚生労働省に通知いたしました。
私からもメッセージを出させていただき、国民の皆様に科学に基づいた冷静な対応をお
願いしておりますが、厚生労働省の行っている管理措置のもととなった数値はかなり安全
性を見込んだものであることを科学的に明らかにすることができたと考えております。

また、1 週間という極めて短期間での取りまとめができましたのは、専門委員及び専門
参考人の皆様の御協力の賜物でありまして、改めて御礼申し上げます。
緊急取りまとめでは、時間的制約から、既に食品から検出されている放射性ヨウ素及び
放射性セシウムを対象としたところですが、発がん性に関する詳細な検討や胎児への影響、
ウランやプルトニウム、超ウラン元素のアルファ核種についての評価、各核種の体内動態
やストロンチウムについての検討など、大変難しい課題が残っております。このため、緊
急取りまとめに携わっていただいた方々やこれらの課題に関連する専門家の方々に参画し
ていただき、新たにワーキンググループを設置し、詳細な健康影響評価を進めていくこと
といたしました。
依然として福島第一原子力発電所の放射性物質の放出が続いている中、本件は国民の皆
様の関心も高く、緊急を要する案件だと考えております。お忙しいとは承知しております
が、皆様方の科学的知見を結集し、客観的かつ公正中立な審議を行っていただき、できる
限り早く食品安全委員会にワーキンググループとしての調査審議の結果を御報告いただけ
れば幸いでございます。
本日は今後の調査審議の進め方などについて活発に御議論いただきたいと思います。ど
うぞよろしくお願いいたします。
●前田評価調整官 それでは、本日席上に配布してございます資料の確認をお願いいたし
ます。
まず、議事次第、そして座席表、本ワーキンググループの名簿。
資料1 としまして、「食品健康影響評価について」、
資料2 としまして、「放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループの設
置について」、
資料3 としまして、「食品と放射線」、
資料4 としまして、「リスクとリスク分析の考え方」
資料5 としまして、「放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループにお
ける主な検討課題(案)」、
そして、机上にございます「海外政府機関等の公表資料等①、②」のファイル。
そして、「ICRP のPublication30、78、40、41、60、63、75、82、84、103」。
そして、「専門委員・専門参考人の提供論文」。
それからあと、参考としまして「第372 回から375 回の食品安全委員会の配布資料」が
ファイルとしてお配りしてございます。
また、お手元の薄いほうでございますが、参考としまして放射性物質に関する緊急取り
まとめを配布させていただいてございます。
資料の過不足等がございましたら、随時事務局までお申し出いただければと思います。
なお、傍聴の方に申し上げますが、以上申し上げました資料以外で専門委員等のお手元
にあるものにつきましては、著作権の関係と大部になりますことなどから、傍聴の方には

お配りしてございません。調査審議中に引用されたもので公表のものにつきましては、本
ワーキングが終了後に事務局で閲覧できるようにいたしてございますので、傍聴者の中で
必要とされる方におかれましては、この会議終了後に事務局までお申し出いただければと
思います。
なお、この大部にわたる多くの文献でございますけれども、各専門委員・専門参考人の
方にまた会議終了後にメールで送らせていただきたいというふうに考えてございます。
それでは、本日御出席いただきました本ワーキンググループの専門委員と専門参考人の
皆様を御紹介させていただきます。
まず、50 音順でございますけれども、圓藤吟史専門委員でございます。
次に、遠山千春専門委員でございます。
続きまして、花岡研一専門委員でございます。
続きまして、山添康専門委員でございます。
吉田緑専門委員でございます。
吉永淳専門委員でございます。
鰐渕英機専門委員でございます。
続きまして、専門参考人として5 名の方に御参画いただいてございます。
佐々木康人専門参考人でございます。
祖父江友孝専門参考人でございます。
滝澤行雄専門参考人でございます。
寺尾允男専門参考人でございます。
松原純子専門参考人でございます。
なお、川村専門委員、佐藤専門委員、津金専門委員、手島専門委員、林専門委員、村田
専門委員におかれましては、御都合により欠席と伺っております。
また、本日は食品安全委員会から冒頭挨拶を申し上げました小泉委員長をはじめ、熊谷
委員長代理、長尾委員、廣瀬委員、野村委員、畑江委員、村田委員も出席いたしてござい
ます。
続きまして、事務局の紹介でございます。
食品安全委員会事務局の栗本事務局長でございます。
中島事務局次長でございます。
西村総務課長でございます。
坂本評価課長でございます。
林評価課課長補佐でございます。
右京評価専門官でございます。
私が評価調整官の前田でございます。よろしくお願いいたします。
ではまず、本ワーキングの設置につきまして、資料1 及び資料2 に基づき説明をさせ
ていただきます。
資料1 でございます。こちらは3 月20 日付の厚生労働大臣から食品安全委員会委員長
あての食品健康影響評価の評価依頼でございます。内容といたしましては、食品安全基本
法第24 条第3 項の規定に基づきまして、食品衛生法第6 条第2 号の規定に基づき有毒な、
もしくは有害な物質が含まれ、もしくは付着し、またはこれらの疑いがあるものとして、
放射性物質について指標値を定めることについて委員会の意見が求められているところで
ございます。
資料1 の裏側でございますが、その背景などが記載されてございます。まず、委員長
の挨拶にございましたとおり、3 月11 日に福島第一原発の事故が発生したということで、
その周辺環境から通常より高い程度の放射能が検出されたということで、厚生労働省が3
月17 日に食品衛生法の観点から原子力安全委員会の示しておりました「飲食物摂取制限
に関する指標」、これを暫定規制値として、これを上回る食品につきましては食品衛生法
第6 条第2 号に当たるものとして、食用に供されることがないよう通知したところでご
ざいます。
この暫定規制値につきましては、緊急を要するため、食品健康影響評価を受けずに定め
たものでございますので、食品安全基本法に基づき食品健康影響評価を依頼し、その結果
を踏まえ、改めて規制値を定めることとしているということでございます。
評価依頼の内容は、先ほどのものと同様でございます。
そして、暫定規制値につきましては、別添1 で後ほど説明させていただきます。
今後の予定につきましては、食品安全委員会の食品健康影響評価の評価結果を受け次第、
必要な管理措置について検討するということとされてございます。
そして、厚生労働省から3 点の資料の提出を受けているところでございます。
その暫定規制値について、2 ページ目の別添1 でございますが、3 月17 日に定めた暫
定規制値についてでございます。放射性ヨウ素につきましては飲料水、牛乳・乳製品は
300 Bq/kg、野菜類(根菜、芋類を除く)ものは2,000 Bq/kg。放射性セシウムにつきま
しては飲料水、牛乳・乳製品につきましては200 Bq/kg、野菜類、穀類、肉・卵・魚・そ
の他が500 Bq/kg。ウランにつきましては乳幼児用食品、飲料水、牛乳・乳製品が20
Bq/kg、野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他が100 Bq/kg。そして、プルトニウム及び超
ウラン元素のアルファ核種につきましては、乳幼児用食品、飲料水、牛乳・乳製品が1
Bq/kg、野菜類、穀類、肉・卵・魚・その他が10 Bq/kg。ただし、放射性ヨウ素の牛
乳・乳製品につきましては、100 Bq/kg を超えるものは乳児用調製粉乳及び直接飲用に供
する乳に使用しないよう指導することとされているところでございます。
そして次に、4 月6 日に厚生労働省の食品安全部長から食品安全委員会事務局長あての
文書が出されてございます。その内容としましては、2 段落目でございますが、この魚介
類の中に放射性ヨウ素が見つかったということを受けまして、別添2 でございますので、
その次のページ、1 枚めくっていただいた別添2 と書いているところでございますが、放
射性ヨウ素の欄の一番下に魚介類の項目が新たに設定されまして、そちらにつきましても
6
野菜類と同じ2,000 Bq/kg、これを暫定規制値というふうに定められたということでござ
います。こちらにつきましても、食品健康影響評価もあわせて行われるよう依頼いたしま
すというふうな旨の文章が依頼がされているのが資料1 でございます。
続きまして、資料2 でございます。こういった要請を受けまして、3 月29 日に緊急取
りまとめを出したところでございますが、その後、このワーキングを設置するということ
の検討を重ねてまいりまして、4 月14 日の食品安全委員会決定としまして本ワーキング
グループの設置が決められたところでございます。
趣旨としましては、3 月29 日に緊急取りまとめをまとめたということですが、今後そ
の諮問を受けた内容範囲について、継続して食品健康影響評価を行う必要があるというこ
とで、放射性物質の曝露状況等も把握した上での評価や、放射性物質の発がん性、胎児へ
の影響等に係る詳細な検討等が必要なため、食品安全委員会に審議内容を専門とする専門
委員等の参画を得て、放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループを設置
するということとなった次第でございます。
構成及び運営につきましては、WG につきましてのメンバーはこの資料2 の裏のメン
バーで、この当時の専門委員13 名と専門参考人6 名の名前が挙げられてございますが、
これはまた専門参考人につきましてはそのときどきの話題によってまた変わるところがご
ざいますが、14 日現在はこのメンバーで決められたところでございます。
そして、2 の(2)として、WG に座長を置き、互選により選任する。そして、座長は
WG の会議を招集し、議事をつかさどる。そして、座長に事故があるときは、WG に所属
する専門委員のうちから座長があらかじめ指名する者がその職務を代理する。そして、座
長が必要と認めた場合には、WG に所属する専門委員以外の有識者の参加を求めることが
できる。こちらがいわゆる専門参考人と称しているものでございます。
そして、6 番がWG の会議、議事録等は原則として公開するが、個人の秘密等が開示
され特定の者に不当な利益または不利益をもたらすおそれがある場合においては、「食品
安全委員会の公開について」、平成15 年7 月の食品安全委員会決定でございますが、そ
れに準じて取り扱うということでございます。
7 番目としまして、WG の調査審議の結果は、食品委員会に報告するとされてございま
す。
その他は、WG の運営に関し必要な事項は座長がWG に諮って定めるということとさ
れているところでございます。
以上が資料2 の説明でございます。
また、資料にはございませんけれども、1 点御留意いただきたいことがございます。本
ワーキンググループ以外の場におきまして、専門委員または専門参考人としての立場から
ではなく、この放射性物質の食品健康影響評価に関する専門家として個人的見解をいろい
ろと取材等で聞かれることがある場合があるかもしれませんが、その際には食品安全委員
会の見解であるというふうな誤解を招かないように御留意をいただきたいと思います。

以上で資料1、2 等の説明でございますが。ただ今御説明しました内容に質問等がござ
いましたら、回答をさせていただきたいと思います。何か御質問ございますでしょうか。
遠山先生。
●遠山専門委員 資料1 ですが、魚の魚介類を入れたということに関して諮問が新たに
出たということでありますが、そうですよね。ところが、それもちょっと意見はあります
が、その前のページのところの暫定規制値を決めたり、あるいはこの前ここでこの委員会
で定めた緊急取りまとめの数値に基づいて、厚生労働省のほうで飲料水、牛乳その他に関
して数値を決められたわけですよね。そのときには、それらの数値についての妥当性につ
いて、この委員会で諮問は受けていませんよね。つまり、厚生労働省のほうでそれらの数
値をお決めになったわけです。野菜とか飲料水とか牛乳とか。ですよね。
●前田評価調整官 4 月4 日です。
●遠山専門委員 ですから、魚介類についてだけ、今回それを新たに再度ここで、その妥
当性について諮問をされてくるという趣旨が、ちょっと僕はわからなかったのですけれど
も。
●前田評価調整官 この魚介類の件につきましては、この4 月6 日の食品安全部長から
の評価依頼にありますとおり、暫定規制値の中に魚介類を定めたというふうな趣旨でござ
います。今回、この資料2 の趣旨の後段の部分にございますけれども、緊急取りまとめ
でまとめた範囲につきましては、ICRP ですとかIAEA ですとかWHO ですとか、そうい
う国際機関の評価などをもとに緊急取りまとめをまとめさせていただいたところでござい
ますが、個別の魚ですとか野菜ですとか、そういった形での返し方ではなかったというも
のでございます。ただ、厚生労働省はこの魚も暫定規制値に定めましたと。こういうふう
な定め方について意見を伺いたいということでございます。
そしてまた、野菜とか牛乳とかそういうものについても、より精密な基準値をつくるた
めに、やはりもう少し議論が必要だということで、この資料2 の趣旨のちょうど真ん中
に書いていますけれども、「今後諮問を受けた内容範囲について継続して食品健康影響評
価を行う必要があり」ということでございますが、これはこの諮問を受けたという内容は、
もう魚だけではなくて、野菜も牛乳もそれらもみんな含めた形での諮問というふうに考え
ているものでございますので、この諮問を受けたというのは魚には限らないということで
ございます。
●遠山専門委員 わかりました。
●前田評価調整官 ほかに御質問はございますでしょうか。
それでは、なければ議事1 に入りたいと思います。議事1 でございますけれども、本
WG の座長の選出をお願いいたしたいと思います。
先ほど御説明いたしました本WG の設置要綱の2 の(2)に、WG に座長を置き、WG
に属する専門委員の互選により選任するとされてございます。
どなたか御推薦があれば、よろしくお願いいたします。

●吉田専門委員 私は、新開発食品専門調査会の座長である山添先生を本WG の座長と
して御推薦を申し上げます。
●前田評価調整官 ほかに御推薦はございますでしょうか。
●鰐渕専門委員 私も御経験豊富な山添先生がいいかと思いますので、御推薦申し上げま
す。
●前田評価調整官 ほかに御推薦はございますでしょうか。
ただ今、吉田専門委員、鰐渕専門委員から山添専門委員を座長にという御推薦がござい
ましたが、いかがでございましょうか。
それでは、御賛同いただきましたので、座長に山添専門委員が互選されました。
それでは、以降の議事進行につきましては、山添座長にお願いいたしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
●山添座長 大変なこのWG の座長を務めさせていただくことになりました。先生方皆
さん専門の方ですので、活発な議論によりできるだけ科学的な根拠に基づいた値というも
のを設定できるように頑張っていきたいと思いますので、先生方皆さん、よろしくお願い
申し上げます。
それでは、議事の進行を引き継がせていただきます。
まず、先ほど説明のありました食品安全委員会決定の2.(4)に、座長に事故のあると
きは、WG に属する専門委員のうちから座長があらかじめ指名する者がその職務を代理す
るとあります。したがいまして、私から座長代理として、本件の評価の重要な要素の一つ
となると思われます公衆衛生学の専門家で、特に金属関係の専門家であらせられます、ま
た化学物質・汚染物質専門調査会の座長もなさっておられます佐藤洋先生にお願いをした
いと思いますが、皆様いかがでしょうか。よろしいでございましょうか。
それでは、今日、実は佐藤先生は欠席をなさっていて、欠席裁判をするような感じなの
ですけれども、佐藤先生にお願いをしたいと思います。後で佐藤先生には御連絡を申し上
げるということで、よろしくお願い申し上げます。
これで議事の1、座長の選出というのは終了いたしました。
引き続きまして、本題であります議事2 に移りたいと思います。議事2 は、放射性物
質の食品健康影響評価についてでございます。
本日は、1996 年より原子力安全委員会委員をお務めになられまして、2000 年から
2004 年まで原子力安全委員会委員長代理でおられました松原純子先生に専門委員として
おいでいただいております。松原先生は原子力委員会をおやめになった後も放射線関係に
ついて調査研究をなさっておられると伺っております。本日は、「食品と放射線」と題し
た資料、これは資料3 でございますが、用意してございますが、それをもとに御説明を
いただきたいと思います。
松原先生、よろしくお願い申し上げます。
●松原専門参考人 松原でございます。小泉委員長から食品についての基礎的なお話をま

とめていただきたいという御依頼をいただきまして、私個人の見解でございますけれども、
皆様の今後のワーキンググループの議論の参考になればと思いまして、短時間でございま
すが、このパワーポイントを用いまして説明させていただきます。
(PP)
本日の話題は、放射線に関して全く御専門でない委員の方もいらっしゃるというふうに
伺いましたので、まことに御存じの方には失礼なのですけれども、放射線に関する基本的
なことを初めに少しお話をさせていただきまして、次に、今回の東京電力福島第一原子力
発電所の事故と、原子力が抜けています、すみません。その規制をどのようにしているか。
それから、福島第一原子力発電所事故とチェルノブイリ事故との比較。それから、もし放
射性物質が環境に流出した場合に、生態系においてどのような食物連鎖を通って生物濃縮
が行われるか。それと、私どもの昔の研究の成果なども踏まえまして、簡単に御説明させ
ていただきたいと思います。
(PP)
私たちの命の危険は、食物だけではなくていろいろな危険があるわけですけれども、そ
ういった命のリスクというのは本当は総合的に判断しなければいけないのですが、そのな
かでも食品というのは毎日毎日継続的に摂取している非常に重要な因子ではないかと思い
ます。
(PP)
まず、放射線とはということですが、普通の人に説明するのは大変難しいと思うのです
が、簡単に言えば、エネルギーを持った超微細な粒子や波動、エネルギーの流れであると。
ですから、強い放射線、エネルギーの強いものに多量に当たった場合には、当てられたほ
うの人間の体とか生体は影響を受けるということです。また、量が少ない場合にはほとん
ど日常的に受けているという実態もあろうかと思います。
放射線には幾つかの種類がございますが、これは御存じと思いますので、省略いたしま
す。
(PP)
問題はこの単位なのですけれども、単位は時間や距離や重さについては大体1,000 倍
で、キロとかミリとかセンチとかそういうふうなことで区切っていくわけでございますけ
れども、放射線の場合は、一番基本単位が放射性物質。放射性物質というのは、放射線を
出す源の量がどれくらいかというのをあらわすのにこのベクレルという単位を使うのです
が、このベクレルという単位は原子1 個ずつから出てくる、1 秒当たりに原子が何個出て
くるかという非常に小さい世界のカウントなのですが、放射線に対して私たちは非常に敏
感な観測計器を持っていまして、出てくる衝撃を1 個ずつ勘定できるということです。
ですから、いろいろな物質から何Bq 出たというようなことで新聞にもよく報道されるの
ですが、そのベクレルが大体もともと1 kg 当たりあるいは1 時間当たりあるいは何分当
たり、この衝撃がどのような格好で出てくるのかということを決めませんと、単に数だけ

の大きさだけで心配したり議論することはできないので、非常に注意が必要だと思います。
私たち古い人間は、昔はキュリーという単位を使って放射性物質の量をあらわしていた
のですけれども、その1Bq という単位は、27 はピコキュリーでありまして、100 万×
100 万分の1 ぐらい小さいキュリーの、10 のマイナス12 乗に相当する非常に小さい単位
です。
一方、シーベルトというのは放射線に当たったほうの、人間側のほうのどういう影響を
受けたかという、下に書きましたけれども、細胞に与える刺激や影響の度合いでもって、
細胞が1 kg 当たり何ジュールのエネルギーを受けるかというような、そういう物理量が、
グレイという吸収線量なので、それを影響に換算して、シーベルトという、放射線に当た
った影響度をあらわす単位になるのではないかと思います。
(PP)
実は放射線はさっき申しましたように、超ミクロの世界から非常に大きな量まで広がっ
ていまして、ここに単位表というのは持ってきませんでしたけれども、新聞などを見ます
と、これは朝日新聞でしたけれども、数万テラBq というふうに書いてあるのですね。そ
れで、数万テラBq 以上の物質が、今回、福島第一原発から出た。特に63 万テラBq で
あったというふうに書いてあるのですが、この万というのは、日本人は4 桁ずつ、億、
兆、京とそういうふうに区切っているのですが、欧米では3 桁ずつ区切っていくわけで
すね。ですから、メガとかギガとかテラとか3 桁ずつ増えていくので、この万テラBq と
いうのは非常におもしろい言い方で困ってしまうのですけれども、一口で言えば、私の場
合は、全部これを10 の何乗かということに直したいのです。このエクサという単位は10
の18 乗という単位なのです。そしてこの京という単位は10 の16 乗という単位なのです。
テラというのは10 の12 乗ですか、そういうふうに10 の何乗、つまり10 にゼロが何個
ついているかという感じでみんなが頭に入れておけば計算しやすいのですけれども、京と
かテラとかエクサとか言われると、普通の人は全く理解しがたい量になりますので、この
辺も一般の人の理解ということからは、表現の仕方を統一してきちっと述べるという必要
があるのではないかと思います。
今回は非常に深刻な事態になりまして。
(PP)
私は後でチェルノブイリと福島第一の比較をしたいと思ったのですが、その前にちょっと
一般の放射線の話を少しつけ加えさせていただきます。
非常に小さいスライドで見えにくいのですけれども、ここのグレーで囲んである値、そ
れからここが1 で、これが10 で、これが100 で、1,000 なのですけれども、私たちが普
段浴びている量というのは大体この10 から下の量なのですね。普通は1 年間の間に自然
から、宇宙線からは大体0.8 とか大体1 mSv、それに加えていろいろな医療被ばくその
他の要素でさらに1 mSv ぐらい。日本人だったら平均2.何mSv を1 年間かけて被ばく
しているという、日常の1 とか2 とかいうレベルがあるわけですね。それに対して何倍

当たったかということで体の影響が出てくるのではないかと思います。
職業人の場合には、放射線を扱うことを職業としている人は、一応年間被ばく線量を
20 mSv 以下というふうに決めて、規制していますが今回はいろいろ異常事態、緊急事態
ですので、いろいろな作業に当たる人の場合は250 mSv まで許すということで、今回決
めたのではないかと思います。ふだん浴びている量と、それから職業的な量、それから緊
急事態の量、それからそれ以上体に影響がはっきりあらわれる量というのが、放射線は量
によって影響が非常に違うということです。1 回に500 mSv 以上浴びると、大体医学的
にリンパ球が減ったとか、そのほかの影響が感知されるということは、中川先生などもテ
レビを通じて皆さんに解説していらっしゃったと思いますが、そのとおりだと思います。
(PP)
それで、今回の事故で非常に問題になる核種というのがあるのですね。というのは、原
子力というのは核分裂反応しているわけで、核分裂反応をするといろいろな核分裂生成物
というのができます。その中で、私たち人間にとって、人間に影響を与える、問題になる
核種はどれかというと、1 つはヨウ素、それからセシウムと、あとストロンチウムですね。
これが非常に問題になるのです。どうしてかというと、ヨウ素とかセシウムというのは非
常に揮発性で、融点が低くて、例えばふたをしても、ガスですから、漏れて外に出ていっ
てしまうことが第1。それから第2 は、ヨウ素は、後でも申し上げますが、甲状腺にたま
りやすい性質があって、その甲状腺は子どもが成長ホルモンをつくるための臓器なもので
すから、甲状腺に子どもの蓄積量が特異的に高いためにヨウ素が問題になっているわけで
す。
それから、セシウムは非常に水にも溶けやすいし、やはり融点も余り高くないので、水
蒸気と混ざって外に移出していくということでとりあえず問題。
クリプトンは不活性な元素ですけれども、大体の核分裂生成物は非常に短半減期なので
すけれども、クリプトンは半減期が割と長いものですから、これが問題になることもあり
ます。
それから、ストロンチウムは骨にたまりやすい、蓄積性があるということで、昔は核爆
発実験等があったときはストロンチウムは非常に大きな問題になりました。
それで、一応このヨードとセシウム等について当委員会がある種の管理基準をお出しに
なったということは非常に適切なことであろうと思います。
(PP)
これは昔の核実験競争が1960 年代に行われた時に、遠く外国で放射性物質をまき散ら
しますと、日本にでもちゃんと大気圏の気流に乗って日本まで飛来して、それを日本でき
ちっと追跡ができるということで、日本各地の雨の中に放射性物質が記録されたというこ
とです。それもストロンチウム90 を特に、これは半減期が長いので地表にたまりますの
で、こういう計測結果を昔出したことを覚えています。滝澤先生もこういった研究班で御
活躍されていたと思います。

(PP)
これは先ほどの委員会にあった資料と同じですので、こういう基準を、問題のある元素
について決めたということですね。それから、ウランとプルトニウムは非常に重い元素で
すので、仮に福島第一原子力発電所で核分裂反応で発生したとしても重いので、周辺に沈
着してしまって飛び散らないということですね。ですから、人間には影響が起こらない。
チェルノブイリの例でもやはりそういうことで、チェルノブイリ周辺にはたくさんこうい
うものは検出されますけれども、これが直接人間の口には入って影響がでたというのは、
今まで観察されておりません。
(PP)
それで、ヨウ素の先ほどの基準ですけれども、例えば子どもに対して100 Bq/kg でし
たか、そういう基準ですけれども、あの基準というのはもともとは原子力安全委員会が決
めたもので、ヨウ素は甲状腺に特異な集積をして、そのヨウ素が一番問題のある甲状腺に
特別な等価線量を与えないための規制として設定され、それを1年間食べ続ければそれを
結果するだけのベクレル数として、食品を規制するという考えなのではないかと思います。
(PP)
これは別の例なのですけれども、毎日ある人が、昔、欧州のチェルノブイリで汚染が起
こって、それを日本人が輸入して食べるときに、どれくらいの線量の寄与があるかという
のを私が計算したのです。1 日に大体人が1.4 kg くらいの食べ物を食べるとします。そ
のうちの輸入品が35%で、それを365 日間ずっと食べ続けて、そこにベクレルとシーベ
ルトの換算係数を入れると、1 年間で大体1 mSv、輸入食品がすべて370 Bq/kg であっ
たとすれば線量の寄与はこうなる。現実は全部が輸入食品ということはないですので、こ
れよりはるかに低い値になるわけですが、計算は単なるこうした算術で決められていると
いうことです。
(PP)
さて、今回の事故ですが、私は工学者ではありませんので、事故の原因とか規模の大き
さというのはいまだによくわからず、新聞の記事を読むだけなのですけれども、やはり同
心円状に汚染が広がっているのではなくて、風向き等に支配されて、特に南風に支配され
て、この区域ですね。いまだにそうなのですけれども、当時これ3 月24 日だったと思う
のですけれども、4,000 Bq/kg 土壌だったのですが、現在はこれが大体1 万8,000 とか、
これもやはり8,000 とか、大体これの5 倍とか4 倍とか、そんな値に現在蓄積線量はな
っているようですけれども、蓄積線量がこの倍程度だということは、初めにたくさん出た
後はだんだん減っているという感じではないかと思います。それに応じてこういった土壌
とか大気が汚染され、その土壌から、これから申し上げますような食品連鎖を通じて食品
にまで入るのではないかと想像されます。
(PP)
それで、これは新聞の記事ですけれども、こういう報道が出てくるのです。こういうと
きに大体私のところに新聞記者がこれで大丈夫ですかみたいな質問が来るのです。例えば
この場合だったら、地下のタービン建屋から割と近いところの下水をくみ上げたら環境基
準の1 万倍が出たと。それで東京電力の放水基準というのは、放水口ですけれども、こ
ういうふうに設定している。そうだとすると、この値のたしか75 倍くらいだったと思う
のですけども、決して飲料水として、放水口のそばの水を飲む人はないわけで、飲料水と
して許せる濃度ではないのですけれども、周囲の生態系がこの電力会社の原子炉の放水に
よってすべて破壊されて影響が出ているというような濃度ではないように思われます。
(PP)
それが、今は排水口の直近の話ですけれども、回り回って東京まで来たような場合には、
普通の人は、それでも例えば金町浄水場の水がどうこうというような話が出てきますと、
これ飲んでいいでしょうかというような質問が来ます。そのベクレル数の濃度をよく考え
てみますと、まず普通の子どもが飲んでも心配ない濃度なのですが、できれば野菜などは
水で洗って食べれば、放射性物質は水で洗うことによって9 割以上は落ちるというよう
なことで説明しています。
(PP)
そんなようなことがあって、業者は自主判断ということでサンチュなどの取引の出荷を
規制したり、いろいろなことがあったと思います。
(PP)
今の私の説明はこれからの議論のきっかけを与えるためのスライドですので、先生方の
御意見をこれからちょうだいできればと思っています。
最後にお話ししたいのは、生物圏における物質循環ということです。私たちは生きてい
る限り海とか湖とか、そういう水系と陸、それから大気、そういった大きな生物圏の中で
生きていて、この中で大気と水と土壌の中の化学物質が絶えず循環しているわけですね。
ですから、長い時間をかけて少しずつ、例えば1 地点で汚染が発生すると、それは次第
に拡散しながら結局全体に広がっていくことになるかと思います。その循環の仕方、汚染
の濃度、そういったものをしっかり調べるのが放射線生態学であります。
(PP)
これは食物連鎖の図ですけれども、これは、例えば昔、イタイイタイ病で有名になった
カドミウムという重金属がありましたけれども、そういった重金属とか、あるいは今回は
ヨウ素とかセシウムだろうと思いますが、経路は大体同じような具合でありまして、やは
り元素は大気と水と土壌の中にまず入ります。それから、河川とか海水を通じて、大きく
分けて、河川や海水の場合は藻類とか海草とかバクテリア、バクテリアに入ったものが今
度はプランクトンにくっつく、そのプランクトンを魚が食べて、その小さい魚、例えばコ
ウナゴだかイカナゴだかの小さい魚をまた大きい魚が食べる、その大きい魚を人間が食べ
るというような感じですね。それから、大気を汚染すれば、それが雨になって土壌を汚染
しますので、土壌から根菜とかお米とか植物に移りますね。植物を食べた牛が牛乳を出す、

あるいは鳥が卵を食べることによって人間の口に入りますね。
こういうような連関図をつくりまして、それぞれの濃度をはかり、それぞれの移行係数
すなわち、矢印の間の移行する速度、時間当たりどれくらい、何グラムくらいこちらに取
り込まれるかという移行係数と濃縮度がわかりますので、そういったものをインプットし
まして、コンピュータでコンパートメントモデルというものを使って、システム工学的に
計算しますと、汚染がこれくらいのときに人間の口にはどれぐらい入るかということを予
測することができます。
(PP)
いろいろな話で恐縮なのですが、チェルノブイリ事故と、それから今回の比較をしてお
きたいと思います。
チェルノブイリ事故の場合は、放出された放射性物質の総量は14ExaBq、約4 億Ci
と推定されます。非常に量が多かったのですが、実はこれは人ごとでなくて、今回、これ
の約数分の1 あるいは10 分の1 に近い量が、既に福島の上空に流れました。
(PP)
これは比較したものなのですけれども、量的にはこちらが14ExaBq、チェルノブイリ
の場合ですね。こちらは同じエクサBq にすると0.7~1 ということで、10 分の1 以下で
はあるのですが、新聞報道によると、チェルノブイリの場合は恐らく、日本の場合はヨウ
素が出てきているからヨウ素ではかっているのですが、ところがチェルノブイリの場合は
昔起こってしまってヨウ素が吹っ飛んでしまって、後で推定した値なのですね。だから、
この520 京というのがどういう数字を根拠に出したのかわからないのですけれども、こ
れくらいの総量のうちヨウ素はこれくらいだろうということで、これと比較しますと、や
はり1 桁違いますよね。日本が30 と60 の間の50 とすればこの10 倍出たわけですね。
それから、チェルノブイリの場合は134 人が急性放射線障害になって入院しました。
そのうち28 名の方、それからその後19 名、あと2 人の方は火傷等で、やはり全体で五
十何名の方が亡くなっています。現在までですね。別の報道によれば、もうこちらの方は
かなりお年ですので、最近ではあと50 名近く亡くなったというような報道もなきにしも
あらずなのですけれども、WHO は2007 年の時点ではこういうことを言っています。こ
ちらでは死亡者はない、日本ではそういうことはなかったということ。
それから、チェルノブイリでは10 日間で放出が終わったのですが、日本の場合は、出
ているのか出ていないのか、その辺も気をつけているのですが、余り報道がきちっとして
いないのは残念に思います。
(PP)
チェルノブイリの場合は、セシウムは後まで残りますので、現在に至るもはかると出て
きまして、こういう地図を書くことができます。やはりチェルノブイリの原発から同心円
状に広がっているかと思いきや、こういうところにバンと飛び火してここからも広がって、
こういったようなおもしろい分布の仕方をしております。

(PP)
これはプルトニウムで重いから限局しております、チェルノブイリ周辺だけですね。こ
れは特にそういうことで余り大きな影響はなかったということです。
(PP)
これはヨウ素ですね。ヨウ素はこういう広がりをしていました。
(PP)
それとさっきの、もとに戻れるといいのですが、できますかね。では、チェルノブイリ
を見た後で、今回の福島の分布図ありましたね、大分前のほうに。一番初めに出てきてし
まった、これですね。これとちょっと似ているのですよね。やはり二股になっているので
す。だから量は全然少ないのだけれども、やはりこういったたくさん出るときにこういう
風の方向が吹いている、また、たくさん出たときにこういう風が吹くというので決まるよ
うですね。あるいはちょうどこういったところに雲があって、それがここら辺で雨が降っ
たとか、いろいろな条件で決まってきますので、やはりチェルノブイリと同じように角の
ような形で広がっております。
(PP)
それでは、先ほどのところに戻していただきまして、そんなことで、チェルノブイリの
場合なのですが、これは私が原子力安全委員当時、この事故の20 年後ですね、甲状腺癌
になった子どもたちばかりがキエフの病院に診療に定期健診に来ていまして、そこの子ど
もたちです。この方なんかはちょっとのどが腫れているのがわかるかと思いますけれども、
大体はふだんは元気には暮らしていらっしゃるのですが、トラブルがないわけではないよ
うです。やはりずっと監視が必要な状況になっています。チェルノブイリの場合はかなり
の量の放射性物質、ヨウ素が流れたということですね。
(PP)
実はなぜこういうことが起こったかというと、成長ホルモンというのは亀の子2 つの
ところにヨウ素が4 個ついていまして、これはチロキシンという甲状腺ホルモンの分子
式で、ヨウ素が必須なのですね。ですから、甲状腺は成長ホルモンをつくる臓器ですので
ヨウ素がたまります。これは私がつくりましたオートラジオグラフィで、甲状腺の濾胞で
すね。濾胞といって、腺をつくるところに真っ黒にヨウ素がたまって、他の細胞には全然
行かない、そういうことです。
ですから、全身の線量が例えば5 mSv であっても、ヨウ素の甲状腺の等価線量は50
mSv とかその10 倍とか100 倍とか、等価線量は高くなります。それから、年齢特異性
がありまして、横軸が年齢ですね。これが1 歳、0 歳の子どもと言ってもいいかな、これ
2 歳、3 歳といきますと、やはり乳幼児に圧倒的に被ばく線量が高いのですね。チェルノ
ブイリの実測値でそうなります。ですから、こういう甲状腺の成長ホルモンのヨウ素だと
いうことを裏づけております。
(PP)

その後、チェルノブイリでは大体4,800 人ぐらいの甲状腺癌の子どもがいまだにいる
わけでございますけれども、それ以外の白血病の増加とか、そういうものは認められてお
りません。一方、森ではセシウムがやはりたまっていて、キノコだとか穀物とかジャガイ
モの濃度をはかるとこんな具合で、1986 年に事故があってから後に急激に減ったと言え、
まだずっと観察が続けられている、汚染は続いているということです。初めの10 年間は
割と減少したけれども、ここから先はなかなか減少しなくて困っているということらしい
です。セシウムというのは、後でもお話ししますが、非常に代謝が遅くて蓄積性がある元
素ですね。
(PP)
そういうことで、チェルノブイリの30 キロ圏内では、今では普通の鳥や虫、生態系は
特に壊れてはいないのですが、非常に直近の近いところはやはり焼け野原みたいな感じで
す。
(PP)
これは遠景から見たところで、この景色が、今、日本のテレビで映っている福島の原発
のと非常に似ているのでぞっとしたのです。これはチェルノブイリの事故の跡、4 号炉が
やられていて、ほかは健在という状態です。今、こちらは運転中ですね。
(PP)
そんなようなことで、これはこの事故によって被ばくした人の線量です。要するに事故
の処理作業に当たった人は、24 万人の労働者がいますが、そういう方は20 年間に普通の
人よりも平均して100 mSv オーバーに被ばくしたと。労働者は20 年間でこれだけ余分
に被ばくしたというWHO の報告書です。それから、避難民の方は20 年間で平均して
33 mSv を余分に被ばくしているということです。それから、まだ汚染地域と指定される
ところに入ってそこから出ない人がいるのですね。そういう居住者は、避難した人よりも
多少浴びています。それから、全く汚染していないところではこんな程度で、これよりは
低い値ですね。それから、自然放射線として普通の人はこれぐらい、つまり、20 年間で
48mSv くらい浴びている。つまり、こういうところにいると、非汚染地域に住む人の倍
くらい放射線を浴びてしまうのだということになるかと思います。
(PP)
そんなことで、甲状腺の子どもの被ばく線量ですけれども、甲状腺の線量が1 Gy 以上
という高い被ばくをした子がウクライナで2,000 人、それからベラルーシで3,000 人以
上おります。こういう子どもの中から甲状腺癌が発生しているのではないかと思います。
(PP)
そういうことで、チェルノブイリの蓄積の人への影響というのは結局は28+19 人の死
亡があったということと、4,800 人の甲状腺癌が出たということです。
(PP)
食べ物というものは結構放射線障害の防護に、私は関係があると思います。食べ物の中に

は抗酸化性物質といって抗酸化作用のある物質がたくさんあるわけですけれども、放射線
障害は原則的には酸化というか、そういった役割をするのですね。私の個人的な研究で恐
縮なのですけれども、ある種のストレスを与えると、体の中で圧倒的にストレスに対抗す
るためのメタロチオネインという物質が出て、それが有機ラジカルを消去する性質があり
まして、有機ラジカルは寿命が十数時間と非常に長いのです。結構寿命が長いということ
は悪さをするわけで、そういうものを消去するというメタロチオネインというものの作用
は、当時私が若いころはどなたも認めてくれませんでしたけれども、最近そういうことが
また再びクローズアップされてきました。
(PP)
そういったメタロチオネインをたくさん作るような食品というのは、金属を含むような、
メタルを含むような、ミネラルの多い食品が非常にそういった、抗酸化性の物質を体につ
くることができます。そういうことで、私は保安院とか関係者に訴えました。つまり今度
の作業者で、いろいろと被ばくを承知で作業している人がいるわけで、そういう人にはな
るべく亜鉛性剤を与えるとか、あるいは食品の中で、カキとかヒジキ、ノリなど、こうい
ったものは非常に亜鉛が多いし、総合ビタミン剤を与えてほしいと。これからの時代は、
自身が守るということも大切なのではないか。同時に、チオールとかそういう抗酸化性の
ある食品や薬剤もあるわけですから、非常にはっきりと被ばくがわかっている人にはそう
いったものをいろいろ手配するのもよろしいのではないかと、個人的には思っています。
それから最後になりますが、
(PP)
実はこれ、私の濃縮係数の研究なのですが。ヨウ素の場合は、これアルジつまり海藻で
すね、これは濃縮係数が300 ぐらいなのです。特に褐藻類と紅藻類が300 倍の濃縮をし
ます。一方、海藻中に初めから安定ヨウ素を添加しておくと吸収がぐっと抑えられるので
すね。
ということで、例えば日本人などはたくさん昆布などを食べているわけですが、昆布は
ヨウ素が多いので、ある程度ヨウ素を普段からたくさん食べている人は放射性ヨウ素の濃
縮が抑制されることは、こういう実験からも明らかです。それから、ヨウ素は海藻に特徴
的に多いのですが、魚は余り多くないのですね。濃縮係数は1 よりも小さく、0.5 とか、
魚はそんなに高くない。ただ、内臓はちょっと高いようです。それからエビもちょっと高
いようです。ともかくヨウ素は海藻が問題です。
(PP)
次のスライドはセシウムですが、セシウムは魚肉や海藻への濃縮は低く遅いのだが、ウ
ニやエビは高い。というのは、セシウムは非常に水に溶けやすいのですね。それで、小さ
くて恐縮ですが、たしかこれ海草とか魚、これは魚肉ですね、魚肉の場合は濃縮係数は高
くても1 か0.幾らなのですね。大したことない。ところがウニとかエビとか内臓とかそ
ういうものになるとガッと高くなりますので、食べるものを注意するということが大事だ

と思います。セシウムの場合、海藻も低いですね。
(PP)
あと問題はストロンチウムで、ストロンチウムは骨ですね。肉にはほとんど、Cf は
0.00 なんでほとんど蓄積しない。骨のほうは、初めは弱いけれども、徐々に徐々にたま
っていきます。そういうことで、ストロンチウムは骨に蓄積するということです。
(PP)
大体そういうようなことで、ありがとうございました。時間を超過するといけないので
これで終わりしますが。
ちょっとそれから1 点だけ。これは、ドイツにおけるKiKK 研究というのがありまし
て、ドイツに原子力発電所がたくさんあるのです。それで、原子力発電所のそばに小児白
血病が多いのではないかということが欧州で問題になりまして、長いことディスカッショ
ンして、私もその研究会に加わっていましたが、結論的には、小児白血病というのはもと
もと原子力発電所がなくてもクラスターというのでしょうかね、イギリスなどにも、いろ
んなところに地域的なクラスターというか集積が見られるのですね。そのクラスターがた
またま原子力発電所の近くで起こるというのはどういうことかというと、これ全部の原子
力発電所で全部クラスターがあれば問題ないのですけれども、この中で1 つの原子力発
電所だけが非常にはっきりクラスターがあって、あとはないのです。そういうことでいろ
いろ議論があったのですが、結論は、原子力発電所のような新しい建築物の建築のときは
いろんな地方からいろんな人が入ってきて、そしていろんな人間の交流が起こると、ポピ
ュレーションミキシングというのが起こって、そして白血病のような弱いウィルスが持ち
込まれて、もしかしたら免疫性の弱い子には発病するのではないかというようなことで、
原子力の放射線にするには余りにも放射線レベルが低すぎる、発がんするには放射線レベ
ルが低すぎるので、やはりそれ以外のポピュレーションミキシングの要因ではないかとい
うのが、大体のコンセンサスだったように思います。
というのは、私は日本も将来こうなると思うのですが、今の子どもは過度にきれいな環
境に育っていまして、非常に感染などの経験が弱いので、免疫力が弱いのですね。だから、
白血病のような弱いウィルスでも結構ある地域ではクラスターとして出てくることがあり
ます。
そういったようなことで、発がんという問題は、単に食品添加物、放射線というような
単純な発想ではなくて、その人のライフスタイル、食生活、感染歴、いろんなものに関係
しているのだということがこの事実は物語っているのではないかと思います。
以上、長くなりましたけれども、皆さんの議論に御参考になればと思ってお話しさせて
いただきました。
以上です。
●山添座長 松原先生、どうも御説明をいただきましてありがとうございます。先生、そ
ちらでもどこでも、向こうへ戻られても結構ですよ、お座りいただければと思います。

●松原専門参考人 では、席に戻ります。
●山添座長 ただ今、松原先生に御説明をいただきましたが、今の御説明について御質問
あるいはコメント等をいただければと思いますが、先生方、いかがでしょうか。
熊谷先生。
●熊谷委員 二、三教えていただきたいことがあります。
大変わかりやすいお話をしていただきましてありがとうございました。
先ほどのスライドの中で、農業、環境、森林での核種挙動という、セシウムがジャガイ
モでしたか、作物の中でセシウム濃度が落ちてくるスライドを見せていただきましたけれ
ども、10 年ぐらいの間に結構速い速度で落ちて、その後一定に保たれますけれども、速
い速度で落ちてくるその物理的な半減期がたしか30 年ぐらいだとしますと、どこにいっ
たのだろうと思うのですが、それはいかがでしょうか。
●松原専門参考人 実はそれに対する記載はWHO の報告書にないのですが、私の想像
でございますけれども、やはりセシウムは非常に水に溶けやすいから、初めは降水などを
通じて地表の、セシウムはかなり地下に流れていくことが多いと思うのですけれども、同
時に土壌から植物に少しずつでも生物濃縮が進んでいきますよね。一回、土壌から生物系
に入ったセシウムというのは、やはりある種の濃縮の能力があるために、ただの水とは違
って、そんなに簡単に流れないのではないかと思うのです。
ですから、初めの相はまだ濃縮が行われていない単純な物理的な流出が支配的な相で、
後半のほうは土壌から食物連鎖を通じて入っていくために多少排泄が遅くなったのではな
いかというふうに、私は考えたいと思っています。
●山添座長 熊谷先生、よろしいですか。
●熊谷委員 もう1 点教えていただきたいのですが、先ほどのウランとか重いやつなの
ですけれども、あれというのは例えば海に流れ込んだときに、海底に生息している二枚貝
とか、そういうところに蓄積されるということはないのでしょうか。
●松原専門参考人 そうですね、私は昔、ルテニウム、セリウムとか、そんなのもやりま
したが、確かに入りますけれども、生物学的な活性というのが余りないために、何か自浄
作用で出してしまうというか、チェルノブイリの報告では相当プルトニウムの汚染はあっ
ても、汚染はセシウムやヨードとは違って限局されている。重いために広がらないという
ことと、それからそこに存在するプルトニウム、ウラニウム等の重い元素は植物に利用さ
れにくいというか、アベイラビリティが低い元素であるために影響が少ないというふうに
書いてあるのですが。
●熊谷委員 どうもありがとうございました。
●山添座長 そのほかに先生方、御質問ありましたら。遠山先生、どうぞ。
●遠山専門委員 三十数年前に学生として講義を受けて以来ですので、非常に三十数年前
にタイムスリップした気分で、わかりやすいお話を伺わせていただきました。
それで、幾つか質問なのですが、今回の事故の場合には、炉心溶融も起きているという

ような報道も最近なされていますので、そうしたことを考えたときに、ストロンチウム
90 もそうですけれども、アルファ線核種なども場合によっては多少は出ている可能性、
そういったものがないのかどうか。あるいは、少なくとも調べておく必要があるのではな
いかという気もするのですが、その点が1 点です。
それからあともう一つは、チェルノブイリとの比較でもあるのですが、白血病の件に関
しては、先生も御承知だと思いますが、疫学的なメタアナリシスとして二百数十万人の子
どもたち、トータルですが、メタアナリシスとして、UK とドイツと、あとどこでしたか、
ギリシャですか、そうしたものを集めてみると、やはり有意に白血病が増えているという
ふうに主張している研究者もいますよね。ですから、その辺、これからこの委員会でちゃ
んと僕は精査するべきだというふうには一応思いますが、もし何かお考えがあれば教えて
いただきたいと思います。今、とりあえず2 点お願いいたします。
●松原専門参考人 申しわけありませんが、第1 の点は、私は原子力工学者ではないの
で、炉心溶融と破壊の程度とか将来性については、情報がないのでお答えできません。
第2 の質問ですが、それは白血病のほうは、実は私チェルノブイリの影響調査研究を
ここ数年間にわたってJNES さんの委託で毎年やっていまして、やはり報告はWHO と
か国際機関の報告書が多いのでございますけれども、その結果、やはりギリシャとかドイ
ツの一部でそういった白血病が出たという話が出たけれども、詳しく基礎の文献を当たっ
て調べてみると、非常に信憑性に乏しいデータであったり、不確実であるということで、
白血病の増加はそういうところのデータからは信じがたいという、そういう結論だったよ
うに思います。
以上です。
●山添座長 遠山先生、よろしいですか。
●遠山専門委員 はい。
●山添座長 多分核種については、多分今後、また別に工学系の先生方に来ていただいて
御説明をいただけると思うので、また今後それを伺えるかなと思います。
そのほか、先生方いらっしゃいますか。小泉先生。
●小泉委員長 長年の貴重な御経験、研究による報告、ありがとうございました。
今回、御発表に直接関係ないかもしれないですが、私ども緊急取りまとめをするときに
用語について非常に困難がありました。それは介入と回避とか、あるいは生涯なのか、非
常にわかりにくい面がありました。例えばICRP では防護対策指標とか介入レベルとか言
っています。IAEA は回避線量とか書かれていますし、原子力安全委員会では介入線量レ
ベルとか、そういう言葉がいろいろ出てきまして、それらにどんな違いがあるのかという
ことと、最終的に原子力安全委員会で決められた50 mSv というのは緊急時の曝露量なの
か、あるいは生涯の曝露量として考えればいいのか、その辺を教えていただければありが
たいのですが。
●松原専門参考人 私は放射線防護の専門家ではないので、その辺の規定は非常に暗いの

ですが、急いで昨日読んできて、確かにおっしゃるようにその辺が煩雑でわかりにくいか
と思うのですよね。それで、一応日本は基本的には国際機関の勧告を受け入れ、それを厳
しめに設定しているというスタンスだと思うのですね。それで、一応WHO が1988 年に
介入レベルとして実効線量50 mSv というふうに言っているのですね。それを取り入れる
と、結局、甲状腺の等価線量というのは10 倍ぐらいになるということでね。そういうこ
とで入れているので。
先ほどの先生のおっしゃった介入レベルではない、いろいろな言葉については、ちょっ
とその違いについて、私、説明できないけれども、介入という意味は、つまりこの場合は、
特に介入というのはヨウ素の吸収を子どもに抑える、小児のヨウ素の吸収を抑えるために
安定ヨウ素剤という、そういうものを与えるというその行為が介入なのですね。それがイ
ンターベンションで、つまり政策的にただ何もしないで待つのではなくて、子どもに安定
ヨウ素剤を配布して、子どもの放射性のヨウ素を吸収を少しでも薄くさせるためにヨウ素
を飲ませておく、これが介入なのですね。そのレベルとして、もし周辺のヨウ素の既往線
量50 ミリ以上になった場合には遅滞なくヨウ素を与えて、それを防護したほうがいいと
いう、そういう意味ではないかなと思って読んでおりますけれども。
いいですか、その説明で。申しわけないですね。佐々木先生のような御専門の先生がい
らっしゃるところで、お恥ずかしいのですけれども。
●小泉委員長 それでは、佐々木先生、教えていただけますでしょうか。
●佐々木専門参考人 言葉のことでありますけれども、ICRP で介入、もともとの言葉は
インターベンションというのは、放射線被ばくを下げるような行為、放射線を下げるよう
な行為をインターベンション、介入と呼んで、それから放射線の被ばくを増やすような行
為、プラクティスと呼んでおりました。これは1990 年の勧告までは放射線防護の体系を
プラクティスとインターベンションという2 つのプロシージャーベースと言っています
けれども、そういうことで体系をつくっておりました。
最新の勧告は2007 年勧告があります。2007 年勧告では、ベンションという言葉は、
線量を減らすような行動のことをインターベンションと言っておりますけれども、防護の
体系としてはそういうプロシージャーベースドからシチュエーションベースドという考え
方に切りかえまして、2007 年勧告では3 つの状況を考えて、それぞれの状況で防護体系
を組んでおります。
3 つの状況というのは、日本語では計画被ばく状況と、緊急時被ばく状況と、現存被ば
く状況と呼んでおります。計画被ばく状況というのは平常での例えば新しい放射線を使う
施設をつくるようなときに、計画段階から、これによる防護というのはこういう形で防護
をしましょうということがあらかじめ計画できるような状態、そういうのをプランドエク
スポージャーシチュエーションと呼んで、3 つのシチュエーションに分けて考えているわ
けです。
それで、非常事態が起こって、計画はしていてもその計画どおりにいかなくなったよう

なときに緊急時被ばく状況という状態になって、緊急時被ばく状況では緊急時被ばく状況
のいろいろな基準を設けて防護対策を立てます。それが落ち着いてきて、もうこれ以上下
がらないけれども、平常の状態よりは放射能のレベルがまだ高いという状態を現存被ばく
状況と呼んでいて、現存被ばく状況には現存被ばく状況の防護対応があると。そういうよ
うな形に2007 年から変わっておりますが、古い勧告書の中では行為と介入という言葉が
今でも使われているし、それはそれでだんだん書きかえていくと思いますけれども、今の
ところ古いものも有効であるというふうに言っております。
よろしいでしょうか。
●小泉委員長 ありがとうございました。ただ、少し今おっしゃる説明を聞いていますと、
要するに総被ばくですね。だから食品だけではなくてすべての被ばくという形のとらえ方
でしょうか。
●佐々木専門参考人 もちろん、今、私が申し上げたのは防護体系、ICRP のやっている
防護体系の話をしておりまして、介入という言葉は被ばくを減らすような行為、行動、こ
れを介入と言っているわけです。だから、先ほど松原先生がおっしゃった小児の放射性ヨ
ウ素の取り込みを抑えるために安定ヨウ素を投与するというのは、これは介入という行為
です。線量を減らすための行為、行動ですから、これは介入の一つになります。一般的に
介入という言葉は、線量を減らそうという活動といいますか、行動といいますか、それを
介入と呼んでおります。
●小泉委員長 ありがとうございます。ただ、今回の暫定基準として使われている値は飲
食物摂取の制限の指標という形になっているのですが、その辺の曝露と食べ物からの制限
との関係はどうなっているのでしょうか。
●佐々木専門参考人 すみません、ちょっと質問の意味がわからないのですが。
●小泉委員長 過去に原子力安全委員会が飲食物摂取の制限に関するレベルを出されてい
ますね。それと今のおっしゃった全被ばくとの関係というのはどういうふうになっている
のでしょうか。
●佐々木専門参考人 申しわけありません、暫定基準の安全委員会の話は私は全く関与し
ておりませんので、これは松原先生に伺ったほうがいいかと思います。私は一般的に介入
という言葉の御質問があったので、それに対してお答えをいたしました。
●松原専門参考人 先生の質問に簡単にお答えすれば、要するにある限度の食品を食べ続
けると1 年間で1 mSv になる、そういった余分な被ばくを抑えるために逆算して食べる
ほうの濃度をこれ以上のものは食べないというための、そういう、ある汚染濃度の出た物
質は規制するということなのです。つまり、余分な被ばくを1 mSv、その食品に由来し
て1 年間食べ続けて、そして1 mSv になるようなレベルの食品、それ以上汚染のあるも
のは規制して食べさせないという、そういう介入政策ですね。
もっと正確な言い方。どうぞ。
●佐々木専門参考人 よろしいですか。防護の体系というのは、お話しし出すとちょっと

長くなってしまうのですが、平常状態ですね、先ほど申し上げました計画被ばく状況にお
いての防護をどうやってするかということに対しては、防護には3 つのやり方があるわ
けです。行為を正当化することと、防護の最適化と言っておりますけれども、被ばくをで
きるだけ減らす最適化というのと、個人の線量限度という3 つの枠組みで平常状態の防
護体系ができております。その中に個人の線量限度というのが、よく言われておりますけ
れども、放射線を使う職業人では5 年間では100 mSv を線量限度として定めております
し、公衆の被ばくは1 年間に1 mSv を定めております。それには意味合いもありますけ
れども、そういう線量限度で定めていて、その中で、今、松原先生がおっしゃったように、
限度のさらに下に拘束という、コンストレイントという考えを持って、そのコンストレイ
ントをいろいろな場に適用している中の一つが、多分食品についてもそういうものがある
と。ただ、これは非常事態になったら線量限度というのは適用いたしません。参考レベル
というものを使って防護活動をするということになっております。これは必要なら一度御
説明いたしますけれども、そういう防護体系がICRP としてはきちんとできております。
●山添座長 小泉先生、よろしいですか。
佐々木先生、今のことに関係するのですけれども、例えば1 年間普通の状況下であれ
ば1 mSv と定められています。例えばそれを食品に当てはめた場合、その数値によって
具体的に何らかの影響が出るということの具体的な事例から定まったものなのか、あるい
は予防的観点からあくまでもこういう数値を目安として出てきたものかということによっ
て、かなり皆さんの意識が違うと思いますので、もう少しその点を御説明いただければ。
●佐々木専門参考人 ちょっと長ったらしい話になるかもしれませんが、平常時の計画被
ばく状況の線量限度というのはどういう値かと申しますと、放射線の健康影響には2 つ
の種類のものがあります。1 つは非常に高線量、1 Sv 以上の被ばくを受けたときに起こ
る臨床的に症状としてとらえられる健康影響です。これを防護の世界では確定的影響と呼
んでおります。あるいは組織反応と最近は呼んでおりますが、これは平常状態ではこうい
う、歴史的には過去にこういうことが職業の場でもあった時代があったと思いますけれど
も、現在ではこういうことは絶対に起こらないというのが前提であります。そういうこと
は計画してはいけないと。それはどういうことかといいますと、先ほど申しましたように、
1 Sv 以上被ばくがなければそういう確定的影響というのは起こらない。そういう世界で
平常時には計画がされているわけです。
もう一つの影響は確率的影響と言っておりまして、1 つの細胞でも傷がついて生き残っ
て遺伝子の変異があった場合に、それにたくさんの変異が重なって、ついには発がんをす
る可能性があると、こういうのを確率的影響と言っております。この確率的影響も平常時
にはできるだけ低く抑えようということであります。
それで、ですから身体的な確定的影響が起こるという話は平常時には全く考えておりま
せん。それでは、職業被ばくの限度というのはどういう限度かと申しますと、平均すると
1 年20 mSv という線量です。5 年間で100 mSv。特定の1 年は50 mSv ということにな

っております。平均して20 mSv を職業人の間、ずっと47 年間、18 歳から65 歳までそ
の限度いっぱいを受け続けたといたしますと、全部で940 mSv になります。これは1 Sv
以下であります。ですから、そういう職業人としてずっと47 年間働いても、そういう確
定的影響は起こしてはいけない。それに近いようなことはまずは起こさないようにすべき
だと。仮にそういう限度近い被ばくをするようなことはまれにしか起こさないようにする。
そして、先ほど申し上げましたように、確定的影響は起こさないために、1 Sv を超える
ようなことは絶対にないようにしようということから、年間平均20 mSv という線量限度
が決められております。
実際にはどうかといいますと、日本で職業人の被ばくの状況がわかっておりますが、正
確な数字は覚えていませんが、99%以上の方が年間5 mSv 以下の被ばくしか受けておら
れません。ごく少数の何人か20 mSv を超える方、あるいは年間で50 mSv を受ける方が
おられますけれども、大部分の方ははるかに低いレベルで管理がされている。
それでは、公衆の被ばくの年間1 mSv はどうやって決められたかというと、これはい
ろいろな要素がありますが、さっき申し上げたような考えから言えば、生まれてから80
歳まで線量限度いっぱいの1 mSv を受け続けたとしますと、80 mSv です。80 mSv とい
う線量は、ICRP は100 mSv を超えると確定的影響が起こる可能性が出てくると言って
いるのが100 mSv でありますので、公衆ではもちろん年間10 分の1 の1 ミリですけれ
ども、公衆がその線量を80 歳まで浴び続けても100 mSv には達しないぐらいの線量で
ありまして、その線量は先ほどの確率的影響ではどういう線量かといいますと、発がんの
リスクが、長年にわたっての被ばくですと0.005%リスクが増えるかもしれないという線
量であります。
しかし、100 mSv 以下では発がんが起こるという証拠はどこにもありません。原爆被
爆者の12 万人ぐらいの長年の健康調査でわかっているのは、150mSv~数千 mSv まで
は直線関係があると。線量の増加に伴って発がんの増加があるということはわかっており
ますけれども、100 mSv 以下については証拠はありません。ありませんけれども、その
高線量、すなわち150 mSv 以上の直線関係が低い線量でもあると仮定しております。そ
れは防護の立場で仮定して、そして先ほど申し上げました100 mSv というのは、もしあ
るとしても、発がんのリスクが100 ミリとしても0.05%であるという線量、生涯のリス
クがですね。そういう線量として1 mSv/年というのが定められている。
それはまた自然の放射線からの被ばく線量は世界平均で2.4 mSv と言われております。
これは原子放射線の影響に関する国連科学委員会の報告書の中でそのように言っているわ
けでありますが。そのうちの約1.3~1.4 mSv はラドンによるものでありますので、ラド
ンを除きますとほぼ世界のすべての人が日々自然の放射線から年間1 mSv ぐらいは受け
ている、それの同じ線量。自然に年間に受けている線量と同じ線量を受けることを1 つ
の線量限度にしようという考え方もあって、それで年間1 mSv というのを公衆被ばくに
しております。

ただ、公衆被ばくは測定しているわけでは、モニタしているわけではありませんので、
これはどうやって担保されているかというと、放射線を使う施設はその管理区域というの
を設けて、管理区域の境界の線量をはかり、事業所の境界の線量を定め、それ以下に、あ
る規定以下に抑えることによって公衆の年間1 mSv というのを担保していると、そうい
う体制になっております。
以上です。
●山添座長 ありがとうございました。皆さんもかなりはっきりその根拠といいますか、
一生涯を通じての曝露ということでその両方の値が決まっているということを御理解いた
だけたのではないかなというふうに思います。
そのほか、先生方でございますか。滝澤先生。
●滝澤専門参考人 今、佐々木先生からいろいろ詳細なお話をいただき、ありがとうござ
いました。
一般的に、例えば飲食物の規制値とか、それはいわゆる介入レベルではないかとか、い
ろいろな考えがあると思います。実際ICRP では、放射線は原点を通る直線的な仮説とし
て通っています。したがって、あってはいけない、少しでもあってはいけないということ
で、今、社会的に、今でも支持されていますけれども、そういう意味では、実際にはもう
自然界には私たちは大地、宇宙の放射線を浴びているわけです。したがって、そういった
中では例えば人工的に福祉目的で使っている原子力開発では、事故を起こした場合、ある
程度は受け入れざるを得ないという、そういう意味でアクションレベルを使うようになっ
た。従来の許容線量という言葉がなくなりまして、いわゆる原点を通るという、直線仮説
でいけば許容量ではなくて、アクションレベルということになり、今WHO は指標値と
いうような言葉を使いますし、それから線量限度という言葉を使うわけで、IAEA でも、
緊急事態の被ばくのときには10~20 mSv というものをアクションレベルとしてどう取
り上げるかという、一つの勧告を出しているわけです。
そのように理解していただいて、そのために行動を起こすレベルだと私は理解している
のですが、どうでございましょうか。
●佐々木専門参考人 先ほど申し上げましたように、計画被ばく状況では個人の線量限度
というものを使って防護をするようになっております。それで、非常事態、緊急時被ばく
状況になったときには線量限度はもう使いません。何を使うかといいますと、現在の言い
方で言うと、参考レベルというものを設定して、その参考レベルを一つの目安にして防護
活動を行うということになっております。その参考レベルをどうやって示しているかとい
いますと、3 つのバンドで示しておりまして、年間あるいは1 回の線量として1 mSv 以
下のバンド、1~20 mSv のバンド、20~100 mSv のバンド、そういうバンドの中で、そ
れぞれの状況に応じて参考レベルを決めて、それに向かって、これは防護の最適化、オプ
ティマイゼーションという言葉、これもわかりにくいのですが、今、滝澤先生がおっしゃ
いましたように、直線閾値なし仮説というものを取り入れておりますので、確率的影響も、

極小化するために不必要に被ばくはないほうがいいと。だから、そういう参考レベルを使
いながら、常に最適化を心がけていなければいけない。最適化というのは1 回で終わる
ことではなくて、さらにもっといつも最適化をやっていかなければいけない。その最適化
ということを、2007 年の勧告は非常に重視しております。
その中でそういう、さっき申しましたバンドを示していて、緊急の事態、非常事態には
20~100 mSv/年あるいは1 回の急性の被ばくについてそのバンドの中に参考レベルをと
って、それを目指してまずは防護をしていきましょうということであります。
そのときに、先ほど小泉先生がおっしゃいました、緊急事態のときにはまずどのくらい
の線量があるかということは、まず予測するしかありません。その状況を判断して、予測
線量でまずそういう防護活動をする、介入と言ってもいいのですけれども、最近は余り介
入という言葉を必ずしも使わないのですが、介入と同じことですが、防護活動をすると。
それで、そのときにこのぐらいの線量を回避しましょうというのが回避線量という考え方
で、残ったものの残留線量を目標にすることも、だんだん状況が進めばそういうことがで
きるようになります。
少し90 年勧告と変わってきているのは、90 年勧告以降は回避線量をターゲットにして、
それをこのぐらい減らしましょうということを言っていますが、今はどちらかというと残
留線量を目指して、残留線量をどこまで下げるかというような言い方に少し変わっており
ますけれども、考え方としては同じでありまして、最初は予測線量を対象にして防護活動
をするし、少し線量がわかってくれば、それを測定の結果を踏まえて、何とかして、こう
いう行動をとればこれだけ線量が減らせるというのが回避線量。それで残った線量という
のが残留線量。それぞれの状況に応じてそういう防護活動をしましょうというのが基本的
な考え方です。
それから、もう一つ申し上げなければいけなかったのは、最適化というのはALARA
といいまして、as low as reasonably achievable、合理的に達成可能なだけ低くしましょ
うと。しかし、これには注意書きが、その後がありまして、社会的、経済的な要因を考慮
して合理的に達成可能な限り低くしましょうと。それが最適化の基本的な考えであります。
●山添座長 ありがとうございました。
遠山先生、関連の質問ですか。
●遠山専門委員 今、非常に大事な問題をいろいろと詳しく御説明いただきまして、あり
がとうございます。
ただ、今、ちょっと限られた時間の中でいろいろな数値とかさまざまな違いの概念の問
題とか、あとは閾値があるリスク評価の仕方と閾値がないと言われるリスク評価の問題、
やはりもう少し時間をかけてゆっくりと議論をしたほうがいいと思います。僭越ながら提
案させていただきたいのですが、佐々木先生にも改めて時間をとっていただいて、詳しく
資料をつくっていただいて御説明いただくほうがよろしいのではないかと思うのですが、
いかがでしょうか。

●山添座長 今、遠山先生からは、実際的なレベルを定める際、もう一度見直すような際
にもう一度御説明をいただいて、それも参考に加えて、これまで決めてきたものの妥当性
をもう一度検証するということですね、遠山先生。
●遠山専門委員 それでもいいですし、適当な機会に、なるべく早めに、今の御説明いた
だいたことをよりちょっとゆっくりと、資料をもとに御説明していただけるとありがたい
なと思います。
それに付随して申し上げますと、前回緊急取りまとめでつくった資料で、緊急であると
いうことでそのまままとめてしまったわけですが、ICRP とかIAEA とかさまざまな、日
本語に翻訳されている文章が、日本語としても何が書いてあるか、私にはわからなかった
のですが、そういうものが多々あるものですから、そこをちょっと振り返ってみて、もう
一遍復習をして、そして定義とかその意味を、今、佐々木先生がおっしゃったような概念
と照らし合わせながら明確にしてから議論を進めないとまずいのではないかなというふう
に思います。
●山添座長 佐々木先生、お忙しいとは思いますが、御協力いただければありがたいと存
じます。よろしくお願い申し上げます。
●佐々木専門参考人 機会をいただきましたならば。
●山添座長 ありがとうございます。
そのほか先生方、別の話題で質問ありますか。村田先生。
●村田委員 ちょっとお伺いしたいのですけれども、今のお話で、平常時の話と緊急時の
話が両方おありになったのですけれども、今回取りまとめたのは緊急時ということなので
すが、ここでやることはどちらになるのでしょうか。
●山添座長 遠山先生。
●遠山専門委員 僕が答える立場ではないのですが、それも含めて先ほど佐々木先生のお
話のときに議論をさせていただいたらと思ったのですが、平常時と緊急時といっても、福
島原発の周辺の人にとってみれば緊急時かもしれませんが、大分遠く離れている日本の中
の別の地域にとってみれば、別に必ずしも緊急時ではないわけです。だから、利害がある
意味では一致していない部分もあるわけですし、そういう意味でもやはりちゃんと、もう
ちょっと慎重に時間をかけて議論をしたほうがいいと思うのですが。
●山添座長 この場は基本的に、厳密な意味で言えば、食品中に含まれている放射線の影
響というものを評価するための会議なのですね。ところが、現実に、例えば今、遠山先生
がおっしゃいましたように、東京にいる人にとっては食品中に含まれるものだけで評価は
できるかもしれないし、福島におられる方にとっては大気と水とかも含めた形で両方が加
算される可能性もある。そういうことも含めてどういう、基本的には当然のことながら食
品中での影響なのですけれども、例えばチェルノブイリの事例を見ても、データとして得
られるのは食品中に含まれる放射能のデータではなくて、実際には土壌であるとか大気と
か、そういうデータから食品中への影響を外挿して我々評価をしなければいけない状況に
28
あるわけですね。データとしてそんなにたくさんないので。
だから、ある意味で分かれているのですけれども、ある意味でリンクしているところが
あって、そういう点も踏まえてどういうふうに切り分ければいいか、あるいは両方あわせ
ればいいかということも念頭に入れて評価する必要があるかというふうに思います。
それから、1 つもとに戻って、松原先生に質問させていただきたいところがあるのです
が、先ほどチェルノブイリで被ばくした子どもの年齢と甲状腺の蓄積のヨウ素の線量との
関係の図をお見せいただいたのですけれども、そこのところで3 歳児ぐらいまでの間で
かなり高い被ばく線量が出ておりましたが、その考えられる原因としては、例えばすっと
頭に浮かぶのは、一つは当然のことながらお母さんから授乳をされているということが一
つのこと。それからもう一つは、子ども自身がそのものが非常に取り込みやすいという可
能性と、その2 つの要因ですね、違った要因が考えられるのですが、現時点ではどうい
うふうにこれを解釈されているのでしょうかということを、もし先生御存じでしたら御説
明いただければ。
●松原専門参考人 一つは、子どもは、乳児は単位時間当たりの成長、体重の増加率が大
人に比べて非常に大きくて、つまり成長率が非常に大きいので、それにほとんど比例して
あのような高い吸収があったのではないかと思います、一つは。ただ、チェルノブイリの
場合は、なぜ甲状腺癌が増えたかというと、牧草を食べた牛の中にヨウ素があって、ヨウ
素で汚染されたミルクを飲んだために子どもがあれだけということが、両方なのですね。
つまり、被ばく線量が多かったというのは、子どもが成長率が高いと同時に、汚染したミ
ルクを飲んでいたという相乗効果みたいなものがあの図に、結局被ばく線量の大きさにあ
らわれているのではないかなと、私は解釈いたします。
●山添座長 ありがとうございました。両方の可能性が考えられるということですね。わ
かりました。
そのほか、先生方。村田先生。
●村田委員 先ほど生物濃縮のお話をしていただいたのですけれども、ちょっと質問なの
ですけれども、環境中の濃度が一定だと多分一定になってくるのだと思いますけれども、
今回みたいに環境中の放射性物質というのは、先ほどの1960 年代もそうでしたけれども、
あるとき高くなったり下がったりしてきますよね。そうしますと、そちら側の海産物のほ
うの濃度もやはりかなり動いていると思ってよろしいのでしょうか。先ほどの絵は一定の
ふうに出ていましたけれども。
●松原専門参考人 それでよろしいかと思います。私の最後に示したのは、環境中に人為
的に非常に高い濃度の放射性ラジオアイソトープを入れて、その代謝のスピードみたいな
のを調べているわけですね。そうすると、元素によって、ヨウ素の場合は急激にばっと高
くなりますが、セシウムの場合は本当に幾らたってもじわじわとしか上がらないのですよ
ね。ですから、核種によって濃縮率、全体量と、それから速さも両方とも違うわけですね。
そういった個別性が生物によって、元素によって非常に違いますので、私が思うには、食
29
品のある種の管理をする場合も、そういった性向をよく考えた上で決めたほうがよろしい
のではないかと思います。セシウムはかなり遅れて影響があらわれると思います。
●山添座長 松原先生に伺ってまいりましたが、大体御質問は。圓藤先生。
●圓藤専門委員 少し教えていただきたいのですが、チェルノブイリ周辺の子どもたちと
我々日本人との間で、人種差もあるのですが、食生活が大きく違うと思うのですね、例え
ばヨウ素の摂取状況というのは食品によってかなり違うのではないかと思いますね。です
から、チェルノブイリにあったデータをそのまま日本人に適用していいのかどうかという
ことを教えていただきたいと思うのですが。
●松原専門参考人 お答えいたしますと、ここに長瀧先生がいらっしゃらないのであれで
すけれども、長瀧先生も同意見だと思うのでございますけれども、明らかに日本はヨウ素
の摂取がチェルノブイリより多いわけで、チェルノブイリ地域はむしろ内陸でヨウ素の欠
乏地帯とも言われていると聞いております。ですから、濃縮率が非常に高かったのだと思
います。ですから、単純にチェルノブイリのあのデータをそのまま日本の子どもたちに、
濃縮率とか速さとかそういうものを適用することはおかしいと思います。ですから、普段
の食生活をまず調べて、食品摂取量調査などをしてみるのもよろしいのではないかと思い
ます。
●圓藤専門委員 もう一つは、年齢による影響、ここでは小児を出していただきましたが。
年齢によって変わってくるのかどうかということを検討していく必要は。
●松原専門参考人 基本的にはやはりヨウ素は成長ホルモンの成分ですので、乳幼児は大
人よりも明らかに高いし、逆に言えば、40 歳以上は全く問題ないので、規制値もいらな
いというような感じです。
●山添座長 それでは、御質問も一応まだある可能性もありますが、また別の機会という
ことにさせていただきます。
次のところで、今日用意していただきました資料について、事務局のほうから説明をい
ただけますでしょうか。
●坂本評価課長 それでは、資料4 以降について御説明いたします。そして、申しわけ
ございませんが、追加資料として、今1 枚紙をお配りさせていただきます。
まず資料4 からお願いします。
リスクとリスク分析の考え方という表題の資料でございます。これはもうおなじみの先
生も多い訳でございますが、食品健康影響評価ということでございますので、この食品安
全委員会が行うところがどこかということを念のために改めて御説明をさせていただきた
いと思います。
資料4 の上のほうの図の三つの四角の左上をごらんいただければと思いますが、食品
安全委員会が担当しておりますのはリスク評価ということで、食品中の危害物質摂取によ
るリスクを評価するということでございます。ここで求められていますのは、科学的知見
に基づき、客観的、中立公正に行うということでありまして、こちらで行われましたリス
30
ク評価に基づいてこの右の方にございますリスク管理、具体的には厚生労働省における残
留基準の決定等が行われるということで、評価と管理が分離されているということ、その
点の説明資料です。ここで行われるのは、先ほども少し議論がありましたが、あくまでも
食品中の危害物質摂取によるリスク評価ということでございます。
続きまして、資料5 をお願いいたします。「放射性物質の食品健康影響評価に関する
ワーキンググループにおける主な検討課題(案)」というものでございます。この1 枚
紙の一番下にございます(参考)にありますように、緊急取りまとめにおいて今後の課題
としてこちらに記載のものが示されております。この記載は本日参考としてお配りしてい
ます緊急取りまとめの今後の課題のところから抜き出したものでございます。
それらを少しポイント的に整理してみたということでございまして、最初の○では、ウ
ラン並びにプルトニウム及び超ウラン元素(アメリシウム及びキュリウム)のアルファ核
種ということが課題としてあるということでございます。
後で文献等もお示しいたしますが、留意点の最初のところでは、ウランにつきましては
動物実験で腎毒性を示すデータもあるということで、個別に物質としての毒性の評価も必
要と考えられるのではないかということを記載しております。
また、これも次回にはこれまでに我々が入手できています曝露状況に関するデータを整
理してお示ししたいと思っておりますけれども、曝露状況に関しましても、こちらに示し
ている核種に関しましてはデータが極めて乏しい状況が継続しておりまして、評価を行い
ながら随時新しい情報を確認する必要があるということを記載しております。
二つ目の○としましては、放射性セシウムに関連してという形にしておりますが、評価
要請は具体的になされておりませんが、ストロンチウムもやはり課題としてあるのではな
いかということでございます。セシウムについて検討する際にあわせて検討する必要があ
るのではないかということでございます。
留意点としては、ストロンチウムが環境中にどの程度放出されたか等の情報があまり得
られていないということを書いておりまして、アルファ核種と同じように随時新しい情報
を確認する必要があるということを記載しております。
それから、大きい課題として、放射性ヨウ素及び放射性セシウムも含め、放射性物質の
遺伝毒性発がん性のリスク及び胎児への影響に関する検討、それから、最後の○として、
基本的には食品経由以外のリスクはこちらでの検討の対象外でございますが、今後の状況
によっては外部被ばくとの関係に関する検討も必要になる可能性もあるのではないかとい
うこともございまして、食品由来の内部被ばくと総被ばく量との関係に関する検討も課題
として考えられるのではないかということで整理をしてみたペーパーでございます。
それから、机上にありますファイル、非常に分厚いものをお配りしていて申しわけござ
いませんが、資料6 以降がこちらの方になっておりますので、簡単に御説明をさせてい
ただきます。
まず、「海外政府機関等の公表資料等①」という背表紙のものが資料6-1 でございま
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す。ちょっと見ていただければと思うのですが、大変申しわけございません、重い資料に
なっております。こちらについては緊急取りまとめの際にもいろいろと探した訳でござい
ますが、海外の機関等でもリスク管理に関する情報は多いのですが、リスク評価、特に放
射性物質の経口摂取に関するリスク評価に関する情報はなかなか見当たらないのが実情で
ございます。
この資料6 の関係といたしましては、米国のATSDR のToxicological Profile がこの中
の大部分を占めております。例えばこの6-1 の最初は、アメリシウムでございますが、
これをめくっていただきまして、24 ページを見ていただければと思います。24 ページの
下の方には3.2.2 としてOral Exposure という項目があるのですが、残念ながら関連
の報告はないといったような趣旨の記載があるというようなことでございます。しかし、
全体的には参考になる情報もあるということで、抜粋はせずにこういう形でファイルをし
ております。
こういう形でATSDR の資料としては、アメリシウムのほかセシウム、ヨウ素、それか
らプルトニウム、そして後ろから二つ目に放医研というタグをつけておりますけれども、
プルトニウムに関しては放医研での動物実験のデータがございました。ただし、こちらも
中身を見てみますと、経口ではなくて吸入と腹腔内投与等のデータということになります。
しかし、参考になろうかということでこういうファイルにしております。
資料6-1 の最後はWHO、UNEP、ILO が参加しております国際化学物質安全性計画、
IPCS の資料でございまして、プルトニウムの物性などの情報がある資料ということでフ
ァイルをしております。
それから、資料6-2 として、「海外政府機関等の公表資料等②」として、すみません、
さらに一層分厚くなってしまっておりますが、こちらについては最初にATSDR のストロ
ンチウムの資料がございます。それから、2 番目にEFSA のウランの資料がございます。
先ほど少し申し上げました、ウランにつきましてはこのEFSA の資料がわかりやすいか
と思うので、恐縮ですが、EFSA の資料を1 枚めくっていただいた右手、3 ページ目にな
ります、下の方に3-59 とついているページでございますが、こちらを見ていただきま
すと、この4 行目のところからWHO 関係の記載がありまして、雄ラットでの91 日間試
験での腎毒性の結果から、ウランのTDI が設定されたという記載がございます。要は放
射性物質、放射能ということではなく、物質としての毒性でウランについてTDI が設定
されているということが記載されているということでございます。
それから、こちらのファイルではATSDR のウランに関する資料を次に載せております。
その次には電磁放射線に関するATSDR の資料がございまして、その後ろの二つの資料は
国連の放射線影響に関する科学委員会、UNSCEAR の資料、2006 年版と2000 年版をフ
ァイリングしたものです。
資料7 はICRP のPublication でございます。緊急取りまとめの際に参照しなかったも
ので、今後の食品健康影響評価の参考になりそうな内容を含むものということで、最初の

二つのファイルは、パブリケーション30-4 とPublication78 ということでございます。
こちらにつきましては、プルトニウムの代謝とかアメリシウムの代謝、それからキュリウ
ムの代謝、そういった情報がPublication30-4 にはございましたので資料としております。
次のPublication78 では、日本語ですので目次を見ていただくと早いと思うのですが、す
みません、横にしていただかないと見にくいのですが、3.の物質の摂取、移行および排泄
を表現するモデルの3.3 では、ストロンチウム、ウラン、プルトニウム、アメリシウム、
キュリウムに関する情報がございまして、ちょっとこれがどのくらい実際の食品健康影響
評価に活用できるか検討する必要があるとは思うのですが、参考になろうかということで、
こういう形で資料としております。
あと、後ろのPublication40 以降は緊急取りまとめの際には和訳された資料、先ほど遠
山先生から御指摘がありましたが、それらを資料としていましたが、原文についてこうい
う形で整理をしたということでございます。
次に、資料8 は、これまでに専門委員、専門参考人の先生方、滝澤先生、遠山先生、
鰐渕先生から文献を提供していただいておりますので、それらをファイルしております。
現時点ではこちらのファイル、最初に整理の表をつけておりますが、77 本の論文がござ
います。チェルノブイリに関係した膀胱癌の関係の論文とか、ヨウ素関係、セシウム関係
の論文、プルトニウム関係の論文などなどがございます。今後精査すべき論文の一部とい
うことで、こういう形でファイルをさせていただいております。
現在、事務局では、核種の名前と、例えば、経口投与等といった用語をキーワードとし
た文献検索を行っておりまして、食品健康影響評価に活用できそうな文献の収集、整理を
行っております。整理した結果にもよりまして、次回までにどのくらい用意できるかとい
うこともありますが、現在走りながらいろいろ作業をしているところなのですが、3 桁く
らいの文献を別に用意できるのではないかなというのが現在の状況でございます。
それから、今、1 枚紙を、追加資料というものをお配りさせていただいております。こ
ちらにつきましては今後の作業や、食品健康影響評価ということで具体的に御議論いただ
く際には、こういうものがあった方が参考になろうかということで、放射性物質の評価の
取りまとめの骨子案ということで、事項を少し整理してみたものということでございます。
これでかっちり固まったものというよりはたたき台的なものでございますが、1.要請の
経緯とか2.基本的考え方というものは当然こういうものにはあろうということ。それか
ら、3.の対象核種では、注1 としてございますが、放射性ヨウ素、放射性セシウム、ウ
ラン並びにプルトニウム及び超ウラン元素のアルファ核種についてそれぞれ作成するとい
うイメージで、まず(1)としては、物理化学的性状を整理して、(2)でこれまで知ら
れている用途等を整理し、(3)で自然界での分布・移動、(4)としてヒトへの曝露経
路と曝露量に関しての情報の整理、(5)として体内動態、括弧書きといたしまして、生
物学的半減期等の情報の整理が必要ではないかということ。(6)として、ヒトへの影響
として、急性影響、慢性影響、発がん性、生殖発生毒性、遺伝毒性等の整理が必要ではな
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いかということ。(7)として、国際機関等の評価の整理がいるのではないかということ
で、項目を整理してみました。
4.以降は、当然、食品健康影響評価は最終的に行いますし、また、今後の課題等あれ
ばそういうものを整理するという意味で、こういうイメージになろうかということで、議
論の参考としてこの資料を追加として配らせていただいております。
資料関係の説明は以上でございます。
●山添座長 非常に手早く御説明いただきましてありがとうございます。
このワーキングにつきましては、前の緊急取りまとめのところで一応放射性のヨウ素と
セシウムについて値を出したわけですが、その際に、ウランとプルトニウムについても諮
問がされておりました。ということで、資料5 にありますように、そういう超ウラン元
素のところ、それからそれに関連するものとしてストロンチウム、それから前回のところ
で必ずしも完全にデータ等が集まらなかった放射性のヨウ素及びセシウムというところ。
それから、その際に問題にされました食品由来の内部被ばくと総被ばくの関係というよう
なことを、今回のワーキンググループの検討課題ということでドラフトをつくっていただ
いております。基本的にこの内容について、先生方、いかがでしょうかということですが。
遠山先生、どうぞ。
●遠山専門委員 申しわけないのですが、そろそろ出なくてはいけないものですからちょ
っと意見だけ言わせていただきます。
一つは、先ほどお願いいたしましたけれども、要するに閾値があるなしのモデルの問題
とか、平常時、緊急時の概念でモデルとの適用との関係とか、そうした基本的な部分を初
めに決めないと、こうした取りまとめ骨子の中身のほうに余り初めから入ってしまっても
なかなか議論がまた振り出しに戻ってしまう可能性もありますので、そちらのほうの最初
に申し上げた部分をまず議論をして、それから各論に入っていただいたほうがいいのでは
ないかなと。もちろん並行して少し論文を読み始めるとか、そういうことは否定するもの
ではありませんが、そういうことであります。
●山添座長 先ほど遠山先生からも、佐々木先生から、もう少し具体的に計画的なところ
と緊急のところの値、それの考え方というものも含めてお話をいただいたのですけれども、
そこのところと遠山先生のおっしゃる低線量のところの外挿ですね、その辺のところも関
係すると思いますので、次回佐々木先生にお話も、もししていただけるならそれももう少
ししていただいて、踏まえた上で、低線量のところとのリスクの関係をどういうふうに全
体として現時点で評価したらいいのかということも踏まえて議論をするということで、遠
山先生、いかがでしょうか。それでよろしいですか。
では、そういう形で踏まえて、まず基本的な考え方を皆さんで統一した上で、この核種
それぞれについて内容を詰めていくという方向で進めさせていただきたいと思います。
そのほか、先生方、どなたかいらっしゃいますか。
●吉田専門委員 私も今の考えに賛成で、ぜひ佐々木先生には放射線防護に対するその考
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え方を、今日御説明いただきましたけれども、もう少し詳しく御説明いただいて、それを
やはり基本的な考えにしたいというように思いました。
●山添座長 そのほかいらっしゃいますでしょうか。
それでは、今申し上げたような形で、低線量のところの考え方をもう一度皆さんで共通
の認識としてとらえた上で、各線量について、今、追加資料をいただいたような項目につ
いてデータを詰めて、最終的には食品健康影響評価という形に持っていきたいというふう
に思います。
そのほかございますか。
なければ、この内容につきましては社会的な関心も非常に多いということがありまして、
できるだけ早く結論を食品安全委員会に報告することが期待されていると思います。でき
れば、お忙しいと思いますが、7 月に何らかの形で示すことができればということで、効
率的な議論を進めていきたいというふうに思っております。
そういうことで、全体的な方針、考え方がまとまれば、その核種ごとに、あるいは先生
方の間で分担をしていただく等も含めて、効率的な内容の詰めを図っていきたいというふ
うに思っております。事務局ではこの資料集めだけでも非常に大変なのですけれども、よ
ろしくお願いいたしたいと思います。
次回は、前回から問題、どういう核種を検討したらいいか、あるいはどのぐらいの期間、
どういうところから、いったん曝露があった場合には永続的にその曝露というものを評価
しなければいけないとかいうことがございますので、原子炉そのものについて詳しい方も
説明をいただいたほうがいいのではないかというふうに考えておりまして、次回、原子力
関係の方にもおいでいただきまして御説明をしていただこうというふうに考えております。
こういうような考え方で進めたいと思いますが、先生方のほうでこれ以外に何らかの内
容のものをということで、佐々木先生、どうぞ。
●佐々木専門参考人 私は放射線防護の大枠といいますか、ICRP の考え方の総論的なこ
とのお話はできますが、こちらと非常にかかわりの深い内部被ばくの専門家であるとか、
あるいは放射線環境化学の専門家という方が別におられまして、具体的なことになると私
はわかりませんので、問題を絞ってそういう方たちのお話が伺う必要が出てくるかもしれ
ませんが、私はあくまでかなり大まかなことしかお話しできませんので、その辺を御理解
いただきたいと思います。
●山添座長 今日お話しいただきましたように、ICRP がどういうふうに線量を決めたか
というのもなかなか我々にはもとの文献にというか、確かなものにたどれなかった。今日
お話しいただいたところで、一生涯のものをトータルとして考えて、それを年当たりにす
るというような基本的な考え方を御説明いただいて、ある程度すっきりしたと思っており
ますので、もう少しその辺のところをお話し願えればと思います。
そのほか、先生方ございますか。
なければ、本日の議事2 はこれで終了いたしました。
議事3、その他になっておりますが、何かありますでしょうか。
●前田評価調整官 特にございませんが、次回は来週4 月28 日木曜日、16 時、午後4
時を予定いたしてございますので、よろしくお願いいたします。
●山添座長 それでは、これで本日のワーキンググループの議事はすべて終了いたしまし
た。お忙しいところどうもありがとうございました。


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放射線防護の体系―ICRP2007年勧告―を中心に

http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/fukushima/foods/20110428_sfc2_sasaki.pdf


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http://www.inaco.co.jp/isaac/kanren/24-2.html#4-1

この会合当日、専門参考人の一人で日本アイソトープ協会の常務理事佐々木康人が発表したプレゼン資料である。佐々木康人は、ICRP派の大物学者の一人で、放射線防護を専門分野としている。東京大学医学部放射線科教授歴任。東京大学付属病院放射線部部長、東京大学医学部付属看護学校長兼務。科学技術庁放射線医学総合研究所所長、独立行政法人放射線医学総合研究所理事を経て日本アイソトープ協会の常務理事に納まっている。国際放射線防護委員会(ICRP)主委員会委員、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)日本代表、同議長を務めた、というからいわばコテコテ。しかしこの資料は面白い。ICRP勧告は日本語訳資料を読んでも難解極まる資料である。それは内容が難解だからなのではなく、全体が矛盾の体系に立っているからである。この資料はその「難解」な2007年勧告の骨子を整理して説明してくれている。それだけに矛盾の体系の骨格がよく見える。
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