自然エネルギー:電力の50%を風力と太陽光で得たドイツ、記録更新中
2013年04月23日 11時00分 更新
ドイツは長い時間をかけて電源構成を変えてきた。石油は使わない。原子力は抑えていく。石炭と天然ガスは増やさない。その代わり、再生可能エネルギーに頼る。2013年4月にはその成果が目に見える形で現れた。
[畑陽一郎,スマートジャパン]
また1つドイツが再生可能エネルギーの記録を作った。
ドイツのシンクタンクInternationales Wirtschaftsforum Regenerative Energien(IWR、再生可能エネルギー国際経済フォーラム)は2013年4月18日の正午、ドイツ全国の電力のうち、50%以上を風力発電と太陽光発電がまかなったと発表した。
欧州の主要な電力取引所であるEEX(European Energy Exchange)のデータによれば、風力発電と太陽光発電の合計が初めて36GWに達した。これは原子炉30基分以上に相当する出力だ。IWR所長のNorbert Allnoch博士によれば、長期休暇などを除き、電力需要の多い平日に50%を達成したのは初めてのことだという。
ドイツの電力消費パターンは、他の先進諸国と似ている。夜間は消費電力が少なく、日中に多い。つまり発電能力は夜間よりも日中に必要となる。日中は正午に向かって電力需要が伸びていく。2013年4月18日の電力需要は夜間が40GW、正午が約70GWだった。正午には70GWのうち、36GWを風力発電と太陽光発電がまかなっている(図1)。
図1には4月18日の深夜0時から24時までのデータが示されている。縦軸はMW。石炭火力や原子力などの非再生可能エネルギーを利用した発電を灰色で示した。水色は風力発電、オレンジは太陽光発電だ。正午には最大値の70GW弱に達しているものの、非再生可能エネルギーによる発電出力は夜間と同等水準に保たれている。ピーク出力を再生可能エネルギーがまかなっていることが見て取れる。
長期的な計画の成果を得たドイツ
4月18日の記録は偶然の結果ではない。なぜなら、1990年から一貫して再生可能エネルギーの比率を上げてきているからだ(図2)。電源構成に占める各種のエネルギー源の推移を図2から読み取ることができる。2011年は画期的な年だった。石炭と原子力を再生可能エネルギーが追い越したからだ。2013年以降、数年のうちに再生可能エネルギーが最大の電力源になることも予想できる。実際、2012年には再生可能エネルギーの全発電量に占める割合は21.9%に達した。この統計値は、ドイツArbeitsgemeinschaft Energiebilanzen(AGEB、ドイツエネルギーバランス)によるものだ。ドイツの目標は高い。2020年にはこの割合を35%以上、2030年には50%以上、2050年には80%以上まで高める計画だ*1)。
*1) 2022年までに稼働中の9基の原子炉の稼働を停止する他、2050年までにエネルギー消費量自体を2008年の半分に削減することで実現する。
AGEBは再生可能エネルギーを5種類に分類している。風力、水力、バイオマス、太陽光、家庭ゴミだ。どれが伸びているのだろうか。図3によれば、水力は20TWh前後で落ち着いている。これ以上の伸びしろはなさそうだ。2000年以降の伸びを支えてきたのはまず風力、少し遅れてバイオマスだということが分かる。2009年以降は太陽光の伸びが急激であり、2011年には水力を追い越し、バイオマスに追い付く勢いである。
複数の特性の異なる再生可能エネルギーを根気よく、バランス良く育てることが重要だ。